忍び寄るインフレと不動産投資【プロが教える不動産投資コラム】
岸田新政権が発足しました。新しい政権の下では様々な政策が掲げられています。
その中で大切なキーワードの一つとして「富の分配」というものがあります。安倍政権・菅政権の下では国内における資産格差が大きな問題点として残りました。
今後インフレの傾向が現在よりも高まってくればその資産格差はますます拡大すると思われます。
インフレには2種類ある
私達日本国民の生活に直接的な影響を与えるのはまさに「インフレ」です。
インフレとは物価の上昇に伴い貨幣価値が低下していくものです。一口にインフレと言っても「良いインフレ」と「悪いインフレ」に分ける事ができます。
「良いインフレ」とは大企業、中小企業を含めた日本全体の企業業績が伸び、さらに社員の給料が上昇し、その延長戦上に物価が上昇するというものです。物価が上昇してさらに消費が活性化すれば企業の収益も向上し、国に入る法人税も増え、財政の健全化につながる訳です。このような好循環の中での物価上昇が「良いインフレ」と言えます。
「悪いインフレ」とは
「悪いインフレ」とは世界的な資源不足・燃料不足等により輸入物価が上昇し、国内におけるいわゆる企業物価の上昇に伴う物価高(インフレ)です。しかし物価上昇局面の中で、所得が上がらない状況であれば国民の生活はダメージを受ける訳です。
不況下のインフレ、つまりスタグフレーション(景気後退の中のインフレ)という状況が最も良くない状況ですが、現在の日本はまさしくそのような状況に近い「景気回復の実感を伴わない中での物価高」という局面に直面しています。
身近な商品から原油・素材などの値上がりも進む
私達の生活の中では最近では牛肉、野菜、小麦粉といった身近な食材が軒並み1割~2割上昇しています。また原油高によりガソリンなども上昇し、輸送コストをも押し上げています。これはほんの一例で様々な産業分野において物価上昇の状況が起きている訳です。
そこで岸田政権においては「所得の再分配」の名の下、富裕層への課税強化や大企業に対しては社員の給料を上げた会社に対しては法人税の減税などの案も浮上している様です。
「ウッドショック」「アイアンショック」も影響
新型コロナのワクチン接種がいち早く進んだアメリカにおいては今年中ごろに「ウッドショック」という言葉が巷間ささやかれましたが、アメリカにおいては住宅価格の高騰の延長線上において主要都市の住宅賃料の上昇という局面を現在迎えています。
日本においてはこれから起きる事は「ウッドショック」ももちろんありますが、さらに鉄鉄鋼素材価格などが高騰する「アイアンショック」という状況も十分考えられます。これは米国や中国の需要拡大に鉄の供給が追い付かず、価格が大きく上昇している状況です。日本においても住宅需要の再燃と共に鉄筋鉄骨などの鉄鋼関係のみならず、セメントなども上昇の気配を示しています。
インフレに強いものと弱いもの
インフレに最も弱いものは何でしょうか、それはズバリ「現金」です。
今仮に手元に5,000万円あったとします。自分が欲しいマンションが5,000万円とします。
ところがその5,000万円のマンションがインフレによって10%価格上昇して5,500万円になったとすると、5,000万円の価値は500万円下がったことを意味します。
逆に5,000万円のマンションが4,500万円に下がれば現金の価値は500万円上がった事を意味します。 このように景気の変動によって現金の実質的な価値も変動する訳です。
インフレとマンション投資のローン
それでは投資目的などでマンションを購入した時の「借入金(ローン)」はどうなるでしょうか。
一般的にはインフレによって物の価値が上がれば相対的に負債も実質的には目減りします。ローンが2,000万円あっても、インフレとなり現金の価値が下がれば、ローン金額の実質的な価値も目減りする事になります。
また最近では20代30代の若い方々でワンルームマンション投資などを始める方が増えていますが、一例として年収500万円の人がワンルームマンションを購入し、家賃収入が月額10万円、マンション投資のローン返済額が月額11万円とします。管理コスト等を除いて持ち出しが月額1万円とすると年間で12万円、年収500万円に対しての持ち出し金額の割合は2.4%となります。
しかし5年後年収が600万円に上昇し、さらにインフレにより家賃収入が月額5,000円上がったとすると600万円に対して年間6万円の持ち出しとなりますので、その割合は1%に低下します。つまりインフレや給与所得上昇の下では、借入金の実質負担率は低下となる傾向がある訳です。 これが「マンション投資がインフレに強い」と言われる理由でもあります。但し同じインフレの下でも。立地・設備・管理などが優れたマンションはインフレに伴い家賃が上がりやすいですが、そうでないマンションは例えインフレになっても家賃の上昇などの恩恵は受けづらくなります。
アフターコロナにおける外的要因によるインフレも
現在の日本経済は世界経済と密接な繋がりがあり、今後アフターコロナにおいて各国における大規模な経済対策の下ではインフレというものが付きまといやすい環境に拍車がかかるのではないでしょうか。
そうなると、あらゆる資源を輸入に頼っている日本においては「外的要因によるインフレ」の発生が考えられます。 そこにさらに岸田政権における給与所得増大計画が現実見を帯びてくれば、いい意味でのインフレも合わせて従来になかった新しい経済状況が生まれてくる可能性も秘めています。
マンション市場は順調に推移
東京五輪終了後は不動産価格の下落という憶測もありましたが、マンション価格は投資系・ファミリー系共に販売状況は好調に推移しています。年末に向けてワクチン接種率が上がり経口薬なども普及してくれば、新しい明るい経済状況も期待されます。
このような時代の中で「老後の経済的な生活設計の不安要素」は払拭されるまでには全くいたっていませんので、インフレ時代における自分自身の資産管理について改めて考える良い機会ではないでしょうか。 現在においては可処分所得が増えず、貯金もなかなかできない方というも多いと思われますが、わずかな自己資金でできるワンルームマンション投資などをする事で、長期的な視点でインフレ対策ができる訳です。