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米国の成長とともに儲かる「米国株インデックスファンド」はどれを選ぶか

米国の株式にまとめて投資できる「米国株インデックスファンド」を購入すれば、米国の成長とともにお金を増やす期待ができます。しかし、ひとくちに米国株インデックスファンドといっても、その種類はさまざまです。いったい、どの米国株インデックスファンドを選べばいいのでしょうか。また、今後も米国が投資先として有望かについても、一緒に考えてみましょう。

米国株式インデックス、どれを選ぶ?

米国株式インデックスファンドが値動きの連動を目指す(ベンチマークとする)指標には、「CRSP US Total Market Index」「S&P500」「NYダウ」「ナスダック100」などがあります。それぞれ、組み入れている銘柄や株式市場のカバー率が異なります。

米国株の主な指標

(株)Money&You作成

もっとも多くの銘柄を組み入れているのがCRSP US Total Market Indexです。CRSP US Total Market Indexは、米国の株式市場に上場している大型株・中型株・小型株まで、約4000銘柄をほぼ100%網羅。時価総額をもとに算出される株価指数です。そのため、CRSP US Total Market Indexと連動している投資信託を購入すれば、米国株式市場全体に投資をしたのと同じような効果が期待できます。

それに次いで多くの銘柄を組み入れているのがS&P500です。S&P500は、米国のニューヨーク証券取引所(NYSE)やナスダック(NASDAQ)に上場する銘柄の中から、主に時価総額の大きな主要500社の時価総額をもとに算出される指標です。S&P500が組み入れている銘柄数は500銘柄で、CRSP US Total Market Indexのおよそ8分の1ですが、S&P500だけでも株式市場の役80%をカバーすることができます。

ナスダック100は、ナスダック上場企業から金融業を除いた、時価総額の上位100社の銘柄から算出される指標です。ナスダック100には、GAFAM(グーグル・アマゾン・フェイスブック(現メタ)・アップル・マイクロソフト)のような大企業も含まれているのですが、米国企業でなくても条件を満たせば算出の対象になります。

また、成長が著しい企業の場合、「積極的な投資をしたことで赤字」になっているケースがあります。ナスダック100は、そうした赤字企業も指標に採用することがあります。つまり、成長力の高い、イノベーションの種を早期に取り入れることが期待できるというわけです。株式市場のカバー率は35%となっています。

そしてNYダウ(ダウ平均株価)は米国を代表する30銘柄が組み入れられた指数です。正式には「ダウ工業株30種平均」といいますが、組み入れられている銘柄は工業株だけではありません。NYダウの構成銘柄には、ウォルトディズニー、ジョンソン・エンド・ジョンソン、コカ・コーラ、マクドナルド、ナイキなど、日本でもよく名前を聞く銘柄が名を連ねます。株式市場のカバー率は25%と、4つの指標の中でもっとも少なくなっています。

これら4つの指標との連動を目指す代表的なETF(上場投資信託)には次のものがあります。

各指標と連動を目指す代表的なETF

(株)Money&You作成

各ETFの年率リターン、年率リスク(価格のブレ幅を数値化したもの)を確認すると、CRSP US Total Market IndexをベンチマークにするVTIと、S&P500をベンチマークにするVOOのリスク・リターンは、あまり変わらない結果になっていることがわかります。

したがって、どちらを選んでもそれほど大きく変わりません。米国市場に幅広く分散投資を意識するなら、株式市場をほぼ100%カバーしていて、小型株も組み入れているCRSP US Total Market Indexを選んだ方がいいでしょう。

年率リターンがもっとも高いのは、ナスダック100です。3年の年率リターンでおよそ15%、10年の年率リターンでおよそ18%と、他よりも一歩抜きん出ていることがわかります。ただ、投資のリスクとリターンにはトレードオフの関係があります。高いリターンには高いリスクがつきものなのです。ナスダック100の年率リスクは他の3つの指標より高くなっており、大きく増やせる可能性がある一方で、大きく減らす可能性もあることを示しています。

一方、NYダウはCRSP US Total Market IndexやS&P500とほぼ同程度のリスクをとっているにもかかわらず、リターンが低いことがわかります。3年・5年・10年と、どの期間の年率リターンを見ても、他の3つの指標に勝てていません。したがって、あえてNYダウに投資する意義は少ないでしょう。

米国株インデックスファンドはどれを選ぶ?

CRSP US Total Market Index・S&P500・ナスダック100と連動を目指す投資信託の中から、保有中にかかる信託報酬が安い商品を抜き出したのが、次の表です。

信託報酬の安い主な米国株インデックスファンド

(株)Money&You作成

CRSP US Total Market Indexをベンチマークとする「SBI・V・全米株式インデックス・ファンド」「楽天・全米株式インデックス・ファンド」の2本は、どちらもETFの「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF(VTI)」に投資することで、CRSP US Total Market Indexに連動する成果を目指します。ただ、せっかく経費率の安いETFに投資するのに、投資信託を持っている間にかかる信託報酬は楽天・全米株式インデックス・ファンドのほうが高く設定されています。同じVTIに投資するのであれば、信託報酬が安い商品の方が長期的に見て資産を増やしやすくなります。ですから、「SBI・V・全米株式インデックス・ファンド」のほうがいいでしょう。

S&P500をベンチマークとするファンド2本のうち、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は「S&P500インデックスマザーファンド」、SBI・V・S&P500インデックス・ファンドは「バンガード・S&P500ETF(VOO)」に投資しています。S&P500との連動を目指す点は同じですが、連動を目指すためにする投資の仕方が異なります。もっとも、信託報酬はほとんど同じですから、どちらを選んでも大差はないでしょう。

ナスダック100をベンチマークとする「ニッセイNASDAQ100インデックス」は「ニッセイNASDAQ100インデックスマザーファンド」に投資することでナスダック100との連動を目指します。同ファンドが登場するまでは、ナスダック100に投資する投資信託でもっとも信託報酬が安いものは年0.44%だったので、ずいぶん安くなりました。

米国株インデックスファンドの詳細比較

(株)Money&You作成

上表は5つの米国株式インデックスファンドの信託報酬・純資産総額・年率リターン・シャープレシオ・販売会社数を比較したものです。シャープレシオはリスクに見合った利益を得られているか数値化したもの。数値が高いほど、同程度のリスクに対してより高いリターンを得ていると評価できます。
なお、リターンなどの表記がないものは設定日が浅いためです。

CRSP US Total Market Indexをベンチマークとする楽天・全米株式インデックス・ファンドは販売会社も多く投資しやすいのですが、信託報酬の面ではやはり、SBI・V・全米株式インデックス・ファンドの方がいいでしょう。

S&P500をベンチマークとするファンドは、どちらを選んでもあまり変わりません。ただ、eMAXIS Slimシリーズには「受益者還元型信託報酬」といって、ファンドの純資産総額が増えるごとに信託報酬が少しずつ下がっていく仕組みが用意されていますので、純資産総額が増えれば増えるほど有利になっていきます。

ナスダック100に投資するならば、ニッセイNASDAQ100インデックスを選べばいいでしょう。信託報酬は、同じくナスダック100との連動を目指すETF「インベスコ・QQQ 信託シリーズ1(QQQ)」の経費率(0.2%)とほぼ同じです。

以上より、米国株インデックスファンドは「SBI・V・全米株式インデックス・ファンド」と「ニッセイNASDAQ100インデックス」の2本に投資するのがいいと考えます。

CRSP US Total Market IndexとS&P500は似ているので、両方に投資する必要はありません。

米国経済は2022年以降低迷している?

とはいえ、米国市場はこのところ少し値動きが不安定なのも事実です。

米国株式市場は、2021年までは総じて好調でした。しかし、2022年になると資源価格や物価の高騰、ロシアのウクライナ侵攻など、市場を大きく揺るがす出来事が相次いで発生。米国株市場も大きく値下がりしました。

さらに2022年3月以降、米国は進むインフレを抑えるために利上げを急ピッチで行ってきました。金利が上がると、市場に出回るお金の量が減るため、インフレを抑制する効果がありますが、過度な利上げはかえって景気を冷やしてしまいます。

そのうえ、2023年5月には米国の債務上限問題がクローズアップされました。米国の債務には上限が定められています。上限に達すると、新たに国債を発行して資金を調達することができなくなるため、米国がデフォルト(債務不履行)に陥る懸念が生じます。これを防ぐために、議会では国債発行金額の上限を引き上げる法案を成立させるのですが、与野党の調整が難航していました。2023年6月になり、政府の債務上限を一時的になくす法案が可決されたことで、債務不履行に陥る可能性がいったんは回避されました。しかし、債務上限問題は根本的に解決したわけではないので、依然としてリスクはある状態です。

実際、米国の主な株式指標を見ると、2021年までは右肩上がりが継続していたものの、2022年に大きく下落。2023年は、2021年時点の水準をまだ回復していない状態です。

以下は、2020年からのCRSP US Total Market Index・S&P500・ナスダック100の3つの株価指数の推移をグラフ化したものです。

米国の株価指数の推移(2020年1月〜2023年6月)

(株)Money&You作成

それでも、米国が有望な投資先である5つの理由

しかし、米国への投資はまだまだ有望だと筆者は考えます。その理由を、大きく5つに分けて紹介します。

米国が有望な理由①これまでも下落を乗り越えてきたから

確かに2022年・2023年は市場を大きく揺るがす出来事がいろいろありました。しかし、それでも米国経済は立ち直ってくるでしょう。上のグラフからもわかるように、確かに米国株は2022年に下落しましたが、2023年はやや持ち直す動きも見られます。過去をひもとけば、リーマンショックやコロナショックといった下落からも立ち直ってきたのですから、今回も立ち直ってくるものと考えています。

米国が有望な理由②米国は世界一の経済大国で、人口が増えているから

米国のGDP(国内総生産)は世界トップ。まぎれもなく、米国は世界トップの経済大国です。しかも、主要先進国の中で唯一、人口が増加しています。人口が増えるということは、これからもモノやサービスの生産・消費といった経済活動が行われることを意味します。ですから、これからも米国は経済成長を続け、世界トップであり続けると考えられます。そうある以上は、投資先として堅実だというわけです。

米国が有望な理由③株主還元に積極的な企業が多いから

米国の企業は、株主還元に積極的です。米国株の中には、配当金の高い「高配当銘柄」や、配当金の金額を毎年増やしている「連続増配銘柄」がたくさんあります。連続増配に関しては60年以上も増配し続けている会社もあるほどです。その分、たくさん配当金がもらえるのですから、米国株には投資妙味があります。

米国が有望な理由④世界規模でビジネスを展開する大企業が多いから

米国のIT企業群といえば、GAFAM (グーグル・アマゾン・フェイスブック(※現メタ)・アップル・マイクロソフト)がおなじみです。このところ、GAFAMの堅調な成長に陰りが見えてきたという声も聞かれますが、GAFAMに変わって今後注目される企業として名前が上がっているのがMATANA(マイクロソフト・アマゾン・テスラ・アルファベット(グーグルの親会社)・エヌビディア・アップル)の6社。いずれも、米国企業です。

コカコーラ、コストコ、ディズニー、スターバックス、ツイッター、ナイキ、ネットフリックス、VISA、P&Gなど、米国には他にも世界的な大企業、日本でもおなじみの企業がたくさんあります。これらに投資することで、成長の恩恵を受けられるというわけです。

米国が有望な理由⑤株式市場のスケールが大きいから

岡三証券が2023年5月に発表したレポート「外国株式投資の魅力」によると、2023年4月時点の世界の株式時価総額は104.2兆ドル。そのうち約44.1兆ドル、42.3%を占めるのが米国です。日本は5.7兆ドルで5.4%ですので、米国市場の規模は日本の約8倍ものスケールを誇っていることがわかります。世界中から投資マネーが集まることで米国企業が成長し、さらなる成長を期待してさらなる投資マネーが集まるという好循環が生まれているのです。

以上より、筆者は米国への投資は今後も有望と考えます。米国株インデックスファンドを活用することで、米国に気軽に投資できる時代です。ぜひ活用して、資産を増やしていきましょう。

頼藤太希 (株)Money&You代表取締役/経済ジャーナリスト

中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。女性向けWebメディア『FP Cafe』や『Mocha(モカ)』を運営すると同時に、資産運用・税金・Fintech・キャッシュレスなどに関する執筆・監修、書籍、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力している。『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)など著書累計100万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。

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