FIRE達成するには? どんな投資商品を組み合わせるのが効率的か
FIREというと「火」を連想する方がほとんどだと思いますが、最近世界中で話題になっているFIREはもちろん火ではなく「Financial Independence, Retire Early」という言葉から作られた造語。「経済的自立と早期リタイア」といった意味があります。
今回は、注目のFIREを達成するための考え方と、FIREを目指すのに効率的な3つの投資商品の組み合わせについて紹介します。
そもそもFIREってなに?
FIREは、投資をすることで経済的自立を果たし、早期リタイアを実現することをいいます。FIREの「経済的自立」が目指しているのは、決して億万長者になることではありません。億万長者を目指したところで、なれる人はごくわずかです。
そうではなくて、FIREでは、資産をできるだけ投資に回して、投資で得られた収入で生活することで、経済的自立を果たすことを目指します。これであれば、億万長者にならなくても、比較的少ない金額で達成可能。つまり、「一般人でも経済的自立と早期リタイアを実現できる」というのです。FIREを目指す人は、まず早期リタイアした後にどのくらいの生活費がかかるのか、年間の生活費を計算します。
次に、その年間の生活費を、年間の資産運用収入でまかなうことのできる「FIRE」資産の総額を計算します。
「FIRE」資産の総額がわかったら、その資産を貯めるために毎月投資をしていきます。また、支出削減にも取り組んで、毎月の積立金額を増やしていきます。年間の生活費を投資(不労所得・資産運用の収入)だけでまかなうことができれば、計算上、資産を減らさなくても生活ができます。こうなれば、FIRE達成です。
仮に仕事を早期リタイアしても、生活には困らなくなります。「早期リタイア」というと、何となく「できるだけ仕事したくない…」という、ネガティブなイメージがあるかもしれません。
しかし、FIREの目的はそうしたことではなく、自分の時間を好きなことに使い自分らしく生きたいという、ポジティブなものです。米国の若者を中心に「FIREムーブメント」と呼ばれるほどに注目され、それが日本を含む世界中で話題になっているというわけです。
FIREの必要資産額は「年間支出の25倍」
FIREするために必要な資産は「年間支出の25倍」といわれています。もし年間支出が250万円だとするなら6250万円です。もちろん、この資産をそのまま使ってしまえば、25年で底をついてしまうことになります。ですが、FIREでは、この資産を投資に回すことで、元本を減らすことなく生活することを目指すのです。
「年間支出の25倍」の根拠は、FIREを目指す人が守る「4%ルール」からきています。これは、資産を年4%増やし、年4%ずつ取り崩せば、資産は目減りしないという、米国のトリニティ大学の論文「Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable(=リタイア後の貯蓄
持続可能な引き出し率の選択)」をもとにして生まれたルールです。4%の根拠は米国株式市場が年7%で成長、インフレ率は年3%で推移しているので、毎年実質4%で資産が成長しているというものから来ています。詳しくは論文でご確認ください。
これを言い換えると、FIREするために必要な資産は「投資元本(100%)÷年間支出(4%)」。年間支出の25倍の資産を用意すれば、FIREが実現できる計算です。仮に6250万円の資産を投資に回し、年4%増やすことができれば、6250万円×4%=250万円となります。年間支出を投資だけで補い、資産を減らさずに生活することができる、というわけです。
FIREを目指すために、効率よく投資商品を組み合わせよう
FIREを目指すために注目されている投資商品は、いずれも働かないでも稼げる「不労所得」を得られるものです。次の3つの投資商品を組み合わせれば、効率的にFIREを目指すことができると考えます。
FIREを目指す投資商品①:投資信託の積立で複利効果を生かしてお金を増やす
積立投資は、あらかじめ決めた金額を毎日・毎週・毎月などの決まった間隔で続けて投資することです。
1回ずつの投資金額は少額でも、毎月続けることでまとまったお金になります。また、投資で得られた利益を再び投資に回すことで、複利効果を生かせます。
複利効果は、投資で得られた利益を再び投資に回すことで、その利益が新たな利益を生み出す効果のことです。長期間積立投資をすることで、複利効果をじっくり受けながら、お金を加速度的に増やすことができます。
しかも、積立投資をすると「ドルコスト平均法」の効果も生かせます。ドルコスト平均法は、一定額ずつ購入することで、商品が安いときにはたくさん、高いときには少ししか買わなくなるという投資の方法です。こうすることで、平均購入単価が下げられるのです。
もちろん、安いときにまとめて買って、高くなってから売ることができれば、積立投資より儲かります。しかし、安いとき・高いときを判断するのは誰にも難しいことです。積立投資ならば、値動きを気にせず淡々と買うだけで利益を出しやすくなるので、簡単です。
積立投資で購入する商品は投資信託がいいでしょう。投資信託は、預けたお金をプロがさまざまな投資先に投資してくれる商品です。1本買うだけで、さまざまな商品に少しずつ投資したのと同じような「分散投資」の効果が得られるため、堅実にお金を増やす期待ができます。
もし1本買うのであれば、なるべく広い投資先にまとめて投資ができるインデックス型(市場の値動きに連動することを目指す、手数料の安い投資信託)がおすすめ。
たとえば「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」は、3本のETF(上場投資信託)への投資を通じて、世界の大中小型株式約9000銘柄の値動きをもとにする「FTSEグローバルオール・キャップ」という指数と連動する成果を目指します。
つまり、1本買うだけで約9000銘柄に分散投資できるというわけです。信託報酬(投資信託を持っているときにかかる手数料)も年0.1102%ととても安価です。
さらに、「つみたてNISA(ニーサ・少額投資非課税制度)」や「iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)」といった制度を利用すれば、投資の利益にかかる約20%の税金がゼロにできます。そのうえiDeCoでは、自分のためにお金(掛金)を出すことで所得税や住民税が安くできたり、受け取るときに税金の優遇を受けたりできます。
いずれも、税金というコストを大きく減らせる分有利ですので、ぜひ優先的に活用しましょう。
FIREを目指す投資商品②:米国株の成長と株主還元でお金を増やす
株式投資で得られる利益には、大きく分けて値上がり益(買ったときより値上がりしたタイミングで売ったときの利益)・配当金(会社が儲かったときに株主に支払う利益)・株主優待(会社が株主に渡すプレゼント)の3つがあります。
このうち、FIREを目指す人が注目しているのが配当金です。配当金は、株を持っているだけで定期的に受け取れるからです。配当金狙いであれば、おすすめは日本株ではなく米国株。改めていうまでもなく、米国は世界経済の中心です。
GAFAM (グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル・マイクロソフト)といった巨大IT企業をはじめ、私たちに身近なところにも米国の大企業がたくさんあります。世界最大の先進国でありながら、依然成長を続けているからです。
また、米国株には、日本を上回る高配当株・連続増配株がたくさんあります。投資したお金に対して配当金の金額が多ければ、その分効率よくお金を増やせます。米国株の中には配当金の金額を増やす増配を50年以上も続けている銘柄もあります。株主還元に積極的な銘柄に投資しておけば、お金も堅実に増やせる期待ができます。
そのうえ、米国株は四半期配当といって、3か月に1回配当金を支払うところが多くあります。日本株の多くは、年2回、半年ごとが一般的ですから、それよりもたくさん収入を得る機会があるのは、将来的にFIREして生活するときにもありがたいはずです。うまくタイミングをずらせば、毎月なにかしらの配当金をもらうことも可能です。
さらに、米国の会社は「自社株買い」をすることがよくあります。自社株買いをすると、市場に出回る株の数が減り、1株あたりの株の価値が上昇します。すると、株価もそれにともなって上がる期待ができるのです。配当金だけでなく、値上がり益も楽しみにできますね。
もし、個別の米国株を選んで投資するのが難しいという場合は、高配当株に投資する米国ETFを選ぶのもいいでしょう。これならば、1本買うだけで複数の高配当株に投資したのと同じような効果が得られます。
たとえば「バンガード・米国高配当株式ETF(VYM)」「iシェアーズ・コア 米国高配当株 ETF(HDV)」「S&P500高配当株式ETF(SPYD)」などがあります。いずれも手数料(経費率)が0.1%未満と安いので、長期保有にも向いています。
FIREを目指す投資商品③:不動産投資で効率よくお金を増やす
不動産投資とは、ワンルームマンションやアパートなどの不動産を購入し、それを貸し出したり売買したりして利益を得る投資です。投資信託の分配金や株式の配当金と同様、不動産投資で得られる家賃は王道の不労所得です。
不動産投資のメリットは、お金を借りて投資ができること。たとえば、年利回り5%のリターンを得られる株式(200万円)と不動産(2000万円)があったとします。今の自己資金が200万円だったとして、200万円で株式を買うと、得られる利益は200万円×5%=10万円です。
しかし、不動産ならば200万円の資金を頭金にしてローンを組み、2000万円の物件を購入できるのです。この場合、得られる利益は2000万円×5%=100万円と、株式の10倍に。同じ200万円なのに、得られる利益の効率が10倍違うというわけです。
投資信託や株式投資は、いずれも自分のお金を投資に回してお金を増やす「1馬力」の方法です。しかし、不動産投資は、他人のお金(銀行のお金)を借りてお金を効率よく増やせる「10馬力」や「20馬力」ともいえる投資方法。ただし、ローンを組むにはある程度の信用力が必要。目安は年収500万円以上になりますが、信用力があるなら積極的に取り組みたいところです。
もっとも、不動産ならどんな物件でもいいわけではありません。「空室リスク」をいかに下げるかが重要なテーマです。
おすすめは東京都内のワンルーム。東京は、少子高齢化が進む日本において、唯一といっていいほど人口が勢いよく増えているうえ、地方から上京してくる単身者、仕事熱心な会社員、さらには外国人労働者など、さまざまな需要が見込めるからです。
日本の上場企業約3800社のうち、半数は本社が東京にあります。また、多い区を順に挙げると、港区、千代田区、中央区、渋谷区、新宿区、品川区などとなっています。
いずれも、人も仕事も集中しており、高い賃貸需要があるエリアです。これらのエリアの物件の大家さんになれば、こうした上場企業に勤務する会社員がお客さんになる可能性が高まります。上場企業の会社員ともなれば、収入も社会的信用も一般的に高いので、トラブルも少ないと考えられます。
さらに、物件・エリアだけでなく、信頼できる不動産会社と組むことも大切です。不動産業者の中には、知識や力のない不動産業者や、強引な営業をしてくる不動産業者もあるからです。
購入するときに信頼がおける優秀な担当者(営業マン)がいるか、相性が合うかといったところはもちろんのこと、購入するエリアのことに詳しいか、購入後のフォロー体制がどうなっているかも確認しましょう。
3つの方法を組み合わせて効率よくFIREを達成しよう
投資信託(iDeCo・つみたてNISA)・米国株・不動産、3つの投資を紹介してきました。これからFIREを目指すのであれば、これら3つの投資を組み合わせるのがおすすめです。
投資信託で幅広く世界中に投資することで、世界経済の成長に合わせて堅実にお金を増やします。つみたてNISAやiDeCoを利用すれば、節税の効果も得られて効率的です。
米国株・米国ETFで米国企業の成長の力を借りてお金を増やしていきます。配当金を増やし続ける銘柄を複数保有することで、配当収入も年々増えていくでしょう。
そして、不動産投資も活用すれば、FIRE達成のための資産を全部自分のお金で用意しなくても、不労所得を得ることができます。
FIREのRE(早期リタイア)を目指さなくても、今回紹介した投資を長期間手がけることで、経済的な自由は手にできるはずです。ぜひ取り組んでみてくださいね。
投稿者プロフィール
頼藤 太希
(株)Money&You代表取締役/マネーコンサルタント
中央大学客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。
女性向けWebメディア『FP Cafe』や『Mocha(モカ)』を運営すると同時に、マネーコンサルタントとして、資産運用・税金・Fintech・キャッシュレスなどに関する執筆・監修、書籍、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力している。『1日1分読むだけで身につくお金大全100』(自由国民社)、『はじめてのFIRE』(宝島社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)など著書多数。
日本証券アナリスト協会検定会員、ファイナンシャルプランナー(AFP)、日本アクチュアリー会研究会員。