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【2025年の経済と不動産市場を読む】インフレ、人手不足、金利動向がもたらす影響とは?

2025年、春の訪れとともに、日本経済も新たな局面を迎えています。物価の上昇が続く中、賃金の伸びが追いつかず、実質賃金の低下が家計に影響を与えています。一方で、不動産業界では人手不足が深刻化し、建設・供給の遅れが資産価値の二極化を加速させています。さらに、日銀の政策金利引き上げや、米国トランプ政権による貿易政策の影響も無視できません。

本コラムでは、これらの経済環境が不動産市場に与える影響を多角的に分析し、今後の資産運用のヒントを探ります。

最新物価動向と給与水準の行方は?

総務省が発表した消費者物価指数によると2025年1月の消費者物価(総合指数)は2020年を100として111.2となり、また前年の1月と比べても4.0%の上昇となりました。

野菜なども高値は続います。お米に関しても政府が備蓄米の放出を始めていますが、今後値段が下がるかどうかは未知数の所もあります。

このように物価上昇が続いていますが、長らく続いてきたデフレ経済の中で給与水準はなかなか上がらない状況が続いていました。厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、2025年1月の基本給と残業代などを合わせた「名目賃金」は前年同月比2.8%の増加となりましたが、名目賃金から物価上昇分を除いた「実質賃金」は1.8%のマイナスとなりました。給与水準は少しずつですが上昇していますが、物価の上昇が給与の上昇を上回っている状況です。今年の春闘の好結果が第一四半期(4月、5月、6月)の経済状況、実質賃金の上昇につながるかどうかに注目が集まるでしょう。

◼︎消費者物価指数(総合)・前年同月比の推移

2024年1月2024年2月2024年3月2024年4月2024年5月2024年6月2024年7月2024年8月2024年9月2024年10月2024年11月2024年12月2025年1月
前年同月比(%)2.22.82.72.52.82.82.83.02.52.32.93.64.0
<総務省「2020年基準消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)1月分」>

◼︎実質賃金指数・前年同月比の推移

2024年1月2024年2月2024年3月2024年4月2024年5月2024年6月2024年7月2024年8月2024年9月2024年10月2024年11月2024年12月2025年1月
前年同月比(%)▲1.1▲1.8▲2.1▲1.2▲1.31.10.3▲0.8▲0.4▲0.40.50.3▲1.8
<厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和7年1月分結果速報」>

*事業所規模5人以上、現金給与総額

人手不足が不動産業界に与える影響とは?

現在多くの業界で人手不足問題がクローズアップされ、従業員の退職による企業の倒産のケースも増加しています。賃金上昇の傾向が続く中で、人件費の上昇に耐えられないケースもあります。

建設業界においても人手不足が進行しており、建物を更地にするための解体作業が大幅に遅れている案件が多々あります。一例としてはリニューアル計画が白紙検討となった中野の「中野サンプラザ」や、五反田の「五反田TOCビル」の場合は建て替え計画が9年後に延期となっています。

またマンション業界においても人手不足により着工が大幅に遅れている案件も数多く存在しています。こうした人手不足が新築マンションにも供給減と共に土地の租税コストほか様々なコストアップにつながりマンション価格に影響を与える可能性が考えられます。

人手不足は交通インフラと不動産価値にも影響

ファミリーマンション等でバス便のマンションは多く存在していますが、昨今ではバスの運転手さんの高齢化、また新たな採用のハードルの高さからバスの減便が加速しています。

具体的な例としては武蔵野市が運営している「ムーバス」というのがありますが、今までは20分おきに運行していたバスが2025年3月17日より40分に1本に減便されました。

多くのエリアでも同様の事が起きており、バスの減便は居住者の通勤や通学に大きなダメージを与えると共に、マンションの資産価値や家賃にも影響を及ぼす事になります。交通の利便性と住宅の価値はほぼ比例するからです。

また地方及び郊外などでも鉄道やバスなどの廃線も多くなり、逆に都心部では新たな投資により交通インフラが発展してきています。つまり今後は「交通利便性の二極化」が加速する事により不動産の資産価値もますます二極化する可能性を秘めています。今後日本においては人口減社会が加速しますが駅に近い所に住みたい人の人口はこれらの要因から、さらに増えていくでしょう。

今後の金利の行方は

住宅購入をする方においては今後の金利の行方が気になる所です。消費者物価の上昇や給与水準の上昇もある程度進み、日銀は2025年1月に政策金利の引き上げを行いました。かつての「マイナス金利」から「金利のある世界」に変わり、既に地方銀行先行で預貯金金利の引き上げが行われ、都市銀行においては今年の4月から住宅ローンの金利の引き上げも予想されます。

但しここに来て国内の賃金上昇や企業業績向上というプラス要因はあるものの、一方では世界経済の不透明感、関税問題等もあり、日本だけが金利を上昇していくという事には一定のハードルがある事も否定できません。

日銀も金利の引き上げについては慎重姿勢に転じており金利が上昇するにしても穏やかな上昇と予想されます。

ローンの組み方にも工夫が

今後は時間をかけてなだらかな金利の上昇が予想されますが、投資用不動産の購入者はその対策をある程度練っておく事が大切です。金利上昇期においては金利上昇期に頭角を現す株式銘柄に投資するのも一つの方策です。例えば最近既に上昇し始めていますが大手都市銀行の株などがその典型です。つまり住宅ローンの金利上昇を銀行の株式投資でカバーするという考え方です。但し株式投資は不安定要素も当然の事ながらありますので一つの参考にしていただければ幸いです。

また先日筆者のセミナーに参加されたお客様はローンを組む場合に、とりあえず一つの投資用マンションは35年の変動金利、もうひとつの投資用マンションは30年の変動金利と返済期間を分けていました。同じ変動の金利でも返済期間が短い方が元金返済スピードが早いので、低金利のうちにある程度返済を進めたいという戦略です。これは比較的年収の高い方向けの方策の一つです。

トランプリスクとインフレとは

2025年1月に米国の大統領にトランプ氏が就任しました。就任してまだ2ヵ月ですが早速世界の国々に大きな影響とその存在感を表しています。特に「トランプリスク」の大きな一つとしてトランプ関税が注目されています。日本も同様で特に日本の基幹産業である自動車業界を始めとする製造業はトランプ大統領の動きに戦々恐々となっている状況です。

トランプ大統領は交渉上手で関税を引き合いに様々な「ディール(取引)」を敢行してくると考えられます。前回のトランプ政権の時も当時の安倍政権に対し日本の自動車業界へ関税強化を求めましたが、当時の安倍政権においては米国から輸入する牛肉などの関税の引き下げ等で最小限に収めたようです。

今後日本経済においては外需産業がやや不安定になる事が予想されますので、経済対策においては内需主導型の政策にも注目度が高まる事が予想されます。内需の柱の一つが「住宅業界」ですので、より注目度が上がるのではないでしょうか。

大きな資産格差を生む時代へ突入

ここ数年大企業を中心に春闘での大幅な賃金アップがありました。一方中小企業においてはまだ充分とは言えず、大手企業との格差は拡大しています。

預貯金においても日本の金融資産が約2,100兆円台あり、国民一人当たりの貯蓄額は単純計算で約1,700万円ほどになりますが、その所有者の多くが中高年層となっています。

金融経済教育推進機構の発表した「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」によると20代で全く貯金がない方が40%近くもいる、というのがその実態です。その格差を是正するためには資産運用や不動産投資などなんらかのアクションが大切な時代となります。

インフレに強い資産運用とは

デフレの時代には何もしなくても現金の価値が上がりましたが、インフレ時代においては逆行となります。インフレや世界的な大きな経済変動の中では現物資産の需要が高まっており、金価格なども史上最高値を記録しています。

こうした中でもインフレに強い不動産による資産運用が注目を集めています。インフレにより現金の価値は下がりますが、不動産の価値は上昇傾向にあり、また貸した場合の賃料も上昇傾向にあるからです。

ただし全ての不動産が同じく資産性が高まる訳ではなく、交通利便性や居住性、安全性や将来性などが優れた物件を選定する必要があります。資産性の高い不動産とそうでない不動産との二極化も進んでおり、今後はより投資用不動産を選定する選択眼が重要となってきています。

このように国内外の経済状況にますます目が離せない世の中になりつつありますが、いつの時代でも不動産投資のあるべき本質には変わりはありません。「資産性」「収益性」を押さえつつ「将来性」のある不動産投資を長期の目線でする事が大切です。

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