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地価LOOKレポートから検証、最新東京都の地価動向と不動産投資【プロが教える不動産投資コラム】

地価は不動産投資や不動産の資産価値とも密接な関係があります。新型コロナが5類に移行し、街中には多くの人でにぎわい、日本全体の経済活動が活性化してきています。その様な流れで地価にも大きな変化が表れてきています。

2023年6月に国土交通省から「地価LOOKレポート」が発表されました。このレポートから東京都の最新地価動向を見ていきたいと思います。

地価LOOKレポートとは

地価の代表的な指標には1月1日時点の「公示地価」と7月1日時点の「基準地価」があります。

これとは別に国土交通省から、「地価LOOKレポート」として全国の「主要都市の高度利用地」の地価を4半期ごとに調査・発表しています。

調査地点は東京圏35地区、大阪圏19地区、名古屋圏8地区、地方都市18地区の合計80地区となっています。

公示地価や基準地価が1年間分の地価動向なのに対して、地価LOOKレポートは3ヵ月ごととなっていますので、より詳しい地価の動向を知る事ができます。

但し地価の上昇・下落などの動向が示されますが土地の価格は表示されません。つまり一つの方向性を示す指標と言えます。

地価の動向は景気とも密接な関係

地価動向は景気にも大きく左右されます。景気が上昇すれば住宅やオフィス、商業施設などの不動産の需要が増加して不動産価格や地価も上昇する傾向にあります。また再開発の進行しているエリアでは、その将来性から地価も上昇する傾向が見られます。

ただし、すべての地価が上昇する訳ではなく、地価LOOKレポートの調査地点のように「主要都市の高度利用地」は需要も多く地価も上昇しやすいと言えます。

逆に三大都市圏でも郊外や地方都市の中心部以外などは地価LOOKレポートには反映されていませんので、必要な場合は公示地価や基準地価から読み解く必要もあります。

全国の主要エリアの地価動向は

今回発表されたのは2023年第1四半期(1月1日から4月1日)の動向です。アベノミク発足以降、地価は上昇にありましたが、新型コロナの影響を受けて一時的に下落に転じたエリアが多くなりました。

過去の地価LOOKレポートから全国主要地点の地価を見ていると、コロナ発生前の2019年(令和元年)第4四半期には100地点中、上昇地点が計97、横ばいが3地点、下落地点はなしと地価は全国主要エリアで上昇傾向となっていました。

その後は地価下落が進み、2020年(令和2年)3四半期には上昇地点は1地区、横ばい54、下落45地区と地価は下落傾向となりました。

しかし、その後は徐々に回復が進み、上昇地区数も増加していきました。今回の2023年第1四半期では全80地区中、上昇73地区、横ばい7地区、下落地点はゼロとなりました。

福岡の大濠や京都市の京都駅周辺などで地価の上昇率が拡大しています。

地価の変動率区分(2023年第1四半期1/1~4/1)<全国>

区分上昇横ばい下落合計
地区数73地区7地区なし80地区
<国土交通省「主要都市の高度利用地地価動向報告~地価LOOKレポート~」>

東京圏の地価は上昇傾向に

東京圏でも新型コロナ発生まで地価上昇が続いていましたが、2020年(平成2年)ごろには地価下落地区が増加しましたが、その後は地価も回復傾向となっています。

2023年第1四半期では、全35地区中、上昇30地区、横ばい5地区、下落は0となり、3新半期連続で地価下落地区がゼロとなり地価の回復が進んでいる事が分かります。東京圏の主要エリアの地価上昇地点は前回の28地点から30地点へと増加しています。

地価の変動率区分(2023年第1四半期1/1~4/1)<東京圏>

区分上昇横ばい下落合計
地区数30地区5地区なし35地区
<国土交通省「主要都市の高度利用地地価動向報告~地価LOOKレポート~」>

東京都区部の地価動向は上昇地点が増加

東京都区部の地価はどう動いてきているでしょうか。

東京都の主要ターミナル駅周辺などでは再開発も進行しており、地価も上昇傾向にあります。また、企業の業績の上昇傾向となっており、不動産需要も増加しています。

東京都の調査地区は東京都区部が19地区あり、そのうち15地区が上昇となりました。

地価上昇地点数は上昇しており、前回調査(2022年10/1~2023年1/1)の上昇地区14地区から1地区増加しています。横ばいは4地区で前回5地区から減少、今回は江東区の商業エリアである「青海・お台場」エリアが横ばいから上昇へと移行しています。

上昇地点数は2022年第2四半期(4/1~7/1)の11地点から徐々に拡大しつつあります。

地価下落地点を見ると、今回の調査では下落地区はなく、2022年第2四半期(4/1~7/1)には「港区六本木」で地価「下落」となっていましたが、次回以降には「横ばい」となり、東京都では3半期連続で地価下落はゼロとなりました。

地価の変動率区分(2023年第1四半期1/1~4/1)<東京都区部>

区分上昇横ばい下落合計
地区数15地区4地区なし19地区
<国土交通省「主要都市の高度利用地地価動向報告~地価LOOKレポート~」>

東京区部・地価上昇地区数の推移

2022年
第2四半期
4/1~7/1
2022年
第3四半期
7/1~10/1
2022年
第4四半期
10/1~1/1
2023年
第1四半期
1/1~4/1
上昇地点数11地区12地区14地区15地区
<国土交通省「主要都市の高度利用地地価動向報告~地価LOOKレポート~」>

東京都の住宅地では「千代田区番町」や「港区南青山」、「世田谷区二子多摩川」などの高級住宅地の地価が上昇となっています。

商業地では「中央区銀座」や「八重洲、新宿・渋谷・池袋・表参道」を始め湾岸エリアや「中野」など多くの地区で地価が上昇となっています。

東京都の地価変動区分(2023年第1四半期1/1~4/1)

区分地区
上昇(住宅)千代田区
中央区
港区
世田谷区
番町
佃・月島
南青山
二子玉川
上昇(商業)中央区
中央区
港区
新宿区
新宿区
渋谷区
渋谷区
豊島区
台東区
江東区
中野区
銀座中央
八重洲
虎ノ門
新宿三丁目
歌舞伎町
渋谷
表参道
池袋東口
上野
青海・台場
中野駅周辺
横ばい(商業)千代田区
千代田区
港区 
港区
丸の内
有楽町・日比谷
六本木
品川駅東口周辺

東京都区部の「横ばい」地点は

東京都区部の地価は19地区中、15地区が上昇となり、残りの4地区は横ばいとなりました。この「横ばい」のエリアを見てみると全て商業エリアとなっており、住宅地の調査地区は全て上昇となりました。

横ばい地区は下記となっています。

  • 「千代田区丸の内」
  • 「千代田区有楽町・日比谷」
  • 「港区六本木」
  • 「港区品川駅東口周辺」

「丸ノ内」や「有楽町・日比谷」など東京駅周辺は代表するビジネス・商業エリアとなっています。多くの企業や金融機関なども集積しています。

「六本木」は大規模オフィスビルなどの建ち並ぶエリアです。インバウンドも増加してきており、また周辺では再開発も進行している事から、地価上昇へ移行する時期も近いのではないでしょうか。

JR山手線の「品川駅東口周辺」はリニア中央新幹線の開業や高輪ゲートウェイ駅周辺の再開発などにも期待されるエリアです。

いずれのエリアも元々ポテンシャルが高く、地価は近い将来上昇に転じる可能性も高いと考えられます。

主要エリアの地価上昇が不動産投資に与える影響は

地価上昇はそのエリアの発展のバロメーターとも言えます。こうした東京都心部の地価が上昇に転じるという事は、就業人口の増加やオフィス需要、商業施設や店舗需要などが発生していると考えられます。

インバウンドも増加傾向にあり、コロナ5類移行後は人出も増加傾向にあります。

さらに東京都では潜在的な消費需要も蓄積しており、今後再開発が多く進行している事や、株価の上昇、設備投資の増加もあり、今後も地価は上昇する可能性があります。

東京都心へは多くの路線が周辺部から乗り入れているので、都心部の発展によりこうした沿線上の住宅需要が増加する可能性も高くなっています。また東京駅など山手線東側にアクセスしやすい東京東部・北部なども含めて住宅需要が周辺に波及する可能性があります。

東京都へは若い世代の単身者の流入も増加しています。都心部の発展は周辺の住宅需要の増加の要因ともなりますので、都心にアクセスしやすい良質な単身者需要は今後も増加すると考えられるのではないでしょうか。

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