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大きく変わる金融情勢と不動産投資【プロが教える不動産投資コラム】

日本の金融や経済をめぐる状況も大きく変わってきています。長いデフレの時代からようやく経済は脱出しつつありますが、その過程において様々な動きが見られています。

今回のコラムでは最新の金融・経済状況と不動産投資について検証してみたいと思います。

近年の金利動向は

皆様もご存じの通り日本では長い間低金利が続いていました。これはデフレ脱却のための「金融緩和政策」の一環で、低金利による経済再生の方策が実施されていたからです。

金利が低いと企業は資金を調達しやすく設備投資や人件費などに資本を投入しやすくなるので業績の向上にも繋がります。また個人にとっても住宅ローン金利が低くなるのでマンションなどの住宅も購入しやすくなり、多くのマンション需要が発生しマンション価格の上昇にも繋がっています。

但し金利が低いと預金の利息が少なくなったり、金融機関の業績にも影響がありますのでいつまでも金融緩和を続けていく事に弊害も生じてしまいます。そこで日銀では金融緩和の終了条件として「賃金の上昇を伴う安定的な物価安定2%」を挙げていました。

しかし欧米諸国などではインフレが進み、金利を引き上げる「金融引き締め」が行われてきました。こうした「日本=低金利、米国=高金利」と金利差が発生し、円安が進む要因ともなっていました。

円安もインフレの要因に

世界中では新型コロナや紛争などの影響もありインフレが進んでいますが、日本でも輸入物価やエネルギー価格の上昇などを受け物価上昇が進みました。

2024年7月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は前年同月比2.7%の上昇となっています。日本の物価は先に上げた日銀の物価上昇の目安である2%を超えて推移し、2022年4月以降2年以上に渡り2%を超える状態が続いています。

但しこうした物価上昇は円安による輸入物価上昇や世界的なエネルギー価格の上昇も要因となっています。日本の実質賃金はマイナスが続いてきており、2024年の年中央までは本格的な景気回復には至っていないとの見方がされていました。

日銀では金融緩和の継続を表明していましたが、急激な円安で1時1ドル161円台となるなど、金利引き上げ圧力も高くなっていました。

消費者物価の推移(前年比)生鮮食品を除く総合(全国)

7月8月9月10月11月12月1月2月3月4月5月6月7月
前年比3.13.12.82.92.52.32.02.82.62.22.52.62.7
<総務省「2020年基準消費者物価指数」全国 2024年(令和6年)6月分より作成>

(単位:%)

実質賃金の上昇

ここで金利引き上げに焦点となるのが「賃金の動向」です。

岸田総理の呼びかけにより、大企業などを中心に賃金の上昇が続いていましたが物価上昇率も高いので物価上昇分を除いた実質賃金は2023年の年間ではマイナス2.5%となり、実質賃金はマイナスが続いていました。

しかし2024年6月には実質賃金は1.1%のプラスと27ヵ月ぶりにプラスに転じました。

また日経平均株価も7月11日には終値で4万2,224円となるなど過去最高を記録しました。本格的な景気の回復の予兆が感じられる要素も揃ってきましたと言えます。

実質賃金の推移(対前年比)

2019年2020年2021年2022年2023年2024年6月
前年比△1.0%△1.2+0.6%△1.0%△2.5%+1.1%
<厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和5年分結果速報」>

金利の引き上げとその影響は

こうしたインフレ・円安に加えて給与水準の上昇などの状況などもあり、日銀では7月31日に行われた金融政策決定会合により、それまでゼロ~0.1%程度であった短期金利を上限0.25%に引き上げる決定を発表しました.長く続いた「マイナス金利」から「ゼロ金利」となり、さらに「金利のある世界」に移行した訳です。

金利引き上げの発表の後の週明けの8月5日には米国の雇用統計が悪化しているデータも発表された事もあり、日経平均株価は大きく下落しました。下げ幅は4,451円と過去最大となりました。しかし翌8月6日には3,217円の上昇と上げ幅が過去最高となり、株式市場は大きく乱高下が続く事となりました。

NISAへの影響は

この株式市場の反応に驚いたのは、岸田総理の掛け声で新しくNISAを始めた方々ではないでしょうか。通常の投資では得られた収益に20%の税金がかかりますが、NISAの場合はかからないなどのメリットがありました。

進行する少子高齢化により厳しさを増す年金財政により、将来のための自助努力として2024年から制度が改正され、多くの方がNISAを始めましたが、突然の株式市場の下落で、価格が下落し、慌てて売ってしまう「狼狽売り」も多く見られたようです。

NISAも投資ですので、収益が出る場合もあれば損をする場合もあります。NISAの儲かった場合のメリットだけを聞いてきた方には大きな動揺も広がったのではないでしょうか。

不動産投資ローンへの影響は

皆様がワンルームマンション投資などに利用される不動産投資ローンは多くの場合「変動金利型」となっています。

変動型金利は各銀行などの決める短期プライムレート(短プラ)に連動します。この短プラは日銀の短期金利に連動しています。つまり日銀が金利を決める事で市中の金利をコントロールできますので、政策金利ともいわれています。

今回日銀の短期金利が引き上げとなりましたが、引き上げ幅は0~0.1%から0.25%と約0.2%程度と微増となっています。

住宅ローンでは9月2日から三菱UFJ銀行は短プラを0.15%引き上げると発表しました。わずかですが変動型ローンの金利も上昇しているようです。

日銀によるゼロ金利の解除、金利引き上げと金融政策転換の衝撃は大きいですが、実際の金利上昇幅は小幅であり、依然として金利水準は「超低金利圏」にあります。

また住宅ローンは金利が上昇しても5年間返済額が変わらない「5年ルール」や、返済額が上昇しても上限が1.25倍となる「1.25倍ルール」などがありますので安心と言えます。

今後の金融情勢

このように日本の金融・株式市場は大きな変動がありました、政界でも岸田総理が今年の9月で退陣との報道が流れました。アベノミクスから続く大規模金融緩和政策は岸田政権でも継続されていましたがここにきて転換期を迎え、今後の政権によってはさらに金融の正常化が進む可能性も帯びています。

また逆にインフレの抑制のために金利の引き締めを行ってきた米国は、金利の引き下げが予想されています。FRB(米連邦準備理事会)のパウエル議長は8月23日にジャクソンホールで講演し9月の利下げを明言しています。

来月6日に発表される米国の雇用統計にも今後の金利の動きに大きな影響があります。日米の金利差が縮小すると、円高ドル安が進む可能性もあります。

このように大きく金融情勢は変化していますが、不動産投資における影響は少なく、逆に景気の回復につれて賃料の上昇や、マンションの資産価値の上昇が見込める場合もあります。

金利上昇期はインフレ期となりますので、インフレに強い投資であるワンルームマンション投資が今後ますます注目されるのではないでしょうか。

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