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日本の人口動態と不動産投資【プロが教える不動産投資コラム】

2024年ゴールデンウイークもあっという間に終わり、また新たなスタートとなっています。さて今回のコラムでは総務省が発表した人口に関するデータに基づいて人口の現状と今後の動向について、さらに人口動態が不動産業界に与える影響等について述べてみたいと思います。

総務省から10月1日現在の推計人口が発表に

2024年4月に総務省から2023年10月1日現在の人口が発表されました。なぜ10月1日現在なのか疑問に思う方もいらっしゃるかと思いますが、日本の人口を年単位で比較する場合は「10月1日現在」が基準となっていました。大正9年(1920年)から開始された国勢調査も10月1日現在の人口となっています。当時の資料を見てみると「年末年始は決済などや年賀の行事があり東日本では雪が深く、また春には旅行、行楽の時季であり、10月は人口の大半を占める農家が忙しくない時期である」とされています。つまり地域の事情や行楽や農業の繁忙期でない事などが理由として選ばれたようです。まさに日本独自の国土、季節などを考慮した結果とも言えます。

日本の人口は全体では減少に

総務省の発表した2023年10月1日時点の人口推計によると、日本の総人口は1億2435万2千人で前年より59万5千人の減少となりました。13年連続の減少です。

日本の人口は増加が続いていましたが、

但し人口の動向を都道府県別に見ると、2005年には戦後初めて前年を下回り、2008年にピークを迎え、2011年以降は減少が続いています。

都道府県別の人口動向は東京都が最も多い

都道府県別の人口では、東京都が最も多くが1408万6千人、次に神奈川県の22万9千人、大阪府の876万3千人、愛知県の747万7千人などが続きます。

割合は東京都は11.3%と最も多くなっています。全国47都道府県の1エリアでありながら全国の人口の10分の1以上が東京に集中しています。

次いで神奈川県が7.4%で、東京都と神奈川県を合わせて18.7%と全国の2割近くを占めます。また埼玉県は5.9%、千葉県5.0%を合わせると29.6%と首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の人口は全国の29.6%と3割近くとなっています。

東京都を始め首都圏に人口が集中している事が分かります。

都道府県別人口と割合(2023年10月1日現在)

人口順位都道府県人口全国に占める割合
1東京都1408万6千人11.3%
2神奈川県922万9千人7.4%
3大阪府876万3千人7.0%
4愛知県747万7千人6.0%
5埼玉県733万1千人5.9%
6千葉県625万7千人5.0%
<総務省「人口推計(2023年(令和5年)10月1日現在)」>

都道府県別の人口増減率も東京都が最も高い

都道府県別に人口の増減率を見ると、人口が増加しているのは東京都だけとなっています。東京以外の道府県は全てマイナスとなっていますが、2位は沖縄県ですが人口はマイナスとは言え0.02%の減少と減少率も少なくなっています。

3位は神奈川県、4位と5位は埼玉県、千葉県などが続き、首都圏では人口減少率も少ない事が分かります。大阪府、愛知県、福岡県などの大都市のある県も10位以内にランキングしています。

減少率が1%以上の県は秋田県(-1.75%)、青森県(-1.66%)、岩手県(-1.47%)を始め15県ありました。都道府県によって人口動向が大きく異なる事が分かります。

但し同じ都道府県の中でも中心部と郊外とでは人口の動向も大きく異なる事があります。

都道府県別人口増減率

順位都道府県人口増減率
1東京都0.34
2沖縄県-0.02
3神奈川県-0.04
4埼玉県-0.08
5千葉県-0.15
6滋賀県-0.16
7大阪府-0.22
8愛知県-0.25
9福岡県-0.26
<総務省「人口推計(2023年(令和5年)10月1日現在)」>

人口と地価の関係は

こうした人口の増加しているエリアは、当然地価にも影響があります。国土交通省が発表した2024年の公示地価を見ると、地価が最も高い都道府県は東京都で1㎡当たり122万円と他の道府県と比較して高額になっています。

以下大阪府、京都府、神奈川県、愛知県、福岡県などが続きます。こうした大都市圏は地価も高く、また地価も上昇傾向にあります。東京都と神奈川県だけで1年間に約9万人以上の転入超過となっており、多くの人が転入してきている事が分かります。

ただ地価動向の要因は人口だけではなく、ほかにも様々な要素が複合していると考えられ、人口はその要因のうちの一つであると言えます。

公示地価 都道府県ランキング 2024年

順位都道府県公示地価平均変動率
1東京都122万5300円/㎡+4.81%
2大阪府34万3228円/㎡+2.71%
3京都府30万2067円/㎡+2.56%
4神奈川県28万2816円/㎡+3.41%
5愛知県23万4619円/㎡+3.23%
6福岡県22万5568円/㎡+5.68%
7埼玉県17万4805円/㎡+2.09%
8兵庫県17万3528円/㎡+1.93%
9宮城県16万7205円/㎡+4.72%
10広島県16万1956円/㎡+1.37%
<国土交通省「令和6年地価公示」>

転入超過人口とは

こうした人口の増加の要因として人口の転入が挙げられます。総務省の「住民基本台帳人口移動報告」によると、全国の都道府県のうち2023年に人口が転入超過となったのは7都府県となりました。

東京都は最も多く6万人以上の転入超過となりました。神奈川県、埼玉県、千葉県なども転入超過となっており、首都圏に人口が集中している事が分かります。

また大阪府や福岡県、滋賀県なども人口が転入超過となっています。

2023年 都道府県別転入超過ランキング

順位都道府県転入超過数
1東京都6万8285人
2神奈川県2万8606人
3埼玉県2万4839人
4大阪府1万792人
5千葉県4,785人
6福岡県4,387人
7滋賀県12人
<総務省「住民基本台帳人口移動報告 2023年結果」>

東京都の転入超過人口は若年層が最も多い

東京都の人口増加を年齢階層別(5歳階級)に見ると、最も多いのは20~24歳の世代で6万3,444人の転入超過となりました、次に多いのは25~29歳の世代で2万5,191人となり、20~29歳の合計では約8万8千人の転入超過となっています。逆に35歳以上は転出超過となっており、東京都には若い世代の転入が多い事が分かります。

さらに男女別に見ると、女性の20~24歳が最も多く3万2250人の転入超過で、東京都には若い女性の転入超過人口が最も多くなっています。

2023年10月1日現在の人口では、東京都の15~65歳人口の割合は66.5%と全国で最も高くなっています。今後も若年層の転入超過が続けば労働人口も増加が続くと考えらえます。

東京都の転入超過人口 年齢階層別ランキング<総数>

順位年齢階層転入超過数
120歳~24歳6万3444人
225歳~29歳2万5191人
315歳~19歳1万4566人
<総務省「住民基本台帳人口移動報告」2023年>

東京都の転入超過人口 年齢階層別ランキング<男女別>

順位年齢階層転入超過数
1女性20歳~24歳3万2250人
2男性20歳~24歳3万1194人
3男性25歳~29歳1万3889人
4女性25歳~29歳1万1302人
<総務省「住民基本台帳人口移動報告」2023年>

今後の人口の動きは

筆者は今後の人口の動きについては「二極化+二極化」の様相を呈していくと予想しています。一つ目の二極化は、東京・名古屋・大阪・福岡・仙台・札幌などの大きい都市と、地方都市との格差が鮮明になっていくという二極化です。もう一つは同じ地域の中でも都心・準都心エリアと、郊外との二極化です。

今回の地価動向を見ても大都市圏は実際に人口が増加し地価も上昇していますが、中心部から少し離れた郊外エリアでは人口増加率や地価上昇率はそれほど高くはありません。これは鉄道などの交通機関との相関関係も要因として挙げられます。

例えば近年、社会問題化しているのは地方都市における鉄道路線の廃線や、バスの運転手の高齢化・不足によりバス路線が廃止となり、特に高齢者にとって自宅のあるエリアが「陸の孤島化」してしまう問題です。

最近では政府推進のもと、ライドシェアなど新たな試みも導入されていますが、インターネットなどに不慣れな高齢者にとってみればまだまだ浸透するには時間がかかるのではないでしょうか。

高齢化による都心部への人口集中は続く

日本全体で見れば日本の人口は2008年にピークを迎えており、今後は減少傾向が続くと考えられます。

但し日本全体から見れば老若男女問わず駅に近い所に住みたい人の割合はむしろ増えていくと予想されます。

各エリアの都心部では新線・再開発が進む経済力も上昇していく一方、郊外では人口減少が進んでいます。「空き家問題」「シャッター通り」などのキーワードが表すように高齢化による都心部への人口集中が進んでいると言えます。

特に若い女性の東京への転入超過が目立っています。この要因は、東京都や神奈川県などには多くの上場企業が集中し高い経済力がある事が挙げられます。

株価上昇で求人も増加し都心部の就業人口も増加する事で、ワンルームマンションなど優良な単身世帯住宅の需要も今後ますます増加すると考えられます。

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