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アベノミクスが不動産業界に与えた影響は【プロが教える不動産投資コラム】

2022年7月8日に発生した安倍元総理の悲報は日本はもとより世界中を震撼させました。筆者は安倍元総理に直接お会いした事はありませんが、テレビ画面を通じてその暖かい人柄が胸に残っています。安倍元総理は国内政治および経済のみならず外交においても偉大な実績を残されました。

国内においてはいわゆる「3本の矢」などの経済政策を果敢に実施し日本経済に大きく寄与しました。また低金利政策の元、不動案業界にも大きな影響を与えました。

今回は安倍元総理が行ってきたアベノミクスと言われる経済政策と不動産業界に与えた影響について振り返ってみましょう。

安倍内閣の誕生は2013年

安倍内閣(第二次)は2012年12月26日に発足しました。その前は民主党の野田内閣で、民主党政権から自民党政権への交代となりました。それまでの日本は長いデフレの時期にあり、「失われた10年」または「失われた20年」などとも言われていました。

1990年始め頃にバブル経済が崩壊して以来長いデフレの時期が続き、2000年代に入り一時景気も回復してきましたが2008年には「サブプライムローン」問題から「リーマン・ショック」が発生し、さらに2011年には東日本大震災も発生し日本の経済にも大きな打撃を与えました。

デフレ脱却のためのアベノミクスの3本の矢とは

こうしたデフレの状況を一新するために、安倍内閣では「3本の矢」と言われる経済政策を表明し「デフレからの脱却」と「富の再生」を目指しました。

この「3本の矢」とは下記の3つから成っています。

  1. 大胆な金融政策
  2. 機動的な財政政策
  3. 民間投資を喚起する成長戦略

これらの政策は功を奏し、株価も徐々に上昇していきました。前政権である野田内閣が衆院解散を表明した2012年11月14日から新政権への期待もあり株価は上昇傾向となり、アベノミク発足後の2012年の年末にかけては株価も大きく上昇、2012年末の日経平均株価は1万0395円で終了し前年比23%の上昇となりました。

2015年4月には2000年4月以来15年ぶりに2万円台を回復しています。その後も株価は上昇を続け、安倍総理が辞任する2020年には2万3,000円前後まで上昇しました。日本の景気は大きく回復に近づいたと言えます。

こうした株価の上昇からいわゆる「資産効果」が生まれ、不動産業界にも資金が流入し居住用の住宅のみならず資産運用系のワンルームマンションなどの需要も大幅に上昇してきました。

低金利政策が不動産市場に与えた影響は

デフレ脱却・景気を回復軌道に乗せるために2000年代から「低金利政策」が続けられていましたが、アベノミクスによりさらに金融緩和が推し進められる事になりました。

日銀の黒田総裁は大胆な金融緩和政策を進め、やがて「ゼロ金利」から、さらには「マイナス金利」政策に移行していきました。また日銀から金融機関などに流すお金も増加し、こうした資金が土地・不動産などにも流入して地価が大きく上昇しました。

低金利政策はマンション購入層の拡大にも寄与し、さらにインバウンドの増加も地価上昇に拍車をかけ、コロナ発生前まで地価は都心部を中心に7年連続上昇となりました。

東京都の地価の平均価格を見ると、アベノミクス前の2012年と新型コロナ発生前の2020年での対比においては住宅地で約33万→約43万円、商業地においては約167万円→約267万円と大幅に上昇しました(公示地価、1㎡当たり)。

また特に都心の商業地の地価上昇が大きく、都心の地価上昇は周辺部へと波及していきました。新型コロナの影響により地価は若干の調整局面となったものの、2022年の公示地地価でも高止まりしていると言えます。

アベノミクス以降後の地価の変化
公示地価 東京都区部の地価変動率の推移

住宅地商業地
2013年△0.3%△0.4%
2014年1.4%2.4%
2015年1.4%2.9%
2016年1.7%4.2%
2017年1.9%4.8%
2018年2.5%5.5%
2019年3.0%6.8%
2020年2.8%7.%3
2021年△0.6%△1.9%
2022年1.0%0.6%
<国土交通省「地価公示」>

建築費・不動産価格にも大きな影響

2013年には東京五輪の開催が決定し、都内各地の再開発と合わせて建築需要も高まりました。さらに再開発による建築需要や建築業界の人手不足なども要因として建築費も上昇してきました。

安倍内閣終了後も建築素材や燃料費なども値上がり傾向にあり、建築費の上昇に拍車をかけています。国土交通省の発表している「建築工事費デフレーター」では2015年を100とする指数で2013年の97.2→2021年には114に上昇しました。

建築工事費指数(住宅・鉄筋RC)

指数
2013年度97.2
2014年度100.4
2015年度100.4
2016年度100.2
2017年度102.5
2018年度106.2
2019年度108.6
2020年度108.3
2021年度114.0
<国土交通省「建築工事費デフレーター」>

※2015年=100 2019年~2021年は暫定値

こうした地価・建築費の上昇要因から不動産価格が上昇しています。

国土交通省の発表した「不動産価格指数」によると2010年を100とする指数では2013年の99.2→2022年には170.5と大きく上昇しました。

不動産価格指数の推移<マンション(区分所有)>

指数
2013年度99.2
2014年度108.4
2015年度116.3
2016年度127.3
2017年度134.9
2018年度139.6
2019年度114.8
2020年度151.4
2021年度157.9
2022年度170.5
<国土交通省「不動産価格指数」>

※各年1月 2010年=100  東京都季節調整値

アベノミクスによりマンションの資産価値が上昇

不動産価格は大きく上昇してきました。特にマンション価格は新型コロナの影響に関わらず東京などでは上昇が続いています。

新規に発売されるマンション価格が上昇すれば、その周辺の中古マンションの相場を押し上げますので、アベノミクは東京全体のワンルームマンションの資産価値の上昇の要因となったとも言えます。

また都市再生緊急整備地域を始めとして東京の主要ターミナル駅周辺などでは再開発が持続しており、東京不動産のポテンシャルも高まってきています。

このようにアベノミクは株価のみならず不動産の資産価値の上昇にも大きく寄与したと言えるのではないでしょうか。

現在も引き継がれているアベノミクスと低金利政策

安倍政権の後継である菅内閣や野田政権内閣にもこうしたアベノミク政策は受け継がれています。特に米国や欧州などがインフレで利上げをする中で、日本では低金利政策が続けられています。これが投資マンションやファミリーマンションなどを買いやすい状況を作り出す事となりっています。

近年では都心の単身者が増加する中で、リートなど法人がワンルームマンションを一棟買いするケースも多くなってきています。資産価値の上昇や単身世帯の住宅需要が増加する中でワンルームマンション購入のチャンスが続いていると言えます。

低金利政策はいつまで続くのか

低金利を継続する目標として「物価上昇が安定的に2%」という条件がありました。近年ではインフレが続き、世界の主要国などもでも利上げ圧力が高まってきています。

日本では新型コロナに加えてウクライナ情勢からエネルギーや素材価格が上昇し、深刻なインフレとなっています。但し日本の景気は安定的に上昇軌道に回復したとは言えない所にあり利上げには慎重な意見も出ています。

将来的には利上げの可能性もありますが、低金利の恩恵を多く受けるためには、早めのワンルームマンション購入が将来への備えにつながるのではないでしょうか。

まとめ

このように安倍元総理が残された功績は極めて大きく今後の日本経済、さらに不動産業界の成長へとつながりました。こうした政策を引き継いだ岸田政権の経済政策においても、今後ますますの経済や不動産業界の発展を期待したいと思います。

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