1. HOME
  2. プロが教える不動産投資
  3. 東京北東部 連続立体交差化で街はどう変わる?【プロが教える不動産投資コラム】

東京北東部 連続立体交差化で街はどう変わる?【プロが教える不動産投資コラム】

鉄道における進化は街の利便性や将来性に大きな影響を与えます。東京の南側では品川のリニア中央新幹線や羽田空港アクセス線などの計画も進んでいますが、実は東京の北東部などでも鉄道の様々な計画が進んでいます。

今回のコラムでは東京北東部の鉄道の連続立体交差事業について見てみたいと思います。

線路の存在と街と連続立体交差

鉄道が運行していると当然そこには「線路」があります。線路があると街がそこで分断されてしまい、線路と交差する道路に踏切が設置されますが、開くのに時間がかかると往来に時間がかかり交通渋滞の原因にもなります。

そこで近年では鉄道路線と道路を立体交差化する工事が多く進んでいます。具体的には線路を「高架化」する場合と「地下化」する場合があります。

地下化する場合は、地上から線路がなくなりますので、街の様子も大きく変わります。

例えば小田急線の「下北沢」駅なども線路が地下化し、新しく生まれた土地には新しい店舗なども増えてきて以前にも増して街が賑わっているようです。また京王線の「調布」駅なども同様に地下化しましたので以前の様子と大きく変わり、まったく新しい街に来たような感じがしました。

小田急線・京王線・中央線などもこうした連続立体交差化が進んでいますが、東京の北東部などでもいくつかのプロジェクトが進んでいます。

西武新宿線連続立体交差事業

西武新宿線は「西武新宿」駅を起点として山手線「高田馬場」駅を通り東京の北西部に運行している路線です。沿線には落ち着いた環境の住宅地が広がっています。西武新宿線の線路は地上を運行しており街の分断や「開かずの踏切」なども問題となっていました。そこれで連続立体交差事業として駅や線路を高架化や地下化する計画が進められています。

<中井駅~野方駅間>

「中井」~「野方」駅間の2.4キロを連続立体交差事業として路線を地下化する工事が進んでいます。筆者の事務所は中野にありますが西武新宿線の「新井薬師前」駅も近くにあり、工事が進んでいる事が分かります。廃止される踏切は7ヵ所で、桜の名所でもある中野通りの踏切も廃止される予定です。地下化される各駅の周辺には商店街があり、駅の地下化で街が一つになり今後一層利便性が増す事も予想されます。中野駅周辺の再開発も今後さらに進むと予想され、周辺の住宅需要も増加するのではないでしょうか。

<井荻駅~西武柳沢駅間>

また「井荻」~「西武柳沢」駅間の5.1キロを高架する計画もあります。19ヵ所もの踏切が廃止され、2037年度の完成予定です。「上井草」「上石神井」「武蔵関」「東伏見」などの駅の高架化や側道の整備も計画されています。

<野方駅~井荻駅付近>

上記の間となる「野方」~「井荻」駅間の工事も計画されています。3.1キロの立体交差化が計画されていますが、構造形式はまた検討中です。13ヵ所の踏切が廃止される予定です。

このように西武新宿線は将来的に「中井」~「西武柳沢」駅間が立体交差される見込みで、沿線の環境や居住性が向上すると考えられます。

JR埼京線(十条駅付近)連続立体交差事業

「十条」と言えば駅前に大きな「十条商店街」があり、昔ながらのお店が多くある生活利便性の高いエリアです。「新宿」「池袋」や「赤羽」などにも行きやすく、住宅需要も多いエリアです。

隣駅の「赤羽」駅は多くの路線が集まるターミナル駅で、駅の横には「赤羽の大踏切」と呼ばれていた「開かずの踏切」がありましたが、1998年に線路が高架化され駅付近の6ヵ所の踏切が廃止されました。

「十条」駅は依然として昔ながらの地上駅で近くの大通りには踏切があり渋滞の原因ともなっていました。この「十条」駅付近を1.5キロにわたって高架化し6ヵ所の踏切を廃止する計画です。

「十条」駅から京浜東北線「東十条」駅までも徒歩圏ですが、大きく高低差がある特長のある街です。都心に近いながらも生活利便性が高く、今後も発展する可能性があります。

十条駅近くの踏切の状況
<出典:東京都建設局「JR埼京線(十条駅付近)連続立体交差事業」>

東武東上本線(大山駅付近)連続立体交差事業

東武東上線は「池袋」駅を始発とする歴史のある路線です。

「大山」駅では沿線の中でも規模の大きい商店街「ハッピーロード」があります。人気の孤食ドラマに出てきた洋食店などもあり今注目の街でもあります。大山駅も線路で分断されていますので、大山駅を中心に1.6キロが高架化する計画が進んでおり2031年完成予定です。併せて駅前広場なども整備される予定です。周辺から訪れる方も多いので広域的に利便性やイメージがアップする可能性もあります。

東武東上線はその昔、戦後にイモの買い出しをする人が多く乗り「イモ電」と呼ばれていた時もあったそうですが、今はすっかり綺麗になりその面影はありません。また池袋の再開発により沿線の住宅需要も増加するのではないでしょうか。

鎌倉を走る江ノ島電鉄も昔は「イモ電」と呼ばれていたそうですが、こちらも今では世界的に有名なおしゃれな電車になっています。路線のイメージも時を経て大きく変わっていくものと感じます。

大山駅付近の様子
<出典:東京都建設局「東武東上本線(大山駅付近)連続立体交差事業」>

京成押上線(四ツ木駅~青砥駅間)連続立体交差事業

東京の北東部の人気が高まっていますが、京成押上線でも立体化の計画があります。

京成押上線は墨田区の「押上」から「青砥」など葛飾区を運行します。都営浅草線などと直通で都心にも行きやすい路線です。

「四ツ木」駅から「京成立石」駅を通り「青砥」駅の手前までの2.2キロが高架化されます。沿線には多くの道路・踏切がありますが11ヵ所の踏切が廃止され、街の一体化や交通渋滞の解消につながります。

さらに京成本線等「京成高砂」~「江戸川」駅間でも立体化が検討されており早期実現が期待されています。

こうした東京東北部は都心へのアクセスが良いにも関わらず、地価・マンション価格なども比較的リーズナブルな傾向もあり人気が高まっています。

都心部のマンション価格高騰の波がこうしたエリアにも波及してきている気配があります。特に交通利便性の高い沿線や駅に近いエリアは特に需要も高くなってきていると考えられます。

立体交差で街や沿線の資産価値も上昇

他にも東京北東部では東武伊勢崎線「竹ノ塚」駅付近や「とうきょうスカイツリー」駅付近などでも立体交差化の計画があります。

今回のコラムでは東京北東部や北西部などにおける立体交差事業の計画及び進捗について述べさせて頂きました。こうした事業が不動産業界に与える影響としては、まず「駅前の土地」という極めて希少性と資産価値がある土地が新しく誕生する事、またそのような土地に広場や公園が建設され、さらに新しい商業施設などが開業すれば住民の方の生活利便性に寄与すると共に、外周部から人を引き寄せる効果も生み出します。

都市計画法の観点から述べると、駅や沿線周辺の道路拡張により容積率が上昇し従来では建築が厳しかったある程度大型の建築物も建設が可能となる事も予想されます。

これらはいずれも周辺の不動産の価値を押し上げる効果がありますので、そのようなエリアに近い所のマンションの資産価値上昇にも寄与すると考えられます。

関連記事

【はじめよう、お金のこと】72ってなに?