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世界の成長とともに資産が増える「世界株インデックスファンド」はどれを選ぶか

1本買うだけで世界中の株に投資したのと同じような効果が期待できる「世界株インデックスファンド」。どの株が値上がりするかを予想するのは難しいものです。であれば、いっそのことすべて買ってしまうという考え方で、お金を増やす期待ができます。ただ、世界株インデックスファンドにも、いろいろな種類があります。

今回は、世界株インデックスファンドの違いと、おすすめの世界株インデックスファンドを紹介します。

世界株インデックスファンドの指標にはどんなものがある?

世界株インデックスファンドは、世界中の株価の値動きを示す指数(インデックス)と連動を目指す投資信託です。世界株インデックスファンドが値動きの連動を目指す(ベンチマークとする)主な指標には、次のものがあります。

世界株インデックスファンドの主な指標

(株)Money&You作成

世界株インデックスファンドがベンチマークとする指標には、大きく分けて日本株を含むものと、日本株を含まないものがあります。日本を含むものが「FTSE Global All Cap Index」と「MSCI All Country World Index[MSCI ACWI]」、日本を含まないものが「MSCI All Country World ex Japan Index[MSCI ACWI(除く日本)]です。表には、それぞれの指標と連動を目指す代表的な商品名も記載しています。

1本で「世界中の株」をバランス良く買いたい人は「日本株を含むファンド」を選べばいいでしょう。それに対して、日本株と海外株は別々に管理したい人・日本株は自分で積極的に売買したい人は「日本株を含まないファンド」を選ぶようにします。

もっとも、日本株を含むファンドといっても、ファンドに組み入れられている日本株の割合は5〜6%と、それほど高くはありません。したがって、どちらを選んでもいいでしょう。筆者は1本で世界株を買える「日本株を含むファンド」のほうが、分散効果が高いのでいいと考えます。

2023年5月には日経平均株価がバブル崩壊後の最高値を更新する3万2000円台をつけたと話題になりました。ここまでの日本の株価上昇を予想できる人は、多くなかったはずです。日本株を含む世界株インデックスファンドを利用すれば、こうした日本株の値上がりの恩恵も得ながら、堅実にお金が増やせるというわけです。

FTSEとMSCI ACWI、どちらを選ぶ?

世界株インデックスファンドが値動きの連動を目指す(ベンチマークとする)指標には、FTSE(FTSE Global All Cap Index)とMSCI ACWI(MSCI All Country World Index)があることを紹介しました。では、どちらを選ぶのがいいのでしょうか。以下は、FTSEとMSCI ACWIの市場カバー率・組み入れている国・銘柄数などをまとめたものです。

世界株の主な指標

(株)Money&You作成

世界株式市場のカバー率はFTSEが98%、MSCI ACWIは85%。ポートフォリオを構成する国の比率はよく似ていて、米国や日本の組入割合もほぼ同じです。

なお、韓国は指標によって扱いが分かれています。「FTSE」を算出するFTSE社では韓国を先進国、「MSCI ACWI」を算出するMSCI社では韓国を新興国に分類しているためです。

どちらも幅広く世界株式市場をカバーしていますが、より幅広く株式市場をカバーしているのはFTSEです。また、FTSEは小型株も含んでいます。その関係で、組み入れている銘柄の数はFTSEが9494、MSCIは2884と、大きく開きがあります。

今回の調査時点では、年率リターンがいいのはMSCI ACWIとなっていますが、FTSEとMSCI ACWIの値動きの差はそれほどありません。どちらを選んでも問題ないでしょう。筆者としては、小型株を含み、市場のカバー率の高いFTSEのほうがより資産の分散効果が得られて、リスクが抑えられると考えます。

世界株インデックスファンド、どれを選ぶ?

FTSE・MSCI ACWIに連動を目指す投資信託のなかで、特に投資家に人気が高いのが、
・SBI・全世界株式インデックス・ファンド
・SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド
・楽天・全世界株式インデックス・ファンド
・eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)

の4本です。

これに加えて、2023年4月26日に登場した

・Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)

にも注目が集まっています。

これら5本の投資信託が連動を目指すベンチマークと投資対象、投資の割合は次のようになっています。

SBI・全世界株式インデックス・ファンド

【ベンチマーク:FTSE】
・全米株ETFのVTI(60%)
・米国を除く先進国株ETF(30%)
・新興国株ETF(10%)

SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド

【ベンチマーク:FTSE】
・全世界株ETFのVT(100%)

楽天・全世界株式インデックス・ファンド

【ベンチマーク:FTSE】
・全世界株ETFのVT(69%)
・全米株ETFのVTI(17%)
・米国を除く全世界株ETF(13%)

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)

【ベンチマーク:MSCI】

(マザーファンドを通じて以下に投資)
・日本株(5.3%)
・日本を除く先進国株(83.6%)
・新興国株(11%)

Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)

【ベンチマーク:MSCI】

(マザーファンドを通じて以下に投資)

・日本株

・日本を除く先進国株
・新興国株

SBI・全世界株式インデックス・ファンド、SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド、楽天・全世界株式インデックス・ファンド の3本のベンチマークはFTSE、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)、Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)のベンチマークはMSCI ACWIです。投資対象は5本それぞれ違います。人気のETF、VTIとVTを2本のファンドが採用しています。

世界株インデックスファンドの詳細比較

(株)Money&You作成

5つのファンドの信託報酬のうち最も安いのはTracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)で、0.05775%となっています。他の4ファンドも0.1%台でとても低水準ですが、Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)はそれらよりもずっと信託報酬が安くなっています。

ただし、Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)の信託報酬には、他のファンドが通常含めている「指数の標章使用料」などが含まれていないため、これを含めた他のファンドの信託報酬と単純に数値を比較することができません。つまり、場合によっては、実質コストはTracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)のほうが高い可能性があります。

1年間運用が行われ、第1期の運用報告書が出ると実質コストがはっきりしますので、それが明示されてから購入するのが良いでしょう。

純資産総額・年率リターン(3年)・シャープレシオはいずれもeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) がもっともよくなっています。

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の純資産総額は1.1兆円と、群を抜いています。年率リターンはもちろん、リスクのわりに高いリターンをあげたことを示すシャープレシオ(高いほどいい)も、他を上回っています。販売会社も多いので、どなたでも買いやすいのもメリットです。さらに、eMAXIS Slimシリーズには「受益者還元型信託報酬」のしくみがあるため、純資産総額が増えるほど信託報酬が下がっていきます。

個人投資家からも「オルカン」と略して呼ばれ、優れた投資信託を選出する「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year」でも2019年から4連覇中と人気があります。

SBI・V・全世界株式インデックス・ファンドは2022年に新設されたファンドなので、まだ3年の年率リターンなどの表記はありませんが、SBI・全世界株式インデックス・ファンドや楽天・全世界株式インデックス・ファンドに似た数字になっていたと考えられます。

もっとも、3年の年率リターンで見れば大きな差はないので、どれを選んでもいいのですが、手数料の観点から考えると、「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」または「SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド」のどちらか、もしくは「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、1本に投資するのがいいと考えます。どれも人気のある投資信託ではありますが、どれかに絞りたいのであれば参考にしてください。

世界経済は成長を続けるのか

世界の株式市場は乱高下しているものの、全体としては毎年成長しています。IMFの「世界経済見通し(World Economic Outlook)」(2023年4月)によると、年ごとの経済成長率の推移は次のようになっています。

世界の経済成長率

※2023年以降は予測値

IMF「World Economic Outlook Database」より(株)Money&You作成

グラフはIMFのデータより作成した、年ごとの経済成長率の推移です。リーマンショックのあった2009年や、コロナショックのあった2020年などには成長が鈍化していますが、それ以外の年はおおむね3%〜4%の経済成長を果たしていることがわかります。

IMFは、金融の混乱、インフレ、ロシアのウクライナ侵攻、コロナ禍などの影響で世界経済の見通しは不透明だとしながらも、経済成長率は2023年で2.8%、2024年で3.0%となると予想しています。つまり、世界株インデックスファンドを利用して投資をすることで、この成長の恩恵を受けられるというわけです。

フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏が唱えた「r>g」という不等式も、世界に投資すべき根拠のひとつになります。rは資本収益率(投資のリターン)、gは経済成長率です。つまり、投資をすることで得られるリターンは経済成長率を上回ることを表しているのです。

これからお金を増やしたいと考えるのであれば、なるべく早く投資を始めることが大切。そして長く投資を続けることで、資産は堅実に増やせると考えます。

頼藤太希 (株)Money&You代表取締役/経済ジャーナリスト

中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。女性向けWebメディア『FP Cafe』や『Mocha(モカ)』を運営すると同時に、資産運用・税金・Fintech・キャッシュレスなどに関する執筆・監修、書籍、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力している。『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)など著書累計100万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。

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