1. HOME
  2. プロが教える不動産投資
  3. 通勤人口と不動産投資事情【プロが教える不動産投資コラム】

通勤人口と不動産投資事情【プロが教える不動産投資コラム】

2023年も少しずつ秋めいた季節に移り変わってきています。最近の国内経済動向を見ても回復の兆しが顕著であり、明るい動きも見えつつあります。

資産運用に対する関心度が高まる中で、不動産投資に関心を寄せる方が増えています。不動産投資をする上では空室率、入居率などが大切な要素の一つとなりますが、就業人口の検証も極めて重要なファクターとなります。

今回のコラムでは東京都における労働状況とエリアごとの就業人口について検証しつつ、不動産投資についても考察してみたいと思います。

就業人口は全体で増加傾向に

全国では働く人は増えているのでしょうか。総務省の発表した労働力調査(基本集計) 2023年(令和5年)7月分結果によると、全国の就業者数は6,772万人で前年同月と比べて17万人も増加しています。

男性は3,713万人で1万人の増加ですが、女性は3,059万人で18万人の増加となっています。また正規の職員・従業員に関しても女性は前年同月比14万人も増加しており、女性の就業者が大きく増加している事が分かります。

特に女性の就業者数が増えている理由としては最近のタワーマンションの購入例で出るように、パワーカップル、つまり共働き夫婦が増え、昔のように専業主婦の割合が減少している事が挙げられます。また政府も女性及び子育ての家庭においての働きやすい環境づくりの推進も寄与していると考えられます。

今後は女性目線の住宅選びがますます重要視される可能性もあります。

テレワークは減少の傾向に

テレワークは新しい勤務形態であり新型コロナとともに一機に普及しました。しかし東京ではテレワークは減少傾向にあります。東京都の調査によると緊急時代宣言のあった2021年頃には東京都のテレワーク率は60%を超える月も多くありましたが、その後低下傾向にあり2023年4月以降は40%台で推移しています。

つまり今後は都心などに通勤する方が増加する可能性があります。一時期テレワークの普及により郊外の住宅が注目を集めましたが、再び都市へアクセスしやすい住宅の需要も高まる可能性があります。テレワークにおいては通勤と在宅勤務の使い分けという、いわゆる「ハイブリッド方式」を採用する企業もあり、いずれにしても通勤しやすいエリアの住宅需要は高止まりすると考えられます。

今後の日本では働き手が不足する時代に

現在労働人口の不足が問題となっています。人手不足は各業界に深刻な影響を与えています。日本商工会議所の調べによると、中小企業の68%が「人手が不足している」状況にあるとの事です。

人口が減少していくと、人口は都市部及びその周辺に集中する傾向がみられる事があります。就業人口は増加していますが、その就業者の多くは都心部に集中する傾向が見られます。これは都心部に多くの企業などが集中しており、雇用機会が多いためでもあります。つまり今後の不動産投資は都市部にアクセスしやすい事がますます重要であると考えられます。

日本には多くの産業がありますが、製造業においては急速なテクノロジーの進化により自動化が進められています。しかし、多くのサービス業を有する東京の産業構造からすると常に人手が必要なマーケットとも言えます。特に駅に近いエリアの求人需要は高いと考えられ、雇用機会の増加、賃金の上昇などにも繋がります。

また、近年は人手不足により企業の福利厚生にも関心が高まっています。とりわけ社宅整備の注目度が高く、投資系ワンルームマンションなどでは法人賃貸需要も高まっていると聞いています。

東京都の労働力は増加傾向に

東京の労働力(労働力調査結果)によると2023年4~6月期平均の東京都の就業者数は841万8千人で前年同期比5万3千人の増加です。しかし、このうち自営業などを除く雇用者数は768万8千人で、そのうち男性は414万7千人で前年同期比1万6千人の増加ですが、女性は354万人で同3万4千人の増加となり女性の雇用者の増加数の方が多くなっています。 

従業者規模別に見ると500人以上規模が306万3千人、30~499人規模が234万8千人、1~29が171万7千人と従業者規模の大きい従業者が多い事が分かります。つまり東京では大企業の従業者が多い事が分かります。また大企業の中でも金融、IT、情報、通信サービスの従業者が多いと考えられます。

従業者規模別雇用者数(非農林業)

規模雇用者数
1~29人1,717 千人
30~499人2,348 千人
500人以上3,063 千人
合計7,678 千人
<東京都「東京の労働力(労働力調査結果)令和5年4~6月期平均」より作成>

どんなエリアに通勤しているのか

では東京23区に通勤してくる人が多いのはどの区でしょうか。大企業が多くあるのは都心などですが、他にも新宿・渋谷・池袋などにも多くの企業が集積しています。

在住人口と昼間人口の差(昼夜夜間人口比率)が大きいエリアが通勤による流入人口が多いと考えられますので、東京都の発表した「東京都の昼間人口」から昼夜間人口比率の多い区のランキングを作成したのが次の表です。

12位までは昼夜間人口比率が100以上、つまり昼間人口の方が多い区となります。

予想通り都心三区(千代田区、港区、中央区)などは昼夜間人口比率が高く、特に千代田区は平均定住人口の16.3倍の人数が通勤してきている事が分かります、また港区、中央区なども4倍を超えています。新宿区、渋谷区なども2.4倍を超える数値となっています。また区全体の平均なので「池袋」などのある豊島区は若干低くなっていますので、さらに詳しく丁目ごとに見てみましょう。

東京23区昼間人口比率ランキング

昼夜間人口比率
1位千代田区約16.3倍
2位港区約4.6倍
3位中央区約4.5倍
4位新宿区約2.4倍
5位渋谷区約2.4倍
6位台東区約1.5倍
7位品川区約1.5倍
8位文京区約1.5倍
9位豊島区約1.3倍
10位江東区約1.3倍
11位墨田区約1.0倍
12位目黒区約1.0倍
<東京都「東京都の昼間人口」より作成>

東京23区の中で通勤してくる方が多いエリアは

こうした区の中でもエリアによって昼夜間人口が大きく異なります。

(1)千代田区

千代田区では最も昼夜間人口比率が高いのは「大手町」で在住人口2人に対して昼間人口6万5,452人で昼夜間人口比率は3万2726倍となります。次いで「内幸町」で在住人口1人に対して昼間人口2万8,753人 で昼夜間人口比率は2万8753倍。「丸の内」は在住人口10人に対して昼間人口14万1,182人で昼夜間人口比率1万4118倍となります。

こうした東京駅周辺のエリアは在住人口が非常に少なく、昼は通勤して来る方が多いビジネス街ですので昼夜間人口比率も非常に大きくなります。また「大手町」と「丸の内」を合わせると昼間人口は20万人と就業人口も非常に多いエリアです。東京駅周辺は日本を代表するオフィス街が形成されており、通勤人口が多い事もうなずけます。

他に官庁街で多くの省庁などが連なる「霞が関」なども昼間人口6万9,228人で昼夜間人口比率5,769倍と通勤者の多いエリアと言えます。

(2)中央区

中央区では「東京」駅前で再開発の進む「八重洲一丁目」が昼間人口12,381人、昼夜間人口比率1125倍となり、「八重洲二丁目」が昼間人口12,307人、昼夜間人口比率455倍となっています。八重洲エリアでは「東京ミッドタウン八重洲」が2023年に開業、また周辺では高さ390mとなる「トーチタワ-」の建設も進んでおり今後も就業人口の増加が見込まれます。

日本を代表する商業アドレスでもある「銀座」は昼間人口103,745人で昼夜間人口比率30.8倍ですが、銀座は特に5丁目や6丁目の昼夜間人口比率が高くなっています。

(3)港区

港区も企業が多く集積し就業人口・昼間人口が多い区ですが定住人口もある程度あるため、昼夜間人口比率は東京駅周辺のように大きくはなりませんが、それでも高い水寿となっています。

「虎ノ門ヒルズ」などの再開発の進む「虎ノ門」エリアは昼間人口が多いですがレジデンスも建設されており、「虎ノ門二丁目」は昼夜間人口比率799倍と高くなっています。

「六本木」は昼間人口56,089人で昼夜間人口比率はちょうど4倍程度です。

「赤坂」「北青山」などでも丁目によっては昼夜間人口比率が非常に高くなっています。

(4)新宿区

新宿区では高層ビル街・都庁などのある「西新宿」の昼夜間人口比率が高く昼間人口23万8,775人で昼夜間人口比率10倍ですが、西新宿1・2丁目などは昼夜間人口比率が900倍を超えています。区内には他にも昼夜間人口比率が高いエリアが点在します。

(5)渋谷区

渋谷区で駅に近い「渋谷」「道玄坂」「宇田川町」」の昼夜間比率が高くなっています。

渋谷駅周辺では「100年に一度」と言われる再開発が進行中で、「桜丘口地区」の再開発も完了し、今後も大規模な再開発が続くなど就業人口の増加も期待されるエリアです。

渋谷区では他にも「神南」「千駄ヶ谷」「神宮前」「代々木」など昼夜間人口比率が高いエリアが多くあります。

(6)豊島区

豊島区では「池袋」駅東側である「東池袋」が平均で昼夜間人口比率が35倍で「東池袋1丁目」が20倍、「南池袋」が44倍で「南池袋1丁目」が9倍となっています。

「池袋」駅東側は再開発が進むエリアで「ハレザ池袋」が2020年に開業、今後は「東池袋一丁目地区」再開発や「東京国際大学」の建設も予定されています。また「サンシャイン60」や大型商業施設などもあり就業人口の多いエリアです。

 池袋駅西側は「池袋」が1.4倍で「池袋2丁目」が2.3倍、「西池袋」が2.9倍ですが「西池袋1丁目」の58.9倍などが特に高くなっています。

西口では「池袋マルイ」の跡地や、「西池袋1丁目」などの計画が進み、駅周辺も大きく変貌する可能性もあります。

池袋駅周辺以外にも、山手線の駅周辺の「巣鴨」「高田」「北大塚」「南大塚」などに昼夜間人口比率が高いエリアが見られます。

都心へアクセスしやすい沿線を選択する事が重要

以上ざっと見てきましたが、やはり主要駅の近くには多くの企業があり昼間人口比率も高い傾向にあると言えます。JR東日本の乗降客数を見ても1位は「新宿」駅、2位は「池袋」駅、3位は「東京」駅となり利用者が多くなっています。

昼夜間人口の比率などから通勤してくる人が多いエリアの傾向が分かるかと思いますが、不動産投資の立地としてはこうしたエリアにアクセスしやすい事が重要な条件となってくる訳です。今後どのようなエリア沿線が狙い目になっていくのかの参考になるのではないでしょうか。

ある程度限られたエリアとなりましたが、沿線選びはこうした視点も重要となってくる訳です。

関連記事

【はじめよう、お金のこと】72ってなに?