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【2024年NISA改正】現行NISAとの違いや気になるポイントをQ&A形式でプロが回答

投資の利益にかかる税金が非課税になるNISA(ニーサ・少額投資非課税制度)。現行の一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAは合計で約1846万口座も開設されている、投資家におなじみの制度です。このNISAが2024年に改正され、新しいNISA制度に生まれ変わります。今回は、2024年からのNISAの改正内容と、改正にあたって気になるポイントをQ&A形式で解説します。

新しいNISAは一般NISAとつみたてNISAを合わせたような制度

現行NISAには、一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAの3種類があり、1年間に投資できる金額や運用できる商品、利用できる人などが異なります。

2022年12月に公表された「令和5年度税制改正大綱」に、2024年から現行のNISAの制度に変わる、新NISA制度が登場することが盛り込まれました。新たなNISAは現行の一般NISAとつみたてNISAの制度を合わせたような制度なので、ここでは「統合NISA」と呼びます。

現行NISAと統合NISAの概要

(株)Money&You作成

統合NISAも、投資で得られた利益にかかる20.315%の税金が非課税にできる制度、という点は変わりません。しかし、現行の一般NISA・つみたてNISAと統合NISAには、いろいろな違いがあります。

現行NISAと統合NISAの違い1:NISA制度が恒久化される

現行の一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAの投資可能期間は2023年末までとなります。2024年から、18歳以上の人は統合NISAを利用した投資ができるようになります。なお、18歳未満の未成年者は統合NISAを利用できません。

現行NISAの投資可能期間は、

・一般NISA…2028年まで

※2024年からは統合NISAと別の「新しいNISA」になる予定だった

・つみたてNISA…2042年まで

・ジュニアNISA…2023年まで

となっていました。

しかし、期限が決まっていると、たとえば、つみたてNISAを2042年から始める人は1年しか投資できないことになってしまいます。

その点、統合NISAでは制度が恒久化されたため、期限を気にせず投資ができます。

現行NISAと統合NISAの違い2:非課税保有期間が無制限になる

現行の一般NISA・つみたてNISAでは、非課税保有期間が終わった商品は課税口座(特定口座または一般口座)に移して保有する仕組みでした。一般NISAでは、「ロールオーバー」(NISAの非課税期間が終わった後、資産を新たな非課税投資枠に移すこと)をすることもできますが、原則として非課税保有期間が終わったら課税口座に資産を移します。そして、移したあとの利益に対しては税金がかかるようになります。

それに対して、統合NISAで投資した資産は、非課税保有期間が無期限ですので、いつまででも運用益非課税の恩恵が受けられます。そもそも、「課税口座に移す」といったことを考える必要もなくなりました。

現行NISAと統合NISAの違い3:年間投資枠が合計360万円になる

現行NISAの年間投資枠は、つみたてNISAが年40万円、一般NISAが年120万円までとなっています。また、つみたてNISAと一般NISAは併用できないため、どちらかを選んで利用する必要があります。

一方、統合NISAの年間投資枠は「つみたて投資枠」で年120万円、「成長投資枠」で年240万円です。そのうえ、統合NISAではつみたて投資枠と成長投資枠の併用ができます。つまり、合計で年間360万円まで投資できるようになります。

現行NISAと統合NISAの違い4:生涯投資枠が設けられる

現行NISAにはなくて、統合NISAで新たに誕生するのが、生涯にわたる非課税限度額(生涯投資枠)です。生涯投資枠の上限は1800万円(うち成長投資枠は1200万円)となっています。

現行NISAでは、非課税投資枠は一度商品を買って売ると再利用できませんでしたが、統合NISAでは商品を売却して生涯投資枠に空きが出た場合、その空き(売却枠)を再利用して新しく非課税の投資をすることができます。なお、売却枠が再利用できるとはいえ、年間投資枠360万円は超えることはできません。

現行NISAと統合NISAの違い5:一部商品は購入できなくなる

統合NISAのつみたて投資枠では、つみたてNISAと同様、金融庁の基準を満たす、長期でお金を増やせると見込める投資信託・ETF(上場投資信託)を積立で購入できます。

統合NISAの成長投資枠では一般NISAと同様、株式・投資信託・ETF・REIT(不動産投資信託)を購入できます。一括でまとめて買うこともできますし、積立でも購入できます。

ただし、安定的な資産形成のため、成長投資枠では「株式投資の監理銘柄・注意銘柄」「高レバレッジ投資信託」などの商品は投資対象から除外されます。

統合NISAの気になるポイントをQ&A形式でプロが回答!

統合NISAの制度は、現行NISAから大幅に拡充されていることがわかるでしょう。これから投資をするならば、まずは統合NISAを最大限活用すべきだと考えます。

ただ、実際に利用しようとすると、気になるポイントも出てくるでしょう。そこでここからは、統合NISAの気になるポイントをQ&A形式で解説していきます。

Q:新たに統合NISAの口座開設や移行手続きが必要?

A:不要となるべく検討中のようです。

現行NISAを利用している人の場合、2024年になると現行NISAを利用している金融機関に自動的に統合NISAの口座が開設される予定です。新たに口座開設をしたり、現行NISAから統合NISAへの移行手続きをしたりする必要はないようにするとのことです。公式の回答では「検討中であり正式決定ではない」とのことですが、十中八九、手続き不要と考えてよさそうです。

ただ、たとえば銀行でつみたてNISAを利用している人の場合、銀行に統合NISAの口座が開設されても、成長投資枠で株式投資をすることはできなくなってしまいます。成長投資枠で株式投資もしたい、という場合には、金融機関を変更するとしなければなりません。

2023年中に1度でもNISA口座で取引をしている場合は、2023年中の金融機関変更はできません。2024年からのNISA口座の金融機関変更は、2023年10月から手続きできるようになります。

Q:これまでの一般NISA・つみたてNISAの商品はどうなる?

A:統合NISAとは別枠で、これまでの非課税期間で保有できます。

これまで一般NISA・つみたてNISAで保有していた資産は、2024年以降の統合NISAとは別枠で、現行の非課税期間中は保有できます。現行NISAの運用益の非課税期間は、一般NISAが5年間、つみたてNISAが20年間でした。つまり、2023年に投資した一般NISAの資産は2027年まで、つみたてNISAの資産は2042年まで非課税で保有できるというわけです。

非課税期間が終わったあとは、課税口座(特定口座または一般口座)に移され、以後の利益には税金がかかるようになります(なお、非課税期間中の利益には課税されません)。

Q:ジュニアNISAの商品はどうなる?

A:18歳になるまで非課税で保有できます。年齢による引き出し制限もなくなりますが、引き出しは「一気に全額」のみ可能です。引き出した後は、ジュニアNISA口座は廃止です。

一般NISA・つみたてNISAだけでなく、ジュニアNISAも2023年末をもって新規の買い付けが終了します。ジュニアNISAの資産は、2023年中は子どもが18歳になるまで原則として引き出せませんが、2024年以降は18歳未満でも引き出せるようになります。

もっとも、2023年末でジュニアNISAの投資可能期間が終わるからといって、すぐに資産を売却する必要はありません。2024年以降に非課税期間が終わったジュニアNISA口座の資産は、順次「継続管理勘定」というロールオーバー専用の勘定に移して、18歳になるまで(1月1日時点で18歳である年の前年12月31日まで) 、金融商品を非課税で保有し続けることができるからです。

ただし、ジュニアNISAの資産を引き出す場合は「一部だけ引き出す」ということができません。ジュニアNISAの資産は一度にすべて払い出さなければなりません。また、ジュニアNISAには成人になったら一般NISAにロールオーバーできる仕組みがありましたが、それもできなくなります。そのうえ、統合NISAに資産をロールオーバーするような仕組みもありません。

ジュニアNISAをすでに利用している人はそのまま続けてもいいですが、2023年から1年だけジュニアNISAを使おうと考えているならば、少し待って2024年から統合NISAを利用したほうがいいでしょう。

Q:成長投資枠ではつみたて投資枠の商品は買えない?

A:買えます。

統合NISAの生涯投資枠は1800万円で、「うち成長投資枠1200万円」とあると、さもつみたて投資枠は600万円のように思えてしまいますが、そうではありません。成長投資枠でもつみたて投資枠の商品を買うことができるので、現行NISAのつみたてNISA対象商品だけで1800万円まで投資できます。仮に、成長投資枠で株を500万円分購入したら、つみたてNISA対象商品は1300万円購入できる、ということになります。

Q:生涯投資枠はいつ復活する?

A:売却の翌年です。

統合NISAの生涯投資枠は「簿価残高方式」といって、あくまで投資元本ベースの残高で管理されます。したがって、仮に1800万円分投資していても、500万円分を売却した場合、再び500万円分非課税で投資できるようになります。

しかし、生涯投資枠が復活するのは売却の翌年。売ってすぐに買うといった取引はできないようになっています。また、仮に500万円分非課税で投資できるようになっても、年間投資枠は最大で360万円です。1年で500万円分投資することはできません。

Q:「高レバレッジ商品」って、具体的にはどんな商品?

A:ヘッジ以外の目的で先物やオプションを利用して高い利益を狙う商品です。

統合NISAの成長投資枠では、現行の一般NISAと同様の投資ができるのですが、新たに「高レバレッジ商品」が対象外となります。

高レバレッジ商品とは、先物やオプションといった取引を利用して、基準となる指標の値動きよりも大きな収益を目指す商品のことです。たとえば、2021年に投資家の人気を集めた「レバナス」は、レバレッジをかけて米国の「NASDAQ100」という株価指数のおよそ2倍の値動きをするように運用されます。つまり、統合NISAの成長投資枠では、レバナスのような商品には投資できなくなるというわけです。

ただし、リスクを抑える(ヘッジ)目的で先物やオプションなどを活用する投資信託は購入できます。

Q:ネットでは「1800万円分を最速で投資してあとは放置」という論調も見かけるけど、それってどうなの?

A:基本的には20年以上積立分散投資したほうがいいでしょう。

統合NISAでは、毎年360万円ずつ投資すれば5年間で生涯投資枠の1800万円に達します。そこで、最速で1800万円投資して、あとは放置しておくことで、複利効果を生かしてお金を増やせるという論調もあります。

しかし、投資はあくまで長期・積立・分散投資が基本です。購入のタイミングはなるべく分けたほうが元本割れリスクが低くより堅実だと考えます。一度に購入したタイミングがたまたま高値のタイミングだったとしたら、複利効果があったとしてもなかなか増えにくいでしょう。

積立・分散投資で平均購入単価を下げる「ドルコスト平均法」の効果は、5年・10年の投資でも十分だとする意見もあります。ただ、金融庁の「NISA早わかりガイドブック」では積立分散投資を20年行うことで元本割れリスクを大きく下げ、堅実に増やせることを示しています。

もちろん「絶対に元本割れしない」という将来の保証はできませんが、20年以上投資ができるように金額を調整するのがいいと考えます。

Q:投資資金は2024年に向けて貯めておくべき?

A:2023年から「つみたてNISA」を始めましょう

統合NISAが充実しているので、2024年に統合NISAがスタートしてから投資を始めようと考える人もいるかもしれません。しかし、資金があるなら2023年からつみたてNISAをスタートするのがよいでしょう。非課税投資金額は、一般NISAが年120万円、つみたてNISAが年40万円ですから、一般NISAのほうが多くできますが非課税保有期間は5年間しかありません。つみたてNISAならば20年保有できるので、じっくりと投資することで元本割れの可能性を減らし、堅実に増やせる可能性が高いでしょう。

すでにお話ししたとおり、現行NISAの資産は、統合NISAの生涯投資枠とは別枠で投資ができ、現行の非課税期間で保有できます。つまり、すでに現行NISAを利用していた人は、その分非課税で投資できる金額が多くできることになります。

そのうえ、投資でお金を増やすのにかかせない複利効果は、時間をかけるほどお金が増えるスピードが増していきます。2023年からと2024年からでは、複利効果を活かす期間が1年変わってしまいます。早く投資を始めれば、その分長く投資が続けられます。

また、投資を早く始めることで、値動きのある金融商品を毎月一定額ずつ購入することで平均購入単価が自然と下がるドルコスト平均法の効果も得られます。投資を長く続けることで、その後少しの値上がりでも利益を出しやすくなることにつながります。

まとめ

2024年スタートの統合NISAの改正内容と、現行NISAとの違いで気になるポイントをQ&A形式で紹介してきました。最後にも触れましたが、投資は早く始めて長く続けることが大切。ですから、まだ投資をしていない方は、統合NISAからといわず2023年から投資をスタートさせ、2024年からの統合NISAも活用していきましょう。

頼藤太希 (株)Money&You代表取締役/経済ジャーナリスト

中央大学客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。女性向けWebメディア『FP Cafe』や『Mocha(モカ)』を運営すると同時に、資産運用・税金・Fintech・キャッシュレスなどに関する執筆・監修、書籍、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力している。『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『1日1分読むだけで身につくお金大全100』(自由国民社)『はじめての資産運用』(宝島社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)など著書多数。日本証券アナリスト協会検定会員、ファイナンシャルプランナー(AFP)、日本アクチュアリー会研究会員。

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