2023年の東京都心部再開発を振り返る【プロが教える不動産投資コラム】
2023年もあっという間に年末を迎えつつあります。今年は政治・経済・スポーツ等多くの出来事がありました。
今回のコラムでは改めて東京の再開発の軌跡をたどりながら今後の不動産投資の魅力についても述べて見たいと思います。
東京都の再開発面積は全国屈指
全国の都市再生緊急整備地域は52地域9,539haありますが、このうち東京都には8地域(神奈川県にまたがる地域を含む)、3,284haと多くを占めています。
面積的には東京都の都市再生緊急整備地域は全国の約34%を占めています。つまり47分の1の東京都に全国の3分の1が集中しており、東京の将来性が極めて高い事が分かります。
東京都では多くの再開発が進んでいます。東京都のホームページによると東京都の「市街地再開発」事業地区284地区のうち完了213地区、事業中54地区、予定17地区となっています。この背景には人口や企業が多く集積しているエリアにおける再開発は経済効果が極めて高い事が期待されるからです。
こうした中から2023年に完成した都心の大型プロジェクトについて見てみましょう。
麻布台ヒルズ
東京都港区の「麻布台ヒルズ」は南北線「六本木」駅と「神谷町」駅が最寄りとなるエリアです。都心の真ん中に8.1haの広大な再開発が行われ2023年11月に完成、「麻布台ヒルズ森JPタワー」を中心にオフィスビルやレジデンスが建設されました。
2012年に竣工した「アークヒルズ仙石山」や1986年に竣工した「アークヒルズ」にも隣接した立地です。アークヒルズは都心部では例を見ない大規模再開発でしたが、当時は南北線が開業する前で、「陸の孤島」などとも揶揄されていました。その後2000年には南北線「六本木一丁目」駅が開業しています。
さらに周辺は「住友不動産六本木グランドタワー」「泉ガーデンタワー」などの高層オフィスビルも建設されています。周辺地域を含めて大規模なオフィス街が形成されていますが、空地や緑地なども多く整備されており、良好な街並みが形成されてきていると言えます。
六本木は昔お屋敷町であり、大使館などが多い事もその名残となっています。アークヒルズ建設当時は再開発による周辺不動産の資産価値上昇という概念は浸透しておらず、地権者の方の多くは地区外に移転してしまったそうです。
地価の変動も激しく、例えば六本木駅前の地価はバブル時の1991年(平成3年)には1㎡当たり2,720万円でしたが、バブル崩壊後には一時420万円まで下落、現在はまた大きく上昇し973万円になっています。
今後はオフィスビルの建設から企業の集積が進めば、周辺の地価も上昇が続く可能性があると共に、住宅需要は沿線に波及していく事も予想されます。
渋谷サクラステージ
「渋谷」駅周辺では「100年に一度」と言われる大規模再開発が進行しており、「渋谷サクラステージ」が2023年11月に竣工しました。
「渋谷」駅を中心に「渋谷ヒカリエ(2012年)」「渋谷ストリーム(2018年)」「渋谷スクランブルスクエア(2019年)」「渋谷フクラス(2019年)」などが次々に開業しています。
こうしたビルの開業により歩行者の動線も新しくなり、「渋谷」駅の東西を結ぶ連絡通路として「(仮称)北自由通路・南通路」などが12月1日に開通しました。駅周辺は国道246号や鉄道の線路などで街が分断していましたが、回遊性が向上しビル間や駅までのアクセスも向上します。
開発デベロッパーである東急株式会社は渋谷駅の周辺2.5キロの回遊性を高める事を表明しており、「代官山・恵比寿・中目黒」や「原宿・表参道・青山」などを始め巨大なビジネス・商業ゾーンが形成される事も予想されます。
「渋谷」駅にはJR山手線や湘南新宿ラインなどの他、東急や京王、東京メトロなど多くの路線が乗り入れており、住宅需要が広域なエリアに拡大する可能性もあります。
虎ノ門ヒルズ ステーションタワー
再開発の進む虎ノ門では「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」が2023年7月に竣工しました。東京メトロ日比谷線「虎ノ門ヒルズ」駅から2020年6月に開業しました。駅周辺は「虎ノ門ヒルズ森タワー(2014年)」「虎ノ門ヒルズビジネスタワー(2020年)」「虎ノ門ヒルズレジデンシャルタワー(2022年)」などの高層ビルの建ち並ぶエリアとなっています。
東京メトロ銀座線「虎ノ門」駅も利用できます。銀座線「虎ノ門」駅は昭和13年に開業した歴史の古い駅で、周辺はビジネス街が広がっています。
「虎ノ門」は江戸城の外堀にあった城門が地名の由来で、その門は明治6年まであったそうです。江戸時代にかけては武家屋敷が建ち並んでいましたが現在では高層ビルの建ち並ぶビジネス街となっています。霞が関などの官庁街や六本木・麻布台など再開発の進むエリアなども近く、港区の就業人口も増加するのではないでしょうか。
東京ミッドタウン八重洲
「東京」駅東側の八重洲ではJR「東京」駅と直結する「東京ミッドタウン八重洲」が2023年3月に開業しました。オフィスや商業施設、「ブルガリホテル東京」「バスターミナル東京八重洲」や小学校も入る複合高層ビルです。
「東京」駅西側の「丸の内」や「大手町」は古くからオフィス街として発展してきた経緯があり多くの企業や金融機関などが集まるエリアです。反対側の八重洲も近年では大規模な再開発が進んでいます。東京駅のホームから八重洲側には高層ビルが建ち並ぶ光景を見る事ができます。今後も東京駅周辺の再開発が進行していますので、街が大きく変貌しつつあります。
「東京」駅周辺は極めて就業人口の多いエリアであり、また「東京」駅は多くの路線が利用できる事、さらに東京東側からもアクセスしやすい事などから、極めて広域的に住宅需要も広がる可能性もあります。
羽田イノベーションシティ
東京の都心型の空港である「羽田空港」はインバウンドの入り口でもあり利用者が日本一多い空港です。「羽田イノベーションシティ」は「羽田空港」に近い「天空橋」駅直結の施設で2023年11月にグランドオープンしました。
新型コロナの影響で減少したインバウンド(訪日外国人)数は増加傾向にあり、2023年10月にはコロナ前の2019年の同月を超え、1~10月の累計では約1,989万人と2019年の2,691万人に近づいてきています。筆者のオフィスのある中野でも外国人観光客を多く見かけますので、インバウンドが回復してきている事が実感できます。
今後インバウンドがさらに増加すれば、羽田周辺などの商業施設やホテル需要も増加、また空港関連などの就業人口の増加による周辺の住宅需要も増加する可能性もあります。
不動産投資への影響は
不動産投資をする上で「再開発」は大切なキーワードとなります。建物自体は経年変化により劣化していきますが、街の魅力・資産価値は再開発により向上する場合が多いからです。
例えば築年数の古い建物が多いエリアに、街の開発により最新の構造・環境対応型などハイスペックで堅固な自然災害に強い建物の建設が進めば、多くの就業人口や居住人口が流入し、その街のポテンシャルを底上げする事につながります。
ここで注意したい事は再開発エリアのど真ん中に投資する必要はなく、そのようなエリアにアクセスしやすい通勤ルートを有する立地、例えば再開発エリアまでドアToドアで30分から40分などの立地などが挙げられます。
再開発の経済的・不動産的価値が健在化するまでには一定の時間を要しますので、2023年の再開発エリアの周辺や沿線は来年以降の街の魅力・資産価値・人気の上昇がさらに期待できると考えます。