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人生100年時代の生活設計と資産寿命【プロが教える不動産投資コラム】

日本人の平均寿命が長くなる中で、将来の生活設計の重要性が増してきています。収益不動産の資産価値を長期間保つためにマンションの建物管理の重要性も高まってきています。

今回のコラムでは長寿化による生活設計とマンションの資産寿命や建替えの要件などについて検証してみたいと思います。

長寿社会と健康寿命

日本人の平均寿命は戦後長寿化が続き、厚生労働省の発表した2023年の簡易生命表によると女性87.14歳、男性81.09歳となっています。「人生100年時代」と言われるようになってきています。戦後の昭和22年には平均寿命が女性で53.96歳、男性50.06でしたので、30歳以上伸びています。

さらに遡って見て見ると、明治24~31年にはなんと女性44.3歳、男性42.8歳と現在の約半分となっていました。

現在の65歳時点の平均余命(※1)を見ると女性で24.3歳、男性で19.52歳なので、65歳と合わせて女性89.3歳、男性84.52歳となります。日本の歴史上いかに平均寿命が長くなっているかが分かります。

こうした中で「健康管理」が注目されています。東京都の「65歳健康寿命(2022年)」によると要支援1(※2)になる年齢は女性で82.93歳、男性で81.25歳となっています。

高齢でも生き生きとした生活をするためにも「健康寿命」が重要となってきます。

(※1)それぞれの歳からの平均寿命
(※2)日常生活は基本的に自分だけで行えるが、掃除や身の回りのことの一部において、見守りや手助けが必要

リタイヤ後も働き方は様々

長寿社会の到来により、リタイヤ後も働き続ける方が増えています。

内閣府による世論調査では「何歳まで仕事をしたいか、またはしたか」について、最も多いのは61~65歳で28.5%となり、年金受給年齢までは仕事を続ける方が多くなっています。

また66歳以降には21.5%の方が、さらに71歳以降には11.4%の方が仕事をしたい、またはした事が分かります。66歳以上は実に42.6%の方が仕事を希望という事になります。

さらにその年齢まで仕事を続ける理由として「生活の糧を得るため」が75.2%で最も多くなっています。

日本人の平均寿命が延びる中で、当然の事ながらリタイヤ後の経済的な生活設計の重要性が増してきている訳です。

◼︎何歳まで仕事をしたいか、またはしたか

年齢50歳以下51~60歳61~65歳66~70歳71~75歳76~80歳81歳以上その他無回答
割合7.8%14.8%28.5%21.5%11.4%6.1%3.6%5.1%1.1%
<内閣府「生活設計と年金に関する世論調査」(令和5年11月調査)>

◼︎その年齢で退職したい、またはした理由(上位3回答)

順位理由割合
1生活の糧を得るため75.2%
2いきがい、社会参加のため36.9%
3健康にいいから28.7%
<内閣府「生活設計と年金に関する世論調査」(令和5年11月調査)>

※収入を伴う仕事を「61~65歳」「66~70歳」「76~80歳」「81歳以上」までしたい、またはしたと答えた者に、複数回答

住宅の寿命も延びる

また日本人の平均寿命が延びると共にマンションなど住宅の寿命も大きく伸びています。分譲マンションのストック数は2023年末時点で約704.3万戸ですが、築40年以上のマンションは約136.9万戸存在します。今後もマンション寿命の延びから築年数の経過したマンションは増加すると考えられます。

また将来のための資産運用としてマンション投資を考えている方には、そのマンションが収益を上げる事ができる「稼働期間」が気になるところではないでしょうか。

建築技術の向上によりマンションの寿命は長くなってきています。高度経済成長期に建設され今なお稼働しているマンションも多くあります。現在の新築マンションはこれらの過去のマンションよりもさらに耐久性も高くなっていると考えられます。

つまり35年でローンを組んでも、ローン完済後にも安定的に賃料を得られる収益物件として老後の生活の大きな支えとなります。

立地・構造の重要性

今年の大型台風でも見られるように、年々自然災害の規模が増してきています。インフラのみならず民間の建物にも大きな被害が及ぶ事もあります。

地盤の良くない土地や崖の近くの木造住宅などがその典型的な例です。人生100年時代の資産として「災害に強い」事も条件となってきます。つまりこうした災害の被害を受けづらい立地・構造を選定する事も重要となってきます。

古くからの住宅地や商店街がある場所、寺社仏閣や史跡などのあるエリアも昔から人が住んでいた安定した地形と考えられます。過去の水害や液状化の状況なども調べたり、自治体などの発行しているハザードマップなども確認する事も重要です。

また構造面から見ると、鉄筋コンクリート造のマンションは耐久性・耐火性も木造住宅と比べて高く、比較的安心と言えます。住宅の耐震性能は大きな地震が発生する度に改正されてきましたので現在の新築マンションは耐震性能にも優れていると言えます。

国土交通省は2025年度の予算として、南海トラフ巨大地震などの対策や密集市街地対策の他、住宅・建物の耐震化に予算を大きく要求しています。道路沿いの建物の耐震化や「住宅・建築物防災力緊急促進事業」として住宅の耐震改修を進める方針です。このように既存住宅の耐震化も進む可能性があります。

高まる建物管理と会社選びの重要性

最新の建築技術が高くなっているからと言って、どんなマンションでも寿命が高いとは限りません。マンションの建物部分は時間の経過と共に劣化していきますが、建物の管理によってその寿命も大きく伸ばす事が可能となります。つまり長い資産寿命が期待される中で「建物管理の重要性」が増してきています。

ワンルームマンションもファミリーマンションと同様に建築計画の段階において長期修繕計画が策定されていますので、計画的に建物のメンテナンスが行われます。また必要な費用は修繕積立金として毎月積み立てられてられる事になります。

建物の管理は管理組合で行いますが、実際の業務は管理会社に委託されて行われます。ワンルームマンションのオーナー様はマンションに住んでいない事が多いため、管理会社の選定も重要となってきます。

また同じマンションでも一つの会社で多くの供給をしている会社は、それだけ管理棟数が多いので、一定の時期に一定の発注ができるので、コストのダウンサイジング化ができる場合もあります。

建物管理のコストは上昇傾向に

建物の維持管理に必要な修繕費は建築費の上昇とともに上昇傾向にあります。毎月支払う修繕積立金も不足する事態も発生しています。

修繕積立金は「均等積立方式」「段階増額積立方式」の2種類があります。「段階増額積立方式」の場合は当初修繕積立金を安く設定しており、後から増額する方式です。

修繕積立金はマンション経営にも必要な経費ですので、将来の増額にも備える必要もあります。修繕積立金が高いと毎月のキャッシュフローが低下し、敬遠され気味ですが、実はマンションの資産価値を守る重要な経費となっています。

但し同じマンションでも共用部が豪華なマンションとシンプルなマンションとでは維持管理費も当然変わってきます。ワンルームマンションでも多いシンプルな四角い形状である「板状型マンション」などは、複雑な形状のマンションと比べて修繕費も安い傾向にあると言えます。

進むマンションの維持管理の促進と資産寿命

今回のコラムを総括いたしますと、これからの時代のマンションの選択肢として大切な要件はキーワードとして「資産寿命の長さ」が挙げられます。

民間部門における建物管理の質の向上もさることながら、近年では行政部門における維持管理の促進政策も進んでいます。例えばマンションの建替え要件の緩和、また比較的新しい制度としてはマンションにおける敷地売却権制度(※3)の出現など官民両方のベクトルからマンションの資産価値キープが進んでいます。

健康管理と同様、資産の管理に改めて目配りする事が大切と考えます。

(※3)敷地売却制度:マンションの敷地を売却して分配金当を受け取れる制度(条件あり)

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