2025年以降も進む東京の再開発と不動産投資【プロが教える不動産投資コラム】
2023年に入り岸田政権による賃金アップ政策、インバウンドの増加、さらに直近では4月28日の金融政策決定会合において植田新総裁による金融緩和政策の継続が表明され、早速株式市場が反応し今年最高値を更新するなど経済が徐々に動き始めています。そして今後の経済・不動産市場の動向を占う上でも重要なのが再開発事業です。
現在日本では各地において、例えば北海道では北広島、九州では天神ビッグバン・熊本、中国地方では広島、近畿圏においては大阪・梅田北ヤード、そして名古屋など様々なエリアで再開発が進んでいます。
東京首都圏においては2021年の東京五輪が終了後、東京の不動産価値・マンション価格等が下落に転じるような憶測も巷間ささやかれましたが現状はどうでしょうか。
大阪では2025年に「大阪・関西万博」に向けて大阪エリアの再開発も進んでいますが、実は東京でも多くの再開発が2025以降にも計画されています。
こうした東京の将来象について検証してみたいと思います。
再開発と不動産投資の関係は
再開発により街が発展すると周辺の不動産需要も増加し、また就業人口の増加から住宅需要も増加します。さらにそのエリアが発展する事により周辺の地価・不動産価格も上昇しますので、不動産投資をする上でもその相乗効果が期待できます。
また再開発の不動産の資産価値にもたらす効果はタイムラグがある場合もあり、再開発が完成し、就業人口が増えてから沿線や周辺の地価が上昇するケースがあります。
つまり再開発が行われているエリアの周辺や沿線は将来的に不動産の資産価値が上昇する可能性が高いと考えられます。特に東京都心部には多くの路線が乗り入れており、さらに郊外への直通運転などで多くのエリアに相乗効果をもたらす可能性があります。
東京五輪、大阪万博と再開発
五輪や万博などの国際的な大イベントに合わせて再開発が進められるケースも多くなっています。1965年の東京五輪では新幹線や首都高速、モノレールなど多くの社会インフラが建設されその経済効果は莫大なものでした。
2021年の東京五輪でも多くの再開発事業が進められ現在にも至っています。
また大阪でも先に述べたように「大阪・関西万博」の開催に合わせて多くの新線・延伸計画や再開発が進行しています。しかし意外にも東京では東京五輪後においても再開発計画が目白押しとなっています。
2025年以降に予定されている再開発事業の例
(1)東京・八重洲エリア
東京駅周辺は東京の玄関口として、また歴史的にもビジネスの中心街として古くから発展してきているエリアです。丸ノ内エリアは三菱、日本橋エリアは三井と歴史的にそれぞれの企業が主に開発を進めてきた経緯もあります。
丸ノ内、大手町側の開発は古くからから進み現在は高層ビルが建ち並ぶ近代的なオフィス街となっていますが、現在は八重洲側の開発も進んでおり2023年3月には「東京ミッドタウン八重洲」が開業しました。商業施設だけでなく同じビルの中に小学校や「ブルガリホテル東京」があったり、ホテルには416㎡のスイートルームがあるなど話題となっています。
東京駅のホームから見ると八重洲側に次々と建設された高層のオフィスビルを見る事ができます。丸の内・八重洲側の両方が高層ビルの多いオフィス街となってきています。
八重洲エリアでは今後「八重洲一丁目東AB地区」が2025年度、「八重洲二丁目中地区」が2028年度、「八重洲一丁目北地区」が2032年度に完成予定です。
さらに2028年には高さ390メートルと日本一となる「トーチタワー」が開業する予定です。2030年頃には東京駅東側に全長1キロの地下通路が建設されるという報道もあります。東京駅周辺は今後ますます発展し就業人口も増加する可能性があります。
東京駅エリアは交通が発達しており遠方からもアクセスしやすい事が特長です。東京駅には羽田空港へ直通となる「羽田空港アクセス線」が2031年度に開業予定であり、ますますの発展も予想されます。東京の東側からもアクセスしやすく、東京東側を始め多くのエリアの住宅需要の増加にもつながります。
(2)日本橋・銀座エリア
日本橋は江戸時代に五街道の基点となり日本の物流の中心となりました。現在は多くの高層ビルが建ち並ぶエリアで、また百貨店なども多い事も特長です。日本橋上空を首都高速道路が通っていますがこれを地下化する計画が進んでいます。首都高速の地下化に合わせて周辺では多くの再開発が予定されています。
「日本橋一丁目中地区」はヒルトン系ホテルも入る高層ビルで2025年度完成予定、「日本橋一丁目北地区、1・2番街区、東地区」なども2025~2037年度にかけて完成予定です。今後は街が大きく変貌し、インバウンドの増加も期待できるのではないでしょうか。日本橋の発展で東京東側及び湾岸エリアの住宅需要も増加する可能性があります。
さらに銀座エリアでは東京高速道路(KK線)を歩道デッキ化する計画が東京都から発表されています。これは日本橋エリアの首都高地下化により新たな都心環状ルート(新京橋連結路)の整備案を具体化する方向性が示され、現在のKK線の交通量が低下し有効活用案として検討されているものです。さらに中央区の「都心環状線」は蓋(ふた)をして、上空を歩行できる空間にする計画も進んでいます。
<東京高速道路(KK線)の位置図(出典:東京都)>
(3)品川エリア
品川エリアは「リニア中央新幹線」の始発駅として予定されています。将来的に名古屋や大阪などと短時間で結ばれる予定です。東京・名古屋・大阪の都市機能が一体化した「メガリュージョン」が形成される可能性があります。
さらに、現在工事が進行している「高輪ゲートウエイ」駅周辺の大規模再開発「高輪ゲートウエイシティ」は延べ84.6万㎡の敷地にオフィス、住居、ホテル、コンベンション施設などを建設する計画です。複合棟Ⅰは2025年3月に開業、その他の施設は2025年度中に開業の予定です。また品川・泉岳寺駅周辺でも多くの再開発が進行しています。
リニア中央新幹線の開業は2027年を目指していますので、2025年以降はこのエリアが大きく発展し「第二の丸ノ内」となる可能性もあります。
(4)六本木周辺エリア
六本木に「六本木ヒルズ」が誕生して2023年には20周年を迎えます。「アークヒルズ」が開業した頃は交通の便も悪く「陸の孤島」と言われていましたが、今では交通も発達し東京を代表するビジネス街に発展してきています。さらに2007年には「東京ミッドタウン」が開業しました。
周辺では「虎ノ門一丁目」「虎ノ門二丁目地区」「赤坂二・六丁目地区」「西麻布三丁目北東地区」などで大規模な再開発が進んでおり2025年以降の街の大きな発展も期待できますが、実は六本木ヒルズの東側「六本木五丁目西地区」で大規模な再開発が計画されています。詳細は未定ですが、国際文化会館、東洋英和女学院なども含めた非常に規模の大きいプロジェクトとなると予想されます。
将来的にますます港区のポテンシャルが増加すると考えられます。
(5)新宿・渋谷エリア
渋谷エリアでは東京五輪に向けて街が大きく変貌してきました。昭和の頃とはまったく別の街のように生まれ変わっていますが、さらに2025年以降にも大規模な再開発の計画があります。「渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期」が2027年に完成、また東急百貨店本店跡地の「Shibuya Upper West Project」は2027年に完成、高さ164mのビルとなる予定です。他にも渋谷駅周辺では多くのプロジェクトが進行しています。
新宿駅周辺は「ミライナタワー」など新南口側の開発が進みましたが、今後は小田急百貨店を建て替える「新宿駅西口地区(2029年度完成)」や京王百貨店を建て替える「新宿駅西南口地区(2040年代完成)」なども予定されています。周辺でも大規模な再開発が進んでいますので、渋谷駅のように新宿駅周辺も将来的に大きく変貌する可能性があります。
東京では他にも数多くの再開発が進行しています。開発により街が大きく発展していきますが、こうした建築需要の増大によって東京のみならず全国的に建築費の上昇が続くと考えられます。
また東京は全国の都道府県で唯一の人口増加都市であり、今後も再開発による就業人口の増加から人口の増加、住宅需要の増加が見込まれます。将来的にも長いスパンで発展が続く東京は特に不動産投資のエリアとしても有望と言えるのではないでしょうか。