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ESG投資とは?新しい投資の動向やメリット、投資の方法を解説

大切なお金を投資するなら、堅実にリターンを得られるところに投資をしたいと誰もが思います。そんな投資に敏感な投資家が注目しているのが、今回取り上げるESG投資。

ESG投資とはどんな投資なのでしょうか。新しい投資の動向とともに、ESG投資のメリット、そして実際に投資をする方法について解説します。

そもそもESG投資とは

ESGの読み方はイーエスジー。環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとって、ESGです。

ESG投資とは、これら環境・社会・ガバナンスに配慮した企業に投資することをいいます。

ESG投資での「環境(Environment)」とは、気候変動や水資源、生物多様性などのこと。いわゆる地球環境のことと考えてもいいでしょう。

自社の利益のためなら環境汚染も平気、という考え方では困りますよね。自分のことだけではなく、周りへの配慮が必要なのは、企業も個人も同じです。

そして「社会(Social)」とは、働き方の改善や、ダイバーシティ(=多様性)などのことです。成功する企業は、お客様のことだけではなく、自社の職員も大切にしているのではないでしょうか。年齢、性別、人種、宗教、趣味嗜好などによる差別はあってはなりません。そのような社会的な取り組みも、企業にとってますます重要になってきます。

最後の「ガバナンス(Governance)」とは、統治・支配・管理のことです。企業におけるガバナンスは、健全な経営体制を整え、法令を守り、不正を防ぎ、経営の透明性を実現します。

多様性を尊重し、のびのびとした雰囲気であっても、守るべきことはしっかり守る、そんな管理体制が求められています。

では、ESG投資には、投資メリットがあるのでしょうか。

投資先の企業には、しっかりリターンを出してくれる企業を選ぶことは必然です。つまり、将来的に発展し利益を出さなくては、投資のメリットがありません。

もしかすると、環境・社会・ガバナンスに配慮してばかりでは、企業の利益は二の次になってしまうのではないか、と考える人もいるのではないでしょうか。

環境に配慮すると、たとえば廃棄物の処理にコストがかかりすぎて、利益が小さくなってしまうかもしれません。職員の働き方は、ブラック企業なみにハードなほうが利益が出せるかもしれません。経営の透明性より、陰で情報操作をしたほうが企業イメージは守れるかもしれません。

しかし、そのようなことで得られる利益は、ほんの目先の短期的な利益です。

環境にやさしくない商品は、消費者から評価されなくなり売れなくなります。ブラック企業からは優秀な人材が流出し、生産性が落ちてしまいます。企業の組織的な嘘が明るみになると、そのダメージは計り知れません。

つまり、ESG投資にこそ、中長期的な投資メリットがあるということなのです。

これは、社会が抱えている課題をクリアする企業こそが、中長期的に成長するという考え方にもとづいています。

2015年、国連サミットでSDGs=持続可能な開発目標が採択されました。

SDGsでは、2030年までに達成すべき目標として、貧困や不平等をなくす、持続可能な方法で生産し消費する、海や森林を守るなど、17の目標がかかげられています。

SDGsを達成するために、具体的に取り組むべき企業の課題がまさにESGです。短期的な利益追求より、環境・社会・ガバナンスに配慮して活動することが、企業に求められている社会的責任と言えるでしょう。

欧州で活発なESG

ESG投資は世界中でなされていますが、最も活発なのは欧州(ヨーロッパ)です。続いてアジア太平洋、北米です。

なかでもグリーン投資といわれる、環境問題に配慮した企業や経済活動に対する投資が大きく、欧州が2位のアジア太平洋地域の2倍以上です(Interactive Data Platform(Climate Bonds Initiative)より)。

日本でも、GPIFがESG投資を推進したことが話題になり、国内のESG投資が広まりました。

GPIFは正式名称を「年金積立金管理運用独立行政法人」といい、公的年金の管理・運用をしています。公的年金ですから、決して失敗できません。そのため、GPIFの投資方針は常に注目されています。

そのGPIFが2015年、国連により提唱された行動原則、責任投資原則(PRI)に署名したのです。PRIには、持続可能な社会の実現を後押しするために、投資分析と意思決定のプロセスにESGの課題を組み込むことが明記されているのです。

経済発展の一方で、気候変動などの環境問題が多くなり、労働問題や企業の不祥事など企業統治の問題が取りざたされるようになりました。

このような問題は、短期的な利益を求めるゆえに起こり、長期的には経済・社会のためになりません。

ESGの視点で投資対象を評価することで、中長期的に発展・成長する企業に投資することができ、同時に持続可能な社会の実現ができると考えられています。

ESG投資のメリット

ESG投資には具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

ESG投資のメリット1:市場の拡大に期待できる

まずは市場の拡大が期待されます。ESG投資は世界中の機関投資家や個人投資家が注目している投資です。GPIFが署名したPRIは、その後も署名する機関投資家が増えており、今後の大きな市場になるでしょう。

市場が大きくなるということは、流入する資金が増え、活発な投資活動が行われるということ。拡大、成長する分野に資金をおくことで、右肩上がりの流れにのりやすくなります。

また、SDGsでは17もの指標が採択されているため、企業が取り組めるESGの範囲が広くなります。そのため、ESGに取り組む企業は増え、市場はますます拡大するでしょう。

市場の規模が大きければ、投資家にとっても比較検討の幅が広く、より大きなメリットが期待できます。

実際、ESG投資は国内でも世界的に見ても、市場規模は拡大しています。

環境省の資料[T1] によれば、2016年には世界のESG市場は22.9兆米ドルの規模だったものが、2年後の2018年には1.3倍の30.7兆米ドルです。

日本のESG市場の拡大はさらにスピード感があり、2016年には0.5兆米ドルと世界の2%だった規模が、2年で4.2倍の2.1兆米ドル、世界の7%にまで増えているのです。

ESG投資のメリット2:長期投資の効果に期待できる

そして、中長期的な投資効果を得られることが期待できます。

ESG投資は、短期的な利益を求めるものではなく、企業の持続的な成長や安定に対して投資や資金運用を行うものです。そのため、ちょっとした市場の波に一喜一憂する必要はありません。長い目で見た利益を求める投資であれば、どっしり構えていられます。

さらに、ESGに対する取り組みを行っている企業は、社会的な価値や、環境への配慮といった大局的な発展を目指しています。企業としてのガバナンスが整いやすく、突然の不祥事に株価が暴落、などといった心配は少ないのではないでしょうか。

OECD(2020) ”Sustainable and Resilient Finance”によれば、コロナ禍で世界的な株価下落が起こるなかでも、ESGを考慮した株価指数は下落幅が抑えられています。これは、リスクをおさえられているということです。

また、欧州市場では、ESGを考慮した株価指数の上昇率は、平均を上回っています((European Securities and Markets Authority(2020) ”ESMA Report on Trends, Risks and Vulnerabilities”より)。リターンの指標(シャープレシオ)で見ると、ESG考慮指数のパフォーマンスは平均を上回っていました。

これは、ESG投資はリターンが大きくなる可能性が高いと考えられます。[T2] 

そんなESG投資をすることは、個人投資家として持続可能な社会づくりへの貢献でもあります。企業がESGへの取り組みが充分にできるのも、そのための資金があるからです。

つまり、投資家や金融機関からの投資が大きな役割をになっているのです。

ESG投資はどうやって行う?

では、実際にESG投資はどのように行えばいいのでしょうか。

まず考えられるのは株式投資でしょう。

ESG投資は、企業の貸借対照表や損益計算書といった財務諸表に加えて、数字には表しにくいESGまでを考慮する投資です。決算書類などをもとに、ESG経営を行っている企業を調べ、そこの株式を買って投資をします。

株式よりもリスクをおさえた、債券投資も選択肢です。

債券は、いわば「借用書」です。資金を貸しているので期日がくれば返済されるものなので、株式投資よりもリスクが小さいといえます。

日本国内でも、大手企業によって発行される債券が増加しています。

特に、グリーンボンドには注目です。グリーンボンドとは、企業や地方自治体などが、国内外のグリーンプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券のこと。政府はグリーンボンド発行などのESG投資を推進する方針ですから、今後の市場拡大に期待できます。

そして、投資信託という方法もあります。

株式投資も債券も、個人で投資をするには必要な資金が大きすぎるきらいがありますが、投資信託なら少額からの投資が可能です。

投資信託とは、個人投資家から集めた資金をまとめて、投資のプロであるファンドマネージャーに運用を任せるスタイルの投資です。

ESGへの取り組みを重視している企業の株式や債券を組み合わせた投資信託(ファンド)に投資をすれば、投資金額が少額で可能なだけではなく、投資先が分散されるメリットもあります。

投資先が国内の企業や地方自治体であれば、ESGへの取り組み状況の情報が得られやすいでしょう。

一方、ESG投資の市場がすでに大きくなっている欧州への投資も面白いかもしれません。

欧州はエネルギー問題をはじめとした環境への配慮が避けられず、今後の世界経済の情勢をうらなう効果もありそうです。

まとめ

経済成長には、ESGとは真逆の負の側面があります。環境汚染、加重労働、隠ぺい体質など。しかし、これらを放置しておけばやがて経済は衰退してしまうでしょう。

環境が悪くなり、労働に疲れ、誰も信用できない社会では、経済成長どころではないからです。

そこでESG、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)への取り組みを重視した経済活動が重視されています。

そんな企業に投資をするのがESG投資です。

ESG投資をすることは、ESGに取り組む企業に資金を渡し、その活動を応援、後押しすること。しかも、ESGに取り組む経済活動は中長期的な発展が期待できるので、しっかりとしたリターンも期待できることがわかりました。

投資をするなら、利益を得られるところを選ぶべき。それには、長い目で見てESG投資が適しているのではないでしょうか。

タケイ啓子

ファイナンシャルプランナー(AFP)。36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー

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