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海外に転勤・赴任してもNISAを続けることはできる?

日本にいるときに始めたNISA(ニーサ・少額投資非課税制度)。これから海外に転勤・赴任される方も増えてくることでしょう。果たしてNISAは、海外に転勤・赴任しても続けることはできるのでしょうか。

今回は、海外に転勤・赴任する際のNISAの資産の取り扱いを一緒に確認していきましょう。

NISAが利用できるのは「日本に住む」人

NISAは、投資で得られた利益が非課税になる制度です。2023年時点の現行のNISAには、一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAの3種類があります。

このうち、一般NISAとつみたてNISAを利用できる方は「日本国内に住んでいて、口座を開設する年の1月1日時点で18歳以上の方」です。
また、ジュニアNISAを利用できる方の条件は、「日本国内に住んでいて、口座を開設する年の1月1日時点で未成年の方」です。

つまり、NISAを利用するには、いずれも日本に住んでいる必要があります。

なお、一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAで新規に投資できるのは2023年まで。2024年からはNISAの制度が改正され、新しいNISAの制度(以下、新NISA)で投資できるようになります。この新NISAが利用できる方の条件は一般NISA・つみたてNISA同様で、「日本国内にお住まいで、口座を開設する年の1月1日時点で18歳以上の方」となっています。

海外赴任・海外転勤でNISAの資産はどうなる

会社から海外赴任や海外転勤を命じられる人もいるでしょう。海外赴任・海外転勤をするということは、一時的とはいえNISAを利用できる条件の「日本国内に住んでいる」を満たさなくなってしまうということです。

この場合、以前はNISA口座の資産をすべて課税口座(特定口座または一般口座)に払い出す必要がありました。また、帰国後もその払い出した資産をNISA口座に戻すことはできませんでした。つまり、海外赴任や海外転勤をすると、NISAを使った非課税の運用を続けることができなくなってしまっていたのです。

しかし、2019年度の税制改正により、最長5年の海外赴任・海外転勤であれば、それまで一般NISA・つみたてNISAで保有してきた資産をNISA口座で保有できるようになったのです。

NISA口座保有者の出国に伴う対応

金融庁「平成31年度税制改正について」より

たとえば、2020年に出国した人の場合、2025年末まで一般NISA・つみたてNISAの口座で資産を保有することができます。NISA口座で保有したい場合は、出国の前日までにNISA口座を開設している金融機関に「継続適用届出書」を提出して手続きを行います。また、5年以内に帰国した後も、「帰国届出書」を提出します。

しかしながら、海外に出国している間は、新規の投資をすることはできません。配当金はもらえますが、株主優待は海外発送されないので、出国することで自宅を長らく留守にする方は、あらかじめ実家などほかのところに送ってもらえるよう、手続きしておきましょう。

この手続きをしないで黙って出国したり、帰国しても5年以内に帰国届出書を出さないでいたりすると、NISA口座が廃止され、資産が課税口座(一般口座)に払い出されることになるので、手続きを忘れないようにしましょう。

また、ジュニアNISAはこの制度の対象外で、たとえば親と一緒に子どもも出国するという場合には、資産がすべて「課税ジュニアNISA口座」に払い出されます。課税ジュニアNISA口座は、ジュニアNISA口座内で保有する資産の売却金や分配金などを管理するための口座です。課税ジュニアNISA口座内の資産は、2023年時点では子どもが18歳になるまで引き出しできませんが、2024年以降は子どもが18歳未満であっても引き出しができるようになります(一度にまとめてすべて引き出す必要があります)。

新NISAについては現状どうなるかまだ発表にはなっていませんが、新NISAが現行NISAの一般NISA・つみたてNISAを合わせたような制度になっていることを考えると、現行の一般NISA・つみたてNISAと同様になるのではと思われます。

主な証券会社の海外居住者への対応

しかし、実際にNISA口座の資産を保有したまま海外赴任・海外転勤できるのかというと、必ずしもそうとは限りません。証券会社によって、海外居住者への対応が異なるからです。ここでは、SBI証券・楽天証券・マネックス証券の各ウェブサイトでどのように説明されているか、紹介します。

SBI証券

Q:海外に行くことになりました。取引は継続できますか?

A:当社に証券総合口座をお持ちのお客さまが、海外勤務等の理由により一時的※1に出国し、「(本邦)非居住者」に該当される場合、原則として日本株式および日本国債以外の金融商品等をお預かりすることはできません。

当社での出国時のご対応

・出国の際には、事前に当社に届出が必要です。

・ご出国前に外国証券や信用取引・先物オプション取引などの証拠金取引等の建玉等(※2「非居住者」となる場合に当社で原則継続保有可能な日本株式および日本国債以外の金融商品等)はお客さまご自身で売却・決済等を行ってください。解消しないまま非居住者になられた際には当社にて任意の時期にお客さまの計算において売却・決済を行う場合がございます。

・ご出国後は、全商品において、新規のお取引を制限させていただきます。

・帰国後の所定のお手続きをいただいたあと、取引の制限を解除いたします。

※1海外へ「永住」される場合は、証券総合口座の閉鎖が必要となります。

※2「(本邦)非居住者」に該当する場合、特定口座やNISA口座(ジュニアNISA口座)で上場株式等の管理を行うことはできません。当該口座にお預りがある場合は、一般口座で管理させていただきます。

以上、SBI証券ウェブサイトより抜粋

SBI証券の場合、原則として日本株式・日本国債以外の金融商品を保有できなくなります。外国の証券や証拠金取引のポジションなどは、売却・決済をしてから出国しないと、売却。決済が行われます。そして、出国後は新規の取引がすべて制限され、帰国後の手続きをすると取引の制限が解除される、というわけです。

そして、出国して非居住者に該当すると、特定口座やNISA口座で管理を行うことはできない、とあります。つまり、SBI証券では海外赴任・海外転勤をするとNISA口座で資産を保有することができません。

楽天証券

出国期間中に総合口座でできること

・継続利用できる口座:

総合口座、特定口座、非課税口座(成人NISA)

※非課税口座(成人NISA)は、出国理由が海外転勤によるもの、または、海外転勤される方に帯同する配偶者である場合に限ります。

※未成年非課税口座(ジュニアNISA)はご利用いただけません。

※つみたてNISA口座は投資対象が投資信託のみのため継続いただけません。

・保有できる商品:

国内株式(ETF・REIT等を除く)、および個人向け国債

・利用可能な操作:

ログイン(評価額や過去履歴の確認等)

出金(登録された出金先金融機関への円貨出金のみ可能)

・利用可能な取引:

ございません。すべての取引を制限いたします。

以上、楽天証券のウェブサイトより抜粋

楽天証券の場合、出国期間中も総合口座、特定口座、そして非課税口座として成人NISAが継続利用できるとあります。ただ、18歳以上の方が使えるNISAのうち、つみたてNISAは継続できないとあるので、成人NISA=一般NISAです。国内株式と個人向け国債が保有できる点、取引がすべて制限される点は、SBI証券と同じです。

楽天証券のウェブサイトには、一般NISAを継続する場合「最長で、出国した年の五年後の年末までNISA口座が継続」できるとあります。また、NISA口座で保有している商品の非課税期間が終了した場合は一般口座に払出しされます。

マネックス証券

Q:NISA口座の開設手続きが完了しましたが、海外転勤となりました。そのままNISA口座は継続できますか。

A:当社では、海外転勤等により非居住者となる場合、NISA口座を継続できません。NISA残高については売却、もしくは課税口座への払出が必要です。

(中略)

租税特別措置法では一定の条件を満たす場合にNISA口座の継続適用が可能ですが、当社ではその適用は行っていないため、非居住者となる場合には、NISA口座の解約が必要となります。

以上、マネックス証券のウェブサイトより抜粋

マネックス証券でも、NISA口座を保有しての出国は認められていません。法律の上ではNISA口座の継続適用ができるものの、マネックス証券はその適用をしていないとあります。

他にも証券会社や銀行を調べてみたところ、野村證券ではNISA口座(一般NISA・つみたてNISA)の資産を非課税で保有し続けることが可能という表記が見られました。

野村證券

(2)少額投資非課税口座(NISA口座)※3を継続する場合:

①給与等の支払者による転任の命令等、やむを得ない事由による出国の場合、出国日の前営業日までに一定のお手続きを行っていただくことで、最長で「非課税口座継続適用届出書」受入日の5年後の年末まで、NISA口座内のお預りを非課税のお預りのまま保有いただけます。

(中略)

※3対象はNISA口座およびつみたてNISA口座です。ジュニアNISA口座は継続することができません。

以上、野村證券「海外へ転出されるお客様の口座に関するご案内」より抜粋

しかし、その他の金融機関ではNISA口座の継続ができない、と説明されていました。NISA口座を保有したままの出国は、法律上は認められていても、できないケースがわりと多いことがわかります。

海外に住む予定があるなら、NISAは使わないほうがいい?

NISAは非課税の恩恵が受けられるお得な制度ですが、ほとんどの金融機関では海外に出国する際にNISA口座を解約し、資産を売却する必要があります。

証券会社のなかでは「野村證券」だけが一般NISA口座・つみたてNISAの資産を出国後も保有可能。楽天証券では株式であれば保有可能となっていますが、SBI証券・マネックス証券ではNISA口座の資産を解約する必要があります。

新NISAの制度がもしも現行NISAと同じであれば、海外に何度も行く人や、長期間住む人は出国のたびに口座の廃止の手続きが必要になってしまいます。ですから、あらかじめ出国予定がはっきりしているのであれば、NISAで保有を続けられる金融機関で口座開設・NISAの利用をしたほうがいいでしょう。

まだ海外に住む予定がないものの、「もしかしたら行くかもしれない」という場合も、ひとまずNISAを利用しましょう。NISAを利用することで非課税の恩恵が受けられますし、投資に少しでも長い間取り組むことで、複利効果を得ながらお金を堅実に増やせます。

頼藤太希 (株)Money&You代表取締役/経済ジャーナリスト

中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。女性向けWebメディア『FP Cafe』や『Mocha(モカ)』を運営すると同時に、資産運用・税金・Fintech・キャッシュレスなどに関する執筆・監修、書籍、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力している。『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)など著書累計100万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。

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