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好転する就業状況と不動産投資【プロが教える不動産投資コラム】

東京都には年間を通じて、特に春の季節になると多くの方が転入してきます。その多くは20代などの若い世代で就職のために東京に転入してきます。こうした転入人口の多くは単身世帯住宅の賃貸需要層となります。

景気の回復に伴い求人が多くなってきている事から給与状況も上向きつつあり、東京ではさらに再開発により今後も就業人口も増加すると見られています。

今回は東京都の就業状況と不動産投資についての関連性について検証してみたいと思います。

インフレにより実質給与は減少ですが

日本ではインフレが続き、電気代などのエネルギー価格を始め食料品など多くの品目において物価が大きく上昇し家計にも影響を与えています。実際筆者もスーパーに行くとその値上がりに驚く事が増えてきました。余談ですが読者の皆様「秋刀魚(サンマ)」は2008年から見るとどの位値段が上がったでしょうか。それはなんと8.5倍も上がっているそうです。この間漁獲量も10分の1となり他の鮮魚にも影響が出ており、その原因は地球温暖化による海温の上昇と言われています。また電気・ガス代も大きく上昇しその金額にも驚かされます。

しかしこうした中でも給与はそれほど大きく伸びていない事が問題となっていました。厚生労働省の発表した2022年の毎月勤労統計調査によると、名目賃金にあたる現金給与総額は前年比2.1%増となり1991年以来の伸び率となりました。しかし物価(持ち家の家賃換算分を除く総合指数)上昇が3.0%となり賃金の伸びを上回り、実質賃金は0.9%の減少となりました。

さらに最新の2023年2月は実質賃金はマイナス2.6%と11ヵ月連続で減少が続くなどインフレの影響も大きくなっています。

2022年の実質給与は減少に

賃金物価実質給与
上昇率2.1%3.0%▲0.9%
<厚生労働省「2022年の毎月勤労統計調査」>

上昇傾向が見られる給与水準

岸田総理は年頭に、経団連を始め日本の中小企業にまで及んで給与の引き上げを要請しました。また新型コロナの収束にしたがって景気も回復してきており、人手不足も台頭してきている事から給与も上昇傾向が見られるようになってきています。

労働組合の連合が発表した2023年春闘の中間集計による、ベアと定期昇給を合わせた平均賃上げ率は3.70%となり、前年同期の2.11%を大きく上回りました。

さらに日本商工会議所の調べによると、全国の中小企業のうち2023年度に賃上げを予定している割合は58.2%と前年の45.8%から12.4ポイントと大きく上昇しています。

内定率は上昇傾向に

2022年は就職内定率も高くなりました。

厚生労働省によると2023年3月に卒業する大学生の就職内定率は2月1日現在で90.9%と前年同月比で1.2ポイント上昇、2年連続の前年比上昇となりました。

新型コロナの影響で2021年、2022年は90%を下回りましたが、コロナ収束につれて回復傾向が見られます。新型コロナ発生前の2020年は91.9%と高い水準であり、今後はさらに上昇する可能性もあります。

就職内定率の推移(2月1日時点)

2019年3月卒2020年3月卒2021年3月卒2022年3月卒2023年3月卒
内定率91.9%92.3%89.5%89.7%90.9%
<厚生労働省「令和5年3月大学等卒業予定者の就職内定状況(2月1日現在)」>

採用を増やす企業も増加

時事通信が主要100社を対象に行った調査によると、2024年に新規採用を増やす予定の企業は前年より増加し、2年連続で3割を超えました。

2023年の採用では約2割の企業が当初の予定人数を満たせなかったとしており、「売り手市場」となっている事が分かります。筆者も多くの不動産会社の人事部担当の方との交流がありますが、多くの担当者の方が新卒採用に苦労しているという事です。

また多くの企業では初任給の引き上げを予定しており、採用に向けて待遇をアップさせている企業が多い事が分かります。

こうした給与水準の拡大により、ワンルームマンションなどの賃貸住宅の家賃として払える額も大きくなり、求められる立地や設備などのグレードもアップしていく事も考えられます。

人手不足の問題が発生

インバウンドの減少により影響を受けていた旅行やホテル、飲食店なども集客も回復しつつあり、人手不足も問題になってきています。

特に2023年には新型コロナの収束に従い国内及び海外からの観光客も増加しています。厚生労働省が発表した2023年2月の新規求人倍率は、宿泊・飲食サービス業では前年同月比37.2%と大きく増加しています。

こうした中で企業は人員確保のために福利厚生にも力を入れていますが、その中でも大きいのは「住宅」です。また貸す方(オーナー様)から見ても大手企業などが借り上げる「法人賃貸」の場合は安定した賃料収入が得られ、また入居者も身元確実で安心と言えます。今後も条件の良い良質な住宅は安定した需要が見込まれると考えられます。

再開発により都心部に企業が集積

東京の都心部や主要ターミナル駅周辺では大規模な再開発が進行しています。大型のオフィスビルが開業すれば新規に企業が移転してきますので就業人口も大きく増加します。

渋谷・東京・高輪ゲートウエイを始め六本木などでも大規模な再開発が進行しています。将来的には周辺のみならず沿線上にも大きな住宅需要が見込まれます。

東京都への転入人口は3月が最も多く、2022年3月には43万9,787人が東京都へ転入し、2021年の420,167人から2万人近く増加しました。さらに転入人口から転出人口を引いた「転入超過人口」は38,023人となり前年の5,433人から大きく増加しています。こうした転入者の内訳は若い世代が多く、また転入超過人口の内20~24歳が多い傾向にあります。

東京都の就業人口が増える中でこうした新たな若い世代の住宅需要も増加が見込まれます。

テレワーク率は低下傾向に

新型コロナを契機に進んだ東京都の企業によるテレワークですが、非常事態宣言中の2021年には一時65%となるなど高い割合でしたが、2023年2月には51.1%と2020年4月以降で最も低い数値となりました。

都心部への出勤が増えれば都心部や都心部周辺の住宅の需要も増加すると考えられます。

しかし都心周辺部ではあるが都心への交通アクセスのよい立地も、交通利便性にプライオリティを置く若い世代には依然人気が高く、ワンルームマンションの立地も多様化していくと考えられます。

まとめ・不動産投資への影響は

このように就業人口の増加や給与水準の上昇で、東京都の賃貸住宅の需要は今後も底堅く推移すると考えられます。

特に新型コロナからの回復と東京などで進む再開発により、今後は就業人口、給与水準ともにますます上昇する可能性があります。

福利厚生としての住宅需要は「法人賃貸契約」という形で広がれば、マンション経営にとっても安定した運営が可能となります。

ただしこうした需要に応えられるマンションの条件としては、立地、マンションの質、設備、セキュリティなどもしっかりとしたグレードの高い事が求められるようになる可能性もあります。

こうした条件を満たすワンルームマンションに投資する事で、今後の需要の波に乗った安定したマンション経営が可能になると考えられます。

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