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株価上昇! 日本経済と不動産市場の行方【プロが教える不動産投資コラム】

春一番がいち早く吹き春の雰囲気も漂い始めています。景気も上昇の気配があり上場企業の業績も向上し株価の上昇が続いています。しかし物価上昇も続いており今後の景気動向についても注目が集まっています。

今回のコラムでは今後の日本経済と不動産投資との関係について検証してみたいと思います。

街行く人も明るい雰囲気に

新型コロナが2023年5月に5類に移行してから9カ月が過ぎました。2024年に入り日本経済もダイナミックに動き始め、にわかに景況感も高まっており、街の雰囲気も大きく変わってきました。

筆者が感じる印象としては街を行き交う人、いわゆる「人流」が大幅に増え、ファッションも老若男女問わずダウンジャケットを始め「ホワイト系」の洋服を着る方が目立つ気がします。着るものは人の気持ちを表すと言いますが、明るい色の洋服を着始める方が多いという事は、なんとなく景気回復の雰囲気が街に醸成されていると感じます。そういった雰囲気もあるのでしょうか、株価も大きく上昇しています。

株価は上昇が続き34年ぶりの高水準に

株価は日本経済を図るバロメーターとも言えますが、2024年は年始以来株価の上昇が続いています。2024年2月には株価が3万8,000円を超え、さらに2月16日には3万8,859円と最高値に迫る勢いとなりました。

バブル崩壊以降の日本経済は多少の上昇や下降はありましたが概してデフレが続き低迷が続いていました。しかし近年は新型コロナが5類に移行、円安などによる物価上昇、そして企業収益の向上などが続いてきました。日本経済は米国経済の影響を受けやすく、米国の株価が高水準で推移している事も日本の株価に影響を与えています。

日経平均株価年終値の推移

1980年1990年2000年2010年2020年2023年
株価終値7,116円23,848円13,785円10,228円27,444円33,464円

大きく変動した日経平均株価

終値ベースで日経平均株価が過去最高を記録したのは1989年12月29日で3万8,915円となりました。とても細かい単位ですがこの終値を正確に覚えている方もかなりいらっしゃるようです。

バブル崩壊後はリーマンショックなどの要因で2008年10月27日にはバブル後の最安値を記録しました。あれから16年が経過し2024年2月20日現在においては過去最高に迫る勢いの現況となっています。

読者の皆さんがこのコラムをご覧になっている頃には過去最高を更新している可能性もあります。

日経平均株価の最高価格と最低価格(バブル後・終値ベース)

過去最高
1989年12月29日
過去最低
2008年10月27日
株価3万8,915円7,162円

景気の先行指標となる「設備投資」が増加

設備投資は景気の先行指標となります。先行きの景気の上昇が見込めれば企業は先行投資として設備投資を増やすからです。日本経済新聞社による2023年度の設備投資動向調査によると、全産業の設備投資額は前年比17.3%の31兆9,963億円となり過去最高となりました。

また日本政策投資銀行がまとめた2023年度の大企業の設備投資計画調査では、国内投資計画が前年度実績比20.7%増加し20兆6,152億円となりました。製造業は同26.5%と大きく増加しています。コロナ期を超えて企業の設備投資は大幅に増加してきています。こうした設備投資は不動産の取得も含まれており、今後の地価への影響にも注視が必要です。

また好調な業績から求人も増加し、2025年春の大卒内定率も上昇しています。人手不足となる業界も多くなり今後は福利厚生も手厚くなると考えら、特に今春はワンルームマンションなどの「法人契約」も増加する可能性もあります。

企業の金融資産も増加傾向に

国内企業の金融資産も増加傾向にあります。日銀の発表した資金循環統計によると、民間企業(金融機関除く)の保有金融資産残高は2021年12月末の1,336兆円から2022年12月末には1,351兆円と増加傾向にあり2023年9月末には1,449兆円と過去最高となりました。

こうした企業資産の増加などで、今後の賃金の上昇へとつながる可能性も大きくなっています。

国内企業の金融資産

2021年12月末2022年12月末2023年9月末
残高1,336兆円1,351兆円1,449兆円
「日銀「2023年第3四半期の資金循環(速報)」>

好調な鉄道業界と旅行業と人の流れ

最近新聞などを見ると「旅行の広告」が増えているという印象があります。鉄道会社などの業績も好調で、鉄道会社大手18社のうちJR東海など11社が純利益予想をマイナスからプラスに上方修正しました。

またJALやANAなどの大手航空会社も軒並み増益となっています。筆者はよく出張でビジネスホテルを利用しますが、宿泊料金も値上げが続いている印象があります。

こうした背景にはインバウンドの増加に加えて、国内の「人流」も大きく増加している事が挙げられます。

人流が増えれば消費が増加、また商業施設やホテル業などのサービス業も活発化します。ホテルや商業施設などを中心とした不動産の需要も増加し、不動産価格の上昇にもつながる可能性もあります。

またこうした人流の増加は不動産の賃料にも影響を与え、例えば東京銀座の商業施設賃料は6年半ぶりの高水準となっている事なども報道されています。

賃金は上昇が続くも実質賃金は減少に

岸田総理の呼びかけもあり大企業などを中心に給与水準の上昇が続いています。しかし物価の上昇幅も大きくなっていますので、給与の上昇は物価上昇分より少なく実質的にはマイナスが続いています。

このため日本経済の完全なデフレ脱却には至っていないのが現状です。

しかし2024年の春闘では製造業などを始め過去最高の賃上げ要求を表明している業界も多くなっています。さらに中小企業でも賃上げの動きが活発化してきており、今後の賃金動向の行方に大きな注目が集まっています。

賃金の推移(前年比変動率)

2016年2017年2018年2019年2020年2021年2022年2023年
現金給与0.60.41.4△0.4△1.20.32.01.2
実質賃金0.8△0.20.2△1.0△1.20.6△1.0△2.5
単位:%<厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和5年分結果速報」>

コスト・プッシュ型インフレからの脱却となるか

消費者物価は上昇が続いていますが、企業間の取引の価格指数である企業物価指数も上昇しています。2020年を100とする企業物価指数は年々上昇が続き2023年平均では119.7にまで上昇しています。

輸入物価の上昇などから企業の仕入れコストなどが上昇する、いわゆる「コスト・プッシュ型」のインフレとなっています。消費者物価指数が上昇してもコスト・プッシュ型のインフレが続いている場合は景気の完全な回復とはいえない訳です。かえって景気を悪化させる可能性もあります。

2023年12月の企業物価指数は0.0%と横ばい、2024年1月は0.2%上昇と上昇率の伸びは若干低くなっています。しかし政府から電気・ガスの補助制度が一巡し、賃金の上昇を消費価格に転嫁する動きも出てくると予想されますので、企業物価、消費者物価ともに上昇が続く可能性もあります。

今後の給与水準の上昇続けば、政策金利なども上昇が予想されますが、インフレも続く可能性もあります。2024年は日本経済デフレからの脱却となるのか正念場を迎えているのではないでしょうか。

国内企業物価指数

2020年2021年2022年2023年
指数100104.6114.9119.7
<日本銀行「企業物価指数」>

新NISAと株式市場の過熱

今年から始まった新NISAにより資産運用に興味関心を持つ方が増え、株式市場も過熱感が漂い始めています。こうした「景気上昇マインド」は人々の消費や投資意欲を向上させ、ますますの景気上昇につながる可能性もあります。

さらに国内の住宅など不動産の購入の拡大や、景気上昇による就業人口の増加などから賃貸需要も増加、賃料水準の向上などにもつながる事も予想されます。過去の例を見ても株価の上昇と地価・不動産価格の上昇が連動してきた事も散見されました。

しかし特に新Nisaにおいてはその多くの資金が投資信託を通じて米国の株式市場にマネーが流出しているという実態もあり、つまり国民の金融財産が日本から流出するという事もあります。

今後は国内の景気回復によりこうした資金が国内にも向けられれば、不動産市場などのますますの発展につながる事も期待されます。

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