ブラックフライデーで“損する人・得する人”の違い。お金持ちが実践する『価値ある支出』の思考法
11月になると街を賑わせる「ブラックフライデー」。しかし、「安いから」「セールだから」といった理由で買い物を重ねる人ほど、実はお金を増やせていません。一方で、富裕層や投資家はこの時期を「お金の使い方を見直すチャンス」と捉えています。
彼らは何を買い、何を買わないのか? “ブラックフライデー”をきっかけに見えてくる、「お金が増える人」と「減る人」を分ける支出の思考法とは。
今回は、日本の11月のブラックフライデーの概要を踏まえたうえで、価値あるお金の使い方をするためにはどうすればいいか、一緒に考えていきましょう。
そもそもブラックフライデーはいつ? どんなセールがある?
そもそもブラックフライデーとは、米国の祝日のひとつ、感謝祭(サンクスギビングデー)の翌日を指す言葉です。
米国では、感謝祭の日に家族で集まり、七面鳥を食べ、神様・家族・収穫の恵みなどに感謝を捧げる風習があります。
感謝祭は毎年11月第4週の木曜日と決まっています。そして感謝祭の翌日、11月第4週の金曜日がブラックフライデーで、米国でもショッピングモールなどで大規模なセールが行われます。2025年の場合、11月27日(木)が感謝祭で、翌11月28日(金)がブラックフライデーとなります。
日本のブラックフライデーは、米国のブラックフライデーの風習を取り入れたもの。2010年代中ごろから各社がブラックフライデーと銘打ったセールを行うようになってきました。ただ米国と違い、日本には感謝祭自体がありませんので、「ブラックフライデー」と言いながらも11月の後半から12月の頭にかけて、1週間から10日程度のセールとして開催されることが多くなっています。日本のブラックフライデーは、風習というよりも販売促進のマーケティングとしての側面の強いイベントとなっています。
2016年よりブラックフライデーのキャンペーンを実施しているイオンモールでは、ブラックフライデーになるとブラックフライデー専用のパッケージ商品や限定商品が多数店頭に並びます。また、多くの専門店で限定の企画が催され、食料品・生活用品・家電にいたるまでさまざまな商品が割引で販売されます。
2024年のブラックフライデーは11月22日(金)から12月1日(日)までの10日間開催されていました。本稿執筆時点(2025年10月15日)では、2025年のブラックフライデーについてはウェブサイトに「予告(Coming Soon)」とのみ表示されていて詳細はまだわかりませんが、これまで同様、限定商品が販売されたり各種割引などが受けられたりすると考えられます。
ネットショッピング最大手のAmazonでも同様に、さまざまな商品が割引販売されます。2024年のAmazonのブラックフライデーは11月29日(金)から12月6日(金)まででしたが、先行セールが11月27日(水)から開催されていました。エントリーのうえ所定の条件を満たすとポイント還元が受けられるサービスもありました。こちらも2025年の開催予定は現時点ではわかりませんでしたが、同様のセールが行われることでしょう。
その他、スーパーや家電量販店、ネットショップなど、さまざまな店舗でブラックフライデーのセールを開催しています。ですから、上手に活用できれば欲しかったものを安く手に入れられるかもしれません。
お金の貯まらない人は「せっかくだから」の口癖・思考で買ってしまう
ブラックフライデーだ、セールだと聞くと心が躍る方もいるでしょうが、もしも「せっかくのセールなのだから買わないと損」と思って買い物をするタイプであれば、セールは利用しないほうがいいかもしれません。
お金の貯まらない人は「せっかくだから」の口癖・思考で買ってしまう傾向があるからです。
お金の貯まらない人は、「支出の価値基準」がなく、人からのおすすめ、流行しているものなど、不要な買い物が多い傾向にあります。また、食べ物、洋服、家電など日常の消費も「ちょっといいものが欲しい」とワンランク上を選択してしまいがちです。
費用対効果を考えることも苦手で、まとめ買いをした食材をダメにしてしまったり、自己投資と考えて購入した書籍を読まなかったりします。
お金の貯まらない人は、支出の振り返りをする習慣がないのも特徴です。
特段必要なものでもないのに「せっかくのブラックフライデーなのだから」と買うので、お金は貯まりません。安いからというだけで買ってしまうので、買い物に対する満足度が低くなります。買ったはいいものの、クローゼットに置きっぱなしというモノも多くなります。
そうはいっても、「ブラックフライデーを活用したい」という方もいるはずです。ブラックフライデーの商品の中には安いもの、お得なものもあります。
ブラックフライデーのようなセールを活用するときには、次のポイントに注意しておくと無駄遣いが減らせるでしょう。
●予算を決める
どれだけ安いからといっても、際限なく買ってしまえばお金がいくらあっても足りません。基本ではありますが、セールに使っていい金額をあらかじめ予算として決めておき、その範囲内で買い物をするようにしましょう。
●欲しいものリスト以外のものは買わない
実際に商品が割引になっているのを見たら、欲しいと思ってしまうかもしれません。しかしその商品は、セールがなくても欲しいものでしょうか。ほとんどの場合、セールがなかったら買わないものでしょう。それであれば、買わないほうが賢明です。あらかじめ「欲しいものリスト」のような、買いたいもののリストを作っておき、それにない商品は買わないようにするのも一案です。
●本当に安いかどうか、価格比較してから購入する
セールのときには、どの商品も安くなっているかのように見えてしまいます。しかし、本当に安くなっているとは限りません。中には、セールといいながらそこまで安くなっていないケースもありえます。本当に安いかどうか、他のWebサイトやご自身の購入履歴などと価格比較をしてから購入しましょう。
●普段から買っているものだけ買う
「欲しいものリスト」「本当に安いか」にも付随しますが、普段から買っているものだけを買うのもよいでしょう。普段から買っているものならば、相場感がわかっているので、購入時に「これは安い」「思ったより高いな」と判断できるはずです。
●使いきれないもののまとめ買いはしない
食料品は大容量のものをまとめ買いすると単価が安くなるケースが多くあります。一見、お得そうですが、いくら単価が安いからといっても、使いきれなくて無駄にしてしまえば意味がありません。また、使い切ろうとして普段よりたくさん使ってしまうようでは、満足感が低くなってしまいます。
また衣料品などで「BUY 2 GET 1 FREE」(2つ買うと1つ無料)のような割引もよくあります。しかし、そもそも1つしか使わないものを2つ、3つと手にしても使いきれないですし、2つめ、3つめのものはさほど気に入っていないものを無理やり選んでしまうこともあります。
セールだからと無理に使いきれないものを買うよりも、欲しいものを必要な分だけだけ買ったほうが満足感も高く、お金も無駄にしないで済むかもしれません。
お金持ちは「安いから買う」という消費をしない
お金持ちは普段より安いからといって、お金を無駄遣いするようなことはまずありません。その理由は、お金持ちには次のような傾向があるからです。
●お金持ちは支出の価値基準を持っている
お金持ちは、支出の価値基準が明確です。自分にとって価値があると考えるものにしかお金を使いません。いくらセールで安くなっていたとしても、それに価値がないと思えば買わないのです。反対に、自分にとって本当に必要なものや大切なものであれば、たとえ定価であっても買います。お金持ちは「安いから買う」という消費をせず、自分の支出の価値基準をもって、メリハリのついた消費をします。
●お金持ちは無駄遣いを防ぐ
お金持ちは、余ったお金を貯蓄するのではなく、先に貯蓄分を確保して、残ったお金で生活する「先取り貯蓄」をしています。セールだからという理由で「今月だけは例外で支出を多くしよう」ということはしません。
●お金持ちは「両面思考」で考えている
お金持ちは、購買マーケティングによって、人は「買わされてしまう」ことがあることを知っています。普段から、自分側と相手側の「両面思考」で考える習慣を持っているので、不要な買い物は避けられるようになっています。とはいえ、人間ですから、心を動かされることもあります。そこで、「予算を決める」という仕組みをつくり、支出の価値基準を持ってお金を使っています。
●お金持ちは思い出を作るため、経験を得るためにお金を使う
人生でもっとも大切なことは、思い出をたくさん作ることです。自分の人生の最後に残るものはお金ではなく、自分のさまざまな経験から得た思い出です。お金持ちはそのことを知っているので、経験や思い出にお金を使います。また、思い出をたくさん作るには健康であることも大切ですから、健康にもお金を使います。こうしたものにお金を使うことが、人生の幸福度を高める、価値のあるお金の使い方につながっていきます。
●お金持ちは「投資脳」で考える
お金持ちは「お金は使うと増える」という「投資脳」を持っています。「お金を価値あるものに使って今あるお金をもっと増やそう」と考えています。お金を使ったとしても、それで得た知識や経験がさらなるお金を生み出してくれれば、将来的にお金をさらに増やせます。
投資というと株や投資信託、不動産や金などの「金融資産への投資」を思い浮かべる人が多いと思いますが、それだけではありません。「思い出を作る」話にも通じますが、「資格を取る」「本を読む」「歴史を知る」など知識やスキルを取得したり、「旅行をする」「街を散歩する」「人と出会う」といった楽しい経験をしたりすることも、それが将来の糧になると考えれば立派な「投資」です。健康面や交友関係など、お金に換算できない「見えない資産」への自己投資も大切です。
ただ、「安いから」という理由だけでの買い物は「消費」であり「投資」にはなりません。セールだからと無駄遣いするのではなく、より価値のあるお金の使い方ができるようにしていきましょう。
頼藤 太希(よりふじ・たいき)
経済評論家・マネーコンサルタント
Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。ファイナンシャルプランナー三田会代表。慶應義塾大学経済学部卒業後、アフラックにて資産運用リスク管理業務に6年間従事。2015年に現会社を創業し現職へ。
日テレ「カズレーザーと学ぶ。」、フジテレビ「サン!シャイン」、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「定年後ずっと困らないお金の話」(大和書房)など書籍110冊超、累計190万部。
日本年金学会会員。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。宅地建物取引士。日本アクチュアリー会研究会員。
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