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外貨建て保険に入るなら円安・円高どっちが得なのか

「日本よりも金利の高い外国の保険に入りませんか」などと、外貨建て保険のセールスを受けたという声をよく耳にします。しかし、2022年ごろから日本は円安局面を迎えています。こんななか、外貨建て保険に入ってもいいものなのでしょうか。

今回は、外貨建て保険にもし入るならば円安・円高どっちで入るのが得かを一緒に考えていきます。また、そもそも外貨建て保険は加入してもよい保険なのかについても考えます。

そもそも、外貨建て保険とはどんなもの?

外貨建て保険は、保険料の支払いや保険金の受け取りが外貨で行われる保険です。一般の保険では日本円で保険料を支払い、保険金・解約返戻金などを日本円で受け取ります。それに対して、外貨建て保険では米ドル・ユーロ・豪ドル・ニュージーランドドルといった外貨で保険料を支払い、保険金・解約返戻金などをそれらの外貨で受け取ります。

外貨建て保険には、

終身保険…保障が一生涯続く保険。解約しない限り遺族は必ず死亡保険金を受け取れる

養老保険…保障期間中に亡くなった場合には死亡保険金、満期を迎えた場合には満期保険金が受け取れる保険

個人年金保険…保険料を60歳・65歳といった年齢まで支払うことで、契約時に定めた年齢に達したあとに年金形式でお金を受け取れる保険

といった種類があります。

これらの貯蓄型の保険は、円建ての保険にもありますが、外貨建て保険は、外貨でやりとりする点が違っています。

外貨建て保険の保険料を払うときには、日本円を外貨に両替する必要があります。また、外貨で支払われた保険金や解約返戻金を日本円に両替する必要もあります。つまり、お金を両替するときの為替レートの動向によって、利益(為替差益)や損失(為替差損)が生まれる場合があるというわけです。

外貨建て保険には円高・円安どっちで入ったほうがいいのか

結論からいうと、外貨建て保険に加入するのであれば、なるべく円高のときに入ったほうがよいと言えます。なぜなら、円安のときよりも円高のときのほうが、保険料が安くなるからです。

たとえば、保険料が100ドルの外貨建て保険に入るとしましょう。1ドル=125円のときにこの外貨建て保険に加入すると、保険料は100ドル=1万2500円です(ここでは為替手数料は考慮しないものとします)。

仮に、この外貨建て保険に1ドル=100円の円高のときに加入すると、保険料は100ドル=1万円となります。ドルでの保険料は同じ100ドルですが、円での保険料は2500円安く済む、というわけです。

一方、この外貨建て保険に1ドル=150円の円安のときに加入すると、保険料は100ドル=1万5000円となります。ドルでの保険料は同じ100ドルですが、円での保険料は2500円高くなってしまいます。

反対に、外貨建て保険から保険金や満期保険金、解約返戻金を受け取るときにはなるべく円安のほうが有利です。考え方は保険料のときと同じで、外貨を円に戻すときの為替レートが円安になっていたほうが、円での金額が多くなるからです。

たとえば、解約返戻金が1万ドルの外貨建て保険に加入していたとします。この外貨建て保険の解約返戻金は、受け取るときの為替レートによって、

1ドル=150円…1万ドル×150円=150万円

1ドル=125円…1万ドル×125円=125万円

1ドル=100円…1万ドル×100円=100万円

という具合に、円で受け取れる金額に違いが出てきます。

外貨建て保険は、円高のときに入って円安になったときに受け取るのがよい保険だといえます。受け取り時期が選べるならば、円安のタイミングで受け取るのが得だと覚えておきましょう。

外貨建て保険のメリット・デメリット

外貨建て保険のメリットには、次のようなものがあります。

外貨建て保険のメリット1:資産の分散ができる

外貨建て保険は外貨建ての資産と考えることもできます。資産が日本円だけだと、円安が進んだときに価値が目減りしてしまいます。しかし、資産の一部を外貨にしておけば、円安になって円の価値が下がっても、外貨建ての資産が相対的に値上がりして、円の目減りに対応できる可能性があります。

外貨建て保険のメリット2:円建て保険と比べて、予定利率が高い

予定利率とは、保険会社が契約者に約束する運用利回りのことです。保険会社はあらかじめ預かった保険料を「1%の利回りで運用できる」などと見込んで、その分保険料を割り引いています。外貨建て保険の場合、この予定利率が円建ての保険より高いので、同じ保険金額の保険に加入する場合、外貨建て保険のほうが保険料を安くできる可能性がある、というわけです。

外貨建て保険のメリット3:生命保険料控除が使える

外貨建て保険は所得控除の1つ、生命保険料控除の対象です。生命保険料控除では、払い込んだ生命保険料に応じて一定額を所得から差し引くことができるため、所得税や住民税の負担を軽くすることができます。円建ての生命保険でももちろん生命保険料控除が使えますが、外貨建て保険でも生命保険料控除が使えます。

一方で、外貨建て保険には次のようなデメリットもあります。

外貨建て保険のデメリット1:為替変動リスクがある

外貨建て保険には為替変動リスクがあります。確かに、為替レートが円安に進めば円に戻したときの保険金は増えます。しかし、反対に為替レートが円高に進めば円に戻したときの保険金も減ってしまいます。上でも紹介したとおり、うまく円高のときに加入して、円安のときに保険金を受け取ることができればメリットにもなるのですが、為替レートの値動きは自分でどうにかできるものではありません。為替レートの変動で大きな損失を被る可能性もあります。

外貨建て保険のデメリット2:為替手数料や解約控除がかかる

外貨建て保険では、為替手数料や解約控除といった手数料に注意が必要です。

為替手数料は、外貨建て保険の保険料を支払うときや、外貨で受け取った保険金を円に戻すときに支払う手数料。たとえば「1ドルあたり1円」などという具合に保険会社ごとに定められています。少額ならばそれほど気にならないかもしれませんが、外貨建て保険の保険料はある程度まとまった金額を一定期間支払うので、合計は大きな金額になります。為替手数料は馬鹿になりません。

また、解約する際に「解約控除」という手数料が差し引かれます。この解約控除が想定よりかなり大きく、解約返戻金の額が保険料を下回る元本割れを起こす可能性が高くあります。

外貨建て保険はそもそも資産形成に不向き

ここまで、外貨建て保険の特徴を見てきましたが、筆者は外貨建て保険を含む貯蓄型の保険をおすすめしません。なぜなら、貯蓄型の保険は、保険料に占める手数料や解約控除が高く、資産形成に全くもって不向きであり、死亡保障に備えるにしても非効率だからです。

保険会社に支払う保険料には、「純保険料」「付加保険料」が含まれています。純保険料は、将来の保険金支払いに充てられる保険料付加保険料は保険会社の経費に充てられる保険料です。純保険料の金額はどの保険会社でも大差ありませんが付加保険料は保険会社の人件費・広告宣伝費・販売手数料・そのほかの経費などで、各保険会社が自由に決めます

各保険会社は純保険料と付加保険料の割合を公表していないのですが、これを公表しているネット生保のライフネット生命によると、支払う保険料のうち30〜40%が付加保険料になっています。保険料が比較的安いネット生保でも、相応の付加保険料を支払っていることがわかります。

また、付加保険料のなかにある「販売手数料」は、保険を販売した代理店などに支払われる手数料です。販売手数料の割合は、商品により異なり、公表されていないことも多いのですが、外貨建て保険の場合は6〜8%もの販売手数料を取っています。投資信託の購入時手数料が最大で3%程度というのと比べても、外貨建て保険の販売手数料は高いことがわかります。最近では、購入時手数料がかからない投資信託も多いので、なおさらです。

販売手数料が高いということは、保険会社が儲かる商品ということ。だからこそ、加入を勧めてくるのです。

さらに、貯蓄型保険の場合は、支払った保険料のどの部分が死亡保障に回っていて、どの部分が貯蓄に回っているのかが不透明ですので、付加保険料はもっと高いと考えられます。

保障は定期保険、貯蓄は預金や投資信託で行うのが効率的かつ合理的

外貨建て保険に加入する理由は、おそらく「保障と貯蓄を同時に用意できるから」「外貨建ての運用ができるから」でしょう。しかし、保障と貯蓄を用意したい、あるいは運用をしたいならば、保障は定期保険、貯蓄は預金や投資に回したほうがずっと有利です。定期保険は、万が一のときの保障だけを用意する保険。シンプルだからこそ、貯蓄型保険より保険料がグッと抑えられています。

たとえば、ある外貨建て保険の保険料(30歳男性・月額)と、それで得られる死亡保険金の金額は、次のようになっています。

【外貨建て保険】

30歳男性の保険料(月額):169.90ドル(約2万5145円)

死亡保険金:10万ドル(約1480万円)

※予定利率 年2.5%、1ドル=148円で計算

これに対して、定期保険と投資信託で保障と貯蓄を用意すると、次のようにすることができます。

【定期保険】

30歳男性の保険料(月額):3520円

死亡保険金:2000万円

【投資信託】(eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー))

毎月2万1500円(信託報酬年0.05775%)

※トータルリターン5年 年率17.33%(2024年1月23日時点)

どちらも、毎月の支払額の合計は2万5000円ほどですが、定期保険では外貨建て保険よりも安い保険料で多くの保障を用意できています。

また、投資信託は市場の値動きを表す指標と連動するインデックス型の投資信託を利用すると、コストを抑えて投資ができます。インデックス型の投資信託の中には、保有中にかかるコスト(信託報酬)が0.1%を切るなど、なるべく低コストの投資信託を選ぶのがよいでしょう。

外貨建て保険の予定利率は年2.5%なのに対し、例に挙げた投資信託の5年トータルリターン(年率)は約17%と、大きく増やせていることがわかります。

さらに投資信託については、2024年よりスタートした新NISAやiDeCoを利用することで、利益にかかる20.315%の税金がゼロにできます。iDeCoではそのうえ、掛金が全額所得控除できるので、毎年の所得税や住民税を減らすこともできます。

外貨建て保険にもし入るとするならば、為替変動の影響を考えると「円高のときに入って円安になるのがよい」のですが、そもそも外貨建て保険で保障と貯蓄を備える行為が間違い。

死亡保障に備えながら資産形成したいならば、シンプルな死亡保障で保険料が安い「定期保険」と「低コストのインデックス型投資信託×新NISA・iDeCo」が圧倒的に良いです。

頼藤 太希(よりふじ・たいき) (株)Money&You代表取締役/マネーコンサルタント

中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『マンガと図解 はじめての資産運用 新NISA対応改訂版』(宝島社)、『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など著書累計130万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。twitter→@yorifujitaiki

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