東京都の「しゃれた街並みづくり推進条例」と不動産投資【プロが教える不動産投資コラム】
不動産の将来価値を高めるキーワードとしては再開発・規制緩和、海外からの投資など様々なものがあります。具体的には国家戦略特区・都市再生緊急整備地域・アジアヘッドクォータ特区など多くの不動産の価値を高める施策があります。
2023年7月に渋谷の「道玄坂2丁目」地区が「東京都のしゃれた街並みづくり推進条例」の中の「街並み再生地区」に指定されました。
今回はその条例と主に「街並み再生地区」と不動産の価値、発展性・将来性について検証してみたいと思います。
「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」とは
日本国内には自治体によって様々な条例が存在します。例えば京都市では歴史的建造物及び街並みの美しさを保持するための「景観条例」、また福岡市内では空港と市内のエリアがとても近接していますので、航空法との関係もあり高層建築物の規制条例などもあります。
東京都においては大規模再開発を推進すると同時に既成市街地の再編整備や街並みに配慮した街づくりなど、地域の実態に即した都市再生推進をする事が重要である事から2003年に「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」を制定し、東京都の個性を活かしたしゃれた街並みづくりを進めて東京の魅力向上に取り組んでいます。
「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」には3つの制度
この条例には3つの制度があります。
(1)街区再編まちづくり制度
住宅や建物が密集した市街地などでは、規制緩和を利用して敷地の統合や道路の整備などを行いながら共同建替等を進める制度です。
(2)街並み景観づくり制度
歴史的・文化的な特色のある地区などには、知事が指定する「街並み景観重点地区」において、地域の街並み景観準備協議会が中心となり、個性的な街並み景観づくりを自主的に進める制度です。
(3)まちづくり団体の登録制度
公開空地等などで地域の活性化活動をする団体をまちづくり団体として登録して、その活動を促進します。
「街並み再生地区」とは
この3つの制度のうち(1)の「街区再編まちづくり制度」の中で、指定基準に該当し本制度によるまちづくりを推進する事が効果的と認められる地区を「街並み再生地区」に指定し、まちづくりのガイドラインをなる「街並み再生方針」の設定が行われます。
「街並み再生方針」では下記などが定められます。
- 地区の整備の目標
- 主要な公共・公益的施設に関する事項(道路・公園等)
- 建築物の配置・形態、用途等に関する基本的事項
- 上記を実現するための、地域貢献度に応じた規制緩和の概要
「街並み再生地区」に指定された場合は
「街並み再生地区」に指定されると再開発を促進するための規制緩和として「容積率の緩和」が行われます。
現況よりも大型の建物が建設できる事になり、土地の利用価値も上昇します。オフィスビルや商業施設、住宅などを建設する際にも収益力も多くなりますので、事業も進めやすい状況となるほか、税制の特例なども受けられます。
つまりそのエリアの再開発が促進されますので、発展が見込まれる地域となります。
「街並み再生地区」に指定されたエリアの一号は「武蔵小山」駅周辺
東京では多くの地域を「街並み再生地区」に指定しています。現在13ヵ所となっています。
第一号は品川区の「武蔵小山駅東地区」となっています。東急目黒線「武蔵小山」駅に隣接するエリアで、住宅密集地だったエリアが、大型のマンションに建て替えられました。また、周辺の広場や道路なども整備され、さらに商業機能の活性化か駐輪場や防災施設なども進み、駅周辺の生活環境が向上しています。駅前が活性化する事で、そのエリアだけでなく周辺のマンションのイメージや生活利便性のアップにつながると考えられます。
市区 | 地区名 | |
---|---|---|
1 | 品川区 | 武蔵小山駅東地区 |
2 | 豊島区 | 南池袋二丁目地区 |
3 | 新宿区 | 新宿六丁目西北地区 |
4 | 西東京市 | ひばりヶ丘北口地区 |
5 | 港区 | 環状第二号線沿道新橋地区 |
6 | 港区 | 虎ノ門駅南地区 |
7 | 新宿区 | 新宿駅東口地区 |
8 | 品川区 | 武蔵小山賑わい軸地区 |
9 | 目黒区 | 自由が丘駅前西及び北地区 |
10 | 千代田区 | 外神田一丁目南部地区 |
11 | 渋谷区 | 神南一丁目北地区 |
12 | 渋谷区 | 渋谷三丁目地区 |
13 | 渋谷区 | 道玄坂二丁目地区 |
「街並み再生地区」の第二号は「南池袋二丁目地区」
第二号は東京メトロ有楽町線「東池袋」駅前のエリアです。「南池袋二丁目A地区」「南池袋二丁目C地区」などの再開発計画が定めらました。A地区は地上49階のタワーマンションが建設され、C地区は再開発が進行中です。サンシャイン60や東池袋の商業エリアなどとも連動した発展性のあるエリアとしても期待されます。
他にも多くのエリアが指定されています。都市再生緊急整備地域などはターミナル駅などを中心とした大規模な再開発です。「街並み再生地区」はもう少し規模が小さいですが、こうしたエリアも道路など公共施設も整備され将来性が高く、駅周辺の住環境や生活利便性の向上につながりますので、不動産投資の立地を選ぶ際にも重要な要素となると言えます。
2023年6月には渋谷区「道玄坂二丁目地区」が「街並み再生地区」エリアに指定
最新の指定では渋谷区の「道玄坂二丁目地区」が指定されました。また、渋谷では「渋谷三丁目地区」が既に指定されています。
道玄坂二丁目地区は渋谷マークシティから道玄坂を含む文化村通りまでの「百軒店エリア」やファッショのビルの「109」などを含むエリアです。現在は多くの飲食店や店舗などが密集したエリアです。筆者もよくこの辺りを通りますが、古くからの商業エリアで個性的な飲食店なども多く、コロナ5類移行後は多くの人でにぎわっています。東急文化村は大規模な再開発が進んでおり、駅から一体となったエリアで大きく変貌する可能性もあります。
「渋谷三丁目地区」は、現在再開発の完了した「桜丘口エリア」とはJRの線路を挟んで反対側の位置となります。「渋谷ストリーム」が2018年に開業し「桜丘口地区」再開発は2023年に竣工するなど開発の著しいエリアです。しかし古いビルなども多くありますので、今後建替えや道路・広場などの整備などが進むと、周辺の住環境も向上する可能性もあります。
<「街並み再生地区」道玄坂二丁目地区>
<出典:東京都「街区再編まちづくり制度」>
詳細はこちらから
<「街並み再生地区」渋谷三丁目地区>
<出典:東京都「街区再編まちづくり制度」>
詳細はこちらから
今後の「街並み再生地区」エリアの発展と不動産投資との関係は
このように多くのエリアが「街並み再生地区」に指定され街が大きく変わってきたり、将来的に変わる可能性があります。
渋谷など既に民と官の共同で大規模な再開発が進行しており、さらにその周辺にも開発が波及している状況となってきています。
再開発が行われれば住環境が向上、居住人口や就業人口が増加し地価・不動産価格が上昇するケースも多く見受けられます。
その影響は周辺だけでなく、沿線上にも波及する可能性もありますので、マンション投資の立地選びにも重要となってきます。
ますます開発の進む東京は、今後もマンション投資のエリアとして適していると言えるのではないでしょうか。