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ビットコイン「長期投資」はあり? まだ値上がりすると考えられるワケ

テレビやSNSなどで暗号資産取引の広告を見かけることが増えてきました。その理由は、暗号資産の代表、ビットコインの値上がりが顕著だからです。しかも、ビットコインの価格は今後も値上がりすることが見込まれます。

今回は、ビットコインがまだ値上がりすると考えられる理由を紹介します。

ビットコインってそもそもどんなもの?

ビットコインは、世界で最初に誕生した暗号資産です。

日銀(日本銀行)によると、暗号資産は「インターネット上でやりとりできる財産的価値」。「代金の支払いに使えて円やドルなどの法定通貨と交換できる」「電子的に記録・移転できる」「法定通貨や法定通貨建ての資産ではない」ことが暗号資産の定義とされています。

暗号資産は、国や中央銀行が発行・管理しているものではありません。ブロックチェーンという仕組みで、世界中の人がやり取りを分散して記録することで成り立っています。ビットコインは、そうした暗号資産の元祖であり代表、というわけです。

ビットコインは買い物に使うこともできなくはありません。たとえば家電量販店のビックカメラの場合、店舗では1会計につき税込30万円、ネットショップでは注文金額税込10万円までの買い物でビットコインを利用できます。日本だけでなく、海外にもビットコインを買い物に使える店舗はあります。

しかし、現状はビットコインを利用した買い物はあまり普及していません。その理由は、価格変動が非常に大きく、明日はもっと増えている可能性が高いとみんなが思っているからです。

<ビットコインの値動き>

coinmarketcapのデータより(株)Money&You作成

はじめてビットコインが買い物に使われたのは2010年5月のこと。1万BTC(ビットコイン)がピザ2枚(41ドル)と交換されたそうです。41ドルといえば、1ドル=150円として6150円ですから、当時1BTCは「約0.6円」だったといえます。

しかし、ビットコインは激しく値上がりと値下がりを繰り返しながら、全体としては右肩上がりになっています。2025年9月時点では1BTC=1710万円程度です。単純計算(1710万円÷0.6円)ですが、その価値は2850万倍に増えたことになります。

一方で、ビットコインの価格はずっと右肩上がりかというとそうではなく、一気に値下がりする展開もあります。これほどまでに日々値動きしていると、買い物で使った直後にビットコインが値上がり(値下がり)して得したり損したりすることが出てきます。

現状、ビットコインは買い物ではなく「投資先」として利用されるの方がほぼ100%でhそう。他の金融商品にはなかなか見られないような大きな値動きが、暗号資産投資の醍醐味となっています。

余談ですが、暗号資産のなかには法定通貨などの価格と連動するように作られた「ステーブルコイン」もあります。米ドルと連動するステーブルコインとしては「テザー(USDT)」が有名。日本でも2025年8月に国内初の日本円に連動するステーブルコイン「JPYC」が今後金融庁の承認を受け発行される予定だと話題になりました。法定通貨と同様の値動きなので、決済に使いやすいという特徴があります。

ビットコインは今後も値上がりする見込み

結論からいうと、ビットコインは長期的には値上がりすると考えられます。その理由は大きく分けて5つ考えられます。

1、発行量が2100万BTCに限定されているから

ビットコインは、ビットコインの取引を確認・記録する「マイニング」という作業の報酬で得ることができます。ただ、ビットコインの発行枚数は2100万枚に固定されています。すでに2000万枚近くが発行され、残りは100万枚ほどになっています。

しかも、マイニングの報酬は約4年に1度訪れる「半減期」によって半分になります。そのため、ビットコインが最後まで発行されるのは2140年ごろと見られています。

新規に発行されるビットコインが少なくなるということは、徐々にすでにあるビットコインの希少性が高くなるということです。需要に対して供給が少なくなると、ビットコインの価格が上がりやすいと考えられます。このような希少性の高さから、ビットコインはしばしば「デジタルの金(デジタルゴールド)」などと称されます。

2、インフレに強い資産だから

実物の「金(ゴールド)」は、希少性が高く、インフレに強い資産と考えられています。インフレでは物価が上昇し、お金の価値が下がります。このとき金も、物価に合わせて値上がりします。ビットコインも希少性の高い「デジタルの金」ですから、世の中全般のインフレに合わせて値上がりすることが見込めます。

また、ビットコインのマイニングにかかる電気代もインフレによって年々高騰しています。マイニングのコストが高騰すれば、それによって手に入るビットコインの価格が下支えされると考えられます。

3、「金余り」の状況だから

コロナショック以降、各国が大規模な金融緩和を続けたことで、世界的に金余りの傾向にあります。

<主要中央銀行バランスシート推移>

米セントルイス連銀のデータより(株)Money&You作成

グラフは米国・日本・欧州のバランスシートの規模の推移を示したものです。金融緩和によって、年を追うごとにその規模が増加してきたのがわかります。

米国は2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックのタイミングで大規模な金融緩和を行っている様子が見て取れます。日本も2012年末ごろからのいわゆる「アベノミクス」以降、金融緩和が進んでいます。なお、参考にした米セントルイス連銀のデータでは2020年以降欧州のデータが更新されていないので、欧州はグラフが途中で終わっています。

米国FRBのバランスシートと、米国の株価指数、S&P500を比較してみると、金融緩和が進むことで株価が上昇してきた様子がわかります。

<FRBのバランスシートとS&P500の推移>

(株)Money&You作成

金余りの状態では、投資マネーがさまざまな資産に向かいます。ビットコインもその例外ではないというわけです。

4、政府や企業が参入しているから

近年は個人投資家だけでなく、国や企業もビットコインの保有に乗り出しています。

たとえば米トランプ大統領は2025年3月に「戦略的ビットコイン準備金」(Strategic Bitcoin Reserve)を設立する大統領令に署名。国が将来の突発的な支出に備えて保有する準備金の一部にビットコインを組み入れる方針を示しています。米国のビットコインは、多くは刑事事件・民事事件の摘発による押収によって保有しているものです。現状、新たに予算を組んでビットコインを購入する考えはないようですが、今後も押収額が増えれば政府が保有する暗号資産は増えていきます。

そのほか、中国、英国、ウクライナ、ブータン、エルサルバドルなどでもビットコインを保有しています。ブータンやエルサルバドルではビットコインのマイニングを国家事業として行っています。

日本の企業でも、メタプラネット(3350)、コンヴァノ(6574)、リミックスポイント(3825)などの企業がビットコインを保有しています。メタプラネットは2025年9月8日にビットコインの追加購入を行ったことを公表。リリースによると、これで同社のビットコイン保有量は2万136BTCとなっています。円安やインフレのリスクに備えるために、戦略的にビットコインの保有量を増やしているとのことです。

ビットコインの量があらかじめ決まっていて、政府や企業が将来に備えて保有することになると、価格は上昇すると考えられます。

5、ビットコインETFが登場したから

米国ではビットコインに投資するビットコインETFが登場しました。これにより、暗号資産を購入できなかった機関投資家などがビットコインETFの購入に乗り出しやすくなりました。加えて、米国でそもそもビットコインETFの販売が承認されたこと自体がビットコインの価値を引き上げたという側面もあります。

日本では現状、ビットコインETFは認可されておらず、購入することはできません。しかし、金融庁の「令和8(2026年度)税制改正要望について」には「諸外国の動向を踏まえ、我が国でも暗号資産ETFの組成を可能とするための検討を税制面を含めて行う必要」があることが記載されているため、ビットコインETFの認可が降りるかもしれません。そうなれば、ビットコインの価格上昇の一因になりえるでしょう。

ビットコインに関する税制が変わる?

暗号資産の取引に関しては今後、個人投資家にも追い風が吹くかもしれません。というのも、ビットコインをはじめとする暗号資産の税制が変わり、株・投資信託・FXなどと同じになる可能性があるからです。

税金の課税方法には、他の所得と合算して税率が決まる「総合課税」と、他の所得とはわけて税率が決まる「分離課税」の2つがあります。

暗号資産の取引で得た利益は、現状「雑所得」という所得になり、「総合課税」の対象です。総合課税では、給与など他の所得を合算して税額を計算します。総合課税の税率は、所得の合計額(課税される所得金額)に応じて5%〜45%となっています。

<所得税額の速算表>

課税される所得金額税率控除額
1,000円から1,949,000円まで5%0円
1,950,000円から3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円
国税庁のウェブサイトより(株)Money&You作成

本来、所得税は「超過累進課税」といって、課税される所得金額に応じて適用される税率が段階的に上がる仕組みになっています。たとえば、課税される所得金額が1億円ならば、「4000万円以上の部分に45%」「1800万円から4000万円未満の部分に40%」と計算していきます。しかし、それは少々手間ですよね。

上の速算表を使えば、課税される所得金額に税率をかけ、控除額を差引くだけで所得税額が算出できます。

暗号資産で1億円稼いだときの所得税額は、速算表より4020万4000円 となります。

1億円×45%−479万6000円=4020万4000円

加えて、住民税も引かれます。住民税の税率は一律10%が原則のため、1000万円です。

1億円×10%=1000万円

したがって暗号資産の1億円の利益からは、合わせて5020万4000円も税金が引かれてしまうのです。

株・投資信託・FXなどの金融商品を売った利益は分離課税のひとつ「申告分離課税」の対象です。申告分離課税の税率は、一律20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税(2037年末まで)0.315%)となっています。

株で1億円稼いだ場合の税金は、所得税と住民税合わせて1億円×20.315%=2031万5000円です。同じ1億円の利益でも、総合課税か申告分離課税かで2988万9000円もの差が生じます。

金融庁の「令和8(2026年度)税制改正要望について」では「足元、国内外の投資家による暗号資産投資の増加が指摘されているが、現在、有価証券取引等から生じる所得は基本的に分離課税が適用される一方、暗号資産取引から生じる所得は総合課税の対象とされている。昨年公表された税制改正大綱において、投資家保護のための必要な法整備を行うこと等と併せて、暗号資産取引に係る課税の見直しを検討することとされたことを踏まえ、所要の検討を進める必要」があると記されています。

2024年末の税制改正大綱には、暗号資産への課税は法律や報告義務などの整備をすることで見直しを検討する旨が記載されていました。これが実現し、暗号資産の利益にかかる税金も最大55%から20.315%に減ったとしたら、すでに多数保有している人も売却しやすくなりますし、これから暗号資産に投資する人も取り組みやすくなるでしょう。

暗号資産の申告分離課税化について、現段階ではまだ何も決定はしていません。過去にはFXの利益も総合課税から申告分離課税になっていますが、このときは11〜12年ほどの時間がかかっています。これにならうと、暗号資産の申告分離課税化も「仮想通貨元年」の2017年から11〜12年後、2028年・2029年ごろになるかもしれません。今後のビットコインの値動きと合わせて、課税のしくみの変更についてもぜひ注目しておきましょう。

頼藤 太希(よりふじ・たいき)
マネーコンサルタント

(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に創業し現職。日テレ「カズレーザーと学ぶ。」、TBS「情報7daysニュースキャスター」などテレビ・ラジオ出演多数。主な著書に『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など、著書累計180万部。YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。日本年金学会会員。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)

X(旧Twitter)→ @yorifujitaiki

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