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不動産投資は転売か長期保有か? 都心高騰データで読む戦略の分岐点

不動産投資と聞くと「値上がり益を狙う転売」を想像する方も多いかもしれません。実際、東京都心の新築マンション価格は直近3年間で大きく上昇し、短期売買の割合も増加しています。しかし、すべての不動産投資が同じ構造で成り立っているわけではありません。

本記事では、都心マンション高騰のデータを整理しながら、「転売型」と「長期保有型(ワンルーム投資)」の本質的な違いを解説します。市場構造を理解することで、投資判断の軸が明確になります。

東京都心部を中心にマンション価格が大きく上昇しています。マンション価格上昇の要因として、地価上昇、人口増、新線・再開発などによる利便性の向上や就業人口の増加など様々です。近年はこうしたマンション価格の上昇を見越した短期転売も多く行われるようです。今回のコラムではマンション転売とワンルームマンション投資との違いについて述べてみたいと思います

都心部のマンション価格の上昇と転売

少し前までのデフレの時期には、新築マンションを購入してもその物件がすぐに値上がりする事は珍しく、好立地の好条件のマンションで管理状態が良好な物件などある程度条件が限定されていました。

しかし近年は都心部を中心に新築マンション価格もこの3年間で大幅に上昇しています。その背景には給与水準の上昇と、パワーカップルの増加、円安による建築資材の価格上昇や人件費の上昇を要因とした建築費の上昇、そして外国人投資家による購入の増加や、相続対策なども要因として挙げられます。

不動産経済研究所の調べによると、2025年に東京都区部で発売された新築ファミリーマンションの平均価格は1億3,613万円となりました。前年2024年には1億1,181万円でしたので21.8%も上昇しました。年に20%以上の上昇ですので、その上昇率はかなり高いと言えます。また2022年には都区部平均で8,236万円でしたので、3年間で実に65%も上昇しました。

東京都区部 新築マンション平均価格の推移

2022年2023年2024年2025年
平均価格8,236万円1億1,483万円1億1,181万円1億3,613万円
不動産経済研究所調べ

マンション転売の状況は

こうした背景からマンションの短期売買も増加しています。マンションを購入してもすぐに価格が上昇するので、転売用に購入して居住しないで売却して利益を得るという手法です。こうした売却による利益を「キャピタルゲイン」と呼びます。中には購入1年以内に転売するケースも多く見受けられるようになりました。

近年のマンションの取引状況を調べるために、国土交通省では三大都市圏及び地方四市の新築マンションにおける短期売買(保存登記から1年以内の移転登記)の状況や、外国人(国外に住所がある者)による購入の状況などの調査を行いました。

首都圏では2024年1~6月に購入されたマンションのうち短期転売が行われた割合は東京都が最も多く、8.5%にもなりました。次いで神奈川県が5.1%となっています。埼玉県、千葉県の割合は低いものの1~2%の割合となりました。

※なお、短期売買の割合は、その期間に供給された物件の立地や規模などによって変動する可能性があります。

首都圏のマンション短期転売の状況(保存登記期間2024年1~6月)

東京都神奈川県埼玉県千葉県
割合8.5%5.1%1.1%2.2%
国土交通省「三大都市圏及び地方四市の短期売買や国外居住者による取得状況」

東京都のマンション短期転売率を平均で見ると23区で9.3%、都心6区ではなんと12.2%となり10%を超える割合となりました。都心6区のマンションの8戸に1戸が購入されて1年以内に転売されている事になります。

東京圏の新築マンション短期転売の状況

保存登記期間2023年2024年1〜6月
東京都5.2%8.5%
23区5.7%9.3%
都心6区7.1%12.2%
国土交通省「三大都市圏及び地方四市の短期売買や国外居住者による取得状況」

*都心6区:千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、渋谷区

区別及び規模別の短期転売状況は

東京都の短期転売の状況を区別に掘り下げて見ると、最も割合が高いのは意外かもしれませんが葛飾区です。葛飾区は東京でも都心からやや離れた所にありますが、都心への交通利便性が高い割には価格に値ごろ感があり、価格水準や交通利便性など、複数の要因が影響している可能性があります。3位には板橋区、4位は墨田区などが都心周辺部のエリアがランキングしています。

東京23区 新築マンション短期転売率ランキング(保存登記期間2024年1~6月)

順位割合
1葛飾区21.6%
2新宿区19.6%
3板橋区16.5%
4墨田区14.8%
5渋谷区14.6%
国土交通省「三大都市圏及び地方四市の短期売買や国外居住者による取得状況」

東京23区で短期売買されたマンションの割合を規模別に見ると、大規模マンション(100戸以上)のマンションの短期転売が多く、2024年1~6月に発売されたマンションのうち9.9%となりました。

東京23区 規模による新築マンション(40㎡以上)短期転売の状況

保存登記期間2023年2024年1〜6月
大規模マンション※4.1%9.9%
大規模マンション以外2.4%3.3%
国土交通省「三大都市圏及び地方四市の短期売買や国外居住者による取得状況」

*1棟あたりの保存登記数(登記原因が売買であるもの)が100件以上

外国人によるマンション購入

円安により外国からの投資が増え、外国人によるマンションの購入も増えていると言われていますが実際はどうでしょうか。2025年1~6月の外国人による新築マンション購入の割合は東京都では3.0%、23区で3.5%ですが都心6区では7.5%と都心部ほどその割合が高くなっています。

区別に見ると新宿区が最も多く14.6%、次いで渋谷区と北区が8.1%、千代田区が7.7%となりました。新宿区では約7戸の1戸を外国人が購入している事になります。

*なお、調査では国外居住者が特に2億円以上の高額物件を集中的に取得している傾向は確認されていません。

保存登記期間2024年2025年1〜6月
東京都1.5%3.0%
23区1.6%3.5%
都心6区3.2%7.5%
国土交通省「三大都市圏及び地方四市の短期売買や国外居住者による取得状況」

マンション短期売買の問題点と規制とは

かつて1980年代のバブル経済の頃にもマンション価格が大きく上昇し、マンションを短期転売する事例が多くありました。これを防ぐために現在でも短期譲渡所得税がありますが、当時は超短期譲渡所得税という税制もあり、より厳格な制度があった訳です。また不動産会社においても土地の取得においては国土法の改正・強化というとても厳しい土地の取得規制も設けられました。また金融機関が不動産会社に事業資金を融資する際の「総量規制」といった金融面での規制も強化された時代でした。

現在でも5年以内の売却で得た所得には39.63%が課税されます。それでも短期転売が増えているという事は、いかにマンションの価格上昇が大きいかが分かります。

こうした短期転売が増える事でマンション価格の上昇に拍車がかかるという問題点があります。千代田区では購入後5年以内の転売を禁止するよう不動産協会に要請していた事もあり、同協会では引渡し前の転売禁止や複数戸購入の制限などの指針をまとめ、大手不動産会社を中心に導入を決定しています。

現在のワンルームマンション投資との違いは?

このように都心のファミリーマンション価格が高騰し、転売も増加していますが、それに対して主に30㎡以下の投資用マンションの価格は比較的落ち着いていると言えます。

マンション投資業界は非常に歴史が長く、老後の年金対策などを主な目的とする長期投資が前提となっています。もちろんワンルームマンション投資においても転売する方もいらっしゃいますが、その割合はとても少ないと考えられます。

同じマンション投資でも転売して「キャピタルゲイン」を得る投資と、賃貸に出して「インカムゲイン」を得る投資では、その手法、目的共に大きく異なります。

ワンルームマンション投資は安定した「インカムゲイン」を得るためには、主に賃料を基にした収益還元法の観点で価格が決まります。賃料は短期で大きく上昇する事は少ないのでワンルームマンションの価格上昇も都心部のファミリーマンションと比べて緩やかと言えます。

合わせて読む:不動産投資のメリット

執筆:野中 清志(のなか きよし)
住宅コンサルタント|株式会社オフィス野中 代表取締役

マンションデベロッパーでの実務経験を経て、2003年に株式会社オフィス野中を設立。 特定の企業に属さない第三者的な立場から、首都圏・関西をはじめ全国各地でマンション購入に関する講演・コンサルティングを行う。
居住用マンションから不動産投資(資産運用)向けセミナーまで、年間100本近い講演をこなす「マンション選びの第一人者」。膨大な供給データと開発現場への深い知見に基づいた、先見性の高い解説に定評がある。

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