東京への人口集中が回復か?【プロが教える不動産投資コラム】
新型コロナの影響で、いわゆる「三密」を避けて東京都から周辺部への転出者が増えていましたが、2022年にはwhitコロナの生活スタイルが定着し始め東京都への転入超過数が大幅に増加しました。東京の人口集中の傾向が復活してきています。
こうした人口の動きと不動産投資の関係について検証してみたいと思います。
人口動向と不動産投資
不動産投資を行う上で、そのエリアの人口動向は非常に重要な意味を持ちます。その理由としては人が多く集まるエリアは将来性が高く、地価・不動産の資産価値も上昇する傾向にあり、反対に人口が減少していくエリアでは不動産の需要も減少していく傾向にあるからです。また住宅の資産価値の二極化も進んでおり、現在「空き家」住宅が増加しており約846万戸(※)となっておりさらに増加する事も予想されています。
日本の人口は減少傾向に向かいつつありますが、人口が減少すると人口は都市部に集中する傾向が見られます。都市部に集中した人口は長期的に見ると周辺に拡散したり都心に回帰したりと、後でも触れますが「寄せては返す波にように」行ったり来たりを繰り返す傾向にあります。
※国土交通省「平成30年 住宅・土地統計調査」
転入超過人口とは
人口の変動は出生や死亡などの要因(自然増減)と、移動による人口の変動(社会増減)があります。人口の移動を見た場合には、そのエリアに転入してきた人数と転出した人数との差が、転入した方が多い場合は「転入超過」となり、逆に転出者の方が多い場合は「転出超過」となります。
不動産投資のエリアを選定する場合においては、人口が減少している場合でも高齢化による死亡率の増加などの自然増減である場合と、転出者が増加している社会増減の場合のどちらかを見極める必要があります。
転入人口が多い場合は、それだけ住宅需要も増加し不動産投資の立地としても適していると言えます。さらに転入人口の「年齢層」も着目する必要もあります。
東京都の転入超過は大幅に増加
総務省の発表した「住民基本台帳人口移動報告2022年結果」によると、2022年1年間の東京都への転入者は43万9,787人で転出者は40万1,764人となり、3万8,023人の「転入超過」となりました。全都道府県の中で「東京都」の転入超過数が最も多い結果となりました。2021年には東京都への転入超過人口はわずか5,433人でしたので約7倍に増加している事が分かります。
東京都への転入者数はコロナ禍の中にあった2021年にも42万167人で約2万人増加していますが、東京都への転入者の数はある一定の水準を保っている事が分かります。
転出者の数を見ると2021年の約41万4,734千人から2022年は約40万1,764人で約1万3千人減少しています。転入者が増加し転出者が減少して「転入超過」数の増加につながっています。
東京都の転入超過人口
転入者 | 転出者 | 転入超過数 | |
---|---|---|---|
2022年 | 43万9,787人 | 40万1,764人 | 3万8,023人 |
2021年 | 42万167人 | 41万4,734人 | 5433人 |
市町村の中では東京都区部の転入超過が最も多い
市町村別に見て見ると東京都区部の転入者が38万4,643人、転出者が36万3,223人で2万1,420人の転入超過となっており、21大都市(東京都区部及び20政令指定都市)の中でも最も多くなっています。次にさいたま市(9,284人)、大阪市(9,103人)が続いています。東京都の転入超過人口の中でも都区部への転入が多い事が分かります。
市町村別転入超過ランキング
市町村 | 転入超過数 | |
---|---|---|
1位 | 東京都区部 | 21,420人 |
2位 | さいたま市 | 9,282人 |
3位 | 大阪市 | 9,103人 |
4位 | 札幌市 | 8,913人 |
5位 | 横浜市 | 8,426人 |
東京圏の転入超過人口は増加に
広域的に見てみると、東京圏(東京、千葉、埼玉、神奈川)では2022年の転入超過数は9万9,519人で2021年より1万7,820人増加しています。
名古屋圏や大阪圏と比較しても、三大都市圏の中では東京圏の人口集中が最も進んでいると言え、首都圏全体に全国から人口が流入している事が分かります。
首都圏は全体として大きな都市とも言え、世界的にも規模が大きな街を形成しており人口も多く世界的な経済圏を形成しています。
東京圏の転入超過人口
転入者 | 転出者 | 転入超過者 | |
---|---|---|---|
2022年 | 50万7341人 | 40万7822人 | 9万9519人 |
2021年 | 48万2743人 | 40万1044人 | 8万1699人 |
東京圏の人口移動を年齢階層別に見ると
東京圏への人口移動状況を年齢層別に見てみると、最も転入超過数の多いのは20~24歳で7万3,213人、次に25~29歳で2万5,357人、15~19歳が2万1,694人となっています。
また前年と比較すると、最も拡大しているのは25~29歳の7,610人増加で、次が20~24 歳の3,277人増加となっています。
このように若い世代の転入超過が多く数も拡大しています。これは就職や入学などで東京圏へ転入してくる方が多い事が要因であると考えられます。
新規に転入してくる方の住宅需要は多く、特に若い世代は単身者・単身世帯が多いので、都心への交通アクセスの良い良質な単身者用住宅の需要は今後も高い水準で推移すると考えられます。
今後も転入超過人口は増加するのか
遡って見てみると、過去には「東京一極集中」が問題となり1990年代には首都機能の移転もが国会などでも大きくとりざたされていました。大学などの都心からの移転も相次ぎ郊外に多くのキャンパスが開校した時期もありました。
しかし現在は都心回帰の傾向が強まっています。東京都への転入超過数は2007年には約9万4千人に達し2011年にかけて減少していきましたが再び増加し、その後新型コロナにより一時的に都心から離れる傾向もありましたが、2013年以降は7万人台となり、以降新型コロナ発生の前の2019年頃まで7~8万人台で推移し、コロナ発生前の2019年には8万人を超えていました。
東京都への転入者数も近年は40万人台を保っており、コロナ禍の2010年、2011年にも42~43万人台となっています。東京に企業や大学が集中しているので、それだけ毎年ある一定の数の方が東京に転入してきていると言えます。今後はさらに転出者が減少し転入者が増えれば「転入増加」人口も8万人台に向けて回復する可能性もあります。
転入超過人口の推移(5年間)
2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
---|---|---|---|---|---|
東京都 | 79,844人 | 82,982人 | 31,125人 | 5,433人 | 38,023人 |
東京圏 | 139,868人 | 148,783人 | 99,243人 | 81,699人 | 99,519人 |
今後も東京の人口集中が進む可能性も
2022年は人口の都心回帰の傾向が強くなりました。2023年5月には新型コロナの5類への移行も予定されていますので、東京への人口集中が今後さらに本格化する可能性もあります。
東京都への転入者が最も多いのは新年度の始まる前の3月です。最新の2023年1月は2,887人の転入超過と前年の491人から大幅増加となっています。新型コロナの規制緩和が進んでいますので2023年の3月はさらに転入人口が増える可能性もあります。
人が増えれば商業施設、オフィス、ホテルなどの需要が増加し商業地の地価が上昇したり、また住宅需要が大きく増加しワンルームマンションの賃貸需要も増加する可能性があります。
こうした転入超過加人口の増加は、東京都の不動産投資市場が大きく活性化する兆候と言えるのではないでしょうか。
さらに東京都は日本全国に占める上場企業並びに大手企業の割合が高く、4月の春闘・賃上げの恩恵を享受できる人口も極めて多いので、不動産購入及び賃貸需要においてもより市場が活性化する効果が期待できると考えられます。