1. HOME
  2. プロが教える不動産投資
  3. 2023年の経済・不動産市場動向を振り返って【プロが教える不動産投資コラム】

2023年の経済・不動産市場動向を振り返って【プロが教える不動産投資コラム】

2023年もあっという間に1年を振り返る季節となりました。世界を見渡してみるとウクライナ・ロシア紛争が続き、さらにイスラエル・ハマス紛争が発生した年でもありました。一日も早い平和の訪れを望んでいる方も多いのではないでしょうか。

また国内では野球の世界では大谷選手のホームラン王・MVPという快挙が日本人にとっても大きな喜びとなりました。政局においては迷走状態が続いていますが、経済動向においては新たな成長軌道に乗り始める第一歩を踏み出した年でもありました。

不動産・マンション業界はどのように変わってきたのか、改めて今年の出来事を振り返ってみたいと思います。

インフレが進行

2023年は電気代や燃料費などを筆頭にあらゆる消費財・サービス価格上昇が続き「インフレ」の年となりました。家庭の光熱費が数万円アップして驚かれた方も多くいらっしゃるかと思います。Z世代の方々には「インフレ」というのはまさに未体験ゾーンの世界と思いますが2023年がまさにそれに当たる年だった訳です。

総務省が発表した「2020年基準 消費者物価指数」によると全国の消費者物価指数(生鮮食費を除く総合)は2023年1月には前年比4.2%と大きく上昇し、その後はこの原稿を執筆している時点では10月分までが発表されていますが、10月は2.9%と26ヵ月連続で上昇となりました。

こうした物価高の中で「将来に対する備え」に対する関心も高まってきた年と言えます。

日銀が表明した「物価安定の目標」として消費者物価の前年上昇率2%と定めていますが、2023年は全て2%を超えましたので、今後の金利の行方にも注目が集まっています。

◼︎消費者物価指数の推移(生鮮食費を除く総合)全国

2023年1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月
前年同月比4.2%3.1%3.1%3.4%3.2%3.3%3.1%3.1%2.8%2.9%
<総務省「2020年基準 消費者物価指数」>

コストプッシュ・インフレと賃金の動きは

こうしたインフレの要因として、輸入物価などの値上がりによる価格の上昇という「コストプッシュ・インフレ」となっている事が挙げられます。これに対して需要の増加による物価上昇は「ディマンドプル・インフレ」と呼ばれます。今後安定したデフレ脱却・経済成長につながるには「賃金」の動きも重要となってきています。

現在は物価上昇に対して賃金の上昇が追い付いていない状況です。日本では賃金が長い間据え置かれている事にも注目が集まりました。岸田政権は年頭に賃金上昇の要請を表明しており、大企業などを中心に徐々に浸透してきていますが、まだ十分とは言えない状況です。

厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)によると、2023年10月の実質賃金は前年比2.3%のマイナスとなりました。物価上昇に賃金の上昇が追い付いていないため、実質賃金は減少するという傾向が続きました。

◼︎実質賃金指数<前年同月比>の推移

2023年1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月
前年同月比-4.1%-2.9%-2.3%-3.2%-0.9%-1.6%-2.7%-2.8%-2.9%-2.3%
<厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和5年10月分結果速報」>

長期金利市場に動きあり

金利は依然として「史上最低水準」が続いています。日銀は金融緩和政策によりデフレ脱却を目指す方針は継続しています。これは多くの投資資金が日本に流入したりマンションの好調な売れ行きの要因ともなっています。

またローン借入れをする上でも低金利により金利が少なくなるなどのメリットがあり、不動産投資をする上で有利な状況が続きました。

しかし2023年は長期金利がやや上昇傾向となりました。日銀では政策金利の上昇を容認する動きとなり、2023年7月には1%まで、さらに10月には1%を超える事を承認しています。

ただし、不動産投資ローンなどに利用される変動型ローンは短期金利に連動しますので、長期金利の上昇は不動産投資にはそれほど影響がなかったと言えます。

米国では高いインフレ率が続き金利も上昇していましたが、ここにきて金利は落ち着きを見せFRBでは最近続いた金利の引き上げを据え置きとする決定をしています。

円安と輸入物価

日米の金利差もあり2023年は円安が進行しました。2023年11月には一時1ドル150円台まで円安が進み輸入物価の上昇の要因ともなっています。

日本銀行が発表した企業物価指数(2023年11月速報)によると、2023年11月の輸入物価指数は2020年を100とする指数で136.9と今年の最高値となりました。こうした輸入物価の上昇で企業物価も上昇しています。但し円安によって輸出企業などは収益が増加しているケースもあります。

◼︎企業物価指数・輸入物価指数の推移(2020年=100)

1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月
企業物価指数119.9119.6119.7120.1119.3119.2119.5119.8119.6119.3119.5
輸入物価指数123.9125.8126.7126.9129.0130.8130.8133.3135.8136.6136.9
<日本銀行「企業物価指数(2023年11月速報)」>

投資用マンション価格の上昇は緩やか

2023年は東京都都心部のファミリーマンションの価格が大きく上昇した事も特長です。不動産経済研究所の調べによると、東京23区の新規発売マンション価格は2023年1~6月平均では初の1億円超えとなりました。建築費や人件費の上昇、また都心部で高額物件が発売された事なども要因となっています。

都内では新築ファミリーマンションが1億円の時代となってきています。大谷選手の契約金1,000億円と比べれば安いですが、一般の方にとっては高嶺の花となってきつつあります。

一方、投資用マンションの価格は収益還元法に基づいて決められる傾向にあり、このインフレの中でも賃料の上昇はなだらかで、結果価格上昇においてもファミリーマンションと比べて緩やかな動きとなっています。

◼︎東京都区部マンション価格の推移

1~6月平均7月8月9月10月
価格1億2,962万円1億3,340万円8,597万円8,915万円8,709万円
<不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向」>

建築費は上昇傾向が続く

建築費は上昇が続いている事により大阪万博の建設費も大きく上昇し、当初計画の1,250億円から2,000億円台へと8割上昇する見込みである事も報道されています。

マンションの建設費も上昇傾向にあり、国土交通省の発表した「建設工事デフレーター」によるとマンションなどの鉄筋コンクリート造の住宅の建設費は2015年を100とする指数で2023年9月には123.1に上昇しています。

建築費上昇は円安や物価上昇による原料費の上昇や、人件費の上昇など様々な要因が考えられます。

◼︎建設費指数の推移<鉄筋(RC)>2025年=100

2023年1月2月3月4月5月6月7月8月9月
指数122.1121.9124.1123.1124.1125.9124.5124.8123.1
<国土交通省「建設工事費デフレーター(2015年度基準)」>

地価上昇にはずみ

またマンション価格の上昇の要因として地価の上昇も挙げられます。

東京都の地価は2019年頃まで都心部などを中心に高い地価の上昇が続いていましたが、新型コロナの影響により一転して下落、その後2022年頃には上昇に転じ2023年には上昇率も拡大しています。

インバウンドの回復により地価が停滞していた例えば浅草などの観光地の地価が大きく上昇ました。また東京都心部を始め多くの大規模再開発プロジェクトが完成し東京のポテンシャルも大きく上昇しています。

2023年7月1日時点の基準地価では東京都区部商業地の地価は平均で5%以上の上昇となり、東京の地価が広域的に回復基調にある事が分かります。

◼︎公示地価 地価変動率の推移<商業地>

2019年2020年2021年2022年2023年
東京都6.8%7.3%△1.9%0.6%3.3%
東京都区部7.9%8.5%△2.1%0.7%3.6%
<国土交通省「地価公示」>

◼︎基準地価 地価変動率の推移<商業地>

2019年2020年2021年2022年2023年
東京都7.0%1.4%△0.3%2.0%4.6%
東京都区部8.4%1.8%△0.3%2.2%5.1%
<国土交通省「地価公示」>

新型コロナが5類に移行し大きく変わった2023年

このように2023年を振り返ってみると、停滞していた経済が再稼働し物価のみならず飲食旅行などのサービス業など幅広い分野で活況を呈しました。

また、政府による資産運用後押しのアナウンス効果もあり、新たに資産運用に対して興味・関心を持たれた方が増えたとも言えます。

今後も新線・再開発、公共都市計画でますます不動産投資に対する関心も高まり、特に世界的な知名度・資産評価の高い東京圏の不動産投資は堅調に推移してきた年と言えるのではないでしょうか。

関連記事