2024年4月から変わる法制度と私達の暮らし【プロが教える不動産投資コラム】
2024年に入り様々な税制なども改正されましたが、4月からも法・制度などが変わります。またそれらによって私達の暮らしや将来の生活などもどう変わっていくのでしょうか。さらに不動産投資に与える影響についても考察したいと思います。
建設業の2024年問題とは
東京都区部のファミリーマンションの平均価格が2023年に1億円を超えるなどマンション価格の上昇が続いています。こうしたマンション価格の値上がりの要因として「地価」と「建築費」の上昇が挙げられます。このうち「建築費」では「建築素材・労務費」などの上昇が2024年も続いています。
ここで「建設業における2024年問題」が注目されています。これは2024年4月から建築業における残業時間が規制される事です。またトラック運転手などもこの規制の対象となります。残業時間の規制は「働き方改革関連法」によって2019年4月1日から順次施行されていましたが、建設業や自動車運転業などは猶予されており2024年4月からの実施となりました。
建設業界では現在でも慢性的な人手不足が顕在化しており、それに加えて残業が規制される事から、例えばマンションなどの工期が長期化し建築コストをさらに押し上げる可能性があります。またトラック運転手など運輸業界にも適用される事から物流コストも上昇する可能性があります。
円安による輸入物価の上昇の影響もあり、今後も建築費が上昇する事も懸念されます。
空き家問題と相続登記の義務化
今、日本では空き家問題が大きくクローズアップされています。全国の空き家の数は約849万戸となり全住宅の13.6%を占めています。空き家の増加は続いていますが、特に所有者の不明な家屋や土地は適切な対応も難しくなっています。
2023年4月には相続した土地を国に引き取ってもらう「相続土地国庫帰属法」が施行しれました。同年12月には「改正空家対策推進特措法」が施行されており、空き家の活用や、周辺に影響を与える「特定空家」化の防止などが盛り込まれています。さらに2024年1月からは「空き家の譲渡所得の3000万円特別控除」も開始されました。
今回の2024年4月からの法改正では相続によって不動産を取得した方はその登記が義務化されます。さらに今後は住所変更時の登記なども義務化されます。
相続登記が義務化される事により行政指導を始め建替え・再開発などのスピードがアップし、不動産業界にとってみればプラス要因も多くなると考えられます。
これほど空き家が増える背景には、高度成長期に郊外に多く建設された戸建てなどが家主の高齢化や子供は都心の居住、さらに築年数の経過や都心から離れている事などで住宅としてのニーズが低下している事が挙げられます。
不動産を相続しない「相続放棄」も増加し、2022年には過去最多の26万497件となりました。相続した家屋を国に引き取ってもらう場合にも更地にする必要があり、さらに負担金も必要となります。今後は交通利便性や建物のクオリティの高い住宅のニーズがより高まる事も考えられます。
賃上げ促進税制の拡充
「賃上げ促進税制」も実施されていますが、2024年4月から期間の延長や控除率の拡大、「中堅企業」の創出などさらに拡充されます。大企業だけでなく中小企業などにも賃上げが進む事が期待されます。
岸田政権は賃上げを財界にも要請しており、2024年の連合の集計による平均賃上げ率は5.25%と高い水準と33年ぶりの5%超えとなります。
賃金水準の上昇からパワーカップルのマンション購入も増え、高額マンションの需要も高くなり、東京都のファミリーマンション価格上昇の要因ともなっています。
大切な事は日本経済が適正な成長軌道に乗り、2025年以降も持続的な賃上げが常態化する事です。マンション投資市場では投資家サイドも増加し市場が拡大する事、入居者には賃料の支払い能力が増大し、より立地・クオリティの高い住宅の需要が増加、そして賃料上昇の素地も作られる事につながります。
企業の交際費の損金算入額の拡大
インフレが進み飲食費も上昇している事から、企業の交際費の損金算入が従来の5,000円から10,000円にアップされます。交際費の上限が増える事で企業の負担は軽減され、また交際費が増える事で飲食店などサービス業などの発展にも繋がる考えです。飲食店などの売り上げが上がれば賃料相場も上昇、周辺の不動産価格・地価も押し上げる要因となります。新型コロナでダメージを受けた飲食業が活性する事により、就業人口の増加にもつながります。
私達の暮らしと医療費・年金
高齢化も進み、社会保障費なども厳しくなってきており。高齢者の方の負担も重くなってきています。2024年4月から75歳以上(後期高齢者)の医療保険料が引き上げとなり、年金収入が年211万円を超える方が対象となります。また65歳以上で年金や給与の合計所得が420万円以上ある人は介護保険料が引き上げとなります。
また、新型コロナの治療費の公費補助が廃止となります。4月から電気代を含め多くの物の値段も上がり、実質的に値上がりとなる物は2800品目と言われています。また円安が進行しており今後も物価上昇も進む可能性があります。
さらに今後は国民健康保険の支払い期間を65歳まで延長する事も検討されているようです。
名目の年金増加額はわずかですがインフレによる物価上昇も大きく、このような負担増によりシニア層の生活ぶりは厳しさを増す事も予想され、リタイヤ後の生活設計もより重要となってくるのではないでしょうか。
東京都の「授業料無償化」
暮らしは大変になってきていますが、子供を持つ家庭には良いニュースもあります。東京都では2024年度から「授業料無償化」を実施します。これまで都立高校は無料、私立高校は910万円未満の世帯について支援がありましたが、今回は910万円未満の制限が撤廃されます。また私立中学校についても年収910万円未満に世帯に年間10万円まで補助がありましたが、年収制限が撤廃されます。
こうした教育費の負担が少なくなった分は、家計の見直しのきっかけとなり、将来のための資産運用に振り替えてみてはいかがでしょうか。
今回のコラムでは2024年4月以降に変わる法制度を始めいくつかの視点から述べさせて頂きました。
また2024年度中にはマンションの修繕決議を出席者の過半数で可能にするなどの法整備の改正も進んでいます。マンションの修繕もしやすくなり資産価値の向上にむすびつく可能性もあります。
日頃忙しい毎日を過ごす中でも、世の中の制度にどのような改正があるのかを確認する事は、今後の生活や資産運用など様々な分野に影響が及びますので大切です。
紙面の関係で全ての改正を網羅できませんが、今後の参考にして頂ければ幸いです。