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トランプリスクでもやっぱり強い「金」。投資するにはどんな方法がある?おすすめは?

2025年1月に米国の大統領に就任したトランプ氏。トランプ大統領の就任後、市場はトランプ大統領の動向に常に関心を持っています。特に2025年4月に起こった「トランプショック」では、個別株や投資信託などで株に投資していた人のほとんどが、一時的に資産を減らしたことでしょう。トランプ大統領の動向による市場の値動きの不確実性は「トランプリスク」と呼ばれるほど。その影響は小さくありません。

一方、暴落や下落相場に強く、トランプリスクも意に介さずに値上がりしている投資先が金(ゴールド)です。金(ゴールド)を資産ポートフォリオに組み入れておけば、いつかやってくる新たな暴落や下落相場に備えることができるでしょう。

今回は、金(ゴールド)が暴落時に強い傾向があること、金(ゴールド)がトランプリスク下でも値動きが堅調になっていること、そして金(ゴールド)に投資する方法をご紹介します。

金(ゴールド)はなぜ有事や暴落に強いのか

金投資は、貴金属の金(ゴールド)に投資する投資です。金は古来、権力の象徴・富の象徴として用いられてきました。そして今では世界中で金投資が行われています。

金(ゴールド)というと、宝飾品やアクセサリーに使われていることを連想する方が多いでしょう。スマホなどの身近な機器にも使われています。オリンピックなど、スポーツの大会で優勝すれば「金メダル」がもらえますよね。いずれにしても「金(ゴールド)には価値がある」というイメージがあるはずです。金の価値は昔も今も世界各国で認められています。そして、世界中で換金できることから、金は投資の対象として取引されてきました。

金は世界中で、その価値がゼロになることは考えにくい「実物資産」として扱われています。インフレでお金の価値が下落するときにも値上がりする(インフレに強い)特徴があります。また、金(ゴールド)は実物資産であるがゆえに、昔から地政学的な問題(政治・戦争・天災)や世界経済を揺るがすような事態が発生したときに買われる「資産の逃避先」として知られています。金(ゴールド)は「有事の金」と呼ばれて買われてきたのです。

実際、世界各国の中央銀行も分散投資の一環として、地政学リスクに対するヘッジとして、金(ゴールド)を購入しています。

World Gold Council(ワールド・ゴールド・カウンシル)のデータによると、世界各国の中央銀行は2010年から2024年まで、15年連続で金(ゴールド)を購入していることがわかります。

<中央銀行の金(ゴールド)購入量(2010年〜2024年)>

World Gold Council(ワールド・ゴールド・カウンシル)のデータより作成

注目は2022年〜2024年の3年間。世界各国の中央銀行はこの3年間、毎年合計1000トン以上の金を購入しています。2021年までと比べると、明らかにハイペースです。そして、その需要の高まりに合わせるように、金価格も上昇していることが読み取れます。2022年といえば、ロシアがウクライナに侵攻を始めた年です。地政学リスクが高まったことを受けて各国が金を購入しているのです。

なお、このグラフにはありませんが、2025年第1四半期の3か月間の購入量は243.7トンですので、単純に4倍して年換算すると974.8トン。このペースだと2025年の購入量は計算上1000トンに届きませんが、それでも2022年〜2024年に近いペースで買われていることがわかります。

<世界の公的機関の金準備高(2024年12月末時点)>

World Gold Council(ワールドゴールドカウンシル)のデータより作成

2024年12月末時点の各国の金保有量は、トップが米国で8133トン。日本は10位で846トンとなっています。今後も世界の不確実性が高い状態が続くならば、中央銀行が金を買う状態が続き、金価格が上昇していくものと考えられます。

金価格の推移を金価格の値動きに連動するETF(上場投資信託)の「SPDRゴールド・シェア」(GLD)、米国株価の推移を米国株価指数「S&P500」で確認してみましょう。次のグラフは、2007年1月3日時点を「100」として指数化したS&P500とGLDの推移をまとめたものです。

<S&P500とGLDの日次データ推移(2007年1月〜2025年8月18日)>

(株)Money&You作成

※2007年1月3日を100として指数化

金価格も、株式相場に大きなショックを与えるようなショックが起こると、一時的に下落していることがわかります。しかし、下がった後すぐに上昇に転じていることもわかります。この理由は、リスク回避のために投資家が、株などリスク資産を売って金(ゴールド)への投資を増やすからです。

赤丸で囲ったところが、「リーマンショック後」「コロナショック後」「トランプショック後」の動きです。

株式市場が下落している時期や伸び悩んでいる時期に、金価格は上昇する傾向にあることが見て取れます。

時間を味方につけた資産形成には「株」は欠かせませんが、暴落時への値下がり耐性を高めていくならば、「金(ゴールド)」をポートフォリオに組み込むことが一つの手であると言えるでしょう。上のグラフの灰色の線は、S&P500とGLDを50%ずつ組みいれた場合の値動きです。大きな値下がりのリスクを抑えながらも、資産を増やせていることがわかります。

トランプリスク下でも金(ゴールド)は堅調に推移

2025年1月20日、トランプ氏が大統領に返り咲くと、就任初日から「パリ協定からの離脱」「WHO(世界保健機関)からの脱退」「メキシコ湾をアメリカ湾に名称変更」などさまざまな大統領令に署名。バイデン前政権の政策を転換させ「米国第一主義」の姿勢を打ち出しました。

4月にはすべての国や地域に10%、さらに国や地域ごとに異なる税率の関税を上乗せする「相互関税」を打ち出し、各国との間で分断・対立が深まりました。日米間の相互関税は当初24%と発表されたものの、複数回の協議の末、15%に引き下げられました。ただ、引き下げられたとはいっても関税があがってしまうことには変わりありません。日本の基幹産業である自動車産業をはじめ、米国に製品を販売する輸出企業の業績に少なからず影響を与えるとみられます。

米トランプ大統領は、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエル・パレスチナの問題でも仲介役として存在感を示しています。2025年8月15日にアラスカで実施された米露首脳会談ではウクライナ侵攻の停戦の合意には至らなかったものの両国は成果をアピール。本稿執筆時点(2025年8月18日)にはまだその内容が明らかになっていないものの、今後再会談が行われる見通しも報じられています。

また、イスラエルを支持する米国に対しフランスや英国はパレスチナを国家として承認する動きを見せており、ガザ地区で続く衝突の行方も不透明です。

こうした不確実性を反映してか、近年金価格は上昇を続けています。

<S&P500とGLDの日次データ推移(2024年8月〜2025年8月18日)>

(株)Money&You作成

左の目盛がS&P500、右の目盛がGLDのものです。先ほどのグラフと違い、こちらは指数化していないことにご注意ください。

2024年8月といえば「令和のブラックマンデー」と呼ばれる大きな株価暴落があった月です。S&P500も大きく値下がりしてスタートしていますが、その後すぐに値を戻しています。米大統領戦でトランプ氏の勝利が伝えられた2024年11月以降もおおむね右肩上がりで、トランプ氏の米大統領就任後もしばらくは値上がりしていますが、2月以降に関税導入を発表するニュースによって株価が下落。4月の世界各国への相互関税導入の報道でさらに大きく下落しました。

この下落も長続きせず、本稿執筆時点の2025年8月15日には下落前の水準よりも値上がりしています。しかし、それは後からこのグラフを見ているからいえること。目の前で資産が減っているのを見たら、慌ててしまって売りたくなるかもしれません。

一方GLDが示す金価格はというと、そもそも2024年8月の「令和のブラックマンデー」にあっても、株価のようには下落していないことがわかります。トランプ大統領就任後もおおむね堅調ですね。相互関税の導入発表のときには多少値下がりしているようですが、S&P500のような大きな値下がりはみられません。

つまり、資産の一部を金(ゴールド)で保有していれば、資産の大きな目減りを防ぐことにつながるというわけです。

金投資の種類とメリット・デメリット

金(ゴールド)への投資方法は、大きく分けて5つあります。

<金(ゴールド)への投資方法とメリット・デメリット>

(株)Money&You作成

<それぞれの投資方法の購入価格水準、手数料>

(株)Money&You作成

(1)金地金(きんじがね)

もっともイメージしやすいのは、金地金(きんじがね)を購入する方法でしょう。いわゆる「金の延べ棒」を購入する方法です。金地金のサイズは、小さいもので5g、10gなど。大きなものになると500g、1kgのものもあります。

金投資のメリットは、なんといっても現物の金を手元に置いていつでも見られることです。美しい輝きをいつでも楽しむことができます。しかし、手元に置いておくと、紛失・盗難のリスクがあります。盗難防止のために一部銀行で行われている貸金庫サービスを利用すると手数料がかかるうえ「美しい輝きをいつでも楽しむ」はできなくなってしまいます。

また、金地金は売買手数料が高く、500グラム未満の場合は「バーチャージ」と呼ばれる手数料がかかるのもデメリット。バーチャージを嫌がって500グラム買おうにも、単純計算で875万円(1グラム1万7500円で計算)ですから、そう簡単には買えません。

(2)金貨

オーストラリアやカナダなど外国の政府が発行する金貨を購入する方法です。貴金属商、宝石商、商社、デパートなどで購入できます。一番小さな「10分の1オンス金貨」は3グラムほどなので、金地金より安く購入することができます。オーストラリアの「カンガルー金貨」にはカンガルーの刻印、カナダの「メイプルリーフ金貨」にはカエデの葉っぱの刻印があり、いつでも見て楽しめるのがメリットです。

しかし、紛失・盗難のリスクがある点、売買手数料がかかる点は金地金と変わりません。

(3)純金積立

純金積立は、毎月一定額ずつ金の現物に積立投資していく方法です。SBI証券・楽天証券・マネックス証券などのネット証券や、三菱マテリアル・田中貴金属などでスタートできます。純金積立は、ひとたび設定すれば、あとは自動引き落としにできるので手間もかかりません。積立で購入するので、一括投資と比べて高値掴みのリスクを軽減することもできます。

毎月一定額を積み立てることで、金の価格が高いときには少しだけ買い、逆に価格が安いときにはたくさん買います。これを長く続けていくことで、平均購入単価を下げる「ドルコスト平均法」の効果も得られます。

純金積立では買付時に手数料がかかりますが、金地金・金貨よりも安く済みます。

(4)金投資信託

金投資信託は、主に金価格への連動を目指して運用される投資信託です。保有中にコストはかかりますが、実物の金に投資するよりは手数料を抑えられます。また、たくさん利益が出た場合でも、税率20.315%の分離課税となります。新NISAを通じて投資をした場合は、利益に対する税金はかかりません。ネット証券では100円からでも積立投資ができるので始めやすいのがメリットです。

ただ、実際に金を買い付けているわけではないので、原則として実物の金には交換できません。

低コストファンドには、「SBI・iシェアーズ・ゴールドファンド(為替ヘッジなし)」[信託報酬:年0.1838%]や「ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし)」[信託報酬:年0.407%]があります。

(5)金ETF

金ETFは、主に金価格への連動を目指して運用される上場投資信託であり、証券会社で購入することができます。保有中にコストはかかりますが、実物の金に投資するよりは手数料を抑えられます。

金投資信託と同様、たくさん利益が出た場合でも、税率20.315%の分離課税となります。新NISAを通じて投資をした場合は、利益に対する税金はかかりません。

ETFには、東証ETFと海外ETF(外国ETF)があります。名前のとおり、東証ETFは東証に上場しているETFで、円で売買します。対する海外ETFは外国の証券取引所に上場しているETFで、売買は上場している国の通貨で行います。多くは米国の証券取引所に上場し、ドルで売買します。

上でも紹介したGLDこと「SPDRゴールド・シェア(1326/GLD)」は世界最大の金ETFとして知られているのですが、経費率は年0.4%です。より経費率の安い海外ETFに「SPDRゴールド・ミニ シェアーズ・トラスト(GLDM)」[経費率:年0.10%]があります。また、円ベースならば東証ETFの「iシェアーズ ゴールド ETF(314A)」[経費率:年0.22%]があります。

金投資の利益にかかる税金には注意

金投資の利益への課税方法には、「総合課税」と「分離課税」の2種類があります。

金地金、金貨、純金積立は総合課税であり、金投資信託、金ETFは分離課税です。

【総合課税】

給与所得など、種類の異なる所得を合計して税額を計算する方法
税率:所得税5%〜45%(所得により異なる)、住民税10%(所得税率に関わらず一律

【分離課税】

他の所得と合計せず、個別に税額を計算する方法
税率:一律20%(所得税15%、住民税5%)

※2037年までは復興特別所得税(0.315%)もかかる

総合課税の税率は、合計の所得によって5%〜45%の7段階に分かれます。仮に大きく利益が出た場合には、税金も高くなってしまう可能性があります。会社員や公務員といった個人が、金地金、金貨、純金積立で得た利益は「譲渡所得」として計算します。譲渡所得は、所有期間が5年超か5年以内かで税金の取り扱いが変わります。

⚫︎譲渡所得
短期譲渡(所有期間5年以内)の課税所得:
売却価格 −(取得費 + 売却費用)− 特別控除50万円
長期譲渡(所有期間5年超)の課税所得
{売却価格 −(取得費 + 売却費用)− 特別控除50万円} × 1/2

金地金、金貨、純金積立など実物の金(ゴールド)を購入し、5年経ってから売却した場合は「長期譲渡」となり税金が優遇されます。

金投資信託、金ETFの場合は、利益に対して一律で20.315%の税金を支払います。また、株などの利益や損失と相殺して税金の負担を減らす「損益通算」もできます。

新NISAで投資すれば利益にかかる税金はゼロになります。ただし、新NISAを通じた投資の場合、損失があったとしても損益通算はできません。

おすすめの金(ゴールド)投資方法は?

以上を踏まえると、おすすめの金(ゴールド)投資は「純金積立」「金投資信託」「金ETF」です。いずれも、金地金や金貨よりも少額から投資できます。積み立てで購入することでドル・コスト平均法の効果を活かして、元本割れリスクを抑えることができます。

金投資信託と金ETFは、他の方法と比べて手数料が割安です。利益にかかる税率が一律20.315%であり、株などの損益と通算できるのもメリットです。新NISAを活用すれば税金がゼロにできるのもうれしいところです。

金投資には「配当」や「分配金」といったインカムゲインがありませんが、市場が暴落を幾度となく経験したり、トランプリスクにさらされたりしても急落することなく堅調に右肩上がりで成長しているのは事実です。資産の一部を金(ゴールド)にしておくことで、今後の荒波を乗り越えて資産を増やす期待ができるでしょう。

頼藤 太希(よりふじ・たいき)
マネーコンサルタント

(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に創業し現職。日テレ「カズレーザーと学ぶ。」、TBS「情報7daysニュースキャスター」などテレビ・ラジオ出演多数。主な著書に『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など、著書累計180万部。YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。日本年金学会会員。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)

X(旧Twitter)→ @yorifujitaiki

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