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投資マンション市場と今後の行方【プロが教える不動産投資コラム】

今回のコラムでは皆様がワンルームマンションを購入する上で大切な投資用マンション市場の動きを始め、首都圏で発売された投資用マンションの発売戸数や価格の動向、今後の動きなどを最新のデータなどから述べてみたいと思います。

首都圏の投資用マンションの発売戸数は減少傾向

首都圏で2023年1~12月に新規に発売された投資用マンションは4,796戸で2022年の5,961戸から19.5%減と大きく減少しました。また物件数も2023年105物件と2022年の131物件から19.8%の減少となり、戸数・物件数共に前年比約2割の減少が見られました。

◼︎首都圏の投資用マンション 新規発売数

発売戸数/物件数
2022年 1~12月5,961戸/131物件
2023年 1~12月4,796戸/105物件
2024年  1~6月2,167戸/56物件
<不動産経済研究所調べ>

さらに今年の2024年1~6月を見ると、発売戸数は2,167戸、物件数は56物件となりました。単純計算で2024年1~6月を2倍したとしても物件数が少し増える程度ですが発売戸数は前年には届かない見込みとなっています。

こうした戸数減少の要因の一つとして考えられるのが、「マンション用地の不足」です。

インバウンドの増加とともにホテル需要も増加し、駅近の好立地の用地はホテル用地としての需要が増加しているほか、商業施設やオフィスビルとしての需要もあり、投資用マンションの土地需要と競合する場合も多くなってきています。

また、海外からの日本への投資も多くなっており、優良な立地の土地の取得が難しくなってきている事も挙げられます。さらに発売戸数減少の要因としては、他にすでにデベロッパーがマンション用地を購入しているにも関わらずゼネコンとの建築費における調整が難航している事や、駅近優良なマンション用地の売り惜しみ現象なども挙げられます。

投資用マンション発売価格は上昇傾向に

首都圏の投資用マンションの新規発売価格を見ると、2023年には平均価格3,259万円で2022年の3,284万円と比べて0.8%下落しました。しかし㎡単価は2023年124.9万円で2022年の121.4万円から2.9%上昇しています。

その要因としてはマンションの専有面積の狭小化が挙げられ、2022年の27.05㎡から2023年には26.08㎡に縮小しています。

こうした要因としては、地価・建築費の上昇からマンション価格が上昇傾向にあったため、戸当たりの面積の狭小化などが一時的・局地的に進んだ事が挙げられます。

しかし2024年1~6月には平均価格3,595万円、㎡単価135.2万円と2022年の3,182万円/121.3万円から再び13.0%、11.5%とそれぞれ大きく上昇しています。

では次にこうした価格上昇の要因ともなる地価・建築費の動向を見てみましょう。

◼︎首都圏の投資用マンション 新規発売価格の推移

発売戸数/物件数
2022年 1~12月3,284万円/121.4万円
2023年 1~12月3,259万円/124.9万円
2024年  1~6月3,595万円/135.2万円
<不動産経済研究所調べ>

◼︎首都圏の投資用マンション 一戸平均専有面積の推移

発売戸数/物件数
2022年 1~12月27.05㎡
2023年 1~12月26.08㎡
2024年  1~6月26.60㎡
<不動産経済研究所調べ>

地価の動きとマンション価格

マンション価格と地価には密接な関係があります。立地や物件によっても異なりますが、マンション価格の約半分は土地の価格となっているからです。

国土交通省から発表された2024年7月1日時点の「基準地価」を見ると、東京都の地価は住宅地で4.7%、商業地で8.5%と上昇しています。

東京都区部の商業地は平均で9.7%の上昇と大きく地価も上昇しています。多摩地区でも地価が上昇しており、地価上昇の波が東京都全体に広く波及してきているようです。

◼︎基準地価 地価変動率の推移

住宅地商業地
2023年2024年2023年2024年
東京都3.1%4.7%4.6%8.5%
東京都区部4.2%6.7%5.1%9.7%
区部都心部5.0%9.2%5.0%11.0%
区部南西部3.8%6.3%5.0%8.7%
区部北東部4.2%6.0%5.3%8.4%
多摩地域2.2%3.0%3.0%4.5%
<国土交通省「令和6年都道府県地価調査」>
  • 区部都心部:千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、渋谷区、豊島区
  • 区部南西部:品川区、目黒区、大田区、世田谷区、中野区、杉並区、練馬区
  • 区部北東部:墨田区、江東区、北区、荒川区、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区

また、国土交通省の発表した主要都市の高度利用地等の地価動向を表した「地価LOOKレポート」によると、2024年第2四半期(7月1日時点)では東京都の調査地点21カ所全てが上昇となりました。2024年第1四半期から連続してすべての地点が上昇となっています。

この調査は全国で80ヵ所、東京都では21ヵ所の主要駅の商業エリアや住宅地などの地価を選定してその動向を表したものです。今後の地価の先行指標ともなりますので、今後も東京都などの主要エリアの地価の上昇が続く事が予想されます。

地価上昇の理由としては東京で進む新線・再開発計画に加えインバウンドの増加による商業地の需要増や低金利によるマンション用地の需要増などが考えられます。

◼︎地価LOOKレポート 東京都の地価変動率の推移

2023年第3四半期
7/1~10/1
2023年第4四半期
10/1~1/1
2024年第1四半期
1/1~4/1
2024年第2四半期
4/1~7/1
上昇19202121
横ばい2100
下落0000
合計21212121
<国土交通省「令和6年第2四半期地価 LOOK レポート(主要都市の高度利用地地価動向報告)」>

建築費の動きは

マンション価格上昇の要因の一つとして建築費の上昇が挙げられます。

国土交通省が発表した建設工事デフレーターによるとマンションなど鉄筋コンクリート(RC)造の住宅の建築費は2015年を100とする指数で2023年には124.9と約25%上昇しています。

こうした建築費上昇の要因として、建築資材の値上がりや物流コストの上昇などの他、人件費の上昇も大きく影響しています。

◼︎建築費指数の推移(住宅・RC造)

年度建築費指数
2015年度100.0 
2016年度100.2 
2017年度102.5 
2018年度106.2 
2019年度108.6 
2020年度108.4 
2021年度(暫定)114.2 
2022年度(暫定)122.0 
2023年度(暫定)124.9 
<国土交通省「建設工事費デフレーター」>

建築人件費は近年上昇傾向にあります。国土交通省の発表した公共工事設計労務単価を見てみると2015年の16,678円から2024年は23,600円と約41%も上昇している事が分かります。

次回の自民党総裁に石破さんが決定しましたが、岸田総理の在任中の功績として給与水準の上昇が進んだ事が挙げられ、これは建築業界にも及んでいます。さらに建設業界や物流業界では時間外労働の上限が規制される2024年問題もあり今後も人件費の上昇が進む可能性もあります。

さらに東京都心部で進んでいる大規模再開発に加え、高度経済成長期に建設された多くのビルや社会インフラなどが補修の必要な時期に来ています。こうした大規模な建設需要が建築費上昇の要因ともなります。

さらに住宅では2025年度よりすべての新築住宅で「省エネ義務化」により省エネ基準適合が義務化されます。これにより投資用マンションも建築費の上昇が見込まれます。

◼︎公共工事設計労務単価の推移

労務単価
2015年16,700円
2016年17,700円
2017年18,100円
2018年18,600円
2019年19,400円
2020年20,200円
2021年20,400円
2022年21,100円
2023年22,200円
2024年23,600円
<国土交通省「令和6年3月から適用する公共工事設計労務単価について 」>

今後の投資用マンション市場の動きは

政府の「貯蓄から投資へ」の後押しで投資熱も高まってきています。少子高齢化が進み一層国民一人ひとりの「自助努力」も重要となってきています。

こうした中で安定した収益が見込まれる「マンション投資」への関心が高まってきています。ただし地価の上昇からマンション用地の取得が限定的となり投資用マンションの発売戸数の減少につながっています。

さらに今後も建築費の上昇と共にマンション価格も徐々にですが上昇の傾向が続くと考えられます。

しかし景気の上昇や給与水準の上昇と共に賃料水準も上昇傾向にあり、マンション価格の上昇を補う事にもなります。

好立地の投資用マンションは資産価値も上昇傾向にあり、市場も安定的に推移しています。東京などの単身世帯が増加する中で、今後もワンルームマンションの賃貸需要も底堅いものがあると考えられます。

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