資産運用の相談は誰にしたらいいの?相談前に準備すること
「資産運用に興味はあるけど、初めてだし、1人で運用するのは不安」という方はよくいます。資産運用はお金を増やすために大切ですが、お金が減ることもあるのですから、不安に思われるのも当然でしょう。こんなとき、専門家に資産運用の相談ができたら安心ですね。
では、資産運用の相談は具体的にどこで、誰にしたらいいのでしょうか。今回は、資産運用の相談をするメリットと資産運用の主な相談先、資産運用の相談前に準備することや注意点について解説します。
資産運用の相談を専門家にする3つのメリット
資産運用の相談を専門家にすると得られるメリットは、大きく分けて3つあります。
資産運用の相談をするメリット1:対面でなんでも聞くことができる
ひとくちに資産運用といっても、その方法はさまざまです。特に初めてのときは、何をどうすればいいのか、どんな金融商品にどう投資したらいいのか、わからないことも多いでしょう。こんなとき、資産運用の相談を専門家にすれば、対面で資産運用のことをなんでも聞くことができます。資産運用の不安を取り除いた上で、資産運用に臨めます。
資産運用の相談をするメリット2:自分に合ったアドバイスをしてくれる
「これから初めて資産運用をします」というスタートラインはみな同じでも、持っている資産、資産運用に回せる金額、資産運用ができる期間、今後のライフプランなどは人それぞれ異なります。専門家は、一人ひとりの状況や意向を踏まえてアドバイスをしてくれるので、自分に合った資産運用が始められます。
資産運用の相談をするメリット3:「知らなくて損」を防げる
これから成長が見込める業界や分野、よりお得に投資できる投資先、投資に役立つ新しい制度など、資産運用の世界は時々刻々と変化します。専門家は、そうした情報をきちんとキャッチアップしているので、「知らなかったばかりに投資できなかった」「無駄な投資をしていた」などということを防げます。
資産運用の相談に乗ってくれる主な相談先
資産運用の相談に乗ってくれる専門家がいる相談先には、次のようなところがあります。
資産運用の相談先1:銀行
私たちにとっておそらくもっとも身近な金融機関は銀行でしょう。預金や各種手続きなどでも普段から利用していれば、おおよその雰囲気もわかるはずです。
銀行では投資信託や保険などの金融商品を取り扱っています。メインバンクで相談すれば、自分の資産状況を把握しているので、相談もスムーズですし、店舗も身近にあるので利用しやすいでしょう。何より、銀行という信頼感、安心感があるのがメリットです。
ただし、店舗の銀行の場合、取り扱っている商品がそれほど多くありません。手数料も、高めに設定されていることもある点は注意しましょう。手数料が高いということは、その分資産運用の利益が減ってしまうことにつながります。
資産運用の相談先2:証券会社
証券会社というと、ネットで取引を行うネット証券を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、街に店舗を構えている証券会社もあります。証券会社でも、資産運用の相談をすることができます。銀行と同じく、証券会社では担当の専門家のアドバイスを受けながら資産運用ができます。
証券会社では、銀行よりも多くの金融商品を扱っています。銀行と違って、株式投資もできます。証券会社は、銀行よりも資産運用の色が濃く、専門的な知識でサポートをしてくれるでしょう。しかし、ネット証券と比べると金融商品の数は少なく、ネット証券で投資するよりも手数料が高くなってしまう点は注意が必要です。
資産運用の相談先3:IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)
IFAとは「Independent Financial Advisor」の略称で、日本語では「独立系ファイナンシャルアドバイザー」などと呼ばれます。IFAは、銀行や証券会社といった特定の金融機関に属さず、独立した立場から資産運用のアドバイスを行います。
IFAは資産運用のプロとして、顧客に金融商品を勧めたり、資産運用のプランを提案したりすることができます。後述しますが、銀行や証券会社では、どうしても自社が売りたい商品を提案しなければならないケースがあります。その点、IFAならばそうした縛りもないので、お客さんに最適な商品を紹介できるのがメリットです。
一方で、銀行や証券会社に比べるとマイナーな存在ですし、信頼できるIFAを探すのが大変、というデメリットもあります。また、ネット証券で自ら投資するよりも手数料はどうしても割高になるでしょう。
資産運用の相談先4:FP(ファイナンシャルプランナー)
FPはファイナンシャルプランナーを略した言葉。FPには、資産運用はもちろん、家計の見直し、将来の生活設計、ライフイベントの資金準備、住宅ローンや保険、税制や相続など、お金に関するありとあらゆる相談ができます。筆者が運営している「FP Cafe」では、独立系女性FPが多数登録しており、顧客のニーズに合わせて、幅広いお金の分野の相談ができるようになっています。
FPに資産運用の相談をすると、資産運用にとどまらず、お金に関する総合的な面も踏まえてアドバイスが受けられます。また、いわゆる「独立系」と呼ばれる、会社に属さないFPであれば、中立ではなく、お客様の立場でのアドバイスが得られます。
ただし、FPは人によって得意なジャンルと不得意なジャンルがあります。資産運用が得意なFPを探して相談するようにするとよいでしょう。
資産運用の相談先5:投資助言会社
投資助言会社は文字どおり、投資に関する助言を行う会社です。投資助言会社は、金融庁から「投資助言・代理業」という登録を受けて運営しています。投資助言会社は、投資に関するアドバイスによってお客さんが利益を出したときに、その利益の一部を助言料として受け取ります。つまり、お客さんの利益が投資助言会社の利益になるわけです。
ただ、ひとくちに投資助言会社といっても、そのアドバイスの内容は「特定の銘柄に関する助言や情報提供をする」というものから「IFAやFPのように家計全般、資産運用全般のトータルサポートする」というものまでさまざまですので、自分に合ったアドバイスが得られるかを確認することが大切です。
資産運用の相談をする前に準備すること
実際に資産運用の相談をしようと、何の考えもなしに上で紹介したような相談先に行くことはおすすめしません。最低でも、次のことは準備しておきましょう。
資産運用の相談をする前の準備1:資産運用の目的をはっきりさせる
実際に相談する前に、「何のために資産運用するのか」という、資産運用の目的をはっきりさせておきましょう。資産運用の専門家は、お客さんの目的やニーズに合わせたアドバイスを行います。そのため、資産運用の目的がはっきりしていなければ、いくら専門家であってもアドバイスがしにくくなってしまいます。
たとえば、
・住宅購入資金として頭金の500万円を5年後までに貯めたい
・子どもが生まれるので、大学進学費用の500万円を18年後に向けて用意したい
・老後の暮らしのために、2000万円を確保したい
などといった具合です。
こうした目的に合わせて、専門家はそれに適した商品や利用する制度などを考え、資産運用の方法を提案してくれます。「単にお金を増やしたい」ではなく、将来のことまで考えてから相談するようにしましょう。
特に目的が決まっておらず、単にお金を増やしたいという目的で相談してしまうと、後述する金融機関のおすすめの商品を勧められてしまう可能性が高くなります。
資産運用の相談をする前の準備2:無理な資産運用をしない
焦ってお金を増やそうと、生活費まで資産運用に回そうとする人がいます。お金を増やしたい気持ちはわかりますが、生活費まで投資して、お金が減ってしまったら生活がままならなくなってしまいます。最低でも生活費の6か月分以上は確保した上で、余剰資金で資産運用をするようにしましょう。生活費の6か月分があれば、投資によって資産が値下がりした、あるいはケガや病気をして働けなくなった、リストラにあって仕事がなくなった、といった非常事態があっても、当面は無理なく生活でき、次の行動を取ることができます。投資は、あくまで余剰資金で行いましょう。
●資産運用の相談をする前の準備3:悪質な業者でないかを見極める
資産運用の「専門家」のなかには、残念ながら悪質な業者もいます。悪質な「専門家」は、「元本保証がある」「100%安全で儲かる」などと、甘い言葉を次々とかけて、お金を騙し取ろうとするものもいるのです。しかし、投資に「元本保証」はありませんし、「100%安全で儲かる」投資先があるならば、こちらに勧めず自分で投資していればいいのです。簡単にお金が稼げる投資先はありません。
また、必要な資格をとっていない、取引先や実績などを紹介してくれないなどの場合も悪質な業者の可能性があります。事前に調べたり、担当者に確認したりして、怪しい点がある場合には、取引しないようにしましょう。
専門家のおすすめが必ずいい投資先とは限らない
「悪質な業者」でなかったとしても、専門家のおすすめが必ずいい投資先とは限りません。たとえば、銀行や証券会社がおすすめしてくる商品は、手数料が高くて銀行や証券会社が儲かるようにできている「金融機関にとってのおすすめ商品」になっている可能性もあります。
銀行や証券会社の担当者も「営業マン」で、自分や部署のノルマを達成するために、売りたい商品を推してくることがある、というわけです。また、「金利◯%」のようなポジティブな情報は大きく書かれていますが、「手数料◯%」のようなネガティブ情報は見落としてしまいそうなほど小さな字で書かれているものです。
もちろん、すべての専門家が自分の都合を優先しているわけではありません。誠実な提案をしてくれる方もたくさんいるでしょう。しかし、最終的には自分で判断して「ここに投資する」と決めるのですから、最低限でもお金や投資の入門書を1冊は読むなどして、判断の仕方を学んでおくのがいいでしょう。
資産運用を専門家に相談することで、疑問や不安を解消し、専門家の知識を借りて資産運用をすることができます。資産運用を専門家に相談するのであれば、資産運用の目的をはっきりさせたうえで、信頼できる専門家に相談するようにしましょう。
ただ、専門家のアドバイスをいくら実践したとしても「100%必ず儲かる」ことはありません。それに、資産運用はすべて自己責任で、専門家が責任をとることはありません。ですから、相談をする前に最低でも運用に関する本を1冊読むなどして、勉強をしておくことをおすすめします。
高山一恵 Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー
慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を行ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。登録者1万人超のYouTubeチャンネル『Money&YouTV』を運営。著書は『マンガと図解 定年前後のお金の教科書』(宝島社)、『1日1分読むだけで身につくお金大全100』(自由国民社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)など著書累計100万部超。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。