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大谷翔平の1000億円超契約でも黒字に?ドジャースの戦略的経営とビジネスチャンスの拡大

昨年12月に大谷翔平選手との大型契約が報じられたロサンゼルス・ドジャース。その契約金額は10年で総額7億ドル——つまり日本円で1000億円超えのプロスポーツ史上最高額となり、各メディアで大きく報じられました。

大谷選手のドジャースへの移籍はスポーツ界だけでなく、ビジネス界にも大きな波紋を広げています。彼の存在は、ドジャースの収益を劇的に増加させ、経営戦略に新たな視点をもたらしました。 本記事では、大谷選手の加入がドジャースの経営にどのような利益をもたらしたのかを詳細に探ります。

開幕戦は2.5倍に!チケット価格が高騰

ドジャースは昨シーズン、ホームであるドジャー・スタジアム(収容人員5.6万人)で81試合を開催し、386万人以上(1試合あたり平均約4.7万人)もの観客を集めました。

無観客開催だった2020年を除き、2013年から10年連続で観客動員数トップを維持。300億円近くを稼ぎ出したものの、すでに多くの固定客がついている人気球団であるため、今後は観客数の大幅な増加は見込めないのでは?と考えられていました。

ところが、大谷選手の加入により、ドジャースはファンの注目を一気に集める結果に。彼が今後も脚光を浴び続けることで、チケット販売の収益が増加していくのは明らかでしょう。

大谷選手の卓越したパフォーマンスは観客動員を大幅に増加させ、試合チケットの販売収益を押し上げています。特に、カージナルスとの開幕戦のチケット争奪戦は大白熱。流通市場でのチケット平均価格は390ドル(約6.3万円※)から983ドル(約15.8万円)へと152%上昇し、多くのファンがスタジアムに足を運びました。

※1ドル161.17円(6月28日1時時点のレート)で換算した場合。以下同様

スポーツチームの収入源としては、観戦チケットの販売以外にもグッズ販売や飲食代、駐車料金、放映権料やスポンサーシップなどが挙げられます。

なかでも収入の柱となっているのは放映権料。2013年には地元ケーブルテレビ局である「スポーツネットLA(元 タイム・ワーナー・ケーブル)」と25年総額83億5000万ドル(当時のレートで約1兆2226億円)の契約を結んでおり、潤沢な資金力を支えています。 ドジャースはこのようなさまざまなチャネルを通じて、昨シーズンは5億6500万ドル(910億円)を稼ぎましたが、首位のニューヨーク・ヤンキースには及びませんでした。しかし、今シーズンは大谷選手の獲得をきっかけに収益性を高めていくことが期待されており、「経営面でドジャースがトップに立つのは時間の問題」とも言われています。

日系企業とのスポンサーシップ契約が増加

「コカ・コーラ」や「バンク・オブ・アメリカ」などすでに多くの企業をスポンサーに迎えているドジャースですが、大谷選手の加入後は同じく新たに加入した山本由伸選手の活躍も相まって、彼らの人気を活用したい日本企業との提携が次々に進んでいます。

今シーズンに入ってからは「ANA(全日本空輸)」、タイヤメーカーの「TOYO TIRE」、大手100円ショップの「大創産業(ダイソー)」、医薬品の製造や資源素材などを手がける「興和」、大手化粧品メーカーの「KOSE(コーセー)」、ハウスメーカーの木下工務店などを傘下に持つ「木下グループ」、機械部品メーカーの「THK」、乳酸菌飲料などを手がける「ヤクルト」、たこ焼きチェーンの「築地銀だこ」、配管システム全般の販売を営む「日本管材センター」、ペットフードの製造販売を手がける「いなば食品」……など相次いでスポンサーシップ契約を締結しました。これらの企業のほとんどがアメリカでの事業も展開しており、日米両国での認知拡大を狙っていることが分かります。

すでに10社以上の日本企業と契約するドジャースは、6月25日(日本時間26日)に自動車メーカーのホンダと電機メーカーのソニーによる共同出資会社「ソニー・ホンダモビリティ」が手がける自動車ブランド「AFEELA(アフィーラ)」と提携契約を結んだことも発表。

この契約の一環として、今シーズン中のホームゲームでは同ブランドの2024年型電気自動車の試作車がスタジアムに設置されます。スポーツイベントでの新車発表は世界初だそうです。

7月20日(日本時間21日)に本拠地で開催されるレッドソックス戦前には「AFEELA PREGAME PERFORMANCE」と銘打ち、日本の人気ヒップホップユニット「Creepy Nuts(クリーピーナッツ)」による米国初のライブパフォーマンスが決定。ここでしか観られないスペシャルステージをドジャースが後援します。

今後も日本企業とドジャースとの結びつきはますます強固になっていくでしょう。

一連の流れを目撃した日本人ファンたちは、「選手としての活躍も素晴らしいけど、10年で7億も余裕で回収できそう」「大谷選手個人だけでなくチームにも影響力があるのがすごい」「大谷効果に他の球団が後悔していそう」などと驚きと納得の声を上げています。また、ドジャー・スタジアムの照明塔下やバックスクリーンにはまだ看板を架けられるスペースが空いていることから、さらなるスポンサー増加を予想する声も聞こえています。​ このように、大谷選手の加入に伴いドジャースは新たな契約を次々と獲得。特に、日本市場におけるスポンサーシップは大きな成功を収めました。

大谷効果で1000億円規模の利益も?

史上最高額となった大谷の契約締結直後には、「巨額の投資は回収できるのか?」というテーマが度々取り沙汰されました。

ドジャースはForbesが発表しているMBL球団価値ランキングでもヤンキースに次ぐ2位を誇るメジャー屈指の“金満球団”と言われているものの、7億ドルという契約金は球団買収額の3分の1に匹敵します。通常であればほかの穴埋めや強化に年俸総額を配分しなければならず、いくらドジャースとはいえ経営に支障が出るのではないかと考えられていたからです。

ところが、大谷選手のプレーは国内外のメディアで大きく取り上げられ、ドジャースのブランド価値を飛躍的に高めました。結果としてチケット収入やスポンサーシップ契約、メディア放映権料などが増加し、ただでさえ儲かっていた球団の総収益をさらに押し上げる要因となっています。

ドジャースは大型契約を通じてブランド力の向上と、それに伴う新たな収入を獲得。現地の関係者は、7億ドルをペイするどころかお釣りが来るという見方をしています。

また、関西大学名誉教授の宮本勝浩氏も「ドジャースは大谷選手の移籍により、年間150億~200億円の収入増加がある」と推察。つまり、大谷選手に10年間で約1000億円を支払っても、500億~1000億円規模の収益を得られる算段がドジャースにあるということです。

このように大谷選手の加入は、ドジャースにとって経営面で大きなプラスとなりました。彼のパフォーマンスはドジャースの収益構造に革命を起こし、球団の長期的な成長を支える重要な要素となるでしょう。 今後は、MLBにおけるトップチームとしての地位をさらに強固なものにしていくことが予想されます。投資家やビジネスパーソンにとって、スポーツ界での成功事例として大谷選手の影響力とドジャースの経営戦略を見逃すことはできません。

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