新型コロナと東京の人口移動状況【プロが教える不動産投資コラム】
新型コロナの感染者数も一時期に比べて大幅に減少しています。緊急事態宣言が解除され飲食店を始め街は賑わいを取り戻しつつあります。しかし第6波の到来も予想されていますので、依然予断が許されない状況が続いています。
今回のコラムでは新型コロナが東京都の人口に与えた影響を分析しながら、今後の不動産投資について述べてみたいと思います。
緊急事態宣言の終了によりテレワーク実施率は低下
政府の推進する「テレワーク」により会社に出勤する回数が減った方もいらっしゃいます。東京都の発表した「テレワーク実施率調査」によると、都内企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率は2021年8月に65.0%と過去最高となりました。これはその頃に東京都の感染者数が連続して5000人を超えた事もその要因と考えられます。しかし10月には55.4%と減少傾向となりました。これは緊急事態宣言が9月30日に終了した事から、会社への通勤回数も増えてきていると予想されます。
今後コロナが収束に向かっていけばさらにテレワーク実施率が低下する事も考えられますので、その場合には都心部や都心に近いエリアのマンションの需要も増加する可能性もあります。また都心のオフィス需要が再び活性する事も考えられます。 今後テレワークの行方がどうなるか、その動向に注視が必要です。
東京都のテレワーク実施率<2021年度>
実施率 | |
---|---|
4月 | 56.6% |
5月 | 64.8% |
6月 | 63.6% |
7月 | 61.9% |
8月 | 65.0% |
9月 | 63.9% |
10月 | 55.4% |
2020年の東京都の人口移動状況は?
2020年は新型コロナの影響があり、東京都への人口動態にも大きな影響を与えています。
総務省の発表した<住民基本台帳人口移動報告>によると、東京都は昨年2020年に転入者が転出者を上回る「転入超過」となりましたが、転入超過数は大きく減少しました。
東京23区の転入超過数は2019年には6万4,176人でしたが、2020年には1万3,034人と約5万人減少しています。
また横浜市などは2019年の10,306人から2020年は12,447人と増加となっています。首都圏全域では転入超過となっており、東京に隣接している神奈川県、千葉県、埼玉県などは人口増加となっています。 ここで重要な点は、このコロナ禍においても東京都を始め、首都圏の4都県はすべて「人口が増加」となっている点です。
東京都の転入超過数の推移
転入超過数 | |
---|---|
2020年 | 1万3,034人 |
2019年 | 6万4,176人 |
首都圏の人口の推移(住民基本台帳)
21年1月 | 20年1月 | 前年同月比 | |
---|---|---|---|
東京都 | 1,384万3,525人 | 1,383万4,925人 | 8,600人増加 |
神奈川県 | 922万0,245人 | 920万9,442人 | 1万0,803人増加 |
埼玉県 | 739万3,849人 | 739万0,054人 | 3,795人増加 |
千葉県 | 632万2,897人 | 631万9,772人 | 8,768人増加 |
千葉県「住民基本台帳人口」/埼玉県「住民基本台帳人口」
2021年の人口移動
今年2021年の東京都の人口移動状況を見ると、人口の転出超過の月が多くなっています。総務省の人口移動報告によると、最新のデータである2021年9月は東京都は3,638人の転出超過となり3ヵ月連増の転出超過となっています。
但し年を通じて見てみると就職や進学などで東京に来る方が多い3月期には大きく転入超過となっている事が分かります。
2021年3月の東京都の転入超過数は約40,199人ですが、転入者自体は9万7,325人と10万人近くなっています。2020年3月にも転入者は10万3,039人おり、2019年3月も約10万人ですので、毎年3月に東京に約10万人が引っ越してきている状況となっています。つまり全体として転入超過人口が減少していても、3月に東京に転入して来る方の数は2019年以来それほど変化しておらず、新規の住宅の需要も健在であると考えられます。
また毎年3月に多くの方が転入している事から、東京都は2021年1~9月の累計では3万1,329人の転入超過となっています。 このようにコロナ禍にもかかわらず東京都は2019年・2020年・2021年(1~9月)を通じても人口が転入超過となっている事が分かります。
3月の東京都への転入者数
転入者数 | |
---|---|
2019年3月 | 9万6,638人 |
2020年3月 | 10万3,039人 |
2021年3月 | 9万7,325人 |
東京都の転入超過数の推移(2021年)
2021年 | 転入超過数 |
---|---|
1月 | △1,490人 |
2月 | △1,838人 |
3月 | 40,199人 |
4月 | 4,522人 |
5月 | △1,069人 |
6月 | 1,669人 |
7月 | △2,522人 |
8月 | △4,514人 |
9月 | △3,638人 |
累計 | 31,329人 |
<総務省「住民基本台帳人口移動報告 2021年」よりオフィス野中集計>
東京都への転入人口は若い世代が多い
東京都への転入数が多い中で、その年齢層の動向も重要となってきます。
総務省「住民基本台帳人口移動報告 2021年」から東京都の転入超過の年齢層を見てみると、進学や就職の年代である15~19歳、20~24歳、25~29歳が中心となっており、2020年4月以降もこの年代においては転入超過が続いています。
さらに転入者の中でも最も多いのは20~24歳の世代となっています。
こうした若い世代は単独世帯である事も多く、ワンルームマンションの需要層となる年齢層は増加が続いているという事が分かります。
筆者の感覚としてはファミリー層においては広い面積を求めて他県に移住した方も一定数いらっしゃったかと思いますが、単身者においては生活利便性や通勤時間などの交通利便性にプライオリティを置く事から東京に留まった方も多いかと推測されます。なぜかと言うと、東京におけるワンルームマンションの入居率は依然高い水準で推移しているからです。
このようにコロナ禍においても東京への人口移動は依然続いています。 今後不動産投資をする際に参考にして頂ければ幸いです。