【新NISA】投資信託「毎日積立」「毎月積立」実際お得なのはどっち?
新NISAを利用して投資信託に「毎月」積立投資している人も多いでしょう。
SBI証券・楽天証券・マネックス証券などといったネット証券では、毎営業日に積立投資ができる「毎日積立」のサービスを提供しています。
わざわざサービスを提供しているのだから毎日積み立てしたほうが良いのでしょうか?
何となく、「毎日積立」が良さそうに思えてしまいますが、分析してみないと正解はわからないので、検証してみました。
積立の頻度が選べる金融機関も
新NISAでの積立投資は、多くの場合「毎月積立」です。月に1度、毎月の決められた日、あるいは指定した日に投資信託を買い付けていきます。しかし、金融機関によっては「毎日積立」を選択できるところもあります。
「毎日積立」を選択できる証券会社
・SBI証券
・楽天証券
・マネックス証券
・松井証券
・大和証券
・大和コネクト証券
毎日積立では、土日祝日を除いたすべての営業日に一定額ずつ投資信託を買い付けます。したがって、実質的には「毎営業日積立」です。
なお、「毎日◯円ずつ積み立てる」と1回の購入価格を指定する場合、月によって日数が変わる(おおむね20回前後)ので、毎月の投資金額が変わってしまい、資金管理がしづらいかもしれません。「1か月の合計が◯万円になるように毎日積み立てる」と毎月の合計金額を指定する方法を利用すると、1日あたりの投資金額は月によって変わるものの、毎月の投資金額は一定にできるので、管理がしやすいでしょう。
ドルコスト平均法のおかげで毎日積立が有利?
毎日積立と毎月積立では、毎月積立のほうが有利だといわれます。その理由は、毎日積立のほうがドルコスト平均法の効果を大きく受けられるからです。
<ドルコスト平均法のイメージ>
(株)Money&You作成
株など金融商品の価格は、経済成長に伴って長期的に右肩上がりで上昇していく傾向にあります。しかし、一直線で上昇していくわけではなく、短期的には上下に変動します。
ドルコスト平均法では、価格が安い時はたくさん買い、逆に高い時には少しだけ買います。これにより、自然と平均購入単価を下げながら、少しの値上がりでも利益を出しやすくできるというわけです。
毎月積立の場合、積立の頻度は月1回ですが、毎月積立ならば月20回前後と多くなります。その結果、時間の分散効果がより発揮され、平均購入単価を下げられると考えられているのです。
毎日積立と毎月積立、実際お得なのはどっち?
説明からのイメージでは毎日積立のほうがお得に感じることでしょう。
しかし、本当に毎日積立のほうがお得なのでしょうか。
筆者は定期的に「毎日積立と毎月積立の収益率に差があるのか」検証しています。
「観測時期・期間をずらしても毎日積立が有利なのか」「複数の指数でも毎日積立が有利なのか」という2つのポイントで分析しています。
1回目の検証
米国株価指数「S&P500」と日本株価指数「TOPIX」の2つの指数に対して、
・5年間(2015年6月1日〜2020年5月31日)
・10年間(2010年6月1日〜2020年5月31日)
・20年間(2000年6月1日〜2020年5月31日)
積み立てた場合の収益率を比較しました。
<毎日積立と毎月積立の累積収益率の違い①>
(株)Money&You作成
上表の通り、積立期間5年・10年・20年と、いずれの場合でも収益率の差はほとんどありません。僅かに毎日積立のほうが有利となっていますが、その差は「累積」の収益率で1%もない状況です。「年率」ではありません。「毎日積立のほうが有利」「分散効果が発揮される」などというわりには、ほとんど差がないことがわかります。
2回目の検証
もしかしたら「積立時期」をずらしたら違う結果が出るのかもしれません。そして、「対象指数」を変えたら「毎日積立」がかなり有利となる結果が得られるのかもしれません。
そこで2回目の検証では、「TOPIX」「S&P500」「MSCI ACWI」「NASDAQ100」の4つの株価指数に対して、
・5年間(2017年10月1日〜2022年9月30日)
・10年間(2012年10月1日〜2022年9月30日)
・20年間(2002年10月1日〜2022年9月30日)
積み立てた場合の収益率を比較しました。
MSCI ACWIは全世界株指数として活用される指数。「オルカン」の愛称でおなじみの投資信託「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」のベンチマークです。
またNASDAQ100は、米国NASDAQ市場に上場する100銘柄をもとに算出される株価指数であり、S&P500のパフォーマンスを超える指数として人気があります。
<毎日積立と毎月積立の累積収益率の違い②>
(株)Money&You作成
先ほどの結果と同じく、積立期間5年・10年・20年と、いずれの指数でも収益率の差はほとんどありません。全体的に僅かに「毎日積立」のほうが有利となっていて、NASDAQ100の「10年」「20年」の差は2%となっています。NASDAQ100のように値動きが荒い指数の場合は、毎日積立を選んだ方がより有利になると言えるかもしれませんが、それでも10年間・20年間の累積収益率でようやく2%の差ですから、気にするほどでもないレベルでしょう。
TOPIXとMSCI ACWIの5年間は毎月積立が有利になっているのも面白いですね。
3回目の検証
3回目の検証は、2回目と同じく「TOPIX」「S&P500」「MSCI ACWI」「NASDAQ100」の4つの株価指数に対して、
・5年間(2019年9月1日〜2024年8月31日)
・10年間(2014年9月1日〜2024年8月31日)
・20年間(2004年9月1日〜2024年8月31日)
積み立てた場合の収益率を比較しました。
2022年以降の株価は、総じて好調でした。2024年は日経平均株価やダウ平均株価、S&P500などは軒並み最高値を更新したことでも話題になりました。8月に一度暴落があったものの、5年・10年・20年の収益率は次のようになっています。
<毎日積立と毎月積立の累積収益率の違い③>
(株)Money&You作成
これまでの結果と同じく、いずれの積立期間・指数でも収益率の差はほとんどありません。全体的に僅かに「毎日積立」のほうが有利となっていて、NASDAQ100のように値動きが荒い指数の場合は、累積収益率の差が少し大きく出ている程度という結果も変わりません。
累積収益率が800%を超えているNASDAQ100の20年間の積み立てでも、差は約3%しかないというのは面白い結果ですね。
毎日積立と毎月積立では毎日積立のほうが僅かに有利だとはいえるのですが、そのパフォーマンスの差は「ほとんどない」といえるでしょう。
クレカ積立を利用すれば、「毎日積立」との累積収益率の差をカバーできる
「クレカ積立」は、投資信託の積立購入代金をクレジットカード払いにできるサービスです。クレカ積立を利用することで、クレジットカード会社のポイントが貯められる場合があります。嬉しい仕組みなのですが、これまで議論に上がっていた毎日積立には対応しておらず、毎月積立しかできません。
クレカ積立のポイントの還元率は利用するクレジットカードの種類や投資額などで変わります。
例:楽天証券
楽天証券では「楽天カード」を利用してクレカ積立ができます。
<楽天証券のクレカ積立のポイント還元率>
(株)Money&You作成
楽天証券のクレカ積立のポイント還元率は、楽天証券が受け取る手数料(代行手数料)が年率0.4%未満の投資信託の場合0.5%〜2%、年率0.4%以上の投資信託の場合1%〜2%です。
インデックス投資信託は0.4%未満がほとんどなので0.5%〜2%に該当することになります。
この還元率は利用する楽天カードの種類によって変わってきます。
楽天カードが0.5%、楽天ゴールドカードが0.75%、楽天プレミアムカードが1%、そして楽天ブラックカードは2%です。
上位のカードほどポイント還元率も高くなるのですが、年会費も高くなります。年会費は楽天カードなら永年無料ですが、楽天ゴールドカードは2,200円、楽天プレミアムカードは11,000円、楽天ブラックカードは33,000円となっています(いずれも税込)。年会費の上昇の割合より、ポイント還元率の上昇の割合の方が少ないので、クレカ積立のポイント還元を増やすために上位のカードを申し込むのは本末転倒。その他の特典もお得に使いこなせるならば利用を検討してもよいでしょう。
例:SBI証券
SBI証券は「三井住友カード」や「Olive」を利用したクレカ積立ができますが、2024年11月買付分からポイント還元の条件に「年間カード利用額」が加わります。
<SBI証券のクレカ積立のポイント還元率※2024年11月買付分以降>
(株)Money&You作成
SBI証券も、上位のカードのポイント還元率が高く設定されています。ポイント還元率は通常カードが0.5%、ゴールドカードが0.75%〜1%、プラチナカードが1%〜3%で、年間カード利用額(クレカ積立の利用額は含まない)が多い方が高くなります。通常カードとゴールドカードの場合、年間利用額が10万円未満だと、ポイント還元率が0%となることに注意しましょう。
年会費は通常カードは永年無料、ゴールドカードは5,500円、プラチナカードは33,300円です(いずれも税込)。なお、ゴールドカードは年間100万円以上の利用があると、翌年以降の年会費が永年無料になります。こうなれば、通常カードの完全上位互換ですので、狙える方は狙ってみるとよいでしょう。
例:マネックス証券
マネックス証券は「マネックスカード」または「dカード」を利用してクレカ積立ができます。
<マネックス証券のクレカ積立のポイント還元率>
(株)Money&You作成
マネックス証券でdカード・マネックスカードを利用してクレカ積立をした場合のポイント還元率は、積立額に応じて1.1%、0.6%、0.2%と段階的に下がります。ただし、「dカード GOLD」を利用し、NISA口座でクレカ積立を行なった場合は10万円分すべて1.1%の還元率になります。
dカードの年会費は永年無料。マネックスカードの年会費は初年度無料で、次年度からは550円(税込)です。ただ、年間に1度でもマネックスカードを利用していれば無料になります。マネックスカードでの投資信託の積立も対象なので、クレカ積立を利用していれば無料にできるでしょう。dカード GOLDの年会費は11,000円です。
なお、マネックス証券は2024年1月にイオン銀行と業務提携。イオンカードを利用したクレカ積立サービスの開始も検討されています。
まとめ
「毎日積立」ならば、「毎月積立」よりも高い頻度で積み立てるため、より細かなタイミングで時間分散ができるのは事実です。しかし、「毎日積立のほうが有利」とまでは言えないことを検証してきました。毎日積立と毎月積立の積立頻度の違いによるパフォーマンスの差はほとんどありません。クレカ積立を活用することで得られるポイントの還元率で埋められる程度の差しかありません。ですから、気軽に選んでも問題ないでしょう。
もちろん、累積収益率では毎日積立のほうが僅差ではありますが有利だともいえます。どうしても気になるなら毎日積立を利用するのも一案です。
皆様の投資行動の参考になれば幸いです。
頼藤 太希(よりふじ・たいき) マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用 新NISA対応改訂版』(宝島社)など書籍100冊、著書累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧twitter)→@yorifujitaiki