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​​定額減税で給付金がもらえる?目安となる年収はいくらか

2024年6月からスタートした定額減税。すでに給与が支払われた人は、引かれる所得税や住民税が少なくなっていることを確認したかもしれません。ただ、定額減税の対象者の中には、税金が引ききれない人もいます。この場合、減税だけでなく「調整給付」の対象になり、現金給付が受けられます。今回は、定額減税の対象となる人、定額減税の金額、定額減税や調整給付の目安となる年収について、紹介します。

■定額減税の基本をおさらい

定額減税とは、税額を一定額減額する減税の方法です。2024年6月から実施されている定額減税では、1人あたり所得税3万円、住民税1万円の計4万円が減税されます。ただし、年収2000万円超(厳密には「合計所得金額1805万円超」(給与収入のみの場合、給与収入2000万円))の富裕層は対象外です。

<定額減税のしくみ>

首相官邸ホームページ「所得税・個⼈住⺠税の定額減税」より

所得税と住民税では、減税の方法が異なります。

●所得税の減税方法

所得税の定額減税は、給与から源泉徴収されている所得税を直接減らします。2024年6月から12月の7か月間に1人あたり3万円分を差し引きます。ただし、ひと月の所得税がそもそも3万円に満たない場合には、翌月以降に繰り越して減税を行います。減税しきれなかった所得税の控除は、2024年12月まで続きます。

●住民税の減税方法

住民税は、2024年6月分を徴収せず、7月分から2025年6月分までの11か月間にわたって減税分を均等に割り振って徴収します。

たとえば、年間の所得税が約10万円(月8000円)、住民税が約20万円(月1万6000円)の単身者の場合、定額減税は次のように行われます。

<単身者の定額減税例>

(株)Money&You作成

所得税は6月から8月まで8000円全額が控除されるため、支払いはゼロになります。9月は、残額6000円のみが控除されるため、支払いは2000円となります。そして10月以降は減税前同様、8000円の所得税を支払います。

住民税は6月が徴収なしで、7月から翌年5月までの11か月間は20万円から定額減税分の1万円を差し引いた19万円を11か月にわたって均等に支払います。厳密には「100円未満は切り捨て、端数は最初の月に支払い」ですので、7月は1万8000円、8月以降2025年5月までは毎月1万7200円を支払います。

定額減税はあくまで本来支払う所得税や住民税から一定額を差し引く制度です。そのため、所得税や住民税を納税しているものの、その金額が1人あたり4万円に満たない場合、定額減税の恩恵が受けにくくなってしまいます。

冒頭の図の中央、「定額減税の恩恵を十分受けられないと見込まれる所得水準の方々」に該当する場合は、調整給付の対象になります。

たとえば、単身者と同様年間の所得税が約10万円(月8000円)、住民税が約20万円(月1万6000円)、夫が妻と子2人を扶養する4人家族世帯があるとします(所得税や住民税の金額は家族を扶養するなどの条件で変わりますが、ここではわかりやすさを重視するために単身者と同じにしています)。この場合、定額減税と調整給付は次のように行われます。

<4人家族の定額減税例>

(株)Money&You作成

4人家族世帯ですので、定額減税では所得税が12万円、住民税が4万円、合計16万円減税されます。

所得税は2024年12月までの7か月間で5万6000円引かれますので、2024年12月まで所得税はゼロです。しかし、これでもまだ6万4000円が引ききれません。この分が調整給付となり、給付金として支払われます。

給付金は、自治体の事務負担を考慮して1万円未満を切り上げ、1万円単位で支給されます。この例では、差し引けない金額が6万4000円ですから、7万円になります。6000円分お得ですね。

住民税は単身者同様、2024年6月には徴収されません。翌7月から2025年5月までの11か月間は、20万円から定額減税分の4万円を引いた16万円を11で割った金額が毎月均等に徴収されます。ここでは月1万4545円ですので、厳密には7月が1万5000円、8月以降2025年5月までは毎月1万4500円です。

なお、2024年6月以降の給与だけでなく、賞与も定額減税の対象です。賞与からは所得税が引かれるので、賞与の額が多ければ、賞与だけで所得税の定額減税が引き切れることもありえます。ちなみに、賞与には住民税はかかりません。

■調整給付になる年収の目安は?

調整給付の対象になる年収の目安は、次のとおりです。

<給付金・定額減税の目安の年収>

地方創生サイト「低所得者支援及び定額減税を補足する給付について」より

夫婦と子ども2人(小学生)の世帯の場合、定額減税が満額控除される年収は535万円程度まで。年収270万円程度~535万円程度までならば定額減税では税金を引き切ることができず、調整給付が受け取れます。お住まいの地域や家族構成などにより異なるのであくまで参考までですが、年収500万円以上であっても定額減税+調整給付となるケースが出てくるでしょう。

なお、年収が270万円程度よりも少なく、住民税均等割のみ課税されている世帯や住民税非課税世帯は別途給付金が受け取れます。

また、名古屋市のウェブサイトでは、単身世帯・夫婦と子ども2人世帯・65歳以上の夫婦世帯の収入別に調整給付の金額の目安を紹介しています。

<名古屋市のシミュレーション結果>

名古屋市のウェブサイトをもとに(株)Money&You作成

たとえば、夫婦と子ども2人の4人世帯で年収500万円であれば、調整給付でもらえる金額は6万円となっています。細かな金額はお住まいの自治体や適用される所得控除などによっても異なりますが、ひとつの参考になるでしょう。

■調整給付はいつごろもらえる?

調整給付には、2024年夏に行われる「当初給付」と、2025年以降に行われる「不足額給付」があります。

当初給付は、対象の世帯に早めに給付を届ける観点で行われる給付です。2023年の所得や控除の状況に基づき、定額減税で引ききれない金額があると見込まれる場合に、先に支給される仕組みです。自治体によっても違いますが、早ければ2024年6月から順次実施される予定です。マイナンバーカードに「公金受取口座」の指定をしている場合は特に手続きは不要。していない場合は追って郵送で届く「お知らせ」「確認書」などの書類を利用した手続きが必要になります。

一方の不足額給付は、2024年の所得税額が確定したあとに、当初給付の金額に不足があった場合に追加で給付金が支給される仕組みです。不足額給付は2025年(令和7年)以降に行われる予定です。

当初給付は2023年の所得をもとに行われるので、2024年の所得とずれが生じる可能性があります。たとえば、2024年中に収入が減った方や扶養家族が増えた方は、2024年の所得税額が減るため、「当初給付の給付金が本来もらえる金額よりも多かった」となる可能性があります。しかし、この場合でも返金する必要はありません。


反対に、収入が増えた方などの場合、所得税額が増えることで当初給付が足りなかった、ということもあるかもしれません。この場合は、不足額給付の際に追加で給付金がもらえます。

■年金受給者やフリーランスの定額減税はどうなる?

ここまでは給与所得者の定額減税について確認してきました。年金受給者やフリーランスの定額減税は、次のように行われます。

●年金受給者の定額減税

年金は年6回、原則偶数月の15日に2か月分が支給されます。年18万円以上の年金を受給していれば所得税や住民税は「特別徴収」といって、支給される年金から天引きされます。

所得税は2024年6月に支給される年金から減税が行われます。6月に全額を減税しきれない場合は、以後「2024年中」(=2024年12月分まで)に支給される年金から順次減税されます。たとえば、2か月分の年金の所得税が1万2000円の単身者の場合、6月に1万2000円、8月に1万2000円が控除され、10月には6000円を控除することで合計3万円控除します。

住民税も所得税同様、年6回の年金支給の際に源泉徴収されている分から減税が行われるのですが、所得税とは違い、2024年10月分から控除が行われ、引ききれない分は12月分以降「2024年度中」(=2025年2月分まで)に支給される年金から順次減税されます。

●フリーランスの定額減税

フリーランスは、毎年確定申告をして所得税を納めています。定額減税の対象になる「2024年(令和6年)分の所得税」は、2024年1月1日から12月31日までの1年間の所得をもとに計算し、2025年2月〜3月に確定申告を行って支払います。このときに、定額減税の1人あたり3万円分を差し引きます。

なお、前年の所得を基に計算した納税額が15万円以上の場合は、確定申告前の年2回の予定納税(7月・11月)のときに所得税の減税を行います。

つまり、自営業やフリーランスの方は、確定申告をしないと所得税の定額減税が受けられません。もっとも、自営業やフリーランスの場合、毎年確定申告していますので、確定申告自体をすること自体は問題ないでしょう。

一方、定額減税の対象になる住民税は「2024年度(令和6年度)分」。2024年度分の住民税の金額は、前年の2023年1月1日〜12月31日までの1年間の所得をもとに計算されます。したがって、すでに住民税の金額は決まっています。

フリーランスの場合、2024年度の住民税は、郵送で届く納付書にしたがって、2024年6月・8月・10月・2025年1月の4回に分けて支払います。

■定額減税されたか確認するには?

給与所得者の場合、給与明細に定額減税された金額が記載されます。ニュースでも取り上げられたのでご存じの方も多いでしょう。書式は各社異なりますが、国税庁の資料 には、

給与支払明細書の適宜の箇所に、月次減税額のうち実際に控除した金額を「定額減税額(所得税)×××円」又は「定額減税××円」などと表示します。

とありますので、給与明細を見れば定額減税でいくら引かれたかがわかります。

年金生活者の場合、所得税の定額減税の金額は2025年1月に届く「公的年金等の源泉徴収票」に記載されます。

<公的年金等の源泉徴収票>

日本年金機構のウェブサイトより

2024年中に減税された金額については、「源泉徴収時所得税減税控除済額」として、その金額が記載されます。控除しきれなかった金額は「控除外額(控除していない額)」と表示されます。

また、フリーランスの場合、確定申告の際に定額減税の金額を記載することで減税が反映されますので、間違いなく手続きしましょう。

住民税の定額減税は、6月に届く「住民税決定通知書」で確認できます。具体的には、次のとおりです。

<住民税決定通知書の「定額減税」チェックポイント>

(株)Money&You作成

①「摘要」の欄
「定額減税(控除額◯◯円、控除外額◯◯円)」と記載されます。控除額は住民税の所得割額から差し引くことができた金額、控除外額は差し引けなかった金額です。

②「税額控除額」の欄
税額控除額の欄には、市町村民税(特別区民税)・道府県民税(都民税)から差し引く金額が含まれています。たとえば、住民税を4万円差し引くことができ、他に税額控除がなければ、2つの欄の合計額は4万円です。

③「納付額」の欄
納付額の欄には、毎月の住民税の金額が記載されます。ここまでお話ししたとおり、住民税は6月分がゼロ、7月以降の毎月の住民税が定額減税後の金額を11等分したもの(厳密には、7月は端数を支払うため少し多い)になっていれば問題ありません。

定額減税では、所得税や住民税を引ききれなかった人を対象にした調整給付が支払われることを紹介しました。調整給付は1万円未満を1万円に切り上げて支払われるため、調整給付が受けられたほうがお得です。ぜひ確認してみてくださいね。

高山一恵 (株)Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー

一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を行ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。月400万PV超の女性向けWebメディア『Mocha(モカ)』やチャンネル登録者1万人超のYouTube「Money&YouTV」を運営。著書は『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『11歳から親子で考えるお金の教科書』(日経BP)、『マンガと図解 定年前後のお金の教科書』(宝島社)など著書累計160万部超。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。

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