2022年を振り返って【プロが教える不動産投資コラム】
新年明けましておめでとうございます。2022年寅年も国内外において多くの出来事がありました。昨年一年間における経済動向や不動産投資市場について振り返りながら検証してみたいと思います。
安倍元総理銃撃事件と金融緩和
2022年の大きな出来事と言えば、まず7月の白昼に起こった「安倍元総理銃撃」の事件でした。安倍元総理は長期に渡り政権の舵を取り日本経済や外交も含め大きな功績を残されました。
特に「アベノミクス」と呼ばれる経済対策を推進し株価も大きく上昇しました。この中で「大規模金融緩和」と言われる低金利政策が続けられ、2021年の岸田内閣にも継続され2022年も低金利の年となりました。
しかし2022年も年末の12月20日には、長期金利の許容変動幅を0.25%から0.5%に拡大するとの報道があり、今後の金利動向にも関心が高まっています。
低金利はマンション市場にも大きく影響
低金利は不動産市場にも大きな影響を与えました。低金利により実需系のマンションも購入しやすくなり、新築マンション価格も需要が増大し価格も上昇しました。
不動産経済研究所の調べによると2022年1~11月の新築マンション平均価格は東京23区で8,230万円なり、長期的に見ると大きく上昇しました。
例えば5年前の2017年の7,089万円と比較しても1,000万円以上の増加となっています。これは需要の拡大に加えて地価・建築費の上昇も要因となっていると考えられます。
投資用のマンションも近年は上昇傾向にあります。2022年1~6月の首都圏の平均価格は3,221万円となりました。5年前の2017年1~6月は2,826万円でしたので395万円、約13%の上昇となりました。
ウクライナ侵攻とインフレ
2022年2月にロシアがウクライナ侵攻を開始しました。この紛争により世界中で食料やエネルギー価格の上昇につながりました。新型コロナによる物資の需要増加とそれに対して人手不足や物流の停滞により物価が急上昇していましたが、ウクライナ情勢によりさらにインフレに拍車がかかっています。日本の消費者物価指数は2022年8月から前年同月比で3%の増加となり10月には3.7%、11月には3.8%と上昇率も拡大しています。
生活必需費品価格も値上がりとなり、食糧やエネルギー価格は大きく上昇しています。
また世界的にもインフレが進行し米国や欧州の各国では消費者物価指数が大きく上昇し利上げが行われました。こうした物価上昇の中で将来に対する不安も高まってきた年と言えます。
こうしたインフレをきっかけとして将来への備えの重要性を認識した方も多いのではないでしょうか。
また既にワンルームマンションを購入されている方にとっては資産価値の上昇や賃料の上昇などの可能性もあり、インフレに強いワンルームマンション投資のメリットが享受できる環境となりました。
2022年の消費者物価 総合指数(2020年=100)
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
指数 | 100.3 | 100.7 | 101.1 | 101.5 | 101.8 | 101.8 | 102.3 | 102.7 | 103.1 | 103.7 | 103.9 |
前年同月比 | 0.5% | 0.9% | 1.2% | 2.5% | 2.5% | 2.4% | 2.6% | 3.0% | 3.0% | 3.7% | 3.8% |
円安が進み一時1ドル150円台に
2022年の後半には円安が急激に進行しました。円安により海外から輸入物価は値上がりする事になり世界的なインフレと相まって輸入物価指数も急上昇しています。
日銀の「企業物価指数」によると輸入物価指数は3月まで前年比30%を超え、4月から10月までは40%を超えました。こうした輸入物価の上昇の中で国内の物資の価格も大きく上昇となり、国内のインフレを後押しする要因ともなっています。
2022年末頃には円安もやや落ちつきを見せ、2022年12月20日には日銀の金融緩和政策の修正を発表した事も合わせて、1ドル=130円台まで円高が進みました。但し依然として円安と言える水準にあり、今後の動向も注視されています。
輸入物価指数(円ベース)2020年平均=100
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
指数 | 139.1 | 142.6 | 147.6 | 162.8 | 169.2 | 178.1 | 183.1 | 179.1 | 189.0 | 188.5 | 178.9 |
前年同月比 | 35.4% | 33.0% | 32.6% | 42.6% | 44.9% | 48.3% | 49.2% | 42.8% | 48.7% | 42.3% | 28.2% |
東京都の転入超過人口はプラス幅が拡大に
近年は新型コロナの影響もあり東京都から近郊郊外へ移転する方も多い傾向にありましたが、2022年は再び都心回帰が強まってきた年と言えます。
東京都の人口移動状況を見てみると、2021年は転入超過人口が5,433人であったのに対して2022年1~11月は39,317人と大きく増加しています。
これは新型コロナによる緊急事態宣言の終了など不安化が薄らいてきている事も要因と思われます。
東京都の転入超過人口は2020年には31,125人でしたが新型コロナの影響を受ける前の2019年は82,982人、2018年は79,844人と多かったので、今後はこの水準に近づいていく事も予想されます。
インバウンドの緩和
新型コロナによる訪日外国人の規制も2022年9月には入国者数の上限を2万人から5万人に引き上げ、さらに10月からは上限の撤廃など大幅に緩和となりました。
訪日外国人数は2020年には411万人、2021年には24万人と大きく減少しましたが、新型コロナ前の2019年には訪日外国人数は3,000万人を超えていました。訪日外国人数は2022年1月から11月までの累計は246万1900人と増加傾向にあり今後はコロナ前の水準への回復も期待されます。
こうしたインバウンドに加えて「全国旅行支援」などもあり国内の旅行者数も増加傾向にあり、ホテルの稼働率も上昇しました。
地価は新型コロナの影響から回復基調に
地価はアベノミクス発足以来、都心部などを中心として上昇傾向にありましたが、新型コロナによる影響で2020年頃から上昇率が縮小あるいは下落となる地点が多く発生しました。特にインバウンドによって大きく地価が上昇した大阪の商業地などはその分下落幅も大きくなりました。
しかし2022年にきて地価は回復基調が見られるようになってきました。2022年の公示地価では全国平均(全用途)が2年ぶりに上昇に転じました。また東京都でも住宅地・商業地ともに2年ぶりに上昇に転じています。
但し地域別に見ると下落しているエリアと上昇しているエリアに分かれています。下落となったのは都心部など上昇率の高かったエリア、上昇しているのは都心周辺部で再開発が進行、または交通利便性の優れたエリアなど街の将来性の高いエリアとなりました。
しかし都心部では地価は下落傾向とは言え依然として高い水準にあります。
都内では大型の再開発が進行しており、渋谷で桜丘エリアでも2023年度の竣工に向けてビルも完成してきています。また東京駅八重洲口エリアでは「東京ミッドタウン八重洲」が2022年9月に先行オープンしました。こうした都心部の発展も周辺や沿線上の地価上昇や住宅需要の増加につながる可能性もあります。
東京の新線・延伸計画
2022年には都内の新線・延伸計画もいくつか発表されました。
3月には地下鉄有楽町線・南北線の延伸につき鉄道事業許可の報道が東京メトロからありました。有楽町線は「豊洲」駅から「住吉」駅まで延伸する計画で東京東エリアから湾岸エリアへのアクセスが向上します。南北線は「白金高輪」駅から「品川」駅まで延伸するもので、南北線からリニア中央新幹線の開業が予定されている「品川」駅の接続が向上します。
6月にはJR「蒲田」駅と「京急蒲田」駅を結ぶ「新空港線(蒲蒲線)」が東京都と大田区で費用負担について同意したとの発表がありました。開業すればJRや東急線などから羽田空港へのアクセスが向上すると考えられます。
11月には東京都から都心部・臨海地下鉄構想の発表がありました。東京駅からベイエリアの「有明・ビッグサイト(仮称)」駅まで新たな地下鉄を運行する構想です。つくばエクスプレスを東京駅まで延伸してこの線と結ぶ構想や羽田空港と東京駅を結ぶ「羽田空港アクセス線」との接続も検討されています。
まとめ
以上2022年の出来事をざっと振り返ってみました。各方面で新型コロナからの影響を脱しつつある事が分かります。
東京では再開発や新線計画も多くなり将来的なポテンシャルも高まっています。東京の地価やインバウンドなども今後は本格駅な回復軌道に乗る可能性も高くなってきました。
新型コロナからの脱却のターニングポイントとなった年だったのではないでしょうか。