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円安が不動産投資に与えるメリットは?【プロが教える不動産投資コラム】

円安が連日大きくマスコミ等で報道されています。10月20日には節目となる1ドル=150円を突破し32年ぶりの円安となりました。上場企業の2023年3月期の業績見通しでは3社に1社が上方修正するなど為替の動きは日本経済に非常に大きな影響を与えます。

円安がもたらす経済・不動産投資に対する影響を見てみましょう。

日々相場が変わる変動相場制とは

現在ドルと円の相場は「変動相場制」となっています。このため円とドルの為替レートは日々変動する事になります。かつて戦後は1ドル=360円の「固定相場制」となっていました。現在1ドル=150円としても倍以上も円安であった事が分かります。その後1ドル=360円から308円となりますが、それでも現在と比較しても大変な円安の時代が続きました。

そのため当時は外国からの輸入物は非常に高価で希少性も高いものでした。輸入の雑貨や香水、ウイスキー、車なども今の何倍もする高級品でした。輸入品にはさらに関税もかかり高価であり「舶来物」とも言われ「贅沢品」という感覚もありました。筆者の若い頃は、会社員の間でも舶来のウイスキーは出世してから飲むという雰囲気もあった時代です。

また、海外旅行も今と比べても「高嶺の花」でした。1964年から始まった日本航空のJALパックのハワイ旅行などは当時の初任給の20倍近くしたそうで、国民の憧れとなっていた時代です。

その後は1973年から「変動相場制」に移行します。

高度経済成長には円高に移行

変動相場制に移行した頃、日本は高度経済成長の時期にあり、日本の国力の上昇もあり円はドルに対して上昇していきました。しかし1ドル=200円台前後であり、現在の水準から見るとまだまだ円安であったと言えます。

その後は円高や円安を何度か繰り返し、1982年には円安ドル高が進み、それを回避するため、の1985年に「プラザ合意」が行われました。

プラザ合意の後は急激な円高となり、輸出企業の不振による景気低迷を払拭するための低金利政策も実施されました。

こうした低金利による余剰資金は、株や不動産などに流入し「バブル経済」への温床となりました。バブル崩壊後も円高は続き1995年には1ドル79円台という水準になりました。

こうした円高で海外旅行に行く人も増え、また輸入ブランド品なども買いやすくなりました。余談ですが、この頃は輸入の海老が安くなったので「円高エビ安」とエビフライを安く出している定食屋さんも見かけました。ガソリンもリッター80円台位で今の半額位だったと記憶しています。

その後、不良債権問題などの経済不安の時期に1998年には1ドル=144円の円安となりました。それ以降も為替の変動が続き、2012年には円高に、2015年には円安と変わりました。

当時の日本は金融緩和政策を取っており、米国は金利引き上げ傾向にありましたのでこうした金融政策の違いも円安の要因とも考えられます。

円安が企業経済に与える影響

現在の急激な円安は、こうした日米の金利差も様々な要因の内の一つと考えられ、日本は海外とのビジネスの関係が深く、円安などの為替の変動は企業の収益などにも大きな影響を与えます。

しかし、円安によるメリットも多くあります。輸出企業にとっては米国などで商品を売りやすくなり、また海外で得た収益を日本円に代える際に収益が大きくなります。トヨタを始め輸出の多い企業は1円円安になると何億円も収益が増加すると言われています。

また日本の物が安く買えるので車だけではく、ウイスキーや日本酒など国産酒の輸出も好調のようです。

デメリットとしては、内需企業にとっては輸入による原材料の値上がりにより収益が減少する影響が出ています。国内の飲食店チェーン店などでも値上げのニュースをよく目にします。

特にエネルギー関連の値上がりが多く、電気・ガス・ガソリンなどの価格上昇は企業だけでなく家計にとっても痛手となります。

つまり企業にとっては円安のメリットとデメリットが両方ある訳です。

物価への影響と貿易赤字

バブル経済崩壊以来、日本は長くデフレの時代を迎えていましたが、近年は物価上昇傾向にあり2022年9月の消費者物価は3%を超えました。円安による輸入物価の上昇はこうしたインフレの要因ともなっています。

新型コロナに加えてウクライナ情勢など世界的なインフレ傾向にある中、日本はさらに円安が加わってインフレが進行していると言えます。

円安で輸入価格が高騰し貿易赤字も増加しています。2022年4~9月の貿易赤字は11兆75億円となり比較可能な昭和54年以降で最大となりました。貿易赤字と財政赤字の二つの赤字が進行すればますます円安が進む可能性もあります。

企業の生産拠点が海外から国内へ回帰する可能性も

円安は生産拠点を海外に開設している企業にとっては、海外の人件費等のコストがかさみ、海外生産のメリットが少なくなってきています。

キャノンなどの企業は生産拠点を国内に移す予定である事を表明しています。

国内の生産拠点が増えればそれだけ就業人口が増加し、地域の経済の発展や土地需要から地価の上昇や住宅需要も増加にもつながります。

インバウンドの増加

円安により海外から日本への旅行がしやすくなり、また買い物もドル高により多くの買い物ができるようになります。

かつて東京の銀座や大阪のミナミなどにも多くの外国人訪日客が訪れて「爆買い」により地価が大きく上昇した事は記憶に新しいと思います。10月からは米国、韓国、台湾など68の国・地域からのビザなし入国が始まり海外からの旅行客が急増しています。

新型コロナが収束しても円安が続いているのなら、インバウンドの数はコロナ前の水準を上回る可能性もあります。

また、円安により海外から日本へ留学しやすくなり留学生の増加も期待されます。学生が増えればそれだけ単身者向け住宅の需要も増加する事になります。

建築費に与える影響

物価の上昇は建築費にも影響を与えます。近年世界的に木材が不足して「ウッドショック」が発生していましたが、アイアンショックと呼ばれる鋼材価格の上昇も発生しています。

日銀の発表した9月の企業物価指数によると、国内企業物価の内「鉄鋼」は2020年を100とする指数で149.7に上昇しています。

マンションなどにも鉄鋼の使われる部分も多く、さらにエネルギー価格も上昇しておりマンションの建築の上昇につながっています。

国内企業物価指数

指数(速報)
木材・木製品169.8
鉄鋼149.7
非鉄金属146.1
<日銀「企業物価指数(2022年9月速報)>

※指数は2020年平均=100

海外からの不動産投資が増加

円安では海外からの投資が多くなります。日本の不動産などがドルで安く買えるからです。こうした事から都心の不動産などへの投資も活発になり、取引が増加する可能性もあります。東京の不動産はNYやロンドンなどと比較しても割安感があると言われており、今後も価格上昇の余地もあると考えられます。

円安による建築費の上昇、海外投資による不動産需要などからマンション価格も高値圏で推移する可能性もあります。

金利との関係

インフレは続いていますが、依然として日本では金融緩和は継続されています。

低金利はマンション購入などの追い風となりマンションの需要も多く、価格も上昇してきています。しかし日銀の黒田総裁は金融緩和政策を持続する事を表明しており、アベノミク以降も続いている低金利は続く見通しです。低金利でマンションの購入可能層は広がり、マンションの需要も高い事から今後もマンション価格は高値圏が続く可能性があります。

但し、インフレにより金利上昇圧力も高まってきていますが、急激に大幅な金利上昇は考えづらいので金利が多少上昇したとしてもまだ低金利圏にあると言えます。

円安でも安定したワンルームマンション投資

このように円安は物価上昇などで生活に影響が出たり、国内企業にとっては輸入素材の上昇などの影響が出たりしていますが、マンション投資にとってはどのような影響が及ぶ事が考えられるのでしょうか。

まず、マンションの資産価値や賃料などが上昇する可能性があります。

過去にも円安や円高などは繰り返しており、こうした外的要因にも影響を受けづらい事も特長です。そして賃料は2年契約など長期に渡るので収益も安定していると言えます。

今後、円安・インフレが続いた場合、マンションの資産価値の上昇も期待できます。但しワンルームマンション投資は景気変動のみならず立地や再開発などの将来を加味して変動しますので、将来性の高い物件を選ぶ事が重要となってきます。

不動産投資は、円安やインフレが続き将来不安も多い中でも、将来のための安定した資産運用と言えるのではないでしょうか。

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