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2024年 経済・不動産市況&世相を振り返って【プロが教える不動産投資】

2024年もあっという間に年末を迎える時期になりました。読者の皆様の中でもそろそろ今年を振り返ったり、クリスマスや年末の大掃除に向けてあわただしい日々を送っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

今回のコラムでは2024年における経済・不動産市況、また世の中で起きた事象も含めて1年を振り返ってみたいと思います。

2024年の年明けには大規模な地震が発生

まず今年あった社会的事象について述べてみたいと思います。

まずは1月の元旦に石川県能登地方における大きな地震でちょうど正月のほろ酔い気分の筆者もテレビの報道にくぎ付けとなりました。地震に一定の周期があるかどうかは素人の筆者には分かりませんが、実は60年前の1964年にも新潟地震が発生し多くの被災者が出ました。住宅の最も大切な役割は「人命を守る」という大きな役割を改めて住宅業界・社会全体が認識を持つ事が大切だと感じました。

国内では石破政権が誕生

岸田総理が満期終了後の不出馬を表明し、その後の自民党総裁選では石破氏が選ばれ、10月1日に内閣総理大臣に就任し石破政権が誕生しました。安倍~岸田総理と続いた経済政策のラインを概ね継承し、デフレ脱却の経済政策を実施する方針です。

また10月の衆議院選挙では自民公明の与党が15年ぶりに過半数割れし、国民民主党の躍進が注目されました。国民民主党は年収の壁と言われる「103万円の壁」の引き上げを主張しており、このコラムを執筆中の12月半ばでも未だ協議が続けられています。

年収の壁の引き上げは実質的には減税となり、アルバイト・パートさんなどの人手不足の問題とも相まって国民の注目を集めています。

特に学生さんはアルバイト収入が増える事によりクオリティの高いワンルームマンションの賃貸需要にもいい影響を与えそうです。

世界情勢 ~パリでは五輪が開催、米国ではトランプ氏が次期大統領に

明るいニュースとしては100年ぶりにパリで五輪が開催されました。また今年の世相を一時で表す「今年の漢字」は「金」に決まりました。これも多くの日本人選手が活躍した象徴とも言えます。

米国大リーグ・ドジャースの大谷選手の大リーグ初の50-50を始め、ホームラン王・MVPという日本人から見たら異次元の活躍ぶりも話題となりました。実は今から60年前の1964年には日本人初の大リーガ-が誕生した年でもありました。それは村上雅則氏で、しかも王貞治選手が日本記録のホームラン55本を記念すべき年でした。

米国ではトランプ氏の演説中に暗殺未遂事件が起こりましたが、これも、1964年に米国においてケネディ大統領暗殺事件が発生した年でもありました。

また米国ではトランプ氏が大統領選に勝利し、今後予想されるのは関税の強化、移民対策、米国民の給与所得アップ、法人税の減税等、いずれも米国経済におけるインフレにつながる要素が多岐に含まれています。

経済面ではマイナス金利が解除に

今年話題となったのは新紙幣の発行で、「日本資本主義の父」と言われ銀行や多くの企業の設立などに携わった渋沢栄一氏の功績が改めてクローズアップされた年でもありました。

住宅ローン金利においては日銀による「マイナス金利の解除」が敢行されましたが、さほど金利は上昇しませんでした。特に多くのユーザーが利用している変動金利については上昇が小幅で、中にはむしろ下げている金融機関もある位です。

この背景には依然実質賃金が上がらないという現状があるからです。今年の6月7月といったボーナス月には一瞬実質賃金が上がりましたが、円安、人手不足を背景に物価上昇率が非常に高く、金利を上げる水準には程遠い状況が続いた年でもありました。

株価は史上初の4万円超え

今年は株価上昇の年でもありました。3月にはついに日経平均株価が史上初の4万円台を超え、個人の金融資産も2,100兆円を超えるという時代に突入した年でもありました。

ここで起きている事はまさに資産格差です。所得が高い資産がある方と、そうでない方の格差が非常に拡大した年でもあり、これは社会全体を見れば全体の底上げがますます大切になった年とも言えます。

そのような流れから今年は新NISAもスタートし若い方を中心に新たに資産運用を始める方が多くなった年とも言えます。但し日経平均株価は8月に大暴落の事態を迎えました。NISAを始めたばかりの方にとってもショックが大きかったのではないでしょうか。

筆者が講演させて頂く不動産投資セミナーでも若い方、特に女性の参加率がとても高まってきています。但しここで大切な事はあまりにも将来を見据えて投資するのではなく、まさに「今の生活を楽しむ」という事にプライオリティを置いて資産を形成していく事が大切かと提言したいと考えております。

インバウンドが大幅に増加

今年は何と言ってもインバウンド(訪日外国人数)が大幅な伸びを見せました。インバウンドは2024年1~11月までの累計が3,337万人となり過去最多を上回りました。このためホテルの需要が大幅にアップし、ビジネスホテル、ラグジュアリーホテル、旅館を含めて多くの宿泊施設が人手不足も相まって大幅に宿泊料金が上がりました。筆者もよく名古屋・大阪などに出張に行きますが、従来よりも平日で1.5倍、週末の金土で2倍に値上がりしたという感覚です。

特にビジネスホテルが立地する土地は都心から近い・駅に近いコンパクトな土地という事で正にワンルームマンションの用地と競合する傾向にあります。こういった背景から今年の基準地価も全国的に商業地を中心に上昇しました。

闇バイトの横行でセキュリティへの関心が高まる

あまりいい話ではありませんが、今年は「闇バイト」が横行し、私達の暮らしの安心をおびやかす状況となっています。そこで最近では住宅のセキュリティに対する関心度が極めて高くなっており、また比較的セキュリテイシステムの充実度の高い分譲マンションの購入及び賃貸の需要もさらに高まりつつあります。

東京のマンション市場は高価格化が進み、平均1億円の時代に

不動産部門において今年はマーケットの高価格化が進んだ年であったと言えます。

東京都の新築ファミリーマンションは10月には何と平均で約1億3,000万円となりました。都心エリアでは5億円とか10億円とかのスーパー億ションが多く出現し、筆者のオフィスのある中野駅前の大手財閥系不動産会社の発売するマンションは何と平均価格が1億7,000万円です。ファミリーマンション価格はこの10年で約2倍に跳ね上がりました。

一方投資用のマンション価格も上昇傾向となっていますが、賃料の上昇は遅れて顕在化していく傾向がありますので、今後タイムラグを経てから賃料・マンション価格が一層上昇する可能性を秘めています。

また今年は何と言っても建築費の上昇が非常に顕著になった年とも言えます。これは民間部門ではなく公共施設の建替え、ネット社会の浸透により物流施設の工事の増大、インフラ整備の増加、その中でマンションの建築費の円安による上昇、熟練工の人手不足、さらに省エネ基準の導入などを含めて建築費上昇の要因は多岐に渡りました。この現象は来年以降も続くと想定されます。

都内各地では再開発が進む

再開発においては、今年も非常に東京都内の多くのエリアで加速しました。例えば読者の皆様にも新宿西口の駅の構内を歩くと迷路のような状況が続いている事が分かると思いますが、現在小田急・京王デパートの建替え、西口駅前の東京都庁の高さを上回る二棟の高層ビルの建設などが進んでいます。さらに渋谷の大規模再開発、リニアを念頭に置いた品川から高輪ゲートウエイへのエリア、東京駅・大手町界隈、六本木・麻布、都心エリアの再開発など枚挙にいとまがない状況となっています。

今年10月に東京メトロが上場しましたが、東京メトロ有楽町線と南北線の延伸計画、また羽田空港へのアクセスアップのための新空港線(蒲蒲線)計画も含め多くのエリアで新線計画が進んだ年とも言えます。

再開発は不動産のポテンシャルを押し上げる最大のファクターとなりますので、これらの恩恵が来年以降顕在化していくと考えられます。

このように限られた紙面ですので今年起きた事象を筆者なりのコンパクトな視点で述べさせて頂きました。読者の皆様もご自身のプライベートの出来事、仕事上の出来事等を分類して文字に置き換えて形に残すという事をお勧めしたいと思います。

10年後の2034年になった時に、自分にとって2024年がどのような年だったのかを振り返るためにも大切と考えます。人間は忘れる生き物とも言えますが、大切な事だけは遥か忘却の彼方に行かないようにしておく事も大切かと考えます。

読者の皆さまには今年も多くの方々にコラムをお読み頂き、この場で感謝の意を表したいと思います。年末にかけてますます寒くなってきますので、どうぞご自愛下さい。

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