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ふるさと納税ちゃんと控除された? 確認するには

ふるさと納税は、自分で選んだ自治体に寄付をすることで、所得税や住民税の控除が受けられる制度。寄付した自治体からお礼の品(返礼品)がもらえることもあり、年々利用者が増えています。ただ、返礼品にばかり目がいって、肝心の「所得税や住民税の控除」の確認をしていない人もいるのではないでしょうか。

今回は、ふるさと納税の控除がきちんと行われているかを確認する方法を紹介します。

ふるさと納税の制度をおさらい

ふるさと納税は、自分が選んだ自治体に寄付をすることで、2,000円を超える金額を所得税・住民税から控除できる制度です。

ふるさと納税は、自分が住んでいる自治体に納める住民税の一部を預け替えするような制度ですので、「節税」にはなりません。しかし、寄付した自治体からは寄付金の3割を上限とする返礼品がもらえます。仮に5万円寄付したら、1万5,000円分の返礼品がもらえる計算。ふるさと納税は「実質2,000円の自己負担で返礼品がもらえる」からお得なのです。

そのお得さも相まって、ふるさと納税の利用者は年々増加しています。総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」によると、2023年度の寄付額は1兆1,175億円と、1兆円の大台を初めて突破しました。

ふるさと納税サイトなどでふるさと納税の手続きを行うと、追って各自治体から返礼品が届きます。ただ、実質2,000円の自己負担で返礼品をもらうためには、住民税や所得税の控除の手続きを自分でしなくてはなりません。

ふるさと納税で支払った寄付金は「寄附金控除」の対象になります。寄附金控除を受けることで、所得税や住民税の控除が受けられます。

ふるさと納税で寄附金控除を受ける手続きには、「確定申告」と「ワンストップ特例制度」があります。

●確定申告

確定申告は、1月1日〜12月31日までの1年間の所得から税額を計算して納税する手続きです。確定申告の期間は例年2月16日〜3月15日(土日の場合は次の平日)となっています。最近では確定申告もスマホやパソコンでできるようになっています。もちろんふるさと納税の手続きもスマホやパソコンでできます。

個人事業主やフリーランスの方は毎年1回、確定申告を行い、納税しています。会社員や公務員の場合、勤め先が行う「年末調整」で正しい税額を計算して納めているため、とくに必要がなければ確定申告はしなくても問題ありません。

しかし、後述しますが、会社員・公務員でも確定申告の必要のある人はいます。この場合は、ふるさと納税の手続きも確定申告で行う必要があります。また、ふるさと納税で6つ以上の自治体に寄付した人は、ふるさと納税の寄附金控除も確定申告で手続きする必要があります。

●ワンストップ特例制度

ワンストップ特例制度は、確定申告せずに寄附金控除が受けられるしくみです。ふるさと納税を行なったあと、各自治体に「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」という書面を提出するだけで寄附金控除が受けられるのでとっても手軽です。

ワンストップ特例制度が利用できるのは、確定申告の必要のない人。したがって、利用できるのは会社員・公務員です。また、ふるさと納税の寄付先の自治体が5つ以下である必要もあります。

ふるさと納税の手続きを確定申告で行うと、ふるさと納税をした年の所得税で納めすぎになった分が還付され、翌年の住民税から控除されます。ワンストップ特例制度で行うと翌年の住民税からのみ控除されます。

一見、確定申告のほうがお得そうですが、確定申告でもワンストップ特例制度でも、控除される金額の合計は同じです。ワンストップ特例制度が利用できるならば利用して、ワンストップ特例制度が利用できないなら確定申告で手続きすればよいでしょう。

税金の控除はどう確認すればよい?

ふるさと納税の税金の控除のうち、わかりやすいのは確定申告で手続きした場合の「所得税の還付」です。

確定申告書の控えにある「還付される税金」の欄に所得税の還付金額が記載されています。この金額が、確定申告のときに指定した銀行口座に振り込まれているかを確認すればOKです。

<確定申告書の控え>

(株)Money&You作成

確定申告をした時期や方法などにより多少異なりますが、期限内に手続きしていればおおよそ3月中旬から5月ごろまでのあいだに所得税の還付が受けられます。

一方、わかりにくいのが「住民税の控除」です。ふるさと納税の手続きが確定申告でもワンストップ特例制度でも、住民税は翌年の住民税から控除が受けられる(=翌年の住民税が安くなる)仕組みになっています。

それを確認するために「住民税決定通知書」を見てみましょう。住民税決定通知書は文字どおり、住民税の金額を知らせるための通知書。毎年5月から6月に届きます。

<住民税決定通知書のイメージ>

(株)Money&You作成

住民税決定通知書は、前年の所得などの情報をもとに計算された住民税の金額を知らせる書類です。実際には、黄色のところでつながっている細長い書式です。

ふるさと納税で控除される住民税の金額は、②の市町村・道府県の「税額控除額」の欄に記されます。この合計額が以下の金額になっているかを確認しましょう。

  • 確定申告:ふるさと納税の寄附金額-2,000円-所得税の還付金額
  • ワンストップ特例制度:ふるさと納税の寄附金額-2,000円

控除される住民税の金額がこの計算式の金額と同じならば、正しく住民税の控除が行われています。①の(摘要)の欄に「寄附金税額控除額」などとして、控除されている金額が具体的に記されている場合もあります。

なお、③の納付額には、6月から翌年5月までの毎月の住民税額が記載されます。お手元の給与明細に記載されている住民税の金額と、これからの毎月の住民税の金額を見比べてみてください。住民税から控除される金額は確定申告とワンストップ特例制度のどちらを利用したか、ふるさと納税をした金額がいくらかによって異なるので一概にはいえませんが、これまでふるさと納税を利用していなかった人であれば「昨年度より減っている」となっているはずです。この減った分をふるさと納税することで「先払い」しているというわけです。

ふるさと納税の控除にまつわるQ&A

ふるさと納税で正しく控除を受けられているかの確認はここまでお話しした通りですが、実際には「こんなときどうする?」ということも出てくるでしょう。以下、Q&Aの形で対処法を紹介します。

Q:ふるさと納税の控除が正しく反映されていない?

A:手続きに不備がないかを確認してみましょう

ふるさと納税の控除が反映されていなかった場合は、まず手続きを正しく行なったかを確認しましょう。確定申告もせず、ワンストップ特例制度の「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」も提出していなければ、控除ももちろんされません。「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」の提出期限は原則寄付翌年の1月10日(必着)となっているため、間に合わなかった可能性も確認してみましょう。

ふるさと納税の手続きをする際に、ワンストップ特例制度を利用すると申請した場合でも、6つ以上の自治体に寄附した場合は確定申告が必要です。

そのほか、以下のような方はそもそも年末調整では手続きができず、確定申告しなけばならないので、ワンストップ特例制度が利用できません。

  • フリーランスや個人事業主
  • 給与所得以外の所得が20万円超
  • 医療費控除など、別件で確定申告が必要
  • 住宅ローン控除の1年目の手続きをする
  • 年間2000万円以上の給与所得がある
  • 年間400万円超の年金がある

これらの人は、たとえワンストップ特例制度の手続きをしていたとしても、改めて確定申告によってふるさと納税の手続きをする必要があるので、忘れずに手続きしましょう。

確定申告やワンストップ特例制度の手続きに不備がなさそうにもかかわらずふるさと納税の控除が正しく反映されていないという場合は、何かのミスが発生している可能性もあります。お住まいの自治体に確認してみましょう。

Q:控除額が思ったより少なかった…どうして?

A:寄付の上限額を超えて寄付した可能性あり

ふるさと納税で実質2,000円の自己負担となる寄附額には上限額があります。

ふるさと納税の自己負担の上限額は、年収や家族構成で異なります。

<ふるさと納税の上限額の目安>

(株)Money&You作成

ふるさと納税自体は自己負担上限額を超えてもできますが、上限を超えた分は控除されませんので、自己負担が2,000円以上になってしまうこともあります。自分の自己負担上限額を確認したうえでふるさと納税を利用するようにしましょう。

ふるさと納税サイトでは、自分の自己負担上限額をシミュレーションできるようになっているので、活用しましょう。

Q:手続きを忘れてた!どうしよう

A:5年以内であればさかのぼって手続き可能

ふるさと納税の寄附金控除の手続きをしていなかったという場合でも、ふるさと納税を行った翌年から5年以内であれば、確定申告することで寄附金控除が受けられます。ふるさと納税をしたものの、寄附金控除が適用されていないばかりに、所得税や住民税を多く支払っている状態ですので、もったいないですね。今からでも手続きをしましょう。

ふるさと納税というと、返礼品をどうするかに気を取られがちですが、控除の手続きも忘れずに行いましょう。ワンストップ特例制度が利用できるなら利用し、確定申告が必要ならばふるさと納税の手続きも確定申告で行います。

これらの手続きをせず、寄附金控除をしないでいると、ふるさと納税をしてもその金額分の税金が減らないため、税金を多く払うのと同じことになってしまいます。返礼品で楽しむためにも、必要な手続きは忘れずに行いましょう。

2025年は9月末までにふるさと納税しよう

2025年のふるさと納税は9月末までに済ませた方が得です。なぜなら2025年10月から、ふるさと納税サイトでの寄付に対するポイント還元が禁止されるからです。

これまでは、ふるさと納税サイトで寄付をすると、ふるさと納税サイトからポイントがもらえていました。しかし、2024年7月に総務省がふるさと納税サイトでのポイント付与を禁止することを発表。2025年10月以降、ふるさと納税サイトで寄付をしてもポイントが還元されなくなってしまいます。

ふるさと納税といえば「年末にかけこみで」という人も多そうですが、2025年はポイント面で損。より多くのポイントを手に入れるためにも、2025年は9月末までにふるさと納税を済ませましょう。

頼藤 太希(よりふじ・たいき)
マネーコンサルタント

(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に創業し現職。日テレ「カズレーザーと学ぶ。」、TBS「情報7daysニュースキャスター」などテレビ・ラジオ出演多数。主な著書に『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など、著書累計180万部。YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。日本年金学会会員。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)

X(旧Twitter)→ @yorifujitaiki

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