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「GAFA」から「MATANA」へ世界経済を牽引するビッグテックは今後どうなる?

ビッグテックと呼ばれる世界規模で支配的な影響力を持つIT業界の勢力図に変化が生じています。過去20年間株式市場を引っ張ってきたとはいえ、コロナ禍のIT特需でメタボになった企業体質を改善する必要から、大量解雇やコスト削減による収益性の向上が急務となりました。その一方で、新事業や成長力を持った商品やサービス開発にも力を注いでいます。

私たちの生活に欠くことができないIT。2023年以降、どのような新しい価値を提供できるかで、注目される分野の企業に入れ替わりの動きが出てきました。

「GAFA」から「MATANA」へ

ビッグテックとは、経済的に世界規模で圧倒的な影響力を持つ情報技術企業のことを指します。企業の数から、ビッグ・フォーとかビッグ・ファイブと呼ばれることもあります。

今まで米国経済を牽引してきたGAFA(Google、Amazon、Facebook(現Meta)、Apple)ですが、2023年以降、MATANA(Microsoft、Amazon、Tesla、Alphabet、NVIDIA、Apple)へと高成長を遂げるビッグテックの勢力図が変わろうとしています。

一時期はGAFAにマイクロソフト(Microsoft)を加えたGAFAMの5社の時価総額の合計が、日本の東証1部上場企業の合計を上回ったことが話題にのぼりました。しかし、こうした巨大IT企業であっても、常に新しいサービスや機能の提供がされなければ、時代のトレンドから外れてしまう可能性があります。一方、新興企業でも優れた技術を搭載した商品やサービスが提供できれば、飛躍的な発展に結びつきます。

2023年以降は、従来の企業勢力に新しい挑戦企業が加わることで、IT業界はさらに活性化していきそうです。もちろんそこには企業間の激しい競争もありますが、新たな技術開発と協力関係により、さらなる技術革新を促進させることができるでしょう。

これからのIT企業勢力図がどのように進化し、IT市場の構造を変えていくかを見極めることは、今後の私たちの投資判断にも大きく役立つと考えられます。

MATANAを構成する6社を紹介

MATANAとは、米国のシリコンバレーに拠点を置くテクノロジー調査とアドバイザリーサービスを手掛けるコンステレーション・リサーチのレイ・ワン氏が生み出した造語です。

MATANAは、GAFAMのうちグーグル、アマゾン、アップル、マイクロソフトにテスラとエヌビディアを加えた6社で構成されています。レイ・ワン氏は、今やハイテク市場を支配しているのはMATANAだと2022年9月に発言しています。

それでは、MATANAの6社それぞれの業務内容や戦略について見ていきましょう。

MATANAの企業1:マイクロソフト(Microsoft)

マイクロソフトは、Windows OSやオフィスソフトウェア で伝統的な企業とされていますが、企業向けのクラウドサービスやアプリケーション開発も行っています。また常に新しいソフトを提供してくれるOffice 365やMicrosoft 365 などのサブスクリプションサービスが定期的な収入源となっています。

新しい動きとしては、ネット検索サービスBingにオープンAIの技術を組み込んで提供を始めたことが挙げられます。オープンAIといえば、人工知能を利用したチャットサービス「chatGPT」で話題の企業。マイクロソフトは、オープンAIと資本・業務提携をしています。現在のところ、ネット検索ではグーグルが世界のシェアの9割超を占めています。しかし、オープンAIの導入により、Bingのアクセス数の伸びはグーグルを上回っているというデータもあり、ネット広告においても今後の動きに変化が出てくる可能性があります。今後は、「ワード」や「エクセル」などの業務ソフトでもオープンAIの活用を狙っています。

レイ・ワン氏は、マイクロソフトは対企業と対消費者の両方に対応している企業として、評価されるべきだと話しています。

MATANAの企業2:アマゾン(Amazon)

アマゾンは、電子商取引(EC)で世界最大級の企業です。ネット通販のほかにも企業向けのクラウドサービス(Amazon Web Service)やアプリケーション開発サービスに力を入れています。このほかアマゾンは、アマゾンプライムやプライムビデオなどのサブスクリプションサービスを拡大しています。

MATANAの企業3:テスラ(Tesla)

EV(電気自動車)と太陽光発電、総合的な再生可能エネルギーなどクリーンエネルギー関連の企業です。会社名は、CEOのイーロン・マスク氏がツイッター買収で有名になり、知っている人も多いと思います。電気自動車では、さまざまなニーズに対応しながら、バッテリー技術や自動運転技術の開発を手掛けています。会社設立は2003年ですが、2020年7月1日には時価総額でトヨタ自動車を抜いて自動車業界でトップになりました。

テスラの自動車は、「移動手段」のほかに自動運転や加速力が高い車という「移動を楽しむ空間」という新たな価値を付加しています。さらに、テスラのロボットタクシー部門に期待し、2023年4月の段階で「4年後にはテスラ株が11倍に急騰する」と超強気の予測する投資家も現れています。

テスラは自動車関連のほかに持続可能なエネルギーを促進しており、ソーラーエネルギー、エネルギー貯蔵システムの開発にも力を入れています。

MATANAの企業4:グーグル(Google、持ち株会社はアルファベット)

グーグルといえば、検索エンジンとインターネット広告が事業を支える柱になっています。

ネット広告に次ぐ事業の柱として、クラウドコンピューティング事業が2023年1~3月期に黒字化しています。

またグーグルにおいても先進的な技術開発に注力しており、人工知能(AI)の開発には長年投資を行ってきました。AI技術を活用した「Googleアシスタント」では、自然言語処理や画像認識技術を搭載しています。グーグルも、今後はあらゆる製品やサービスにAIを組み込んでいくと説明。主力の検索サービスにもAIの技術を提供したい考えです。この他、子会社Waymoの育成を行っており、自動運転技術にも挑戦しています。

MATANAの企業5:エヌビディア(NVIDIA)

エヌビディアは米国の半導体メーカーです。半導体の中でも特にGPU(画像処理装置)を発明し、GPUを汎用計算用途に拡張したGPGPUの設計に特化しています。また、AI技術、データセンター、3Dグラフィックプロセッサと関連のソフトウエアの設計・開発・販売などを行っています。テスラで採用されている自動運転システムを支える「NVIDIA Tesla」も供給しています。

レイ・ワン氏は、これから伸びるAI、コンピューティングの未来において、エヌビディアは支配的なポジションを占めるパートナーシップを構築していると評価しています。

また国内外で関心が高まるChatGPTなどのチャットAIでは、AI開発用のコンピュータチップが必須ですが、この分野でほぼ独占的なシェアを占めているのがエヌビディアです。

MATANAの企業6:アップル(Apple)

iPhoneで有名なスマホをはじめ、Macなどコンピュータ・デジタル電化製品、ソフトウエア、オンラインサービスの開発・販売を行っている企業です。環境問題や持続可能性に積極的に取り組んでおり、製品設計や原材料や部品の調達、販売にいたるモノの流れを改善して、環境への負荷を低減することを目指しています。

従来の分野のほかに、電気自動車市場へ参入しており、テスラと競合しながら新たな技術革新を生み出すことが期待されます。さらに米国では2023年4月17日より銀行業務を開始し、アップルカードのユーザー向けに年利4.15%の預金サービスを提供しています。

メタがビッグテックから外れた理由

新しいビッグテックの枠組みからメタ(旧フェイスブック)が外れています。メタは、世界的なSNSのFacebookとInstagramにおける広告収入が主な収入源です。この勢力図の変化の背景には何があるのでしょうか。

数字の面では2023年1~3月期は売上高が3%増えたものの、メタバース(臨場感の高い仮想空間)に関連する事業は前年同期比51%減になっており、営業損益が膨らみました。

レイ・ワン氏によれば、フェイスブックは広告以外に何かしなくてはならないし、事業の発展には新しい突破口が必要だと指摘しています。

実際、メタバースやVRテクノロジーは、市場を変化させるレベルには達しておらず、これからどんなビジネスモデルが提示できるのか、市場の期待に応えられる状況ではないことが大きな理由でしょう。しかし、これからメタバースが確立され、市場に新たな価値を提供できれば将来は再評価されるかもしれません。

MATANAが今後も成長する要因

MANATAを構成する6社が大きな成長を遂げると予測される要因の一つに、半導体関連銘柄が伸びると見られていることがあげられます。半導体は景気のサイクルに反応する分野ですが、AI技術を搭載したモノやサービスには、半導体のAIチップが欠かせません。景気の動向に関わらず、絶対不可欠な部品の一つとなるでしょう。

また日本においても、DX(デジタルトランスフォーメーション)やAI(人工知能)が大きなテーマとして掲げられています。DXとは、デジタル変革ともいわれ、デジタルテクノロジーを使用して、ビジネスプロセスや文化、顧客体験を新たに創造して、社会や生活の形を変えることです。

このDXやAIは、今後発展が見込まれる分野と関連性が高く、持続可能な社会の実現に向けて、ソフトとハード面から課題を解決していく企業が投資家の関心を集めるでしょう。

ITはもはや生活必需品となっています。どんどん進化し便利になっていくIT市場の技術は、生活になくてはならない存在として位置づけられています。ITの技術革新によって、私たちの生活に新たな未来を提示できるかどうかが、成長できる企業のカギになっています。

MATANAが未来にもたらす可能性

従来勢力に加わった新しい勢力のテスラやエヌビディアは、市場競争において独自のポジションを築いています。短期的には、売上や成長率、経常利益なども大切な要素ですが、中長期的な成長戦略や先を見据えた企業戦略が重要になります。その上で新しい分野や技術を開拓しています。

NATANAでは、各社の高度な技術を掛け算することによって、最先端のイノベーションが生み出されています。たとえば、エヌビディアのAIチップ、ディープラーニング用のソフトウエアとグーグルやマイクロソフトの技術が組み合わさって生成AIのサービスが提供されています。複数の技術により、幅広い分野をカバーし、新たな市場動向に対応しています。

つまり、NATANAには、市場競争と協力を通じて新たな技術開発やサービスの提供がなされている企業、これまで以上に未来に新しい価値を生み出すであろう企業が選ばれているのです。今後もMATANAから新しい技術がたくさん生まれ、世界経済を牽引していくのか、その動向に注目しましょう。

池田幸代  株式会社ブリエ 代表取締役

証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー

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