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Z世代で投資を行っている人の4割が月5万円以上投資しているのは本当?

ライフスタイルや働き方が多様化する現在においては、人生の選択肢を広げるためにお金とのつきあい方は重要度を増しています。

かつては、何の準備もせず老後を過ごせた時代もありました。しかし、人生100年時代といわれる現代は、自身で将来と向き合い準備する時代。資産形成の在り方も変わっています。しかし、お金があれば幸せになれるかというと、そうはいかないのが難しいところです。

今回は、「僕と私と株式会社」が2024年4月に発表した投資に関する意識調査をもとに各世代の投資状況からお金とのつきあい方について考えていきます。

資産運用で支持されているのはNISA

まず、全世代の投資状況から見ていきましょう。意識調査においては、世代を3つの種類に分けて分析しています。世代の分け方は場合によっては若干の幅があります。

・Z世代…1996~2010年序盤にかけて生まれた世代

・ミレニアル世代…1981~1995年にかけて生まれた世代

・X世代…1960~1980年頃に生まれた世代

全世代において利用されている資産運用で最も多いのは、NISA(少額投資非課税制度)で21%になっています。2番目に株式投資が17.4%、3番目に投資信託で13.5%となっています。

<全世代の投資の状況>

僕と私と株式会社「Z世代/ミレニアル世代/X世代に聞いた!投資に関する意識調査」より

NISAとは、少額から投資を行う人のために2014年からスタートした「少額投資非課税制度」です。平均寿命が延びたことや老後の生活資金の確保に対応するため、国が投資を推進しています。NISAでは、投資で得た利益(売却益・配当・分配金)にかかる約20%の税金が非課税になるのですから、株式・投資信託・ETF(上場投資信託)を運用するのならぜひ活用したい制度です。

2024年から開始した新制度のNISAでは、非課税期間が無期限となり、つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能になりました。年間の投資額はつみたて投資枠(年120万円)と成長投資枠(年240万円)合わせて最大360万円となりました。ともにコツコツ投資する積立投資ができるうえ、成長投資では一括購入(スポット購入)も可能。目的に応じて使い分けができます。生涯の非課税保有限度額は1800万円と、将来必要になる資産を運用するのに十分な投資枠も用意されました。

また新NISAでは売却しても翌年には元本の非課税枠が復活するので、売り買いをしながら長くNISA制度を利用し続けることができます。

Z世代で投資を行っている人の4割が月5万円以上

「毎月の投資額はどれくらいですか?」という質問に単数解答を求めたところ、毎月5万円以上投資にお金を回しているという割合は、

・Z世代…43.5%

・ミレニアル世代…32%

・X世代…27.9%

となっています。

Z世代で投資を行なっている人の4割が月5万円以上投資しています。この割合はミレニアル世代やX世代と比較して圧倒的に多くなっています。

<毎月の投資額>

僕と私と株式会社「Z世代/ミレニアル世代/X世代に聞いた!投資に関する意識調査」より

また、Z世代では「定期的に投資はしていない」という割合は9.2%で、ミレニアル世代は14.8%、X世代は27.8%と年代が上がると投資を継続的に行っていない傾向があることがわかります。Z世代は、他の世代にくらべて投資に積極的なようです。

投資を始めたきっかけについては、「将来の資金を準備したかったから」「現在の生活のために収入を増やしたかったから」「NISAやiDeCo等税制優遇を知ったから」という回答が多く、世代間で大きな違いはありませんでした。世代別に見た場合、Z世代は「現在の生活のために収入を増やしたかった」という項目が最も多い回答でした。

各世代の投資状況はどうなっている?

各世代に現在行っている資産運用について聞いた結果は、次のとおりです。

<現在行っている資産運用>

僕と私と株式会社「Z世代/ミレニアル世代/X世代に聞いた!投資に関する意識調査」より

Z世代ではNISA(14.3%)に次いで不動産投資(11.4%)を行っている人が多くなっています。不動産投資について各世代別にみると、ミレニアル世代が6.2%、X世代が2.8%です。世代別に比較をしてみると、投資内容として一見難しそうな不動産投資に年齢が若い世代が積極的な姿勢がうかがえます。

Z世代の特徴として、親世代が不安定な経済情勢の時代を過ごしているのを見て、現実的で貯蓄を早くから始めるなど保守的な感覚を持っていることが挙げられます。

日本では長い間、デフレが続いて経済が低迷していました。ですからZ世代は、ブランド品への興味より自分らしさを重視し、好きなものにはとことんこだわります。こうした世代背景から不動産投資に興味を持って取り組んでいる人の割合が多いのでしょう。

不動産投資においては、不動産を購入して入居者に物件を貸し出して家賃収入を得るという方法が主になりますが、購入した不動産を売却して売却益を得るという方法もあります。

また、株式投資、投資信託、NISAなどの金融商品と比較すると違ったメリット、デメリットがあります。

不動産投資のメリットは、

・副収入が得られる

・節税(所得税・住民税・相続税)ができる

・資産計画が立てやすい

・比較的少ない自己資産で始められる

・インフレに強い

などがあげられます。

不動産投資は、本業の仕事を持っていても、大きな労力をかけなくても安定的な収入が得られるので、副収入として投資に取り組むことが可能です。「不労所得」と呼ばれることもあります。

また、税金においては費用として減価償却費を計上できるため、他の所得と通算することにより所得税や住民税を低く抑えることができます。相続税においては、不動産は時価より低い相続税評価額で評価されるため、現預金で持つより節税になります。他人に貸し出している場合にはさらに控除されます。

不動産投資を事業として捉えた場合には、収入と支出が把握しやすいので、資金繰りの見通しがしやすく経営が比較的楽にできるという面があります。不動産を購入する場合にはローンが利用できるため、自己資金で全額準備しなくても不動産投資が始められます。

資産の特性としては、インフレになれば不動産の価格もそれにつれて値上がりするという魅力があります。

一方、不動産投資のデメリットには、

・空き家リスク、滞納リスク、修繕リスクなどがある

・物件選びがむずかしい

・流動性が他の資産にくらべ低い

・購入と売却に手間がかかる

といったことがあります。

不動産は他人に貸し出すため、一時的に空室になったり、修繕が必要になったり、場合によっては家賃滞納、災害というリスクがあります。こうしたリスクには前もって費用を計上しておく、保険に加入するなどの対策が必要になります。また、不動産ならどこの場所でも、どんな物件でもよいというわけではありません。立地やターゲットとする入居者などを分析し、そのエリアにあった物件である必要があります。

さらに、不動産は現金化したいと思っても、金融商品のように数日で換金できるものではありません。特に高額であるため、買い手が現れるまで数か月間待つ場合がほとんどです。

不動産を購入する場合にも、権利関係や立地、利用目的に合致するかなど調査が必要ですし、売却に関しても契約が成立するまでにはどうしても時間や手間がかかります。

とはいえ、不動産投資は早いうちに始めることでローンの返済期間を長くできますし、返済後は副収入として家賃を長く受け取れる投資です。そのことに着目しているZ世代が多いのかもしれません。

資産運用のためなら今の生活や経験を犠牲にすべきか

投資をする上で大切なのは、できるだけ長く続けることです。他人とくらべたり、周りの人の投資スタイルに惑わされたりせず、無理のない範囲で投資を続けていくことです。

毎月の投資額が5万円以上の割合が多いZ世代ですが、その投資を行っている人のうち半数が多少「今の生活」が犠牲になってもよいと考え、さらに投資のために「今だからできる経験」を犠牲にしてもよいと考える割合が6割を超えていました。

<今の生活や経験が犠牲になってもよい?>

僕と私と株式会社「Z世代/ミレニアル世代/X世代に聞いた!投資に関する意識調査」より

資産運用に積極的な姿勢はよいことですが、残念に感じる部分もあります。

この意識調査の結果を見て、たとえ年金だけで老後生活をまかなえない現実があったとしても、投資でお金を増やすことだけが目的になってはいないだろうかと感じました。将来の不安に備えてお金を貯めることが正しくて、お金を使うことはよくないことだという風潮が強くなることにより、お金の本質が見えなくなってきてはいないでしょうか。

お金はあくまでも選択肢や自由度を拡大する「手段」であり、「目的」ではありません。お金を貯めることを目的化すると人生は幸せに送れません。たとえば資産1億円を目指して達成できたとしても、その先にある生活や幸福感がイメージできなければ、お金はただの紙切れに過ぎないのです。その紙切れをどんなに貯めたとしても、残念ながらあの世に持っていくことはできません。

特に年齢が若いときには体力や気力も十分にあり、自己投資で自分を高めることが特に重要になります。同じことを年齢が高くなって行ったとしても、得られる効果は限られます。自分を磨くことや自分の楽しみ、経験にお金をかけても、別のかたちで利益として還ってきます。別の言葉でいうと、お金を使うことで、将来の幸せの種をまくチャンスを作っていることにつながります。お金は生きていくための道具に過ぎないので、お金とどのようにつきあっていくかが問題になります。

もちろん、生きていくためにはお金は必要なので、資産運用を積極的にすることは評価できます。しかし、ただお金を貯めることだけに執着してしまうと、お金と交換して得られる「価値」を味わうことができません。老後のためという名目の投資を続けて、今しかできない経験や生活を犠牲にするくらいなら、幸福度を上げるお金の使い方をしながら、ほどほどの金額で投資を続けていくほうがよいのではないでしょうか。

お金は貯めるばかりではなく、使うところまでがセットです。お金を経験や楽しい思い出になることに費やしてこそ、明日への原動力につながるというものです。

お金は所詮、何かと交換するツールに過ぎません。道具を貯めるだけで使わないのならば、ただのコレクションで何の意味もありません。お金を増やす罠に陥らずに、お金を支払ったことで価値が増えるというお金の使い方も学ぶ必要があるでしょう。

池田幸代  株式会社ブリエ 代表取締役

証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー

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