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「学生のうちから投資スタート」で得られる3つのメリット

2022年4月より、高校の家庭科の授業で金融教育がスタートしています。同じタイミングで行われた民法改正で、成人年齢(成年年齢)が20歳から18歳に引き下げられたことを受けて、高校生のうちからお金の知識を身につけてもらおうと、金融教育が始まったのです。この「金融教育」のなかには、投資に関する内容も含まれています。

では実際、学生のうちから投資をスタートすることはできるのでしょうか。また、学生のうちから投資をスタートすることで得られるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。学生のうちから投資するにあたって知っておきたいことと合わせて紹介します。

0歳から投資はできるが本格的な投資は18歳から

結論からいうと、学生のうちから投資をスタートすることはできます。

18歳未満の未成年者が開設する口座を「未成年口座」といいます。未成年口座は、証券会社によっては0歳から開設できます。

といっても、小さいうちから投資に関する情報を自分で集めて「これに投資する」と判断できる子どもはまずいませんし、よくわからずに取引して大きく損してしまっては大変です。ですから、14歳までの未成年口座では、親権者が代理で取引を行う(取引主体者になる)ことになっています。15歳から18歳未満までの未成年口座では、親権者に加えて未成年者本人も取引主体者になることができます。

ただ、未成年口座では投資で得られた利益にかかる税金がゼロにできるNISAが利用できません。2023年までは未成年者向けのNISAとして「ジュニアNISA」という制度がありましたが、2023年をもってジュニアNISAは廃止されています。今後、子ども向けのNISAとして「こども支援NISA」(こどもNISA)の創設が検討されていますが、本稿執筆時点(2025年8月18日)ではまだ詳細は明らかになっていません。

NISAが利用できないとなると、利益が出た場合には税金がかかることになります。親権者のお金で投資をした場合には贈与税がかかることもあります。また、未成年口座では信用取引や先物取引、FX(外国為替証拠金取引)のようなハイリスク・レバレッジを伴う投資はできないようになっています。

その点、18歳になれば、成年者向けの口座が開設でき、NISA口座も開設できるようになります(厳密には、利用する年の1月1日時点で18歳以上の人がNISA口座を開設できます)。取引も制限なく自由にできるようになります。

学生のうちから投資をするメリット

18歳といえば高校3年生、あるいは大学1年生という方もいるでしょう。そうした学生のうちから投資をするメリットには、次のようなものがあります。

(1)社会人になっても役立つ知識が身に付く

投資をすると、それまで興味のなかった政治・経済・国際などの情勢に関心が向くようになります。誰しも投資をすれば、その投資先が値上がりしてほしいと思うはずです。そうして首尾よく値上がりしてお金を増やせる場合もあれば、値下がりしてお金を減らしてしまうこともあるかもしれません。しかし、結果がどっちだったとしても、「なぜ値上がり(値下がり)したのか」を学ぶ中で、政治・経済・国際などの情勢に自然と詳しくなっていくでしょう。

また、株式投資で投資先の企業をリサーチすることは、就職活動の企業研究にも通じるものがあります。こうした知識は、投資はもちろん将来の仕事にもきっと役立つはずです。

投資を知れば知るほど、自らの身を守ることにもつながります。たとえば、「あなただけに教える元本保証で年利10%の投資先」などというフレーズに釣られて詐欺に引っかかってしまうケースが後を断ちませんが、投資の知識が多少あれば「そんな投資先は絶対にない」ということもわかるはずです。

投資の値動きする可能性(リスク)とそれによって得られるリターンにはトレードオフ(比例)の関係があります。元本保証のようにリスクの低い商品から得られるリターンは、相応に小さくなります。身近な元本保証の商品といえば普通預金がありますが、大手銀行の普通預金の金利は年0.2%(2025年8月18日時点)ですから、「元本保証で年利10%」なんてありえないですよね。実際に投資をしていれば、こうした詐欺に引っかかる可能性も減らせるでしょう。

(2)投資の時間を長く取れる

学生のうちから投資をスタートすれば、たとえば学校の卒業後、就職後、30歳や40歳などになってから投資を始める人よりも投資の時間を長く取れます。後述しますが、投資は長い時間をかけたほうがお金を堅実に増やせます。投資をいつまで続けられるか、もっといえば何歳まで生きるかは誰にもわかりませんが、もしその「投資の終わり」が決まっているのであれば、「投資の始まり」が早ければ早いほど、結果として長く投資を続けられることになります。

たとえば、毎月3万円ずつ積立投資して、年利3%で増やせたとします。この場合の将来の資産額(税引前)は、投資期間が長くなるほどに加速度的に増えることがわかります。投資で得られた利益を再び投資に回すことで、利益が利益を生み出す複利効果が得られるからです。

  • 10年:元本360万円+運用益59万円=419万円
  • 20年:元本720万円+運用益265万円=985万円
  • 30年:元本1082万円+運用益668万円=1748万円
  • 40年:元本1440万円+運用益1338万円=2778万円
  • 50年:元本1800万円+運用益2368万円=4168万円

何より、投資の経験を積んで、それを生かしていくという意味でも、早く投資をスタートすることはメリットになるといえます。

(3)さまざまなライフイベントに向けてお金を貯められる

投資で今すぐ使うお金を稼ぐのは難しいですしおすすめしませんが、将来のお金を学生のうちから準備することはできます。投資をしていれば、授業中でもアルバイト中でも就寝中でも自分のお金を働かせてお金を増やせるでしょう。

お金を貯めるときには、使う時期によって「短期」「中期」「長期」と3つに分けて考えるのがおすすめです。

<目的・時期に合わせて適した商品で貯める>

(株)Money&You作成

短期のお金は「日々出入りするお金」です。日々出入りするお金とは、日常生活費やもしもの場合に備えるお金です。これらは、すぐに引き出して使えることが重要なので、現預金で貯めます。

中期のお金は「5年以内に使い道が決まっているお金」です。5年以内に使い道が決まっているお金には、たとえば「住居購入の頭金」「車の購入費用」「留学費用」「結婚資金」などがあります。これらのお金は使うまでにやや時間がある分、少しでも増やしたいところですが、使うときに元本割れしていたら足りなくなってしまって大変です。ですから、お金を確実に準備できる定期預金や個人向け国債が適しています。

長期のお金は「10年以上使わない将来のためのお金」です。10年以上使わない将来のためのお金とは、子供の大学資金や老後資金だけでなく、10年以上先に使う「車の買い替え費用」「リフォーム費用」「学び直し費用」などがあります。

これらのお金は使うまでに時間の余裕があるので、元本割れの可能性はあるけれど、増える可能性が高い株や投資信託を利用するのが適しています。その際、税制優遇のあるNISAやiDeCoの制度を利用するのがよいでしょう。

学生のうちから投資を始めれば、「長期」のお金をより手厚く用意することができるでしょう。まだ若いので「教育資金」「老後資金」といってもピンとこないかもしれませんが、いずれも「人生の三大費用」といって、数千万円はかかるお金です。早いうちから用意することで余裕が生まれますし、他のライフイベントに使うお金も用意しやすくなるでしょう。

学生が投資するときに知っておきたいこと

投資が重要、損することもまた勉強とはいっても、やはり「お金が減るのは怖い」と思われる方がほとんどでしょう。でも、働いて得られる給与はなかなか増えず、物価が上昇している時代に、投資をしないでいるとお金は増えていきません。

上でも紹介したとおり、リスクとリターンはトレードオフ(比例)ですので、投資でお金を増やしたいならばリスクを取らなければなりません。

学生が投資するときには、次のことを押さえておきましょう。

●「長期」「積立」「分散」投資を行う

お金を極力減らさずに、堅実に増やす投資で大切な考え方が「長期」「分散」「積立」投資です。

【長期投資】

長期投資は、数十年といった長い期間で投資を行うことです。短期投資では、一時的な値動きの要因でお金を減らしてしまう可能性があります。しかし、長い期間で投資すれば、世界経済の成長とともに利益を得る期待ができます。

IMF(国際通貨基金)「世界経済見通し」(2025年4月)では、世界経済の成長率は2025年が2.8%、2026年が3.0%と予測されています。時期により多少の上下はありますが、世界経済は毎年おおよそ3〜4%ずつ成長しているのです。長期間投資をすれば、この成長の恩恵を得られるでしょう。

また、投資の期間が長くなると、利益が出しやすくなります。

<S&P500の推移(1970年〜2025年7月)>

(株)Money&You作成

図は米国の株価指標、S&P500の推移をグラフにしたものです。グラフは多少の上下こそあるものの、1970年から2025年にかけておおむね右肩上がりになっていることがわかります。

仮に2000年に株を買っていたら、その後しばらくは値下がりしてしまいました。これに慌てて2002年に売ってしまったら、資産を大きく減らしてしまったはずです。また、いくらか値上がりしたとはいえ、2006〜2007年に売った場合もまだ損です。しかし、これらの値下がり・値上がりを気にせず、長期投資の前提で2025年まで保有を続けていたら、大きな利益が得られていたはずです。

また、上でもお話ししたとおり、長期投資は複利効果を生かしやすいのもメリット。期間が長くなればなるほど、複利効果の恩恵は大きくなります。

【積立投資】

積立投資は、毎月・毎週・毎日など一定の間隔で定期的に一定額ずつ投資をすることです。もしも、これから必ず値上がりする金融商品があるなら、一括投資をしたほうがいいでしょう。安いときにたくさん買っておいて、高くなってから売ればそのぶん利益が大きくなります。しかし、「必ず値上がりする金融商品」は誰にもわかりません。将来値上がりの期待が大きな投資先でも、短期的には大きく値下がりすることだってあるかもしれません。一括投資をしてしまうと、心理的にも安定しないでしょう。

その点、積立投資をすると、金融商品の価格が安いときにはたくさん買い、高いときには少ししか買わなくなるため、平均購入単価を下げる「ドルコスト平均法」の効果が得られます。積立投資を長期間続け、平均購入単価が下がれば、その後少しの値上がりでも利益を出しやすくなります。

積立投資は、投資信託であれば100円から、株も1株単位ならば数百円から取り組めるようになっています。一度に多額のお金を出すのは不安という場合でも、少額からなら安心できるはず。慣れてきたら、毎月の投資金額を増やせばOKです。

【分散投資】

分散投資は、「値動きの異なる」資産に投資することです。こうすることで、ある商品が値下がりしても他の商品の値上がりでカバーすることができ、資産全体としての価格変動リスクを減らせます。

投資の格言に「たまごは1つのかごに盛るな」というものがあります。たまごを1つのかごに盛ってしまう(集中投資する)と、万が一そのカゴを落としたときに全部割れてしまいます。しかし、たまごが複数のかごに分けてあれば(分散投資すれば)、どれかを落としても被害は少なくて済み、他のたまごは守ることができるというわけです。

実際、値上がりする資産・値下がりする資産は、常に変わります。

<資産クラス別リターン(円ベース)>

JPモルガンの資料より

年ごとの資産クラス別のリターンをみると、もっとも値上がりした資産・もっとも値下がりした資産はほぼ毎年変わっています。また、値上がり・値下がりの割合も、年ごとに大きく違うことがわかります。

ただ、複数の資産に分散投資した「バランス型」は、どの年も中くらいの順位になっていることがわかります。つまり、分散投資をすることで、常に中くらいの成績を狙えるということがわかります。

●手数料や税金にも目を配ろう

お金を増やすために長期・積立・分散投資を行うことは大切なのですが、投資の成果をさらに上げて効率よくお金を増やすためにぜひ意識していただきたいのが、手数料と税金です。手数料も税金も、投資をする以上かかる費用ではありますが、投資の利益を減らしてしまう要因だからです。

【手数料を減らす】

投資では、金融商品を買うとき・持っているとき・売るときに手数料がかかる場合があります。いつ、どのくらいの手数料がかかるかは、金融商品によって異なります。

たとえば、長期・積立・分散投資を実践しやすい商品に、投資信託があります。詳細は後述しますが、投資信託では買うときに「購入時手数料」、持っているときに「信託報酬」、そして売るときには「信託財産留保額」という手数料がかかります。このうち、購入時手数料はかからない商品が多く、新NISAのつみたて投資枠で購入できる商品はすべて無料になっています。信託財産留保額もかからない投資信託が増えています。しかし、保有中の信託報酬は必ずかかります。

近年は投資信託の販売競争が激化し、信託報酬が年0.1%を切るような低コストの商品も出てきています。できるだけ安いものを選んだほうがいいでしょう。

【税金を減らす】

株式や投資信託の投資で得られる値上がり益、配当金、分配金といった利益には、20.315%の税金がかかります。具体的には、所得税および復興特別所得税が15.315%(復興特別所得税は2037年までの予定)、地方税(住民税)5%です。

投資した株が値上がりして、資産の価格(時価)が買ったときの価格(取得価格)よりも100万円値上がりしたとします。この株を売る前(含み益)の段階では、まだ税金はかかりません。しかし。この株を売却すると、利益が確定する(実現益)ため、税金が発生します。

株を売却して利益が100万円出た場合の税金は、100万円×20.315%=20万3150円。100万円に対する手取りは79万6850円になってしまいます。

税金は支払うのがルールですが、利益を減らす要因であることに違いはありません。ですから、できるだけ税金がかからない方法で投資することを考えましょう。具体的には、利益にかかる税金を非課税にできるNISAやiDeCoを利用する方法が考えられます。

本格的に投資をスタートするのは、生活費6か月分の現預金を確保してから

ここまで読んで「今すぐにでも投資をしたい」と思われた方もいるかもしれません。お金を増やすためにはぜひそうしていただきたいのですが、「まったくお金がないのに投資をする」というのはNGです。長期・積立・分散投資を心がければ値下がりのリスクは抑えられますが、ゼロにすることはできません。たとえ今学生であったとしても、余裕資金がまったくないのに投資をしてしまえば、生活に困ってしまうかもしれません。学生時代にさまざまなことを経験するのにも、お金は必要です。

社会人に投資のことを伝えるときにも「ケガや病気、万が一のリストラなどにも対応できなくなってしまうので、最低でも生活費の6か月分は現預金で確保してから投資に取り組みましょう」とお話ししています。そう遠くない将来に社会人になる学生のみなさんも、投資は余裕資金で行うことを忘れないようにしてくださいね。

頼藤 太希(よりふじ・たいき)
マネーコンサルタント

(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に創業し現職。日テレ「カズレーザーと学ぶ。」、TBS「情報7daysニュースキャスター」などテレビ・ラジオ出演多数。主な著書に『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など、著書累計180万部。YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。日本年金学会会員。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)

X(旧Twitter)→ @yorifujitaiki

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