最新地価動向と不動産投資【プロが教える不動産投資コラム】
台風も去り暑さも和らいできました。そろそろ秋の気配も感じられるようになってきています。
8月の終わりに国土交通省から地価LOOKレポートが発表されました。地価の代表的な指標は「公示地価」「基準地価(都道府県地価調査)」などがありますが、これらが年に1回なのに対して地価LOOKレポートは年に4回発表されます。それだけ地価の動向が詳しく分かる訳です。
最新の地価動向と今後の地価動向について検証してみたいと思います。
地価LOOKレポートが発表に
地価LOOKレポートでは公示地価や基準地価のように調査地点が多くなく、都心部や主要ターミナル駅周辺などの高度利用地を中心に地価動向を発表しています。つまり駅に近いエリアや人気のある住宅地などが中心となっています。詳しい土地の価格を表すのではなく、上昇や下落などの大まかな動向を表すもので、主要部の地価の大局的な動きが把握できます。
地価は都心などを中心にアベノミクス発足の2013年頃から上昇傾向が続き、2019年頃までにはインバウンドの増加や東京五輪の期待などもあり地価は大きく上昇していました。その後は新型コロナの影響では地価は一時的に調整局面となりましたが、現在では回復基調が見られています。
今回発表されたのは2023年4月1日~7月1日(2023年第2四半期)の動向となります。近年の地価の動向も含めて見てみましょう。
東京圏の地価は上昇傾向が続く
今回の地価LOOKレポートでは東京圏(埼玉県、千葉県、東京都・神奈川県)の調査地点は35地区で、このうち上昇が29地点(83%)、横ばい6地区、下落は0となりました。地価が上昇傾向にある事が分かります。
前年同期(2022年4月1日~7月1日)には東京圏は上昇26地区、横ばい8地区、下落1地区でした。
過去にはデフレの影響もあり、地価の下落が大きく進んでいたのは2008年から2009年頃で、その頃から地価は底打ちとなり上昇傾向となっています。この当時は全ての地区が下落となっており、いかに現在は地価が上昇傾向であるかが分かります。
また今回の発表では、東京都区部は全19地点のうち上昇14地区、横ばい5地区、下落ゼロとなっており、上昇傾向となっています。
東京圏の地価動向(前年同月との比較)
2022年第2四半期 4月1日~7月1日 | 2023年第2四半期 4月1日~7月1日 | |
---|---|---|
上昇 | 26地区 | 29地区 |
横ばい | 8地区 | 6地区 |
下降 | 0地区 | 0地区 |
東京圏・地価の下落が多かった時期<65地点中>
2008年第4四半期 | 2009年第1四半期 | |
---|---|---|
上昇 | 0地区 | 0地区 |
横ばい | 0地区 | 0地区 |
下落0~3% | 8地区 | 10地区 |
下落3~6% | 45地区 | 40地区 |
下落6~9% | 10地区 | 15地区 |
下落9~12% | 2地区 | 0地区 |
東京都区部の地価動向(2023年第2四半期4月1日~7月1日)<19地点中>
上昇 | 横ばい | 下落 | |
---|---|---|---|
地価動向 | 14地区 | 5地区 | 0地区 |
景気と地価の関係は
地価の動向は景気にも大きな関わりがあります。景気が上昇すればオフィス、商業施設、ホテル、住宅などの不動産の需要が増加し、不動産の価格が上昇します。
不動産の需要が増えれば土地の需要も増えますので、地価も上昇する事になります。
特に駅に近い商業地などはオフィスビル、商業施設なども多く建設されますので景気の影響を受けやすいと言えます。
地価は株価にも連動すると言われています。2023年9月7日現在で日経平均株価は3万3,000円前後で推移しており、株価も高水準である事が分かります。
今後地価が上昇する可能も。その要因は?
現在景気は回復基調にあり、地価もそれに連動して上昇する可能性がありますが、その要因について考えていましょう。
(1)インフレ、物価上昇
インフレの指数を表す消費者物価指数は(全国・総合)は2023年7月には前年比3.3%の上昇となり12ヵ月連続で前年比3%を超えています。物価が大きく上昇し私達の生活にも影響を及ぼしています。
インフレによる物価上昇が起これば、それに連動して賃料なども上昇する場合もあります。するとその土地の収益力が上昇する事になり、周辺の地価も上昇する事になります。
地価は景気などに連動する傾向が見られますので、今後も物価上昇に合わせて地価は上昇する可能があります。
消費者物価指数(全国・総合) 前年同月比の推移
7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
前年同月比(%) | 2.6 | 3.0 | 3.0 | 3.7 | 3.8 | 4.0 | 4.3 | 3.3 | 3.2 | 3.5 | 3.2 | 3.3 | 3.3 |
(2)給与水準の上昇
こうした物価上昇に対して、給与水準がそれほど上昇していない事から、実質的な給与がマイナスとなっている問題があります。
岸田総理はこうした点を解消するために給与水準の引き上げを呼びかけており、2023年にはある程度の効果がありました。
厚生労働省の発表によると、2023年の春闘では賃上げ率は3.6%と30年ぶりの高い水準となりました。こうした所得の増加から住宅購入能力も拡大しマンションなどの需要拡大にも繋がっています。
(3)東京のポテンシャル上昇
東京は日本の経済の中心であり、また47都道府県の1つながら全人口の10分の1が集まる大都市です。東京では多くの再開発なども行われており、今後も長期的な発展が見込まれます。人口の流入も多く就業人口も多くなっています。さらに鉄道の新線・延伸計画も多くこうしたインフラ整備も進んでいます。
こうした事から今後も土地・不動産の需要も多く地価も上昇を続ける可能性があります。
(4)日本は低金利・円安のため世界の不動産投資資金が流入
世界的なインフレの影響もあり、世界の主要国などでは金利が上昇しています。
2023年8月に開催されたジャクソンホール会議では米国FRBのパウエル議長が金融引き締めの継続の表明をしており、米国でも高金利が続く可能性がある事を示しています。
こうした高金利から世界の不動産投資額が減少傾向にありますが、日本では依然として低金利が継続しており、不動産投資市場としても注目されています。
さらに円安により相対的に日本の不動産が海外の投資家から見ると安く買える事になります。現在も円安ドル高が続いており、海外の投資家にとっては日本の不動産に投資する絶好の機会となっています。また特に東京はその将来性や、世界的な水準から見るとまだ割安感がある事などから世界の中でも投資先として魅力も高く、今後も不動産投資資金が流入する可能性もあります。
(5)新型コロナによる潜在需要が健在化
前述のように地価は新型コロナの前まで、特に東京都の主要部など中心に大きく上昇していました。新型コロナの発生により緊急事態宣言を始め、多くの規制から経済が停滞し地価にも大きな影響がありました。しかし2023年5月に新型コロナが5類に移行し、その後は地価も回復が進んでいます。
地価が影響を受けたのは駅に近い商業地なども多く、今後、新型コロナからの回復を受けてインバウンドの増加や景気回復などでこうしたエリアの地価が上昇すれば、ワンルームマンションの用地の価格も上昇する可能性もあります。
景気上昇の恩恵を受けやすいエリアを選択する事が重要
地価が上昇するとワンルームマンションの価格も上昇します。すると周辺の中古マンション相場や賃料相場も上昇し結果としてマンションの資産価値も上昇します。地価は景気と連動しますので、地価が上局面にある時は景気も上昇局面の場合も多く、賃料の上昇や、また資産価値の上昇により売却の際に有利になる場合もあります。
しかし東京などでも景気に連動して地価が上昇するエリアとそうでないエリアとの格差も広がっています。地価上昇の恩恵を受けやすい人口、交通アクセス、企業集積、将来性などを含めて一定の条件を満たす事が不動産投資の立地選びには重要となります。
ワンルームマンションは交通アクセスの優れた好立地に建設される事が多く、駅に近いまとまった土地は資産性や希少性、将来性も高いと言えます
地価上昇局面は不動産投資にも有利に働くケースも多く、今後の地価動向にも注視する必要があります。