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大阪万博が呼び込むインバウンドの波。東京不動産市場が迎える新たな転機

ゴールデンウイークの賑わいも過ぎ去り、各地で多くの人々が観光を楽しむ光景が広がりました。筆者は話題のエジプト展を訪れるため静岡へ、新幹線で足を運びましたが、一方で「大阪・関西万博」もすでに来場者200万人を突破し、大きな盛り上がりを見せています。

本コラムでは、万博がもたらすインバウンド増加の背景とその経済波及効果、そして東京の不動産市場へ及ぼす影響について考察します。

「大阪・関西万博」開催、来場者は早くも200万人を超える(*5月6日現在)

「大阪・関西万博」が4月13日から開催となりました。空飛ぶクルマや火星の石なども話題となり、多くの方々が訪れています。来場者の目標は2,820万人とされており、5月の連休には来場者も増え、4月26日から5月6日の11日間で101万人の来場があり、累計では200万人を突破しました。

日本全国を始め世界中からも来場者の方々が来ています。大阪だけでなく、周辺・他県にも訪れるケースもありますので、その経済効果は極めて広範囲に渡ります。

長期に及ぶ経済効果と会場周辺の未来像は?

大阪万博では建設に係る経済効果だけではなく、広告、サービス、物流を始め鉄道、ホテルなど極めて多くの経済効果が期待されています。こうした経済効果も大きく、約3兆円とも言われています。

さらに大阪メトロも延伸され、会場の夢洲ではIRも計画されています。4月24日には万博会場の隣接地で統合型リゾートの起工式が行われました。

夢洲エリアでは大阪メトロ中央線が1月19日に「コスモスクエア」駅から「夢洲」駅まで延伸・開業しました。今後も「桜島」駅から「夢洲」まで延伸するJR桜島線の延伸や、大阪メトロ中央線を「九条」駅から「中之島」駅まで延伸する計画、京阪電鉄「中之島」駅から「夢洲」までの直通線を建設する事などが検討されています。こうした開発や鉄道ネットワークの進展は現在東京の多くの所でも進行しており、長期的なインバウンドの増加→回遊性の高まりにつながると考えられます。

インバウンドの増加

海外からの訪日外国人も増加してきています。新型コロナ発生前の2019年には訪日外国人数は3,000万人を超えていましたが、新型コロナの影響で2021年には一時24万人まで減少しました。しかしその後は増加が続いており2024年には新型コロナ前を上回る3,687万人となりました。2025年にも訪日外国人の増加が続き、3月にはすでに1~3月で1,000万人を超えましたが、これは過去最速となりました。

2025年は「大阪・関西万博」の効果もあり、訪日外国人数はさらに増加し4,000万人を超え、さらに2026年には5,000万人を超えると予想されています。政府は2030年に6,000万人を目標としていますが、これが実現されれば日本経済に与える影響も非常に大きいと予想されます。

◼︎訪日外国人の推移

2018年2019年2020年2021年2022年2023年2024年
人数3119万人3188万人411万人24万人383万人2506万人3687万人
<日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数の推移」より作成」>

インバウンドや国内旅行による消費が増加

こうしたインバウンドは国内での消費額も多くなっています。観光庁の発表した「インバウンド消費動向調査」によると2024年の訪日外国人旅行消費額は8兆1,257億円となりました。

また日本人における国内旅行の消費も増加しています観光庁の発表した「2024年旅行・観光消費動向調査(速報)」によると2024年の日本人の国内旅行消費額は25兆1,175億円となり過去最高を記録しました。

航空や鉄道などの運輸、宿泊、飲食店や物販店を始め多くの業界で売上が増加しています。

◼︎訪日外国人消費額

2023年2024年
消費額5兆3,065億円8兆1,257億円
<観光庁「2024年旅行・観光消費動向調査」>

観光消費額増加の影響は

JR東日本では、2025年3月期の決算では純利益が前期比14%増の2,242億円である事を発表しました。またインバウンドの増加による新幹線の利用が好調であり、2026年3月期の純利益が過去最高が予想されると発表しています。

ANAやJALなどの航空大手の今年3月までの決算も増加するインバウンドの影響で国際線が好調であった事などから過去最高となりました。

旅行業界などは新型コロナの影響で一時事業の縮小や人員の削減などを進めてきましたので、急激なインバウンドの増加で人手不足も続く可能性もあります。

こうした影響が大きいのがホテル業界です。宿泊需要の増大から、多くのホテルが建設されていますのでホテル用地の需要が高まっています。

ホテル用地は交通アクセスの良い駅に近い立地が選ばれる事が多いので、オフィス・商業施設、そして投資用マンション用地とも競合します。

富裕層向けの高級ホテルが多く建設されており、宿泊費の上昇が地価に与える影響も大きくなっています。

東京への経済効果

東京への経済効果はどうでしょうか。「大阪・関西万博」へ訪れた方は、周辺の観光地などにも訪れる事も予想されています。JTB総合研究所の予測によると、大阪万博の経済効果を都道府県別に見ると、大阪から近い「京都」や「奈良」などへの経済効果が予測されていますが、それに次いで「東京都」が第3位に入っています。

つまりそれだけ東京都における経済効果が高いと見込まれている訳です。

海外から訪れる方にとっては大阪と東京はそれほど遠い距離ではなく、また国内でも大阪に行ったついでに東京へも訪れるというケースもよく聞きます。インバウンドの宿泊先が三大都市圏に7割と集中しており、東京都を始め都市部への影響が大きいと言えます。

増加する東京への来訪者

では東京の観光状況を見てみましょう。

東京の観光客数は大きく増加しています。東京都の発表した「2024年(令和6年)東京都観光客数等実態調査」によると、昨年1月~9月の累計で東京を訪れた旅行者数は、日本人旅行者が約3億6,128万人で前年同期比3.7%増となりました。また外国人旅行者は約1,885万人で、前年同期比で27.0%も増加し過去最高を記録しました。

筆者の事務所のある東京・中野でも多くの外国人旅行者が訪れています。英語、中国語、フランス語などの他にも聞いたことのない言葉も交わされており、世界中から旅行者が来ている事が実感されます。

さらに2025年は大阪万博の影響もあり東京への来訪者もさらに増加するのではないでしょうか。

外国人労働者、外国人留学生も増加

外国人旅行者が増加していますが、旅行者だけではなく、外国人労働者や外国人留学生の数も増加しています。

日本学生支援機構の調べによると、2024年5月1日現在の外国人留学生の数は33万6708人で前年21%の増加となりました。これは比較可能な2011年以降で最多となりました。政府は今後2033年までに外国人留学生を40万人に増やす目標を掲げており、今後も増加が見込まれます。

また厚生労働省の調べによると、2024年10月末時点の外国人労働者は230.万2587人となり過去最多となりました。また外国人労働者を都道府県別に見ると、「東京都」が最も多く58万5,791人と全体の25.4%を占めています。

◼︎外国人労働者の数と割合(2024年10月末時点)

順位都道府県人数割合
1東京都58万5,791人25.4%
2愛知県22万6,627人10.0%
3大阪府17万4,699人7.6%
<厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)」>

東京五輪・「大阪・関西万博」のタイムラグとは

東京五輪や「大阪・関西万博」の開催で日本の様子が世界の国々にテレビやインターネット、SNSなどで発信されました。つまりこうした大型のイベントは日本を世界に紹介する「アナウンス効果」があると言えます。日本という国の認知度がさらに高くなり、世界中から日本への関心が高まります。

世界へ向けての日本の魅力情報の発信は、その効果が「タイムラグ」を伴って顕在化してくると言えます。つまり東京五輪同様に「大阪・関西万博」の開催も訪日外国人や日本における留学生や外国人労働者の増加へとつながる可能性があります。

ますます増加するワンルームマンションの需要

外国人労働者や外国人留学生の方は東京だけで50万人以上もおりますが、今後はさらに増える事が予想され、ワンルームマンションなどの賃貸需要が高まる可能性があります。企業の場合は従業員にワンルームマンションを借り上げて社宅として利用するケースも多くなっています。日本では人口減社会が進んでいますが、こうした外国人の住宅需要が増加してくる可能性があります。

外国人入居者用の翻訳サービスなども進み外国人の賃貸も多くなってきています。またインバウンドの増加は不動産価格にも影響を与えますので、不動産市場は今後外国人によって大きく変わっていく可能性もあると考えます。

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