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住まい、教育、健康・医療…申請したらもらえる手当金・補助金

人生には何かとお金がかかるもの。毎月の生活費だけでなく、ときにはまとまったお金が必要になることもあります。物価が上がり、給与が上がらない時代の大きな出費は痛手になりがちです。

しかし実は、国や自治体がそうした出費に対して手当金・補助金を出していることが多くあります。知らずにいたらもったいない!ということで、今回は、国や自治体が用意している手当金・補助金を「住まい」「教育」「健康・医療」の3分野にわけて一挙紹介します。

住まいに関する手当金・補助金

住宅ローン減税

住宅ローン減税(住宅ローン控除・住宅借入金等特別控除)は、自分で住む家を購入・リフォームするために住宅ローンを借りた人が利用できる制度です。毎年の住宅ローン残高の0.7%にあたる金額を所得税から直接差し引く(控除)ことができます。所得税で控除しきれない場合は、住民税からも控除できます(前年度課税所得×5%、最高9万7,500円まで)。

住宅ローン減税では、入居時期・購入する住宅の種類・新築か中古かによって、控除が適用されるローン残高(借入限度額)・控除期間・最大控除額が変わります。

【住宅の種類と最大控除額】

(株)Money&You作成

高い性能の住宅ほど、控除額も多くなります。

ただ、2024年〜2025年の入居では、新築住宅、買取再販の場合、住宅ローン減税の最大控除額が減ってしまいます。また、新築で「その他の住宅」を購入した場合は住宅ローン減税が受けられなくなります(2023年までに建築確認をした住宅を除く)。また、現状では2026年以降の住宅ローン減税がどうなるかがまだわかりません。住宅を購入する可能性がある方は、動向をチェックしておきましょう。

投資型減税

住宅ローンを使わずに住宅を購入すると、住宅ローン減税が受けられません。そのかわり、投資型減税を利用できます。投資型減税は、認定長期優良住宅・認定低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅を新築した場合に、性能強化費用相当額(上限650万円)の10%分を所得税から控除(税額控除)できるしくみです。つまり、所得税が最大65万円控除されます。

投資型減税を受けるには、2023年12月31日までに入居する必要があります。

※ZEH (ゼッチ)…net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略語。1年間で消費するエネルギーの量を実質的にゼロ以下にする、省エネ性能の高い家のこと。

地域型住宅グリーン化事業

地域型住宅グリーン化事業は、国土交通省の採択を受けたグループ(地域の木造住宅の関連事業者)が省エネルギー性・耐久性などに優れた木造住宅を建てた時に補助金がもらえる制度。補助金は、採択を受けたグループに対して支払われるので、家を建てた人(発注者)は間接的にその恩恵を受けることになります。

補助金の金額は、住宅のタイプにより異なります。具体的には、

(1)長寿命型(認定長期優良住宅)、ゼロ・エネルギー住宅型ZEH(ZEH、Nearly ZEH) 70万円〜135万円
(2)ゼロ・エネルギー住宅型・長期対応(ZEH、Nearly ZEH):70万円〜140万円
(3)ゼロ・エネルギー住宅型低炭(ZEH Oriented認定低炭素住宅):70万円〜110万円

となっています。

生垣緑化助成

自治体によっては、街に緑を増やすために、生垣・フェンス・壁面・屋上などを緑化した場合に助成金を用意している場合があります。金額や助成額は自治体により異なりますが、数万円から数十万円に及びます。緑化工事を始める前に自治体に確認しましょう。

住宅エコリフォーム

ZEHレベルの住宅のリフォームをしたときには、住宅エコリフォームが利用できます。住宅エコリフォームの補助額は省エネ診断が診断費用の3分の1、省エネ設計・省エネ改修が工事費用の40%で、5万円〜35万円となっています(診断のみの場合最低補助金額は1万円)。申請は施工業者が行いますので、リフォームをするときに施工業者が住宅エコリフォームを利用できる業者なのかを確認しましょう。

なお、毎年度の予算上限に達すると受付が終了します。2023年度の場合、2023年7月3日交付申請の受付が終了しています。

こどもエコすまい支援事業

2022年4月1日時点で夫婦のどちらかが39歳以下の若者夫婦世帯もしくは、子育て世帯がZEHレベルの新築住宅を購入したり、省エネ改修のリフォームをしたりした場合、最大で100万円(リフォームは60万円)の助成金がもらえます。すでに交付のための申請期間が始まっており、遅くとも2023年12月31日までに終了するとのこと。予算上限に達すると終了しますので、該当する方は早めに申請すると良いでしょう。

高齢者住宅改修費用助成制度

介護が必要になった時、自宅をバリアフリー化するリフォームをしなくてはならない場合があります。高齢者住宅改修費用助成制度を利用すれば、要介護者や要支援者が行うバリアフリー化の工事費用の9割(最高20万円の工事に対して18万円)が支給されます。上限の範囲内であれば、複数回利用することもできます。

教育に関する手当金・補助金

児童手当

児童手当は、中学生以下(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の子どもがいる世帯に対して給付されるお金です。児童手当の金額は、子ども1人につき以下のとおりです(2023年7月時点)

・3歳未満:月額1万5,000円
・3歳以上小学校修了前:月額1万円(第3子以降は月額1万5,000円)
・中学生:月額1万円

ただし、児童手当には所得制限があり、年収960万円を超えると月額5,000円に減額され、年収1,200万円を超えると支給されなくなります(いずれも扶養親族が3人の場合の目安)。

児童手当は今後、 

・支給対象が18歳(高校生)まで拡大

・第3子以降は3万円に増額

・所得制限の撤廃

と拡充される見込みです。

【児童手当の変更予定】

(株)Money&You作成

なお、児童手当の拡充は、2024年10月から(2025年2月支給分から)行われる予定です。

児童扶養手当

児童扶養手当は、両親が離婚するなどしたひとり親世帯で、18歳の年度末までの子どもがいる場合にもらえる手当です。子どもが1人なら最大(全部支給)で月額4万4,140円、2人目は月額1万420円、3人目以降は1人増えるごとに月額6,250円が加算されます(2023年度)。なお、所得に応じて、全部支給の金額から減額される場合(一部支給)もあります。

医療費助成制度 

子どもが医療機関を受診する際、通常は2割(義務教育就学前)または3割の医療費の自己負担が必要です。しかし、医療費助成制度を利用すれば、医療費が無料になったり、割安で医療を受けたりできます。

自治体によって、医療費助成制度の対象になる期間や助成される金額は異なります。多くは中学または高校の卒業までで、入院や通院の際の医療費が無料にできます。子どものうちは病気にかかりやすいもの。医療費助成制度があれば、安心して医療機関にかかることができます。

高等学校等就学支援金制度

高等学校等就学支援金制度は、公立高校に通う生徒には11万8,800円、私立高校に通う生徒には39万6,000円を支給上限額として支給する制度です。

高校無償化の所得制限は、児童手当と同じく、扶養親族の数に応じて目安となる年収が異なります。たとえば両親の一方が働いていて、子2人(高校生・中学生以下)、扶養控除対象者が1人の場合、目安の年収が約590万円以上になると39万6,000円の支給が受けられなくなります。さらに、目安の年収が約910万円以上となると11万8,800円の支給が受けられなくなります。

子育て支援パスポート

各都道府県では、子育て世帯に対して割引などのサービスが受けられる「子育て支援パスポート」を発行しています。名称は自治体によって異なります。以前は発行された都道府県でしか利用できませんでしたが、今は全国の都道府県で相互利用が可能。地元だけでなく旅行先や帰省先などでもお得に各種サービスを受けることができます。

健康・医療に関する手当金・補助金

医療費控除

医療費控除は、1年間に負担した医療費が多くなったときに、確定申告することで節税できる制度です。医療費控除の控除額は、次の計算式で求めます。

【医療費控除の控除額】

・所得200万円以上の場合

(1年間の医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額)-10万円

・所得200万円未満の場合

(1年間の医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額)-所得額の5%

※上限200万円

1年間の医療費の合計から、医療保険や健康保険などから受け取ったお金を引いた額が10万円超(所得200万円以上)・所得額の5%超(所得200万円未満)の場合、医療費控除が受けられます。なお、医療費控除は自分の分だけでなく、家族(生計を一にする配偶者やその他の親族)の分も合算して申請できます。

セルフメディケーション税制

セルフメディケーション税制は、薬局やドラッグストアで対象の市販薬(OTC医薬品)を購入したときに、確定申告することで税金が節税できる制度です。

セルフメディケーション税制の控除額は、次の計算式で求めます。

【セルフメディケーション税制の控除額】

年間の対象市販薬の購入額−1万2000円

※上限8万8000円

対象の医薬品には、外箱に「税控除対象」などとマークが記されているほか、レシートなどにもマークが記されています。医療費控除するほどは医療費を使っていない場合には、セルフメディケーション税制が利用できないか確認してみましょう。

セルフメディケーション税制を利用するには、所定の健康診断を受診する必要があります。以前は健康診断の証明書を確定申告の際に提出する必要がありましたが、2021年分の確定申告から提出不要になっています。ただし、確定申告期限等から5年間は保管する必要があるので、捨てないように注意してください。

高額療養費制度

高額療養費制度とは、被保険者や被扶養者の1か月あたり(1日から末日まで)の医療費の自己負担額が、一定の自己負担限度額を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度です。自己負担限度額は、年齢(70歳未満か70歳以上か)や、所得の水準で異なります。

また、高額療養費制度では過去12か月以内に3回以上自己負担限度額に達した場合は、4回目からは多数該当となり、自己負担限度額がさらに下がります。

【高額療養費の自己負担限度額(70歳未満の場合)】

(株)Money&You作成

傷病手当金

傷病手当金は、会社員や公務員が病気やケガで働けないときに、健康保険から支給される給付金です。健康保険に加入していれば、誰でも申請することができます。

傷病手当金をもらうには、

(1)業務外のケガや病気であること

(2)連続する3日間を含めて4日以上仕事を休むこと

(3)会社から給与が出ていないこと(傷病手当金よりも少ない給与が出ている場合は、差額をもらうことはできます)

を満たす必要があります。

傷病手当金の1日あたりの金額は標準報酬日額(標準報酬月額を30で割った数値)の3分の2です。標準報酬日額が6,000円の人の場合、1日あたり4,000円が受け取れます。うつ病などの精神疾患も対象です。

なお、傷病手当金は、最初の受給日から「通算して1年6ヶ月まで」お金をもらえます。一度は回復したものの、再び同じケガや病気で働けなくなった場合でも、通算1年6ヶ月分の傷病手当金がもらえる、というわけです。ケガや病気の際に大きな助けになってくれるでしょう。

人間ドック助成金

体の不調をいち早く見つける人間ドックの受診費用を助成してくれる自治体もあります。金額は自治体によって異なりますが、中には数万円単位の助成が受けられるところも。また、会社で加入している健康保険協会もしくは健康保険組合に人間ドックの助成金が用意されている場合もあります。詳しくは自治体の役所、あるいは会社の所管部署にご確認ください。

以上、「住まい」「教育」「健康・医療」の3分野の手当金・補助金を紹介してきました。いずれも、利用するには申請が必要ですので、使えそうなものはもれなく申請しましょう。

高山一恵 (株)Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー

一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を行ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。月400万PV超の女性向けWebメディア『Mocha(モカ)』やチャンネル登録者1万人超のYouTube「Money&YouTV」を運営。著書は『11歳から親子で考えるお金の教科書』(日経BP)、『マンガと図解 定年前後のお金の教科書』(宝島社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)など著書累計100万部超。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。

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