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「移籍金290億円」現代サッカー界を席巻する“中東オイルマネー”とは? 巨額の資金によるクラブ強化の実情に迫る

世界で最も裕福な国はどこか知っていますか?

国際通貨基金(IMF)はカタール、アラブ首長国連邦、サウジアラビアといった中東の国々の名を挙げています。中東諸国は原油を多く産出しており、その原油を売って劇的な経済成長を遂げてきました。

原油ビジネスにより生み出されたお金は通称「オイルマネー」と呼ばれますが、中東のオイルマネーはスポーツ界でその影響力を存分に発揮しています。特に顕著なのがサッカー産業です。

本記事では、オイルマネーによるサッカー界への影響や「ファイナンシャル・フェアプレー」をはじめとする対策など、気になるトピックを深掘りしていきます。

中東オーナー所有の欧州サッカークラブが増加

近年、中東のオイルマネーがサッカー界に次々と触手を伸ばしています。以下のクラブは中東諸国の王族や企業がオーナーを務めるクラブとして有名です。

イギリスの「マンチェスター・シティ」
→アラブ首長国連邦(UAE)の王族が運営する投資会社が2008年に買収

フランスの「パリ・サンジェルマン」
→カタールの政府系ファンドが2011年に買収

イギリスの「ニューカッスル・ユナイテッド」
→サウジアラビアの政府系ファンドが2021年に買収

中東諸国によって買収されたクラブには巨額の資金が投入されます。

彼らが目指すのは、クラブチームの最高の栄誉とされる欧州チャンピオンズリーグでの優勝です。圧倒的な資金力を背景に、サッカー界の名だたる超スーパースターを呼び寄せてクラブを強化しています。

例えば、カタール国家が実質的なオーナーである「パリ・サンジェルマン」は、ブラジル代表のネイマール・ジュニオール、アルゼンチン代表のリオネル・メッシ、フランス代表のキリアン・エムバペといった名選手と契約しました。

ネイマールがパリに移籍した際の移籍金は、なんと2億2200万ユーロ!日本円に換算すると当時のレートで約290億円です。サッカー史上最高額の移籍金で加入しています。

なお移籍金ランキング2位は、翌シーズンに移籍したエムバペの1億8000万ユーロ(約230億円)。オイルマネーが投入されてからというものの、数々の高額移籍が行われてきました。

このようにして強化された「パリ・サンジェルマン」はカタール系ファンドが筆頭株主となった2011年以降、フランスのリーグ・アンでは9度の優勝(最多優勝回数)、3度の2位獲得という成績を残しています。一躍欧州サッカー界のトップへと登りつめました。

その影響力はクラブだけに留まりません。

2019年に開催されたAFCアジアカップでは、カタールのナショナルチームが優勝。また、2022年には歴史上初となる中東でのワールドカップ開催を実現させました。

オイルマネーによるサッカーへの影響と懸念点

国家レベルでサッカー界に巨額の投資を行ってきた中東諸国。オイルマネーが投入されることで移籍金が高騰し、クラブ間の格差が広がっています。

サッカー界の秩序を守るため、欧州サッカー連盟(UEFA)は「ファイナンシャル・フェアプレー(FFP)」という制度を設けています。これは、入場料収入・放映権料・移籍金など選手強化のための支出が、サッカーを通じて得たクラブの収入を上回ることを禁ずる規約です。

しかし、FFPなどの規律はクラブのパワーバランスを保つうえで効果的であるものの、曖昧な部分も多く抜本的な解決には至っていません。

例えば、FFPでは施設やトレーニング環境は規制の対象とならないと言われています。

また、「パリ・サンジェルマン」はFFPに違反したとして厳しい処分を受けたことがありますが、約90億円の罰金を支払って通常のコンペティションに参加し続けたことから、オイルマネーによる資金力があれば解決できる問題だといえるでしょう。

現状の制度のままでは、クラブ間の格差は広がる一方であると懸念されています。

サッカークラブ買収の背景にある狙い

中東諸国は、サッカーだけでなくゴルフなど影響力の大きいスポーツシーンに巨額の資金を投じ続けています。考えられる理由は3つあります。

1つ目は、国の知名度とイメージの向上を図りたいから。

グローバル市場でのビジネスを円滑に進めるために、世界で人気のあるスポーツの世界に参入することで自国のブランド力強化を目指しています。いわゆるスポーツウォッシング(スポーツを利用して不都合な問題から注目を逸らすこと)の狙いもあるでしょう。

2つ目は、原油一辺倒の経済から脱却するため。

主に原油産出の収益により国家を維持している中東諸国は、石油資源が枯渇したり、再生可能なエネルギーが発達して石油の需要が減少したりすると大変なことになります。近年は世界的に脱酸素・カーボンニュートラルに向けた動きが活発化していることもあり、スポーツをはじめとするさまざまな分野にオイルマネーを投資し、経済の多角化を目指す必要があるのです。

3つ目は、政治的な策略。

中東諸国においてサッカーは、公式に定められていないものの実質的には国技と言えるほど人気の高いスポーツです。政治的な緊張状態が続いている状況で試合が行われた場合には、サッカーを使った一種の代理戦争のような状況に陥ることもあるほど。サッカーに中東の王族や政府系ファンドが介入することで、国の政治運営に多大な影響を及ぼす可能性が高いと考えられます。


今後も、石油をはじめとしたコモディティーによる資金力を最大限に活かして、国のイメージアップや経済活性化を図る動きはますます拡大していくでしょう。サッカーを含む世界のスポーツ産業はどうなるのか?今後の動きに注目していきたいですね。

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