東京周辺の鉄道延伸計画と不動産投資【プロが教える不動産投資コラム】
鉄道の延伸は不動産業界にも大きな影響を与えます。
都心を運行する鉄道が郊外に向けて延伸されると、都心に直通のエリアが増加します。するとその路線の利用者が増加し、沿線のビジネス・商業エリアなどの通勤・通学・利用者も増加します。その結果、沿線やターミナル駅周辺などが発展しますので、その恩恵は既存駅・路線にも及びます。
また新駅が開業する際には、最寄り駅が遠かった土地がいきなり「駅前」に変わり、大きな発展が期待されます。今後の東京周辺の主な延伸計画について検証してみたいと思います。
開業の可能性が高い路線は
1、南北線延伸(品川~白金高輪)・開業予定:2030年代半ば(目標)
東京メトロ南北線は「赤羽岩淵」から「目黒」駅まで運行していますが、これを「白金高輪」駅から分岐して「品川」駅まで運行する計画です。2022年に鉄道事業が許可されています。
「品川」は横浜方面や羽田空港へもアクセスしやすく、また東海道新幹線や将来的にはリニア中央新幹線も利用できる予定であり東京の「サウスゲート」とも言える駅です。
しかし「品川」駅にはJRと京浜急行が運行していますが、東京メトロの路線は接続していません。今回「品川」駅へ南北線が接続する事で東京都心部への鉄道ネットワークが向上、また南北線は埼玉県を通る埼玉高速鉄道に直通運転を実施していますので、埼玉エリアからの「品川」へのアクセスも向上します。
2、羽田空港アクセス線・開業予定:2029(令和11)年度ごろ
羽田空港(東京国際空港)は東京都の都心に近い空港で、利用者も日本一多くなっています。現在は羽田空港への鉄道アクセスは東京モノレールと京浜急行空港線となっていますが、JRが新線を開業し羽田空港から東京・新宿・新木場などから直通アクセスが可能となる計画です。東京駅方面となる「東山手ルート」の鉄道施設変更認可が2023年1月に、羽田空港からの新路線となる、「アクセス新線」の工事施行認可が2023年3月にそれぞれ下り2023年6月には起工式が行われました。
東京駅には上野東京ラインとして宇都宮線・高崎線・常磐線などが運行していますが、これらの路線と接続して広範囲の地域から羽田空港への直通アクセスが可能となります。東東京駅からは18分で到着することが予定されています。東山手ルートは2031年の開業が予定されています。また新宿方面などからのアクセスも予定されており都内からの羽田空港へのアクセスが向上します。
3、有楽町線延伸(豊洲~住吉)・開業予定:2030年代半ば(目標)
東京メトロ有楽町線は「和光市」駅から東京都心部を通り「新木場」駅まで運行しています。これを湾岸エリアの「豊洲」駅から分岐して「住吉」駅まで延伸する計画で、2022年3月に鉄道事業が許可されています。
江東区では有楽町線を始め東京メトロ東西線や都営新宿線、JR総武線など多くの鉄道が運行していますが、全て東西の横の路線であり、南北を結ぶ縦の路線が弱いとされていました。この延伸により有楽町線、東西線、都営新宿線が縦に結ばれる事になり、湾岸エリアへのアクセス向上や各路線の混雑緩和などにも寄与します。また途中には「(仮称)枝川」「(仮称)千石」駅などが建設される予定です。新たに「駅前」の土地が誕生する事にもなります。また江東区を始め東京東エリア全体の発展にも繋がります。
4、リニア中央新幹線(東京(品川)~名古屋~大阪)
現在工事が進められているのは「東京~名古屋」を最速40分で結ぶ「リニア中央新幹線」です。東京では「品川」駅は発着駅となります。品川駅周辺は再開発が進んでおり、隣駅の「高輪ゲートウェイ」駅では「TAKANAWA GATEWAY CITY」の建設も進行しています。東京・名古屋・大阪の三大都市が短期間で結ばれれば一層の発展も見込まれ、品川エリアの重要度も増してくると考えられます。
現在検討中の路線は
1、都心・臨海地下鉄新線(東京~新銀座~有明)
東京駅から「銀座」「築地」などを通り「晴海」「豊洲市場」「有明」などの湾岸エリアに運行する新線計画です。2021年に東京都は「都心部・臨海地域地下鉄構想 事業計画検討会」を設置しました。現在は、ルート・駅位置や事業スキーム等の事業計画などが検討され事業化に向けた具体的な検討が進められています。
湾岸エリアはタワーマンションや商業施設などが多く建設されている一方、未利用地も多くあります。こうした湾岸エリアの新線が開業すれば湾岸エリアの発展や東京東エリアなどの発展にも繋がる可能性もあると考えられます。
2、つくばエクスプレス(つくば以降)
「秋葉原」から「つくば」まで運行するつくばエクスプレス(TX)は2005年に開業しています。茨城県は、2050年頃の構想としてTXの延伸は「土浦」方面とする事を決定しました。「土浦」駅では常磐線と接続する予定です。また今後つくばTXが「秋葉原」から「東京」駅まで延伸する事も検討され、臨海地下鉄と接続する可能性もあります。
「浅草」なども通り利用者も多いTX沿線がますます発展する可能性があります。
3、地下鉄7号線・埼玉高速鉄道(浦和美園~岩槻)
都心を運行する東京メトロ南北線は「目黒」から「赤羽岩淵」まで運行し、「赤羽岩淵」からは埼玉高速鉄道に直通運転を実施しています。埼玉高速鉄道は「浦和美園」まで運行していますが、これを「岩槻」まで延伸する計画があります。「埼玉スタジアム」などの新駅も開業する予定です。さらに将来的には「蓮田」までの延伸の計画もあります。
4、都営地下鉄大江戸線(大泉学園(仮称)延伸)
都営地下鉄大江戸線は練馬区の「光が丘」駅から「都庁前」と、「六本木」や「築地市場前」駅などを環状で運行する線があります。現在他の路線とは直通運転は行っていません。これを「光が丘」駅から「大泉学園」に延伸する計画があります。途中「(仮称)土支田」「(仮称)大泉町」駅などの新駅の建設も予定されています。
多くの「駅前」の土地が生まれ「まちづくり」計画も予定されており、今後住宅の需要が増えるエリアとなる可能性もあります。東京西側の交通アクセスが向上してきており、練馬区などの発展にもつながります。
5、新空港線(蒲蒲線)
羽田空港にアクセスする「京急蒲田」駅はJR「蒲田」駅から800m離れており乗り換えが時間がかかる状況です。これを解消するため東急多摩川線をJR「蒲田」駅から「京急蒲田」駅まで延伸するものです。東急多摩川線は東京メトロ副都心線、南北線、都営三田線などにも接続している東横線・目黒線などにも乗り換えがしやすく広範囲から羽田空港へのアクセスが向上します。また「羽田空港」周辺や「蒲田」駅周辺の発展にもつながります。
6、多摩モノレール(箱根ヶ崎延伸)開業予定:2032(令和14)年ごろ
多摩モノレールはJR「立川」駅から北方面「上北台」駅、南方面は「多摩センター」まで運行しています。このうち「上北台」駅から「箱根ヶ崎」駅まで延伸する計画です。小池百合子都知事は開業予定を「2030年代半ば」としています。
さらに将来的には「多摩センター」駅から「町田」駅までの延伸も検討されています。
「立川」駅などの発展にも繋がる可能性があります。
以上見てきたように東京周辺では多くの新線・延伸計画があります。こうした計画は沿線のみならず東京全体のポテンシャルの引き上げにもつながります。また多くの計画は中・長期的となり、東京都の今後の発展も見込まれます。不動産投資は長期的な投資ですので、東京のこうした将来性の高さもアドバンテージとなります。
このように今後ますます発展が期待される東京都は不動産投資の立地としても適していると考えられます。