新時代のマネーリテラシー 森井先生と「税」を学ぼう#3 【所得税編】
毎回ゲスト講師をお招きして、お金についてもっと「考える、きっかけ」を配信している72channel。
今回の講師は税理士業務、企業コンサル・監査を務める傍ら、お金にまつわる執筆や子育て論などのTVコメンテーターとしても活躍中の森井じゅん先生。稼ぐためには投資も大切ですが、出ていくお金を「守る」ために、私たちの生活からは切っても切れない「税金」について、様々な角度から教えていただきます。
第3回目は・・・「所得税」の種類編です。 前回、税金の数は50種類以上もあると教わりましたが、「所得」に関しても何種類もあることをご存知でしたか? 働いた対価としてもらうお給料だけではない、いろいろな所得。
#3ではそんな所得の種類からはじまり、所得税に関することを学んでいきます!
所得は、働いて稼ぐお金だけではない。
前回は税金の種類の多さを教えてくれた森井先生。今回はその中のひとつである「所得税」について、お話してくれました。
「そもそも所得税とは『所得』に対して国に収める税金ですね。所得って、ざっくりいうと儲けのこと。じゃあ儲けとはなにかというと、収入から必要経費を抜いたものです。そんな儲けである『所得』にも実は種類がいっぱいあって、その数はなんと10種。税金の分類も多いですが、所得にもこんなに種類があるんです。」
所得とは、私たちがイメージするのはお給料ですが、それだけはほんの一部の話。①利子、②配当、③不動産、④事業、⑤給料、⑥退職、⑦山林、⑧譲渡、⑨一時、⑩雑(①〜⑨に属さないもの)といったように、分類されるそうです。
「なぜこんなに種類が多いかというと、自分が手にした所得によって税金や必要経費が変わってくるからなんですね。一言で所得税と言っても、かなり奥が深いものなんです。」
確かに言われてみれば、最近ニュースで「仮想通貨で得られた利益に対する税金は高い」という内容を見ました。給料として得られる所得にかかる所得税とは税率が違ったりする。そうなると、所得税に詳しくなっておくことはお金をためていく上では欠かせない点になりそうです。
給与所得者にも、経費の控除がある?
所得は10種類もの分類があると教えてもらいました。それでは、そんな所得税の計算はどのようにするのでしょうか。森井先生は教えてくれました。
【所得税の計算方法】
- 収入金額ー必要経費=所得
- 所得ー各種所得控除=課税所得
- 税率適用
- 算出税額ー税額控除
- 納税額過不足計算→納付(還付)すべき税額の確定
このように細かい計算をしながら所得税は算出していくそうです。ただし、記事を見ていただいている皆さんのなかにも多い会社員に関して言えば、この計算を会社がやってくれていて、その差し引きした後の手取りとして給与をもらっている事になるんです。なので社会の仕組みから考えても私たちは、所得税に関しては知らないなら知らないでやっていけるようになっているんですね。森井先生は言います。
「給与所得者の経費ってなんだと思いますか?会社員の場合は、自分で経費の計算をする必要がありません。その代わり『みなしの経費』というものがあって、これを給与所得控除と呼んでいます。自営業者と違って会社員は経費を把握していないので簡便的に認められている制度です。逆に、自営業者には給与所得控除がありません。年収が多い会社員ほど、この給与所得控除は大きくなっていきます。たとえば年収850万くらいだった場合、調査によると自営業者であれば年間の経費は40万円くらいと言われていますが、給与所得控除は195万円。経費と証明しなくても勝手に所得税の課税対象から外してくれるわけなので、手厚いと言えば手厚い制度なんですね。」
給与所得控除という言葉は聞いたことがありましたが、その中身、意味までを考えることは今まであまりありませんでした。リスクゼロでやってもらえるすばらしい控除。本当に何も知らなくても物事がすすんで行くよくできた仕組みな一方、知らないところで勝手にお金の話は進んでいる。ちゃんと勉強をしなければちょっと怖いなと思うところです。
景気を自動で調整する機能。
ここからは、森井先生からもう少し切り込んだ話をしてもらいました。
「ビルトインスタビライザーって聞いたことありますか?ない人も多いと思いますが、日本語でいうと自動調整機能。景気を自動的に調整する機能にあたるものですね。所得税がよくそれにあたると言われているんです。」
昔、社会の時間に教科書で見たことがあるような・・・。名前は思い出せても、意味までははっきりと思い出せない言葉でした。これを期に覚えていきましょう!
「所得が多い人ほど税金は高いですよね。ということは、世の中にお金が回っているときには税収が多くなるわけです。そうすると、最終的に私たちの手元にはお金が残らないので景気を抑える機能が働くきます。一方、世の中にお金が回っていない時は、税収として持っていかれるものが少ないので、みんなの手元には使えるお金が残ります。そうなると景気を刺激するというわけです。」
なるほど、たしかに景気が良い時は税収が増え、景気が悪い時は税収が減る。所得税が世の中のバランスや景気の近郊を保つ効果もあるとは・・・。すごい仕組みを考えた人がいるものですね。
1億円稼いでも、社会保険料を払わなくていい方法。
最後に森井先生が話してくれたことも、とても勉強になる内容でした。
「日本には累進課税という素晴らしい制度がありますが、金融所得などの歪んだ税制でズレてしまうといったことも起こっています。たとえば30万円の給料であれば5万円ほど社会保険料が引かれていきますが、たとえば投資など金融商品で1億円稼ぎながら会社員として働いていて給与が30万円だとしたら、社会保険料は一緒なんですよ。金融所得には社会保険料はかかってこないんです。」
なんと、そうなんですね。だとしたら、お金を貯めたければ給料を増やすではなく投資で稼ぐことがかなり近道になっていくということになるのではないでしょうか。
「そうなると、たとえば1億円を給料で受け取るよりも、金融所得で受け取ったほうが得ですよね。といったことが起こっているわけです。いま世の中ではお給料が減ってしまっていわゆるデフレ状態と言われています。景気の状態が悪い日本でどうやってお金を回していくのが美味しいかというと、金融の世界にお金を投資することだったりするんです。」
だから、投資を学ぶことが大事なんですね。ギャンブル的に投資を捉えている部分もあった私ですが、税金という視点から見ても金融所得を多くしていく事にはこれほど価値があるとは・・・今回は目からウロコが落ちるお話でした。まだまだお金について学ぶ必要がありそうです!
今回は、所得税の視点から、税金に切り込んで話をしてもらいました。給与所得と金融所得、お金を手にする方法によってはかかる税金や社会保険料が変わってくるのは新たな発見でした。
森井先生からは踏み込んだ面白い話がさらに聞けるはず。次回にも期待しましょう。
森井じゅん プロフィール
公認会計士/税理士/ファイナンシャルプランナー。
高校中退後に、大検取得・留学・出産を経て一念発起。シングルマザーとして子育てをしながら公認会計士資格を取得。
現在、森井会計事務所代表として税理士業務、企業コンサル・監査を務める傍ら、お金にまつわる執筆や子育て論などのTVコメンテーターとしても活躍中。