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人生100年時代の資産形成とは?不確実な市場を生き抜くリテラシー設計

記事要約:
人生100年時代において重要なのは、短期的な相場観ではなく、変化に耐えうる「資産形成リテラシー」である。本記事では、トランプ政権下で顕在化した地政学リスクや市場変動を振り返りながら、長期的に資産を守り育てるための考え方を整理します。
複数資産を組み合わせたポートフォリオ戦略や、実物資産を含めた分散の意義を解説し、さらに資産形成を一過性で終わらせないために、設計から管理までを一貫して支えるワンストップ体制の価値を提示。人生設計と資産形成を切り離さずに考えるための視点を提供します。

市場を語る際に「トランプリスク」という言葉がしばしば用いられます。トランプリスクとは、ドナルド・トランプ氏が米国大統領であることによって生じる政治的・経済的な不確実性やリスクを指す言葉です。

2025年の市場はトランプ大統領の一挙手一投足に注目が集まり、トランプリスクに翻弄された1年だったといえます。

今回は、トランプ大統領(第2期)就任後の市場の動向と変動の要因を確認したうえで、市場がどんな状況であっても堅実に資産を増やせるようにするにはどうすればいいのか、紹介します。

トランプ大統領の発言・行動=「地政学リスク」の顕在化

トランプ氏が米国大統領選挙で勝利したことが報じられたのは2024年11月5日のこと。2025年1月20日に正式に米国大統領に就任しました。米国大統領の任期は4年間ですので、トランプ大統領は2029年1月まで大統領を務める予定です。

●「トランプショック」で株価暴落

2024年10月から本稿執筆時点(2025年12月12日)までの米国の株価指数、S&P500の動向を見てみましょう。

S&P500は米国のニューヨーク証券取引所やナスダックに上場する銘柄のうち、主に時価総額の大きい500社の株価をもとに算出される指数です。S&P500が上昇しているということは、米国株は総じて好調だといえます。

<S&P500(2024年10月〜2025年12月12日・日足)>

(株)Money&You作成

参照:S&P500指数情報・推移 Yahoo!ファイナンス

トランプ氏の就任後の株価動向で目を引くのが、2025年4月に発生した「トランプショック」でしょう。このとき、トランプ大統領は世界中の貿易相手国に対して関税を導入すると発表しました。

発表された関税は2段構えの構造。第1弾として、すべての輸入品に一律で10%の関税を課し、第2弾では米国との貿易赤字額が大きい国や地域に対して関税率を引き上げる「相互関税」を導入するという内容でした。日本には当初、24%の税率が適用されることが発表されていました。

米国の発表に対し世界は驚き、各国首脳は強い懸念を表明。多くの国では首脳や高官レベルで関税の引き下げや除外を求める交渉を申し入れました。一方で、世界2位の経済大国、中国は米国に対抗し、米国からの輸入品に関税をかける報復関税を表明。こうした動きにより世界経済の後退リスクが懸念され、トランプショックとして顕在化。株価が下落しました。

トランプ大統領のスローガンといえば「Make America Great Again」(アメリカを再び偉大に)。自国の保護主義的なスタンスから打ち出された政策は、しばしば株価に大きな影響を与えることがわかります。

●地政学リスクがマーケットに大きな影響を及ぼす

地政学とは、国家の地理的条件が政治・経済・外交・軍事政策などに与える影響を考える研究です。どの国も地理的条件を考慮しながら政治を行いますが、何かのタイミングで地政学的な緊張が生まれると、その国や地域の経済活動が悪化します。

地政学的な緊張には、政治的な対立、宗教問題、外交問題、戦争などさまざまなものがあります。これらが発生して市場が不透明になる「地政学リスク」が高まると、金融市場も無傷ではいられません。株価が暴落したり、為替が急変したりして、資産を減らすことになりかねません。

米国は世界の覇権を維持するために、「アジア」「欧州」「中東」の3つの地域を重視しています。特に世界第2位の経済大国となった中国の力を削ぐ行動をとります。前述の関税をはじめとする米中貿易摩擦もたびたび市場でクローズアップされ、株価を不安定にさせる要因になっています。また、日本や欧州、インド、オーストラリアなどと連携して中国に対抗し、米国を脅かすような突出した勢力が登場するのを押さえ込もうとします。

実際、トランプ大統領は外交面でもさまざまな国際問題に関わっています。

ロシアのウクライナ侵攻について、トランプ大統領はロシア・ウクライナ双方と協議し停戦交渉を仲介しています。ただ、停戦交渉には課題も多く、思惑どおりには進んでいない状況。トランプ大統領も和平合意の実現は「容易ではない」と語っています。

2025年6月以降、イスラエルとパレスチナの紛争の仲介にも関わり、イランの核施設を爆撃したこともありました。10月にはイスラエルとパレスチナの間で停戦の合意がありましたが、以後も双方の攻撃は続いており、完全な停戦には至っていない状況です。

2025年後半には、中国と台湾を巡る安全保障問題も注目されています。米国も主要な取り組みとして「台湾を巡る紛争抑止」を挙げています。

地政学リスクが高まり、新たな紛争や戦争が発生すると、そのショックによって値下がりするという事態も起きやすくなります。トランプ大統領、もっといえば米国は、さまざまな問題に関わっているために新たなショックによる値下がりも発生しやすいといえます。

米国は世界最大の経済大国です。その長である米国大統領の発言ですから、トランプ大統領に限らず注目されます。しかし、トランプ大統領の発言や行動は世界経済や国際政治などに大きな影響を与える「サプライズ」を生みやすいことから、市場も敏感に反応しているものと考えられます。

●トランプショック後の株価は堅調

トランプショックは発生したものの、以後の値動きは堅調です。2025年6月以降、米国の相互関税の交渉が進むにつれて、当初掲げられた関税率より引き下げられたり、関税の適用がストップしたりする事態が相次ぎました。日本も結局、当初掲げられた「24%」ではなく、「15%」が適用されることになりました。

米国では2025年9月・10月と相次いで利下げを実施。本稿執筆時点では、12月にも利下げが行われるのではないかとみられています。政策金利が下がると、企業は資金調達がしやすくなり、利益を上げやすくなるので、株価が上昇することにつながります。

世界的に金余りの状況であることも忘れてはいけません。2025年は米国のS&P500やダウ平均株価だけでなく、日本の日経平均株価も史上初の5万円を突破しました。さらには金(Gold)、暗号資産のビットコインなども大幅に値上がりしています。コロナショック以降、各国が大規模な金融緩和を続けたことで、世界的に金余りの傾向にあります。金余りの状態では、投資マネーがさまざまな資産に向かいます。

トランプショックは、2024年〜2025年という短期的な目線で見ると大きな下落ですが、1980年以降のS&P500の動向を見ると、一時的な調整ととらえられるでしょう。

<S&P500(1980年〜2025年11月・月足)>

(株)Money&You作成

参照:S&P500指数情報・推移 Yahoo!ファイナンス

どんな状況でも堅実に資産を増やせるポートフォリオを作ろう

いくら株の調子がよいからといっても、ずっと好調を維持できるとは限りません。下表は、1920年代から2010年代までの100年間を10年ごとに区分して、4つの資産クラスの実質リターンがどうだったのかを示しています。

<各資産クラスの実質リターン>

bridgewater「Paradigm Shifts」より

こうしてみると、株は好調です。4つの資産クラスのなかでもっとも値上がりした時期が6回もあります。しかし、1930年〜1939年、2000年〜2009年は、反対に4つの資産クラスのなかでもっとも値上がりしなかった時期となっています。そして、株が不調なときには債券や金が値上がりしています。

将来の市場がどうなるかは誰にも予測ができません。それであれば、複数の資産を組み合わせておくのがベターであることがわかります。

市場がどんな状況になったとしても堅実に資産を増やすことを目的とした資産配分に「パーマネントポートフォリオ」があります。「パーマネント」とは「半永久的な、長持ちする」といった意味。パーマネントポートフォリオは、保有し続けているだけで資産を堅実に増やしていくことを目指す資産配分の考え方です。米国の経済評論家、ハリー・ブラウン氏によって開発されました。

パーマネントポートフォリオの資産配分は、現金・米国株・米国債・金(GOLD)の4つの資産に25%ずつとなっています。

<パーマネントポートフォリオのイメージ>

(株)Money&You作成

それぞれの資産の役割は、次のとおりです。

・現金…景気後退に備えて保有。株式市場が暴落しても、現金の価値は変わりません。また、他の資産が値下がりしたときに買い増すのにも使えます。

・米国株…株価は景気がいいときに上昇します。その恩恵を受けるために保有。歴史的に見ても、株は経済成長に合わせて大きなリターンを上げています。

・米国債…国債は景気が悪く、金利が下がるときに値上がりします。株と反対の値動きをする点でも、株と一緒に保有する意味のある資産。

・金(GOLD)…金は自身に価値のある実物資産。インフレになると値上がりするため保有します。「有事の金」といって、世情不安が不安定なときにも値上がりする傾向。

パーマネントポートフォリオは、4つの資産のどれかが値下がりしても、他の資産が値上がりするといった具合に、補い合いながら資産を堅実に増やすことをめざします。

しかし、「パーマネント」と言っている割には現金の比率が低く感じますよね。これは米国人にとっては、米国債も安全資産と捉えることができるためだと考えられます。しかし、日本人にとって米国債は為替リスクがあるため、比較的値動きの大きい資産になります。よって、この比率をそのまま真似するのは難しいでしょう。心の安定度を考えると、現金比率はもっと高めるべきです。

心の安定度を優先した資産配分戦略に「カウチポテトポートフォリオ」があります。米国の金融コラムニスト、スコット・バーンズ氏が開発したものです。

カウチポテトとは、カウチ(couch:寝椅子)に寝転びながらポテトチップスを食べることを指す言葉。それくらい気楽にしていても安心して資産を増やすことをめざした資産配分です。

カウチポテトポートフォリオは、現金と株を50%ずつ保有するというシンプルなポートフォリオです。

株価が暴落して株が半額になったとき、もしも資産を株100%で保有していたら資産は50%減ってしまいますが、カウチポテトポートフォリオならば株が25%に減るだけなので、資産全体は25%しか減らずに済みます。カウチポテトポートフォリオは、暴落時の心の安定度を高めるような配分戦略といえます。

投資は長く継続することが重要ですので、カウチポテトポートフォリオの考え方を取り入れた方がベターです。

どちらも、米国の専門家が米国人向けに考えた資産配分ですので、日本人が実践するには、色々と調整が必要です。日本人が安心して堅実にリターンを目指すために、「日本版パーマネントポートフォリオ」を筆者が考えてみました。

まず、無リスク資産(現預金・個人向け国債)とリスク資産(株・米国債・金など値動きのある資産)は別々で考え、現金比率(無リスク資産比率)を高めて保有することとします。

カウチポテトポートフォリオの考え方を生かし、無リスク資産とリスク資産の配分比率を50%ずつにするのがひとつの手ですが、「120の法則」を活用するのも有効です。

120の法則は、無リスク資産とリスク資産の割合を「自分の年齢」と「120から自分の年齢を引いた数字」に対応させて保有する考え方です。

たとえば、自分の年齢が40歳であれば、無リスク資産とリスク資産の割合は「40:80」と考えるイメージです。もし資産が600万円あるなら、無リスク資産は200万円、リスク資産は400万円となります。同様に、自分の年齢が60歳ならば無リスク資産とリスク資産の割合は「60:60」。資産が2000万円であれば、無リスク資産1000万円、リスク資産1000万円に分けて保有するイメージです。

<日本版パーマネントポートフォリオ>

(株)Money&You作成

無リスク資産には個人向け国債を含めてOK。円金利上昇の恩恵を受けるなら「変動10年国債」がベターです。リスク資産は「米国株→世界株」「米国利付債」「金」の3つの資産に均等配分します。わかりやすさを重視して均等配分にしているので、リスク許容度が高いならば株の比率を高めてもOKです。

株に関しては日本株100%、米国株100%とするよりも、世界株がおすすめです。昔から、異なる資産を組み合わせることで「同じリターンでリスクがもっとも小さい」「同じリスクでもっともリターンが高い」資産配分が研究されてきました。その結論は「市場全体に投資することがもっとも効率的だ」というところに行き着いています。

近年は世界の分断が進んでいます。「日本(米国)だから安心」といえる時代ではありません。どの国が今後どうなるかがわからない以上、世界株に分散投資しておいたほうが負けにくいという意味でベターです。世界株に投資する投資信託(インデックスファンド)に投資すれば、1本で世界株の平均点を狙った投資ができます。

米国債を残した理由は、米国債が債券としてもっとも安全で流動性が高く、取引量が世界一で、それでいて金利も高いからです。

米国債には保有中半年に一度利息がもらえる「利付債」と、額面よりも割引された価格で購入して償還時には額面(100)で戻ってくる「ストリップス債」がありますが、利付債を選ぶのが個人的には良いと思っています。資産形成している間の生活が充実することも大切です。資産を売却せずとも定期的に利息が受け取れる利付債のほうが使いやすいでしょう。

金は、世界各国の中央銀行も分散投資の一環で、地政学リスクに対するヘッジとして購入しています。特に2022年以降、ロシアのウクライナ侵攻が始まってからは購入量が急上昇。需要の高まりに合わせるように、金価格も近年上昇しています。

毎月一定額ずつ金の現物に積立投資する「純金積立」や、金価格と連動する「金投資信託」「金ETF」を利用すると少額から低コストで投資ができます。

資産3分法で不動産を持つ

パーマネントポートフォリオと同様の考え方に「資産3分法」があります。

これは、預貯金・債券・株などに実物資産である「不動産」を組み合わせるというものです。

<資産3分法のイメージ>

(株)Money&You作成

資産3分法は資産を3種類にバランスよく分散して保有・運用することで、市場の変動に対応する考え方です。

「預貯金・債券・金」は安全性・流動性、「株式投資・投資信託」は収益性を重視した投資先です。「不動産投資」は収益性・安定性を重視した投資です。不動産は流動性(売買のしやすさ)こそ低いものの、実物資産(モノ)ですのでインフレに合わせて値上がりする傾向があります。不動産投資は、今後も進むとみられるインフレへの対策として有効です。

不動産投資のメリットは、安定的・定期的な収入が得られることです。「大家さん」となり、建物や部屋を貸し出すことで、毎月家賃収入を得ることができます。老後、資産を取り崩すフェーズに入っても、年金に加えて家賃収入という不労所得が得られるのが大きな強みです。

不動産投資はローンを組んで行うのが一般的。家賃収入でそのローンの返済を行います。投資した当初は家賃収入をローン返済に充てますが、ローン返済が終われば家賃収入がそのまま収入となるので、老後の生活が安定します。

また、不動産は他の金融資産と比べて相続税が低いため、自身が亡くなったときに相続税対策としても使えるメリットもあります。

トランプ大統領の任期はまだ続きます。今後もトランプリスクが意識される展開があることは十分に考えられます。もちろん、トランプ大統領以外の要因で市場が大きく変動する展開もあるかもしれません。将来のことは予測がつきませんし、誰にもわかりません。しかし、何が起こっても安心できるように準備することはできるはずです。

パーマネントポートフォリオや資産3分法などの考え方を生かして、資産を守る・増やす取り組みをしていただければ幸いです。

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頼藤 太希(よりふじ・たいき)
経済評論家・マネーコンサルタント

Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。ファイナンシャルプランナー三田会代表。慶應義塾大学経済学部卒業後、アフラックにて資産運用リスク管理業務に6年間従事。2015年に現会社を創業し現職へ。
日テレ「カズレーザーと学ぶ。」、フジテレビ「サン!シャイン」、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「定年後ずっと困らないお金の話」(大和書房)など書籍110冊超、累計190万部。
日本年金学会会員。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。宅地建物取引士。日本アクチュアリー会研究会員。

X→ @yorifujitaiki

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