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最新データから見る!賃貸入居者の動向は

最新データから見る!賃貸入居者の動向は【プロが教える不動産投資コラム】

不動産投資を成功させるには賃貸入居者動向の把握も大切になってきます。今回は国土交通省から5月19日に発表された令和4年度の「住宅市場動向調査」から最新の賃貸入居者の動向について検証してみたいと思います。

賃貸住宅の選択理由は?

賃貸入居者の方の選択理由は様々です。毎月の生活費はとても重要ですので当然の事ながら家賃の適切性があげられます。

住宅は何と言っても立地が重要で駅周辺の生活利便施設、例えば駅前が明るく多くの商業施設があり単身者の方から見れば遅くまでやっているスーパー・クリーニング店、また公共施設・医療機関、金融機関などがある事なども重要なポイントとなります。

また、毎日の通勤から見ると交通の利便性も重要で、都心から何分、駅から何分という指標も重要となります。

建物の外観、一定の面積、現代に相応しい通信機能等が備わった最新のスペックなどがある住宅も選ばれています。

住宅の選択理由(複数回答)

  • 家賃が適切だったから
  • 住宅の立地環境が良かったから
  • 住宅のデザイン・広さ・設備等が良かったから
  • 交通の利便性が良かったから
  • 職場から近かったから

<国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」より作成>

家賃動向は、高額賃料も増加傾向

家賃動向を見ると非常に幅広い傾向となっています。

首都圏では10万円以上の家賃の方も多くなっています。東京では新築ワンルームマンションの家賃もおおよそ10万円前後、都心三区では15万円以上、タワーマンションなどの広い部屋では200万円以上の賃料も決して珍しくはありません。

つまり賃料は都心に近づく程、また駅に近づく程高くなる傾向があります。

月額家賃

三大都市圏首都圏
2.5万円未満3.0%1.9%
2.5万円 ~ 5万円未満14.3%11.7%
5万円 ~ 7.5万円未満36.7%35.0%
7.5万円 ~ 10万円未満23.4%23.0%
10万円以上22.5%28.4%
<国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」より作成>

10万円以上の高額の賃料の割合推移を見ると、三大都市圏では2018年度の18.8%から2022年度は22.5%に増加しています。

首都圏では2018年度には25.3%と割合も三大都市圏よりも高く、2019年度から2021年度にかけては若干減少するものの2022年には28.4%と増加しています。

新型コロナの収束を見せ始め、景気回復期待と共に賃料も回復してきていると予想されます。

月額家賃10万円以上の推移

2018年度2019年度2020年度2021年度2022年度
三大都市圏18.8%17.3%19.1%18.5%22.5%
首都圏25.3%23.9%24.3%24.3%28.4%
<国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」より作成>

職業は会社員等が多い

世帯主の職業を見ると、三大都市圏、首都圏共に「会社員・団体職員」が最も多く半数前後をしめています。つまりサラリーマンの方が多い事から給与水準の動向が賃料などにも影響すると考えられます。

2023年春以降には岸田政権における給与水準の引き上げの推進の効果は徐々に現れてきており、経団連が発表した大企業の春闘の結果によると定昇とベアを合わせた賃上げ率は3.91%と30年ぶりの高水準となっています。

また大企業以外にも給与引き上げは徐々にですが波及してきています。こうした事から賃料の支払可能金額も拡大し、今後はさらに賃料水準も上昇する可能もあります。

世帯主の職業

三大都市圏首都圏
会社員・団体職員48.6%52.6%
会社・団体役員17.4%14.7%
自営業8.9%10.1%
派遣社員・短期社員5.7%6.1%
公務員4.5%3.4%
<国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」より作成>

賃貸入居者の属性は、若い世代が多い

賃貸入居者の世帯主の年齢層を見ると、三大都市圏では30歳未満が30.7%、30歳代が26.4%と多くなっています。

首都圏では30歳代が最も多く29.4%、次いで30歳未満が26.3%となっています。いずれも30歳未満と30歳代を合わせると55%を超えますので、若い方の入居者が多い事が分かります。

世帯主の年齢

30歳未満30歳代40歳代50歳代60歳以上
三大都市圏30.7%26.4%17.4%11.8%12.5%
首都圏26.3%29.4%17.7%14.1%12.2%
<国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」より作成>

入居人数を見ると、三大都市圏では1人が最も多く38.5%、次に2人が31.6%、3人が18.1%と単身世帯の割合が多くなっています。

首都圏ではさらに1人世帯の割合が多く41.9%となっています。

このように単身世帯の単身住宅の需要が多く事からワンルームマンションの賃貸需要も高い事が分かります。

また、東京都区部は、人口も転入超過となっており、新たに就職などで転入して来る方が多いので、20代の割合がより高いと考えられます。

入居人数

1人2人3人4人5人6人
三大都市圏38.5%31.6%18.1%7.5%2.6%0.3%
首都圏41.9%30.6%15.9%7.3%2.4%
<国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」より作成>

交通利便性について

通勤時間について三大都市圏では住み替え後の通勤時間は2022年に33.4分、2021年度33.2分、2022年は31.1分と徐々に短くなってきています。

2022年では、住み替え前の38.5分から住み替え御は31.1分と約7分の短縮となっています。2021年は6.5分短縮、2020年度は5分短縮となっており、より通勤時間が短くなってきている事が分かります。

通勤時間について<三大都市圏>

2020年度2021年度2022年度
住み替え後の通勤時間33.4分33.2分31.1分
住み替え前の通勤時間38.4分39.7分38.5分
<国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」より作成>

首都圏では住み替え後の通勤時間は2020年度で36.2分でしたが2021年には新型コロナの影響もあると考えられますが37.3分と時間が増えています。その後2021年には33.5分と大きく縮小しています。

これは新型コロナの影響も薄れてきて、テレワークから出社に勤務形態がシフトしてきている事も要因である可能性があります。

また住み替えによる通勤時間の短縮は2022年度には4.7分、2021年度には5.8分、2022年度には10.6分となっており、2022年には住み替えにより通勤時間が10分以上短縮されている事が分かります。

より通勤時間が短く、オフィスのある都心部に近い交通利便性の高い住まいの需要が高まってきているようです。

通勤時間について<首都圏>

2020年度2021年度2022年度
住み替え後の通勤時間36.2分37.3分33.5分
住み替え前の通勤時間40.9分43.1分44.1分
<国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」より作成>

最寄り駅までの距離は

最寄りの公共機関までの距離を見ると、三大都市圏では2020年度と2021年度は1,100mから2022年度は1,200mと若干距離が離れています。

また、住み替えによる距離の短縮は2020年度が400m、2021年度と2022年度は200mと住み替えにより駅に近づいていますが、その距離は2022年度と比べると若干縮小しています。

最寄りの公共機関までの距離<三大都市圏>

2020年度2021年度2022年度
住み替え後の通勤時間1,100m1,100m1,200m
住み替え前の通勤時間1,500m1,300m1,400m
<国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」より作成>

首都圏では住み替え後の駅までの距離は2020年度の1,200m、2021年度は1,100m、2022年度は1,000mと近くなってきている傾向にあります。また住み替えによる距離の短縮は2020年度300m、2021年度300mから2022年度は500mも駅に近づいている事が分かります。

首都圏ではより駅に近い立地が求められているようです。

この立地は賃貸入居者全体から見たデータですので、平均では1,000m以上と若干距離がありますが、東京などで若い世代が住むワンルームマンションはその多くが800メートル以内、つまり徒歩10分以内となっています。

近年の地価上昇傾向から駅10分圏内の、特に商業地の土地は極めて希少性が高まっていると考えられます。

また、新築のワンルームマンションは首都圏の年間供給戸数がおおよそ2021年で約6,000戸と全国の貸家住宅着工件数34万戸の中でも圧倒的な希少性となっています。

最寄りの公共機関までの距離<首都圏>

2020年度2021年度2022年度
住み替え後の通勤時間1,200m1,100m1,000m
住み替え前の通勤時間1,500m1,400m1,500m
<国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」より作成>

まとめ

賃貸入居者の動向を「住宅市場動向調査」から見てみましたが、ここでポイントをまとめて見ると下記などが分かります。

  1. 入居者は「家賃」を重視している。但し高額賃料の方が増加している。
  2. 年齢層は30代までの層、入居人数は単身世帯が最も多い。
  3. 通勤時間や駅からの距離は短縮傾向にあり交通利便性が重要視されている。

新型コロナも収束を見せてきており、テレワークも減少傾向となっている事や、都心部の再開発が進行し企業が都心部に集積してきている事などもあり、今後は多少賃料が上がっても都心部などへの交通利便性が高い住宅の需要が高まるのではないかと考えます。

但しこれは全ての賃貸入居者が対象ではなく、あくまでも「住み替え」を行った方の動向です。つまり今後住み替えを考えている方についても同様の傾向が見られると考えられますので、今後の賃貸入居者の需要を見る上でも有効な指標となると思われます。

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