最新地価動向と不動産投資【プロが教える不動産投資コラム】
8月8日に東京五輪の閉会式が行われました。開催直前まで開催について賛否両論ありましたが無事終了しました。開催中は筆者もテレビを通じて多くの選手の素晴らしい競技・演技に目を奪われました。またパラリンピックも8月24日から開催され、現在選手の皆様の活躍に期待が集まっています。
一方、新型コロナにつきましては全国的に緊急事態宣言エリアが拡大し日々緊迫度を増している様相です。菅政権の元、ワクチン接種のスピードが増し早期の収束を願いたいものです。
地価LOOKレポートが発表に
今回のコラムでは不動産投資に密接な関係と影響を及ぼす最新の地価動向について検証してみたいと思います。
年間を通じて公示地価・基準地価・路線価などの主要指標の他に国土交通省が発表する四半期ごとの地価LOOKレポートというデータがあります。
これは3ヵ月おきに発表される最新のデータで、アルタイムに近い指標を確認する事ができます。様々な不動産取引における大切な指標になります。
~令和3年第2四半期の地価LOOKレポートの結果~
令和3年1月1日~4月1日 <前回> | 令和3年4月1日~7月1日 <今回> | |
上昇地区 | 28地区 | 35地区 |
横ばい地区 | 45地区 | 36地区 |
下落地区 | 27地区 | 29地区 |
<国土交通省「令和3年第2四半期(R3.4.1~R3.7.1)主要都市の高度利用地地価動向報告~地価LOOKレポート~」>
◆変動率区分は84地区で不変、 12地区で上方に移行、4地区で下方に移行。
◆住宅地では、下落地区数が前期に引き続き0地区となり、横ばい地区数が減少し上昇地区数が更に増加した。商業地では、大きな変化はないが、一部で弱い動きが見られた。
住宅地は上昇が増加
今回の指標(令和3年4月1日~7月1日)によりますと、全国の主要都市の主な住宅地は前回調査に続き上昇地区が大幅に増加し、商業地については依然調整局面が続いている中、一部のエリアで調整から横ばい、横ばいから上昇と様々な様相を呈しています。
そもそも住宅地が上昇している要因はこのコロナ禍においても住宅需要は根強いという証(あかし)であると考えられます。
新型コロナと対峙する中、自分自身の生涯生活設計の中での住宅に対する向き合い方がより一層強くなったという事と、在宅勤務、テレワークにふさわしい少し広めの住宅需要が喚起されたという側面もあるのではないでしょうか。 つまり従来からあった潜在需要が新型コロナをきっかけに顕在化したという事です。
商業地は玉石混交の状況が続く
一方、商業ビル、投資系不動産などの商業地の動向については三者三様で、例えば飲食業を中心とするサービス業に多くの需要があるような土地に関しては新型コロナによる店舗休業、さらに空き店舗の増加などを背景に厳しい状況が続いています。
また新型コロナによる行動規制により旅行業界も大きな打撃を受けていますが、それと連動する形でホテル業界も厳しい状況にあり、ホテル建設用地のようなエリアの土地が厳しい局面を迎えている訳です。但し同じ商業地の中でも下記などは根強い需要があります。
- マルチアクセスなど極めて交通の利便性の高いエリアの土地
- 再開発などで今後の期待が高まるエリアの土地
住宅用地が上昇の理由は
そのような最中、住宅地が新たなマンション・戸建ての需要増大と共に地価が上昇しているエリアが増えているように、居住を伴うワンルームマンションなどの建設地の需要は同じ商業地の中でもとても根強いものがあります。
その背景には世界的な金融緩和、金余り現象の中で、東京の資産運用型マンションなどに海外のファンドから大きな需要があるからです。
もちろん一般のワンルームマンションを分譲する会社は、将来の年金を見越した不動産投資家や相続対策で購入するエンドユーザーに販売するという販売スタンスがありますが、さらにその先にはファンドが購入してくれるといういわば「出口戦略」があるので、一定の需要があり資産運用型マンション用地は地価が下がりづらいという理由があります。
またここにきて、8月25日(水)に夜間に菅総理が記者会見をしましたが、その中でアフターコロナにおける経済対策にも一部触れていました。その中には最も新型コロナの影響を受けた飲食業界・旅行業界及びホテル業界などのテコ入れ策を講じるというものでした。
アフターコロナを見据えた地価の行方は?
依然厳しい状況が続く中で、少しずつですが明るい兆しも垣間見えてきています。
その一つは7月のホテル稼働率が前月比で10%強上昇と、少しずつですがホテル需要も回復基調にきている事です。また企業の求人広告の回復の期待予想から広告関係の株価もここに来て上昇トレンドとなっています。
つまりアフターコロナを見越して既に市場は一歩先の動きを見せており、ホテル業界、サービス業界の復活、さらにその先には店舗における需要拡大⇒商業地の底打ち⇒地価反転という構図も十分に考えられるのではないでしょうか。
不動投資は長期の投資ですのであくまでも大局的な見地で市場をウォッチする姿勢が大事ですが、このような短期・中期の動向にも関心を寄せるとより不動産投資が深堀りできて面白いと思います。